VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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少々短いです(^_^;)

ある意味、幕間にしたいほど。


守りたいから

 風に舞う花びらさえ遅い。

 血の流れさえ把握できそうなほど感覚が鋭敏になっている。

 俺は周囲の状況を確認する。 

 

(俺は屋根の上。向かい側にはネス班長とシスさんも屋根の上で倒れている。けど巨人達にすぐ襲われる様子は無し。右側には3~5m級5体。正面10m級1体に7m級の1体、こちらを向いて手を伸ばし始めている。一番危険なのが左側、奇行種10m級1体に5m級2体)

 

 敵を睨みつける。

 誰も死なせたくない。だからお前達は――

 

「ここで……眠れッ!!」

 

 走りながら7m級に飛びかかる。

 相手の動きが鈍い。

 すぐ近くに居たので走った勢いで片方の目を切り刻む。

 

「――――――ッ!」

 

 声にならない悲鳴が聞こえる。

 だが止まらない。止めてやるほど情けをかける相手ではない。

 俺は正面の7m級は一度無視し、隣の10m級を狙う。

 少しずつだが巨人達も動いている。

 

 バシュゥン!

 

 狙うは本丸、うなじを直接切り取るべく相手の左肩へアンカーを付ける。

 

「駄目だ! 早く逃げるんだ!」

 

 ネスさんの声がした。後ろから急速に接近する赤点がある。

 さらに大きな影が太陽を遮る。

 空中で慣性に任せ回転すると、無視しようとした7m級――それと右手の小型の巨人の内2体が跳びかかってきた。

 生存本能は反応しない。

 脅威と判定しなかった。

 右のアンカーは10m級に繋がっている。

 

 俺は左のアンカーで7m級のうなじを突き刺す。

 強制的に左のアンカーを巻き取りを開始したが、ギャリギャリと不協和音を鳴らしながら右のワイヤーは巻き取りを中止し鉄線が伸びる。

 7mと10m級を繋ぐ一本とロープの主となった俺は7m級から先に狙うことにした

 

「まずはっっっ1体!!!」

 

 ザシュン!!

 

 変則的な十字の軌跡を描きながらブレードを振るい削ぎ落す。

 ジャンプしてきた小型の巨人は左右に1体ずつ。

 後部の噴出口からガスを大量に排出。

 ダブルスマッシュとばかりにそれぞれ右手と左手が俺の頭上を通り過ぎる。

 擬音を付けるなら「スカッ」という文字が最適だろう。

 相手の体が空中で泳ぐ。

 うなじが丸見えだった。

 

「そう簡単に捕まってたまるかッッッ!」

 

 竹とんぼ――体をTの字にしながら両手の剣を広げガスの噴出を利用して時計周りに回転する。

 鋭い独楽と化して巨人のうなじを何度も切り刻む。

 

 ザザザザザザシュン!!!

 

「「――!?」」

「2体……3体目!」

 

 回転した所為で右のワイヤーが腰に4、5回程巻きついた。

 俺は気にせず、一息に右のワイヤーを巻き取らせる。

 当然腰に巻きついたワイヤーの所為で俺は逆時計周りに体が廻り始める。

 芸者ならあーれーとでもいえば完璧だろう。

 だが俺は芸者でもなければ歌舞伎者でもない。

 

「でもお代だけは頂きますよ巨人さんよぉ!!」 

 

 ジャシュン!

 

 首裏から血が噴き出す巨人。

 次は一番の強敵、奇行種。

 俺の家族を傷つけたお前はただじゃ済ませねぇ!

 

「ゥシャァァァァ!」

「――くッッ! 動きが読みにくいッ!」

 

 蛇みたいな奇声を上げながらぶんぶんと両手を振りまわす。

 それでも顔は笑顔を浮かべて気味が悪い。

 腕の軌道が読みにくくやりづらい。

 だが近くには大切な人達がいる。

 ここで引くことは念頭にはない。

 

 体が少しずつ軋んでいく。

 ギシ……ギシ……と骨が悲鳴を上げる。

 今の俺は無茶苦茶な軌道で敵を攻撃しているのだ。

 長くは持たない。でもここでやめるわけにはいかない。

 そうすれば後に訪れるのは『死』という終幕だけ。

 最後までやりきらないと……。

 

(どうやれば……ッ!?)

 

 フラッシュバックする。

 俺が目標とする人の動きが思い起こされる。

 

 あの人の動きを思い出す。

 冷たくも誰よりも気高い男を。

 相手は最凶、女型の巨人。

 

 高速で敵の体を縦横無尽に這うように舞踊り切り刻む。

 ミカサですら早いと感嘆する刃の嵐。

 恐らく高速でアンカーの射出とワイヤーの巻き取りを繰り返し攻撃を繰り出しているのだろう。

 

 出来る――そう思った。

 

(俺は――相手を――削ぎ落とす!!)

 

 バシュンバシュンバシュンバシュンバシュン!

 ザザザザザンンンンン!

 

 舞う。

 俺は一陣の嵐となる。

 世界がさらにゆっくり時を刻み始めた。

 砂時計があるなら、砂が落ちきる3分間の時間があれば……何だって――できる!

 

「「「ゥゥゥゥゥ!?」」」

 

 3体――血まみれの巨人が体を傾け始める。

 背後に残りもう3体。

 振りむきざまにブレードを投げつける。

 相手の喉と目に突き刺さり何故かきょろきょろと周囲を見た。

 攻撃された事が理解していないようだった。

 

「これで終わり――――だぁぁぁァァァ!!!」

 

 ガスの残量など気にしない。

 脳を、腕を、足を、心臓を……全てが焼けつくほど体が熱い。

 歯を食いしばって飛びかかる。

 空中でブレードを装着し、そのままもう一度舞い踊った。

 巨人に死をもたらす空中の舞踏を。

 

 世界に音が戻ったとき周辺の巨人は全て大地に伏していた。

 

 だが――――

 

「ォォォォォォォォォォッッッッ!!」

 

 1体こちらに向かってくる敵がいる。

 

(もう、いち……ど……)

 

 身体の節々が痛い。

 鉛が頭の乗せられたようにバランスが取りにくい。

 からんと足もとで金属音がした

 何故か両手に持っていたブレードを取り落としていたようだ。

 視界が暗い……。

 

 ぐらぐらと風邪をひいてもいないのに足が覚束ない。

 体を支えられなくなり、どさりと倒れる。

 

(俺は…………)

 

 思考が纏まらない。

 這いながらも相手に向かう。

 

 俺はまだ……まだ……戦える。

 だから、だから、言うことを聞いてくれよ……。

 動け。

 動けよ。

 動いてくれよ俺の体…………。

 

 その時、俺の頭上を誰かが通り過ぎた。

 

「ぎゃァァァァ!!」

 

 血飛沫が舞い、断末魔が虚空に響きわたった。

 視界が急速に狭まる。

 最後に目にしたのは盾に重ねた翼――自由の、翼。

 声が聞こえる。

 威圧感を放つその人。

 とても頼りになる、安心できる誰かの声が。

 

「……餓鬼はおねんねの時間だ。これからは大人の時間…………ぐっすりママの夢でも見ていやがれ……」

 

 ぶらん手を下げ、悠然と剣を構えながら、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こいつ誰とか言いません。
あの人です。
この時期には加入済みとしました。

すでに846年です。
もう一度言います――846年なんですっ!
つまりあの人達もいる!
次回はあの人達もご登場します。
誰かを予想しながらお待ちください(*^_^*)

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