VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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レナっ子の取り扱いでご意見がいろいろ分かれていますが彼女は彼女なりに動かしやすいキャラなので納得してしていただけると助かります。
ただ本編にそこまで重要な子でもありません。
エキストラは言い過ぎですが、タグのサブ&モブのように超マイナーキャラも出てきますので彼らとの絡みがメインになるかと。たぶん。




子供と夢と

「なあレナー頼むからお留守番してくれないか?」

「やだ」

「ちょっとだけでいいんだ。頼む!」

「やー! 一緒に行くー!」

「だから……」

「ふえ……兄たん、レナきらい……? ぐすっ」 

「いやいや大好きだから大丈夫だからー!?」

 

 じわじわと目の端に涙をこらえている。

 泣く子と幼女様には勝てません。

 

 あー見ての通り説得に難航しております――って誰に言っているんだ俺は。

 実際問題、レナを連れて山奥に入り込むのは自殺行為だ。

 場所は巨大樹の森じゃない。高所で飛び回ってという探すという作戦は使用できない。

 これから行こうとする場所も通常より背の高い森ではあるが危険すぎる。

 連れていくのはアウトだ。

 どっちも喰われて死亡の未来しかない。ならどうすれば。

 

 俺は難しい顔をしたままでいると突如レナが叫ぶ。

 

「うーーーっ! レナもりっちゃいきどー使う!」

「……まさか立体機動装置か? いやいやレナには早いって。落ちて死ぬぞ?」

「レナ動ければいいんでしょ! いっしょにいくー!」

 

 駄々っ子だ……。

 ジタバタしている。でもそれで簡単にできるほど甘くない。

 実際、訓練兵の死亡理由のトップは立体機動のミスが大半だ。

 高速の3次元機動をする上でミスは命とりになりかねない。鎧の巨人では俺だって不覚を取って一度死んでいるのだから。

 正規の訓練を受けていない俺も最初は死ぬかと思った。

 それでもやっていけたのは、ハンネスさんやエルヴィン分隊長が丁寧に教えてくれたからだ。

 スキル云々より圧倒的上位者からの指導は必要不可欠。

 そういう意味では俺は恵まれすぎていた。

 レナにはそれがない。俺じゃあまだ人に教えれるほどの技量も経験もない。どうしたって無理だ。

 あれはおもちゃじゃないんだ……使い方を誤れば死ぬ可能性すらある。

 レナには少し強く言わないと駄目なようだ。

 

「レナッ!」

「ひうっ!」

「立体機動装置はあくまで巨人を殺すための武器なんだ! おもちゃみたいに軽々しく扱っていいものじゃない! まだ非力なお前じゃまだまだ無理だ!」

「……う……うぅぅ~~~!!」

 

 泣きはしなかったもののレナは唸りながら睨む。

 結局この日は一日その場所で過ごした。

 

 

 

 精神的に安定し始めたとはいえ、彼女は俺のそばを離れたがらない。

 依存気味なのはこの状況では仕方ないけど、今後もこう続くと……。

 

(あーどうすりゃいいんだよ……助けたことに後悔はないけど、2人で逃げるには困難だ。かといって今更放り出すわけにもいかない。最近、詰んでいるじゃないかと少し焦ってる気がする。どうすれば……)

 

 最後はどうすればで締めくくることが多い。

 救助無し。馬もない兵士もどきが1人とただの女の子1人。

 周囲は巨人が笑顔でわんさか湧いてくる状況。

 絶望的過ぎて笑えてくる。

 

 今も巨人が来ないか警戒しているがこのままじゃあ神経が焼き切れてしまう。

 一時でもいい、どっかに安全な場所に引きこもって生活基盤でも作らないといい案も出てこないのではないか?

 

「でもな……シガンシナは破られてしまっ……たし? あれ?」

 

 うぉぉぉ~~ん

 ッ!?

 

 いやただの狼の遠吠えか。

 マップにはこっちに近づく表示もないし大丈夫だ。

 でも一瞬名案が浮かびそうだったのだが――

 

「気のせいか……? ……ッ!?」

 

 青い光点が外を移動している!?

 遠くから赤い光点がやってこないかに注視しすぎて自分周辺をよく見ていなかった。

 青は味方表示。でもここ周辺にはいない――ということは。

 

「レナッ! あの馬鹿やろう!」

 

 あいつ外を出歩きやがった!

 夜とはいえ巨人がいるんだぞ。

 

 俺は急いで装備を装着し家から飛びだす。

 1km周囲には赤点ない。

 この周辺は森のすぐ近くではないが木々が多い。

 だがマップギリギリで動くレナらしき光点との距離は1km弱。

 しかもところどころ林が乱立しているから動き辛いことこのうえない。

 ダッシュで向かったいたところ、

 

「赤!? くそ、間に合え!」

 

 お約束とばかりに赤点が青点に近づき始めていた。

 青は逆方向――俺の方へと向かい始めたがその動きは遅い。

 息のつまるような時間。

 一瞬、目の前で赤く染まるレナの姿を幻視した。

 

「冗談じゃねえぞこの野郎!」

 

 

 

 ×

 

 兄たん嫌い!

 

 レナだってたたかえるもん。

 だからしょーめいする。

 えものをとってきて見せる。

 きっと兄たんすごいってほめて、びゅんびゅんなりちゃいきどうおしえてくれる。

 だから、

 

「ぐるるるる」

「ひう……っ!?」

 

 これはばつだった。

 こわくてにげた。

 おおかみなんてかてるとおもってた。

 ちがう。

 兄たんにまもってもらっていい気になってた。

 家からもってきたくだものナイフでふりまわしても当たらない。

 

 逃げる

 

 ぐるる

 

 逃げる

 

 ぐるる

 

 声がうしろからおいかけてくる。

 

「きゃ!? …………ひ、うぅ……」

 

 べしゃって転んでおおかみがくる。

 引っいてきた。

 あかい。

 

「あ……あぁ……」

 

 あかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかいあかい。

 だめダメ駄目。

 それは駄目な色なのだからでないできっとゆめ全てゆめ。

 子供みたいに泣けはお父さんとお母さんがやれやれって言ってやって来て慰めてくれる。

 だからだからだからあかいのなんて駄目――

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

 吠える。

 あかいのが腕から流れる。

 いや……死なないで……死なないで……逃げないから連れてってよぉッ!

 お父さんお母さん!

 

 牙がせまる。

 やっとわかった。

 子供みたいに殻に閉じこもってた私。

 振り返ると馬鹿みたいなことをしてあの人を困らせていた。

 きっと子供になれば――戻ればお父さんとお母さんが戻ってきてくれると勘違いしていた。

 これは残酷な夢できっと醒めれば2人がいてくれると。

 

 違う……もういない。

 

 だってここは、

 

「残酷で……救いの無い世界……」

 

 恐怖と過剰に動かしすぎれ疲労した足は動かない。

 

(でもいい。きっとあの世なら少しは救いがあるから――)

 

 ザシュン!!

 

「ぎゃん!?」

「この馬鹿レナ! 兄に心配かけんじゃねえ!」

「え……」

 

 一瞬で狼を切り伏せる兄と呼んだ人。

 力強い背中は何故が父を思い出した。

 このあと私はしこたま怒られながら寝床にしていた家へと戻る。

 

 やっと夢から覚めてやってきたのは救いの無い残酷な世界。

 ただ救ってくれる人がいた。

 甘い夢も過酷な現実さえ戦い抜いた男の子が。

 困難に陥ったお姫様を救う王子様みたいなそんな人が――

 

「……少しだけ……生きてもいいよね……お父さんお母さん?」

 

 白痴の子供のような生活をしていた自分。

 恥ずかしいけど彼に恩返ししたい。

 そう心に誓った。

 

 ×

 

 

 

「レナに立体機動、教えてください!」

「えー……と」

「おしえて!」

 

 いつものようにアイテムボックスからパンと水を取り出し(レナはそういうものなんだと気にしなくなった)もそもそと食べていたときそう言った。

 レナは小さい口でがつがつ早食いし、こちらに詰め寄ってきた。

 昨日と違い、真剣な表情でこちらを見つめる。

 

「だから危ないと」

「ここにいるのも危ないなら教わったほうがいい!」

「いや、そうなんだが……」

 

 こいつ本当にレナか?

 昨日と違って少し迫力が増してきているぞ。

 口調も少しだけ変わっているし。

 

「兄さんに怒られて思いだした! レナはなにもしてない。だから手伝う!」

「だから――」

「手伝う!」

 

 女つえー……。

 怒りかなんか知らんけど意地でも引かないって顔付きだし。

 いいようもないプレッシャーで押される。

 手伝いたいって気持ちだけはありがたいから無碍にもできない。 

 でもこっちだってはい判りましたっていうわけにもいかない。

 

「どのみち安全な場所もないし、ガスが供給できない状況じゃあ立体機動の練習なんて出来ないぞ」

 

 おお、俺なんか理論的な返しができたぞ。

 そう予備があるとはいえ貴重なガスを無駄使いはできない。

 補充するためにはシガンシナに戻らなくちゃならないからな。

 

「じゃあ、安全で補充できたらいいの!?」

「お、おう」

 

 待てなんでレナは満面の笑みなんだ。

 なんだその勝ち誇った顔は。誰この子怖い。

 でもいまのウォールマリアに安全な場所なんて存在しない。

 だからその条件なら無理――

 

「兄さんいいですか。ここでこうなら――――」

「――ッ!? マジか!? あーーーーっその場所かよっ! …………いや、まあ、なんだ」

「はい? よく聞こえません」

「あーーーっ! わーかったよ! 教えるよ畜生がッ!」

「ありがと兄さん♪」

 

 レナが自身満々に言い放った場所。

 その場所とは――

 

 

 

 

 

 




レナはちょろいです。そんな扱いですいません(^_^;)

真の強敵はこれからだ!
アニとかアニとかアニとか(笑)
彼女とどう絡めるかが思いつかん……。
何故か投げ飛ばされるか冷たい目線をもらう光景しかイメージできない。
アニ、恐ろしい子。





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