――黒髪ツイン三つ編み少女ミーナ・カロライナと出会う10分前――
「あーーなんということでしょう、この街はアスレチックなのだー……」
俺は適当に独り言を喋りながら歩いている。
既に歩いて1時間と少々。
太陽はまだ片付き始めたばかり。
時間的に3時のおやつでも食べている頃だろう。
人通りが少なくうす暗い……いいか。もう言っていいだろうか。
「ここどこだよーーーっ!?」
アオイ・アルレルト9歳。トロスト区で迷子になりました。天然迷路なんだよこの街……。
「幼ヒッチやリコ姉verに会う前にまずこの状況を脱しないといけない……んだけと入り組んでいまいち判りにくいんだがこの街」
迷う。
どのくらいってUSJに売り込める程度に迷路だ。
進撃の巨人のトロスト区再現しましたって売り込んでくれよ。
小さい俺の体じゃあ疲れる――わけじゃあないけど気が滅入る。
「最近見てなかったけどステータスを見てみようかな」
ちょっとした興味で俺はステータス画面を開いた。
『アオイ・アルレルト』
性別・男
所属兵団『無』
称号『若き瞬英』
LV2→5
筋力 :11→14
敏捷性:13→38
器用さ:12→16
頑強 :18→50
体力 :11→18
知性 :12→20(+10)
運 :90(幸運状態)
残ポイント=12P
スキル『投刃』『狩猟』ゲット!
『投刃』――ブレードを投げつける命中率上昇
『狩猟』――狩りが巧くなる
『狩猟』はそのままだから良いとして。『投刃』は立体起動装置に備え付けられている超硬質ブレードを敵に投げつける命中率が高くなるスキルのようだ。
調査兵団でちょっとした遊びで習ったんだけどすぐ習得したのは『天才』スキルを持っているからかもしれない。
それにしても幸運って。
迷っている時点で不運だってのに。
そんな俺はこの
地図を見ながら目的地と逆走する特技がある俺に地図なし土地勘なしでどうすれと。
シガンシナ区も山のような起伏があって苦手なのに。
「トロスト区は平地だからまだマシとはいっても……」
狭い上に無造作に置かれた樽や木箱の所為で先を見通せない。
「さっさと脱出せんと何処にも出かけられん!」
閉所恐怖症ではないけど段々と気分が滅入ってくる。
きょろきょろと出口を探していたところ、
「ちょっと離してよっ!」
「うるせえっ」
パンッ!
「きゃっ! ~~っつーなにすんの!」
ガスッ!
「痛ってー! この男女め、ふざけやがって!」
「その男女に対して3人がかりなお前等は女男じゃんか! 群れなくちゃ何にもできないなんてへタレねっ」
「んだとオラァ!!」
なにかトラブルの匂いっ!
しかし美少女の気配もする。声だけならグッド!
ならば、することは1つしかあるまいにっ。
近くの樽によじ登って、飛び上がる。
「とうっ俺惨状!」
「「「「…………」」」」
微妙な表情する餓鬼3名と素敵黒髪少女。少女はどっか見たこと…………どうみてもミーナじゃねいですか?
ミーナ・カロライナ――黒髪で三つ編みに髪を体の前に垂らしている。850年のトロスト区が超大型巨人に破られたときエレン達と出撃したが量産型巨人さんの攻撃で壁に叩きつけられ気絶。喰われた描写がないから生きているかのと思ったら、とある進撃の巨人のイベントでエレンが死亡者を読み上げるというものをしたとき、さりげな~くミーナの名前が……。作者の微妙な理由で死なされたマルコと同様に酷い扱いのキャラだ。貴重な可愛い女性キャラなのにな……。
まあ出会えたのは素直にラッキーだと思う。
ビバ幸運!
しかし微妙に痛い子を見る目線はなんでだろう?
「はっ!? 漢字を間違えた!」
「いやそこじゃないでしょ」
ミーナさんに突っ込み頂きましたありがとうございます。
……ちがう。
どうやら俺渾身のギャグは滑ったらしい。
仕方無いのでコホンと軽く咳払いした後、
「おいお前らっ! 大の男が女の子相手に3人がかりたぁ情けなくないのかよ!」
「んだてめぇ……寒い登場の仕方しやがったと思ったらコイツに加担すんのかぁ?」
寒いは余計だ。
とにかく相手を見てみる。
さっき喋った縦より横に広いでかぶつ、骨と皮しかなさそうなひょろのっぽ、小生意気なちびの3人。
どこの時代にもいるんだなーこういうの。
チビとノッポが睨みつけながら、
「ば、馬鹿はあっちいってるんだな……」
「ぎゃははは、おらおらアホはお家に帰んなさーい!」
「あ?」
馬鹿とかアホとかでめぇらの残念な顔面で喚くなよおら!
「とっととあっちいけ、やぁ!!」
「おわっと!?」
いきなり親分っぽいデブが殴りかかってきやがった。
だが残念だ。遅すぎる。
なにせ公式チートさん(ミカサ)の攻撃にいつも理不尽に晒されているからな←自業自得
エレンと早くくっつけよとか、エレンと2人っきりの機会作ったりとか、エレンの私物を枕元に置いているだけなのに。
手を繋ごうとして、袖を軽く摘まむのもためらうほど純情なんだから。
端から見ててヤキモキする。
だからそのイラつきを俺にぶつけないでください本当に。
まあとにかく――
「はっはっはっはぁ! 日ごろから理不尽な暴力から逃れようとし続けた俺の動きをみよーー! ふんふんふんふん!」
シュンシュンシュン!
スラダンの主人公ばりのディフェンスだぜっ。
「な、こいつ早えぇ――つかきめぇ!?」
「な、なんなんだなこの気分が悪くなる動きは……」
「ちょ、おやぶんコレまじアレっすよ! さっきから思ってたっすけど頭イカれた奴じゃねえですかい!? ほっといた方が……」
「そ、そうだな……おいミーナ! 今度は容赦しねぇからな!」
「べ~~~っだ! 一昨日きやがれぇ!」
両手の指で口のを広げながらイーっと小さい舌を出して挑発するミーナ。
3人組がぺッと唾を吐きながら去っていく。
どうでもいいが俺なんか貶されてないっすか。
だだこのあとミーナにカッコイイと言われたのでとりあえず良いかなっと。
流れ的にとりあえずミーナと一緒に歩く。
話題はさっきの難癖を付けられていた理由なのだが――
「はぁぁぁ!? じゃあ難癖っていうかケンカしてた理由って――」
「へへへへへ~~~♪ アイツら気にいらなかったからちょこーっとお返しというか、ね」
「いや怒るだろ」
「えへへ~牛乳パクッたのはやり過ぎだったかもねー」
なんつー子供らしいオチ。
元々ミーナとさっきの子供らとは昔から仲が悪く悪戯をやってやり返して――という間柄だったという。
今回はミーナが家に突入して昼飯を喰っていた奴ら(デブの)昼飯の一部をパクったというしょーもない出来事がケンカ原因だった。
家の人もいつもやっているからやれやれといった風で流しているというのだからなんともいえねぇ……。
つーか。
「俺ただの馬鹿じゃん!!」
「えっへっへ~ピエロ感が半端なかったね~」
「カッコイイって嘘だろ!」
「いやいやいや、その清々しいくらいやっちゃった感はカッコよかったよ♪」
「うぁぁぁぁぁ!?」
こいつ助けなくいいじゃん!?
悪戯っ子の笑みを浮かべたミーナはへへへと笑いながら俺の手を掴む。
「な、なんだ!?」
「いや~アオイ君キャラがとても面白いからさっ。良かったらちょいとトロスト区を案内しよっかなって。明日にはシガンシナに帰るんでしょ?」
「あ、ああうん、そうだけど」
「じゃあお礼に色々案内するよ! どうせ迷ってたんでしょ?」
「いや違う、俺は迷ってただけだ――アレ?」
「ふっつーに白状してるね……。まあいいや。ほらほらいこいこっ!」
手を引かれミーナと一緒にトロスト区を周る。
「あはははっ、それでねそれでね! 王子様みたいなタイミングで男の子がやってきて――あれ、アオイ君……なわけないか……?」
「いいか、立体起動とはな……ん? 少年……いや彼はシガンシナ区だから見間違いか……」
凄く聞き覚えがある声が……。
気のせい、か?
行きつけという自家栽培した野菜を売っているお店にいってみたり、風来坊みたいな恰好のおじさんが本を売っている店にいったり、一般家庭に強襲してお菓子をせびったり。
一部可笑しいところがあるが全てミーナの所為という事で。うん。
トロスト区では悪戯っ子として有名みたいだ。
日が暮れるまで遊びミーナはお家へ帰っていった。
ただ女の子と手を繋ぎながら一日過ごして幸せだった。うん良い日だったな。
そうこのときは幸せだった。
でも破滅のときは近づいている。
俺は頭が元々よろしくない。
漫画の知識は多少あれどそれだけだ。
後はただただ体を鍛えて、アイテムボックスにパンやら水やらを詰め込んで備えることしかできない。
来年は845年。
シガンシナが地獄に落ちる年だ――