VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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戦闘シーンがなかなか難しい(^_^;)


捨てられない小さな命

 バシュンッ!

 

 再度ワイヤーを射出しなんとか壁上に上る。

 

「ッ! コイツが……あの巨人か! へ、へへ……マジでこいつと人間を比べたら像とアリんこじゃねえかよっ」

 

 でかい。

 感想は正にそれだ。

 人間は自分より遥かに巨大なものには無条件で畏怖を感じるらしい。

 なにせ50mを超える超大型巨人。

 ビル15~20階程度の高さなのだから。

 

 クジラなどと違いコイツはこの惨劇を起こした張本人だ。

 どうしようもない理由があるのは知っている。

 まだその先の話を知るわけではないので詳細は知らない。

 ただどんな理由にせよこの胸のイラつきは晴らさないと気が治まらねぇ!

 

「一撃だったらコレ(・・)もありなはずだ!」

 

 シャンと金属が擦れ合う音を響かせながら超硬度ブレードを引き抜く。

 蒸気が濃いが奴はまだいる。

 相手も俺がいるとは思っていないだろう。

 

「本当はご本人様をしこたま殴りたいとこだが――――とりあえず喰らいやがえぇぇぇ」

 

 カキュン!

 

 俺はブレードのロックを外し×の字を描きながら巨人に向かって放り投げる。

 相手はいずれ蒸気をさらに出してその間に消えるつもりのはず。

 だがその蒸気の所為で奴と俺の間に煙の壁がある。

 外さない!

 

 空気を切り裂き奴の肩にブレードが――

 

 どしゅ。

 

「おっし!」

「――――――――オォ」

 

【超大型巨人に一撃を与えろ! ――――達成!】

 

ギロ!

 

「へッ?」

 

 奴の腕が大きくしなり、

 

「ちょちょちょちょーっとまった……」

 

 鞭の様に――だがそれは巨大だ。

 鞭というには綱引きの大縄より、飛行機の給油ホースより余裕ででかい。

 当たったら即――

 

 

 

 ――死

 

 

 

 かちん。

 ワイヤー射出――ガス圧を利用し勢いよく飛び出したアンカーは屋根に突き刺さり固定。

 もう1つのトリガーでワイヤーを巻き取り一気に加速。

 

「ぅぉぉおおぉぉっっ!?」

 

 ぶおおぉん!

 

 大の大人一人分上を奴の剛腕――いやもはや一軒家といっていいサイズが通り過ぎる。

 風なんてものじゃない。

 台風とか竜巻とか言っていい。

 判らないなら目の前を新幹線を通り過ぎたと錯覚する突風だ。

 

「俺なんて狙うなばっきゃろぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

 敵に背を向けながら急落下。

 このまま着地するとダメージがデカイのでもう1つのアンカーを内側の壁に突き刺す。

 屋根のアンカーを外して巻き取りとりあえず一息吐く。

 

「~~~~っはーーーーっ! し、死ぬかと思った……」

 

 生きた心地が死ねぇぇ。

 アイツ今度出会ったらドロップキックかましてやる!

 正体は知っているからなっ。

 なよなよしてる癖にアレが超大型巨人だったとか、かなり納得いってないんだからな。

 

「はぁはぁ……大丈夫だと思うけど、念のためエレンの家に行こう。カルラさんを案内して――――」

 

 ドオンッ!!

 

 俺のすぐ横の壁が崩れた。

 デカイ手が壁を掴んでいる。

 右を見てみるとにっこり笑顔の巨人が、

 

「おおぉぉぉ――」

 

 大口を開けて迫っていた。

 

「うひゃっほーーーー!!??」

 

 マジで喰われる5秒前!?

 

 立体機動装置で即離脱。

 屋根に着地すると住民達が悲鳴を上げながら一目散に北へと向かっている。

 

「お、おい巨人……きょじんだァァァーー!?」

「い、いやだ死にたくないッ!」

「早く逃げなく、ちゃ」

「お母さーん、お母さーん! うぇ~ん!!」

「早くしろーーっ!」

 

 ドン……ドン……ドン……。

 

 もう数匹は入り込んでいる。

 

「な―――ッ。もうこんな入り込んでんのかよっ!?」

 

 動きが遅いから油断してた。

 アイツら一歩一歩の歩幅がでけぇから想像以上に動きが早い!

 

「急ごう! エレンやミカサは一度家に戻ってるはずだ!」

 

 住民達には悪いけど俺は万民を救えるほど聖人君子でもなければヒーローでもねぇ!

 

「おがあざん……おがあざん……」

 

 灰色の変わった髪色をした少女が泣きながら母親の体をゆすっている。

 必死に、必死に起こそうとしているが……。

 

 下半身が潰れた母親は起きることはない。死んでいるのだから。

 

 無慈悲な処刑者が少しずつ少女に近づいている。

 

「オォオォ――」

「くっそ……」

 

 3m級がのそのそと歩きながら少女に近づく。

 このままいけば少女は奴の胃袋にダイレクトインだ。

 それも丸のみではなく、あの臭い歯に噛み千切られて。

 

 許せるのか?

 見捨てて俺は許せるのか、自分を?

 辛気臭そうな顔付きの巨人が洋人形ロリっ娘を喰い散らすのを?

 んなの――

 

「無理だっつんだよっ!!」

 

 眼下では今まさに手を伸ばそうとしていた。

 

「おおぉおぉ」

「ひッッ!!」

「死にっっ去らせぇぇ!」

 

 奴のうなじとその先の地面にアンカー設置。

 巻き取って――

 

 じゃしゅ!

 

「――――ぉ?」

 

 浅いッ!

 そもそも立体起動でも切り方もエルヴィン分隊長から直接手ほどきは受けた。

 だが元々3年間かけて習うもの。

 天才&利発の補助が付いていても到底追いついていない部分も多い。

 

 座学分野は知るわけなく。

 連携はほとんど無理。

 個人で立体機動装置を動かすことと、いくらかブレードの扱いを習っただけだ。

 

「せもて筋力があれば――あ」

 

 あげられる。

 初期値じゃ駄目なら。

 

 奴を振り向いて俺と対峙する。

 どうやら獲物認定されたようだ。

 

 彼我の距離5m。じりじりと近づいくる奴に俺は一度距離をとる。

 走らず歩いてくる奴に対し、俺は装置で屋根の上へと飛び乗った。

 

「今に見て居やがれ……ッ。ステータス!」

 

 

 

『アオイ・アルレルト』

 性別・男

 所属兵団『無』

 称号『若き瞬英』

 

 LV5

 

 筋力 :14→26

 敏俊性:38

 器用さ:16

 頑強 :50

 体力 :18

 知性 :20(+10)

 

 運  :50(通常)

 残ポイント=12P→0P

 

 

 

 力が漲ってくる。

 今なら何だってできる――そう錯覚するほどに!

 

「いっくぞおらぁぁぁ!」

 

 ダメな部分もあるが、その分集中して覚えた分野なら――。

 立体起動の扱いだけなら調査兵団の奴らに天才だと言われる位の操作レベルには達している。

 天才+利発+器具の才能の3重掛けで立体機動による移動方法習得速度は跳ね上がっている。

 そしてベテラン調査兵のエルヴィン分隊長から直接指導を受けた!

 だからッ!

 

 俺は屋根から飛び当たり奴のうなじにアンカーを2つ共、正確に突き刺す。

 筋力増強に2重で巻き上げる立体起動装置――重力も手伝って――

 

 ザシュン!!

 

 白痴の巨人(くそやろう)のうなじを回転しながら切り捨てる。

 俺は奴の背中にぶつかり、ゴロゴロと転げながら少女の足元に転がる。

 

「ひっくッ! ひっくッ! ……おにーちゃ? ないして、ひっく……ッ!」

 

 ふむ、花柄の白か……清楚で可憐な少女に良く似合う。

 いや違うだろ俺。俺は紳士だ。

 巨人は立ち上がらない。

 どうやら仕留めることに成功したようだ。

 討伐1……かな。

 

「ほら、行くぞ」

「おがあざんがッ! おがあざんがッ!」

「…………手」

「うぐ……ひうっ……おがーざん、おがーざん……」

 

 駄々をこねているが手を引いても反抗しない。

 多分、心では母の死を理解してるんだ。

 

 もう――いいだろう。

 彼女に母の死体は辛い。

 俺は彼女を抱きしめ飛び上がる。

 彼女の母が薄く笑みを浮かべていたのがどんな意味かは知らない。

 願わくばあの女性が安らかに眠らんことを。

 俺はガスを吹かし急いでエレン宅へと向かう。

 少女には悪いが寄り道をする時間的余裕はない。

 そこで上空から俺が目にしたのは、

 

「かーさん! かーさん!」

「もう駄目なんだよエレン!」

 

 エレンとミカサを抱え逃げ出すハンネス。

 目の前にいる10m級ほどの巨人。

 殺意が湧く程ほどにやけ顔のアイツは、

 

「ッ! おい悪いけどココに居てくれッ!」

「うん……おにたん、いくの……?」

「俺はあの悪い巨人をブッ殺しに行く!! 倒したら迎えるから待っててくれ!」

「うん……ッ」

 

 屋根の上に女の子を一度降ろす。

 遠目には何体かいるが近辺にはあのにやけ面しかいない。

 

「間に合ってくれッ!!」

 

 俺はしゃがみ始めた奴に向かうためアンカーを射出した。

 

 

 

 

 

 

 




カルラさん大ピンチ。
やばそうなのに変態なことしてる主人公は案外余裕なのかも知れない……。

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