別視点のものもあったのですが、テキストが行方不明に……
“嫌いじゃない”という言葉は、ある意味残酷だと私は思ってた。
“好き”ではないし“嫌い”でもない。
結局、どちらでもないから。
「嫌いじゃないけど……」
臨時パーティで何度か一緒になって、好きになったウィザードさんに告白した。
清算が終わって、のんびりした時間の時。
答えは、もちろんNO
「そうですか……残念です。えと……こりずに、狩にはまた誘って下さい。では失礼します」
ぺこりと丁寧にお辞儀をして、自分に速度増加をかけると私はそこから猛ダッシュで逃げた。
涙目になっている自分を見せたくないのと、惨めな気持ちにこれ以上なりたくないから。
そのまま、路地裏まで走って座り込むと思い切り泣いた。
気が済むまで泣いて、泣いて……。
ふと気がついたら、太陽が西に沈みかけているこんな時間。
「……何やってるんだろう、私ってば」
答えがNOであることは、わかっていたんだけど。
相方兼彼女のプリーストさんがいるのを知ってて、私は告白したわけで。
結婚式も間近なのも、知っていたわけで。
結婚してしまったら、きっともう言えないと思ったから告白したんだけど。
涙とハナ水でぐしゃぐしゃで化粧もきっと半分以上落ちてしまっている、今の私にお似合いな黄昏色の空を見上げて思わず呟いてしまった。
でも、許せないのはその答え。
“嫌いじゃない”という言葉は、ある意味残酷だ。
“好き”ではないし“嫌い”でもない。
ちょっと、期待を持たせるようなそれでいて突き落とすような。
だから、残酷。
ゴシゴシと目を擦って涙を払うと私は家に帰るべく、テレポートを唱えた。
……で、なんで城壁の上に私はいるんだろう。
さっきのテレポートでランダムテレポートしてしまったのだろうか。
城壁の上からだと、沈む夕日が良く見えて余計物悲しい気分になってくる。
「……ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
思わず夕日に向かって叫んでいた。
「何が『嫌いじゃない』よ。しっかり拒否しなさいよ、うすらばかぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
人に聞かれてると思うけど、とりあえず言いたいことを言ってしまおう。
「本当に好きだったんだからっ 好きだったんだからぁぁっっっ……ヒック……うぅ……ぇく……」
最後の方は涙まじりで、わけわかんないことになってる。
プリーストが城壁に仁王立ちになって泣き叫んでる姿は、ある意味いい見物だと思うけど、この際気にしない。
ひとしきり泣き叫んでぼろぼろに崩れた化粧と真っ赤に腫れている目を直さなくちゃと我に帰ると、隣にギルドメンバーのバードがいた。
「……何で、あんたがここにいるのよ」
「いや、なんか城壁でダンサーでもないのにスクリームしてるアホがいるから。思わず見物に」
こいつは、いつもそうだ。
私がこんな風に振られて落ち込んでいるといつの間にかそばにいる。
「見物するなら、隣にいなくてもいいじゃないのさ」
「間近で見たほうが面白いじゃん♪」
「……最悪」
「振られたんならぱーっと憂さ晴らしに飲みにでも行こうぜ?」
「そんな気分じゃない……」
「いーから♪ 飲んで忘れちまおう」
「え、ちょっと!! うわぁっっっ」
バードは私の手を引っ張って、城壁から飛び降りた。
重力には逆らえないから、そのまま私も釣られるように落下する。
そして、着陸と同時に私を抱えあげて、楽しそうにバードは笑った。
「……むちゃくちゃビックリしたでしょうがぁぁぁっっっっっっ」
「でも、悲しい気分は飛んだだろ? さ、飲みにいこーぜ」
確かに。
悲しい気分は吹き飛んだ。
「トコトンつきあってもらうからね」
「あぁ? おう」
「もちろん、おごりでよろしく」
「割り勘だろうが」
「誘ったのは、あんたなんだからおごるのはとーぜんっ」
「……仕方ねぇなあ」
クスッと笑うと私はバードに抱きついた。
「あんたのこと、嫌いじゃないよ」
「あぁん? 嫌いか好きかハッキリしろよ」
「やだ。ハッキリしないよー」
なんとなく、『嫌いじゃない』という言葉の意味がわかった気がする。
"好き"とも言いにくいし、"嫌い"とも言いにくい。
残酷な言葉だけど、その裏にはきっと……