VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

20 / 55
一気に時を進めます。




空白の安全地帯

 レナの立体機動教えろ事件から約1ヵ月半――まるで幼児のような幼さは影を潜め、どちらかというとミカサのように冷静な部分が見えるようになった。

 そんな彼女が言った確実に安全になる場所とは言われてみれば、確かに! と言わざるを得ない場所。

 というか気づけ俺と思った。

 

「ここなら大丈夫でしょう。なにせ巨人から守るためのものがあるんだから」

「確かに状態もそのままだし」

 

 ここは――シガンシナ区を南とするならここは東の区だ。

 名前は知らない。原作ではほとんど空気状態だった。

 レナも知らないそうだ。

 名前も知らないここを東区と仮名しておく。

 ウォールマリアは東西南北4つの区が存在する。

 南がシガンシナ区。

 現在俺達がいるのがその4つの内の東の部分だ。

 

 ここが何故安全かといえば、なんせ直接の被害を受けていないからだ。

 

 考えてみれば当然の事でシガンシナ区は超大型巨人と鎧の巨人の所為で門に大穴を開けられ巨人の侵入を防いだ。

 しかし他の3つの区は別に破壊されていないのだ。

 つまり壁外から巨人が自由に出入りできるのはシガンシナ区だけ。

 ただこの東区に人の気配はない。何故なら避難したからだ。

 避難した理由はおそらく物資の面だろう。

 ウォールマリアの各区は内地からの補給物資を輸送されなければ維持できない。

 門さえ閉じれば巨人のシガンシナ区から来た巨人を防ぐことはできても中びっしり家屋が建てられた区内では食糧などあっという間に底を尽きる。

 おそらくハンネスさん達駐屯兵はいの一番に大都市である各区に巨人侵入の報を知らせて回ってみんなローゼ内に避難したのだろう。

 

 そしてここからが重要。

 門が壊されてないなら内門を閉じてしまえばいい。

 俺は東区の内門真上にいるが街中に巨人はほとんどいない。

 

 これも当然だ。

 他区の門を閉めれば安全とレナが教えてくれた後、気付いたが巨人はより人の多い場所に集まる。

 人のいない街に彼らがいる意味はない。自然と東区からもいなくなる。

 何故なら巨人はウォールローゼという餌があるから大半はそちらへと向かう。

 

 門の開閉は内門のすぐ傍。

 閉じたのち街中の巨人を掃討すれば、安全地帯の出来上がりってわけだ。

 しかも数万人が過ごしていた街だ。

 駐屯兵団の支部には持ち運べない大型のガス補給管や残された立体機動装置等の武器が、火事場ドロボウだが各家庭には小麦などいくらかあるはず。

 たった2人が過ごすには十分な備蓄がある。

 巨人達もマップに映る分には数体しかいない。

 それも奴らが動けない夜間に討伐すればいい。

 夜に行動できるタイプがいると最悪だが獣の巨人が出張らない限り、俺だけでも十分勝機はある。

 少なくとも、内門をくぐれないからだろう10mクラスのでかぶつはいない。

 小型ほど日光が遮断されれば早く動けなくなる傾向がある。

 

 まあ長々向上を述べたけどようは当面は全ての物資と安全を確保できる。

 だからまずは――

 

「兄さん」

「ああ」

 

 俺はレナを抱えたまま地上に降り立つ。

 周囲に巨人がいないことを確かめ内門にある開閉扉を操作するであろう部屋に行く。

 

「これ回せば閉まるんだよな」

「たぶんですけどチェーンなどがたくさんありますし」

 

 アニメでも見た歯車ばかりの部屋だ。

 この船の舵みたいなのが開閉扉の操作部なはず。

 ごろごろと――

 

 ゴゴゴ

 

「それですか兄さん?」

「ああ、少し錆ついて固いから手伝ってくれるか?」

「わかりました。じゃあ、いっせーの」

「せッ!」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――ドドォン

 

 外を眺めるとちゃんと開閉扉は下りておりこれで東区は完全に巨人の行き来を遮断したことになる。

 

「やりましたね兄さん。じゃあ次は」

「ああ、次は――」

「巨人をめっさつ――」

「――昼寝だ」

「えーー」

「えーじゃない。巨人の活動が鈍る夜中に始末するのがいいの」

 

 指くわえてなんのポーズしてらっしゃる。

 おねだりしても駄目だっつの。

 

「兄さんのカッコイイとこみたい! こうズバズバーッ!」

 

 えいやあと剣を振りまわす仕草をしていると歳相応だなと思うけど嫌なものは嫌だ。

 ただでさえ単独撃破は難易度ルナティックなのに。

 夜になればまったく動かなくなるからイージーかノーマルまで落ちる。

 それまで待つ。

 無駄な苦労なんてしたくない。

 

「ぶーぶー」

「文句いうなら今夜1人で寝ろよ」

「さー昼寝しよう!」

 

 見事なまでの変わり身っぷり。

 この娘さんは幼児レベルの行為はなくなったけど夜一緒に寝るのだけは辞めなかった。

 でもたまに夜中にごそごそやっているのは気になるんだけど突っ込むとやばい気配がするので指摘しない。

 

「兄さん隣来てください! 妹は寂しいです」

「暑苦しいからやめてくれよ……」

 

 目を話すとすぐぴったりくっついてくる。

 カレンダーがないけどシガンシナが落とされたのが4月と過程するともう3ヵ月半経っている。

 つまり7月半ば。

 日本のように蒸し暑くないとはいえ日差しは強い。

 でも昼間は壁上じゃないと巨人達がいつくるか判らないからここでごろんと横になるしかない。

 なのにこの妹様はとかくくっつきたがる。

 俺の精神年齢は20歳以上のつもりなので10歳のレナ劣情など抱かない。

 ただただ体温が高くて地味に辛いんですよ。羨ましいと言った奴には変態(しんし)って呼んでやる。

 

「いやです、兄の匂いをくんくんしないと安心しません」

「それ変態……」

「兄の匂いを嗅ぐのは妹として当然の行為です」

「え?」

「え?」

 

 真顔で性癖的なにかを告げられた。匂いフェチですか。

 幼児化したり匂いフェチになったりキャラが忙しく変わる子だ。

 ギャルゲーの妹かなにかか?

 いろいろぶっ飛んできている。

 ミカサてんてー助けてください…………あ、駄目だ症状を悪化させる未来しか見えない。

 湖畔にboatが浮かんでいる映像だ。

 そんなのは最低主人公ベスト3に入ったあのお方だけで十分だ。

 

 

 

 その夜は巨人5、6匹残っていた巨人は全て倒すことができた。

 警戒はしたものの全て眠るように活動を停止していて簡単に切り捨てた。

 『夜目』さまさまだ。

 

 その後は少しときを経る。

 安全な場所を得られて食糧なども得られた。

 しかも馬まで発見することもできた。無論、飼い葉も豊富にある。

 『口減らし』の時期は明確には記されていないがおそらく雪がない以上春~秋の期間。シガンシナ区突破から1年後ということは春の可能性が高い。

 そこで来年の3月ごろ出発。

 馬とマップ機能を駆使し巨人から全力で回避だ。

 今更だがマップを使えば1km範囲ならある程度察知できる。

 それでも奴らのスピードは驚異的だ。

 壁に沿って行動し、危険なら壁上に即逃亡。

 ウォールマリア南東の山奥に行き、アニの父の手記を発見次第、ウォールローゼ近辺に突っ込む。

 場所は女型の巨人と死闘を繰り広げた巨大樹の森だ。

 詳細な場所はハンネスさんから聞いたことがある。

 変わった場所だからか観光地っぽい面もあるらしい。

 奇しくもこの場所もウォールマリア南東なのだ。

 

 ここなら立体機動を最大限使え、木の上にいれば安全だ。比較的トロスト区とも近いし、口減らしで出撃したらなにかしら声も聞こえるかもしれない。

 万単位の人間が行動するのだから。

 ハンモックや大道具をアイテムボックスの中身と相談しつつ持っていけば木の上に小屋も建てられるかもしれない。

 そうして着々と準備を進ませる。

 

 俺はレナにせがまれつつ拙い立体機動術を教えた。

 やたらと上達もそこそこ早い。

 乗馬の練習もしながら約半年間そこで過ごす。

 

 

 そして雪が解け始めた頃俺達は行動を開始する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以前書いたものを手直ししながら投稿していましたが、ストックがさすがに尽きました。
今後は投稿間隔があきやすくなります、すいません。

というか仕事がそろそろヤバイ……年末はいやだーーー(>_<)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。