VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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タイトル通り。
今回はボロクソに言われるアオイ君の巻き。


リヴァイ先生のスパルタ講義

 調査兵団の周辺には10mクラスの巨大な樹木が生い茂っている。

 ただし森というより林が複数個所に点在している形だ。

 何故そんなところに本部を建てたかといえば、防衛面に置いて有利だからだ。

 万が一巨人が進行した際には立体機動装置が生かせる場所でなければならない。

 基本は防衛上の理由から――普段は立体機動の訓練に使用するため。

 

 そんな林の内、調査兵団が管理している林の内1つ――第三訓練場へとリヴァイ兵士長と共にやってきた。

 正面には数本の樹木が寄りそい合うように生えており、3つのグループを形成している。

 俺達の場所から約30m先に第一グループ。そのさらに20m先に第二、40先に第三グループだ。

 訓練方針をリヴァイ兵士長から教わる。

 

「……いいか、今回てめえがやる訓練は至ってシンプルだ。あの先にある3つに別れて生えている林が見えているな?」

「はい。10mクラスの立体機動をするには丁度いい林ですよね」

「それだけじゃ足りねえな。目ん玉かっぽじってよく見てみやがれ……木々にはそれぞれ2つのラインが縛りつけてある」

「……あ! 確かに――」

 

 良く見てみると赤いロープが全ての木に縛りつけてあった。

 ロープの位置は均等に配置されている。

 つまり12mの木なら、4mと8mの地点に。9mの木なら3mと6mの地点に赤ロープでぐるっと囲うように結びつけてあるという塩梅だ。

 

「正確には中央部分の長さを多めにとっているがな……。これを見て何か気づくことはねえか? よく考えろ、戦う為には力だけじゃなく頭も必要になるからな……」

「気づくこと……」

 

 調査兵団の主任務は壁外調査であり、そこには巨人との交戦も視野に入れているはず。

 そもそもリヴァイ兵士長が俺に訓練を教授してくれるのも、2週間後の巨人を殺すイベントに向けての練習の為だ。

 ぼんやりと全体を見渡す。

 絶対に理由があるはず。

 

 ならこの位置は……。

 

(何で3つ分ける必要が……上、中、下に分けると中の部分を広くとっているわけだし。巨人を想定してなら……あ、そういうことか!)

 

 映像――――俺はアニメであった映像を思い出す。巨人との交戦で一番狙うべき場所は相手の弱点である首の裏、つまりうなじ。

 だがもう1つよく狙う場所がある。

 特に平地での戦闘に置いては切り取る必要がある部分――足だ。

 

「頭部、胴体、脚部というか足の部分――ってことですか?」

「……そうだ。これは訓練兵団でも習うらしいが、あそこじゃあ、うなじの切り取り方しか習わねえらしいからな。……そして、てめえにやってもらうのは、ただ移動するだけだ(・・・・・・・・・)

「移動……立体機動でですよね」

「当然な事を聞くんじゃねえよ。ただし、縫うように前進し、上下にアンカーをぶっ刺せ」

「ええっと縫うように、上下に……」

「つまりこういうことだ」

 

 少しハテナマークが頭に浮かんでいた俺に説明するのが面倒になったのか、さらさらっと紙に図解する。

 

  ← 

  ○↑

  →

 ↑○

  ←

  ○↑

   

  俺

 

 矢印=進行方向

 ○=木

 

「ああっ! そういうことか!」

 

 判って見れば簡単なことだった。

 要はコーンに見立てればいいんだ。

 車の教習所であるような、コーンの右、左、右という風に、立体機動で左右にすり抜け、Uターンして戻ってこい、と。

 

「これくらい簡単に判れ莫迦野郎」

「すいません……」

「上下ってのはさらに1つ目の木はうなじ部分――つまり最上部にアンカーを突き刺して移動。2つ目の木は脚部――最下部にアンカー突き刺して移動し3つ目はまたうなじ部分って流れだ」

「単純ですけど、難しそうですね」

「慣れりゃ目を瞑ってたって出来る……多少難易度は上げているがな。これも似たような訓練が訓練兵団であるが、立体機動の科目じゃ訓練兵が一番間引かれるらしいな」

「間引く?」

「死ぬってことだ。勢いを突きすぎて止まれなくて硬い木に顔面からぐしゃり。首の骨がへし折れて再起不能になる奴もいる。10mの高所からまっさかさまに墜ちてトマトになる野郎もいる」

「…………」

 

 ぞくっと背筋が凍る。

 他人ごとじゃない。

 今は五体満足にいるわけだが失敗すれば簡単に死ぬのも立体機動。障害が残る可能性だってある。

 

 なにせアンカーを使わない状態では一時的にノーロープバンジー状態なるんだから。

 

 とはいえ――――

 

「望むところですよ。今までだって何度も死ぬ目に遭ってきたんですから。動く巨人じゃないだけで100倍楽ってもんだ!」

「まあ指摘するまでもねえか……まずは俺が手本を見せてやる。しっかり記憶に刻み込めよ」

 

 返事をするまでもなく、瞬時に雰囲気を変え、リヴァイ兵士長が飛び上がる。

 

「そういや他の人の立体機動ってみたことな、いぃーっ!?」

 

 ちょ、ちょっとまてもう3つ目に到達してるんだが!?

 パンパンパンと流れるようにアンカーを突き刺し流れるように空中で移動する。

 

(駄目だ……目で追うのが精いっぱいだ。全てを吹き飛ばす風――光とも言っていいくらい速すぎる……)

 

 もうこちらに戻ってこようとしている。10秒も経っていない。

 あえて言うなら、発射音だろうか……?

 それと高速でなめらかなに動く空中でも斜め移動。

 

 立体機動装置のアンカーの射出音――射出回数が少ない気がする。

 木を仮想巨人として考えての戦いなら体に纏わり付くような機動――これは見覚えがある。

 女型の巨人VSリヴァイ兵士長の一騎討ちで一陣の嵐のごとく巨人の肉を削ぎ落しまくった時の動きだ。

 

 斜めは――まだよく判らない。俺の立体機動はアンカーを基点とする動きだから直線的な動きが多い。

 

「これが……人類最強、か」

 

 ぶるりと体が震える。

 我流の俺の立体機動が児戯だといわんばかりの洗練された動き。理想とする頂点。

 リヴァイ兵士長が来たあとも俺は小刻みに揺れていた。

 

「……びびってるのか? これくらいやって貰わなねえと、何度だってやり直させるぞ」

「いや、いやそうじゃないんですよ……」

「あん?」

 

 そう違う。

 この感情は歓喜。

 

(このレベルに達すことが出来てこそ未来を変える資格を得る。……皆を助けるという俺の願いを! 五里霧中な状況だけど、強くなるなんて判りやすい目標ならいくらだって身を削ってやる!)

 

 元来ごちゃごちゃ考えるより我武者羅に動く方が性に合っている。

 

「いよーーーっしっ! アオイ・アルレルト頑張るぜっ!!!」

 

 パァン!

 

 両手で顔面を張り気合を注入。

 意気揚々と進もうとして、

 

「おい待て餓鬼……」

 

 何故か兵長が呼びとめる。

 あれなんかあったっけ?

 

「え、どうしたんですか?」

「気合入れるのはいいが――――馬に搭載したまんまの装置があるだろうが。てめえは装置無しで立体機動をする気か莫迦野郎がっ。そのスッカラカンの頭に詰まっているのはパンかノータリンっ!」

 

 スパン!

 

「あだ!」

「後、耳元で喚くんじゃねえぞ餓鬼が!」

 

 スパパァン!

 

「あだだだ! す、すいませんでした……」

「目の前の事に集中しすぎて足もとを疎かにし過ぎなんだてめえは。猪突猛進で自滅するタイプだな……1に準備、2に準備だ。壁外じゃあ、周りも見てないと……コロッとおっ死ぬからな!」

「は、はい」

 

 準備したつもりになってすっかり装着し忘れてた……。

 どうにも締まらないスタートだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腰に立体機動装置を装着して改めて開始。

 

「よし、始めろッ!!」

「いよっしゃぁ!」

 

 地面を荒々しく蹴りあげ走り始める。

 行き成りアンカーで突き刺さないのにはもちろん理由がある。

 少しでも加速しておけば、立体機動装置のワイヤーを巻き上げ進むとき体にかかるGを軽減できるからだ。ガスの消費も僅かに減らせる。

 

「ら――とッ!」

 

 そしてジャンプ。

 軽い浮遊感を堪能する間もなく、身体の正面を木の最上部へと向け両手に力を込めた。

 

 カキンッ――――パシュゥン!

 

 2つのアンカーは寸分違わず木の最上部に突き刺さる。

 巻き取り部のトリガーも瞬時に押しウインチが火花を散らしながら鉄のワイヤーを巻き取り始め俺の体は引き寄せられるように空中を突き進む。

 

(まずは右――)

 

 俺は体を中央からやや右に傾けた。時計なら2時の方向だ。

 後部ガス噴出口から軽く2、3回ガスを吹かせ、方向転換。

 直進すれば木を正面衝突するための措置だ。

 木の最上部とは言っても青々しく生い茂る葉っぱや枝には当たらないような位置にアンカーは突き刺しているので衝突することはない。

 無論、よそ見をすれば枝などに体がぶつかりラリアットを喰らったようなダメージを受けるハメになるだろうが。きっとスタン・ハンセンのウェスタンラリアートより気持ちよく逝けるだろう。

 

 第一のポイントを通過――――ワイヤーを引っ張りアンカーを外す。

 

 慣性に任せるまま空中を飛び上がり再度、後部の噴出で軌道修正を駆ける。

 腰にアンカーがある以上、変な方向に向くと狙いがおかしくなるからだ。

 最下部にアンカーを刺して急降下。

 リアル逆バンジーで内臓が浮き上がる例えようのない不快感が体を襲う。

 とはいえ死に物狂いで巨人と無茶な戦いを繰り広げてきたので、慣れたもの。

 宙でやや仰向けに近い体勢をとり、後部ガスを全力で吹かす。

 そのままの勢いでいくと地面にダイレクトキッスするため、落下をスピードを遅くするためにやる。

 

 第二ポイント通過――今度はアンカーを途中まで木に突き刺したまま進む。

 

 ぎゃりりっとワイヤーが不協和音を奏でる。

 俺は遠心力を最大限に利用しながらその勢いのまま第三のポイントへと一気に向かう。

 アンカーも最上部に差した状態。

 ただふと考えた。

 

(相手を巨人と思ったのなら、こんな軌道をとったらすぐ捕まってしまうんじゃないか……?)

 

 少なくとも知性のある巨人ならワイヤーか俺自身が捕まってぷち殺されるのがオチだ。

 それ以外なら口に運ばれイートエンド。

 

「――ッ! だったらこれだぁ!」

「……あいつ」

 

 俺は少し変化球を混ぜ込んでみることにした。

 

 パパァン!

 パシュゥ!

 

 後部の噴出で無理やり直進コースから変化させる。

 単純に相手が剛腕を振るって俺を直接捕まえてきたと仮定して、それを躱す動作をしたのだ。

 動きとしてはカクンと斜め下に動き、瞬時にまた元のコースに戻るだけ。

 一瞬でも頬の肉が風圧で押しのけられるくらいの速度で動いている中での変化――2、3m程は位置をずらせたと思う。

 

「あとは戻れば、オッケーだ!」

 

 同じような要領で俺はリヴァイ兵士長の下へと戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

「100点中10点だな」

「まじですか……?」

「おおまじだ」

 

 リヴァイ兵士長の採点は凄まじく辛かった。

 カレーなら世界有数の辛さを誇るデスソースを丸々一本投入したくらいだ。

 

 これでも会心の出来だと思ったのにー……。

 

 肩を落として採点理由を聞くことにした。

 採点するってことは修正すべき点があると暗に指摘しているはずだから。

 

「ち、ちなみにどこが駄目だったんですか……」

「全部だ」

「うえェ!? 全部!?」

「――――というのは冗談だが」

「真顔で言わないでくださいよ……」

 

 基本笑わないし、冗談も言わなそうなタイプに見えるから質が悪い。

 見抜けるのはエルヴィン団長とかじゃないと本気かどうか判別付かないだろう。

 

「……本来なら自分で気づけ莫迦野郎って言うところだが、生憎時間が2週間と短けぇ。修正箇所、悪い点、癖など全部言うから覚えておけ」

「はい……」

 

 なんか心がズタボロになる気配がしてならないが聞かないと上達できるわけがない。

 聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥……はこの場合は違うか。

 何時の間にか抜いていたブレードで肩をトントンと叩きながらリヴァイ講師による大罵倒大会――じゃなくてご指摘回が始まった。

 

「まずアンカーの突き刺す位置が悪い。最初にあの木は巨人を想定しているのは理解してだろうが。1から10まで説明されないと意味を理解できねえのか? これは糞巨人共の弱点であるうなじと動きを止める為に足の腱を削ぎ取る――――それを効率よく行う為には精確な位置に差さなきゃいけなねえんだ。あやふやに狙うといつかミスるぞ阿呆が!」

「空中での姿勢を変えるとき、アンカーを射出し過ぎだ。掴まれたら一巻の終わりだ阿呆。上昇は兎も角、落下するときは極力アンカーより後部のガス噴出口だけで姿勢制御を行え。てめえの動きは速いが直線的なんだよ。そのまままっすぐ巨人の口の中に放り込まれたいのかうすらぼけが」

「直線的じゃ駄目ならどうすればいいかって? 空中で体を捻れば進路を変えられるだろうが。木を避ける時はテメエもそうやって木を避けていただろう。あっそうかって顔すんじゃねえ、マジで気づいてなかったのか……綿より軽い頭をナマス切りにして馬の餌にするぞおい」

「それと空中で姿勢を変えるときガスの噴出をこまめに使い過ぎだ……。いいか、3回使うより、少量の1回で出しっぱなしのまま動けばガスの消費が抑えられる。ガスの消費量は進む場合――アンカー>後部ガス、だ。そして後部ガスは噴出するときどんなに軽く押しても一定量のガスが消費される……何度も押すと無駄になるのはそれが理由だ。判らねえなら重い物を動かす事で考えろ。動かす時が一番辛いはずだ……休み休みより、そのまま押し続けた方が負担が少ないのと同じで後部ガスによる進路移動も、こまめにやるより一気にやった方が結果的には消費軽減に繋がる」

 

 エトセトラエトセトラエトセトラエトセトラエトセトラ………………。

 

 

 

「おおう……」

「こんなところだな……まだ普通の兵士にすらなれねぇレベルだって事は自覚しておけ」

「ご指導……あ、ありがとう、ございました…………」

 

 ぶしゅ~と知恵熱が出そうだ……。

 あの後、1時間ぐらい延々とご指摘を受けまくった。

 時折織り交ぜられる罵倒も加わって……もう俺のライフゼロですよ、くすん……。

 

(想像以上に――俺って駄目駄目なんだなあ~~)

 

 最近調子に乗り過ぎてたのかもしれない。

 これでも850年時のミカサレベルにはいってるんじゃないかって内心思ってたんだが。

 我流でやってきた所為か悪癖がかなり多いらしい。

 頭が飽和状態だがリヴァイ兵士長の動きを思い出しつつどこから改善しようか考えているとリヴァイ兵士長がとことこと本部の方へと向かって歩き始めた。

 あれ……日はまだ高いけど、もう指導は終わりなのかな?

 

「リヴァイ兵士長?」

「……今日の俺からの指導は終了だ。後はてめえでどうにかしやがれ……訓練場の時間は取ってある。ガスも本部に行けば補充出来るから思う存分訓練しておけ。エルヴィンの野郎から兵士長の仕事を無理やり任されたからな、他の奴らの面倒も見なくちゃいけねえ。テメエの子守はこれ以上出来ねえんだよ」

「あ、そうなんですか……」

「1日に1回は顔を出す……じゃあな」

 

 背を向けたままひらひらと手を振る兵長。

 

 想像以上に俺が使えなかったから呆れなのだろうか……いやいや卑屈になるな俺。

 莫迦は莫迦らしく突っ走れっての。

 

(といっても今日の心理ダメージはかなりデカイけど……)

 

「…………」

 

 帰ったら宿屋の天使(クリスタ)に癒して貰おう……。

 

「……おい餓鬼」

「あ、はい」

「そういえば10点の理由を言ってなかったな」

「理由ってもう全部いったんじゃ――」

「全部駄目なら0点だろうが。唯一テメエの動きで良かったものがある」

 

 軽く振りかえったリヴァイ兵士長は言う。表情は良く見えなかった。

 

「3つ目のポイントに向かう時に見せた急角度の回避行動――――実戦経験者らしいキレのある動きだった。瞬時の回避能力はテメエの天性だろう。きちんと磨けば…………俺より出来る奴になる。……才能、あるぜ」

「え……?」

「辛気臭え顔してる暇あったら、テメエの才能を磨く時間に当てろ……じゃあな」

 

 今度こそ本部の方へと去っていった。

 

 あのリヴァイ兵士長が……いつも厳しそうなあの人が……褒め、た?

 

「ふ、ふ、ふ…………いよっっっっしゃぁぁぁぁ!!! ガンガン鍛えて強くなってやるぜぇェェェッ!!!」

 

 俺ってトコトン単純だなあと内心笑いつつ日が暮れる直前まで訓練を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

「どうだい、彼の出来は?」

「ふん……仕事はどうしたんだ」

「今は休憩中だ。トロスト区でのお祭りも大半の調整は既に完了しているからな。後は街の人達の頑張り次第だ」

 

 玄関のドアを開けたら待ち構えたようにエルヴィンの野郎が居やがる。

 団長の癖に暇なわけないだろうに。

 

 いつもの表情の読めない顔で話しかけてきやがる。

 

「……餓鬼、いやアオイの野郎に基礎はあんまいらねえな。体力強化や座学は訓練兵団で充分に出来るだろうしな……」

「リヴァイが名前を呼ぶなんて珍しいな」

「そこに喰いつくんじゃねえよ……。存外、出来る野郎だから少し認めてやっただけだ。直接は呼ばねえがな。お調子者のアイツは厳しいぐらいが丁度いいだろう」

「遠目じゃよく判らなかったがそこまでなのか?」

「アイツに指摘したのは全て応用編(・・・)だ。なまじセンスがある上に壁外で1年も死にモノ狂いで鍛えられた所為で、気持ち悪い動きしてんだよ。普通の奴らじゃその細かい差違は理解できないだろうが……」

「そこら辺は矯正しないのか?」

「マイナスになる部分は全て言った。気持ち悪りい動きだが…………巨人共を殺すには最適だ。アオイ自身は気付いていねえみたいだが、ガスを使わずに空中で体を芋虫みたくうねうねと捩じらせまくってやがる……巨人の目には新種の化け物でもみたように感じるだろうよ。捕まってもにょろにょろと手の隙間から逃げることもできるかもな。幻惑する動き……回避特化した立体機動だ。観察するとよくわかる、フェイントだらけだあれは。基礎やセオリーはガン無視、習ったらむしろ動きが悪くなる。つまり――処置なしだ」

 

 今まで速度重視で比較的捕獲されやすい直線的な立体機動で生き残れたのはひとえにあの幻惑、回避込みの力だろう。

 最初から才能があったのか、過酷な壁外で自然と身に付けていった動きなのかは判らねえが……効果はあったからこそ生きてこれたんだろう。

 非常識な野郎だ。

 

「私にはそう見えなかったが……リヴァイが言うのならそうなのだろうな。それで結局のところどうだ、2週間後は」

「今でも充分やれるがこの際だ。血反吐が出なくなるくらい鍛えて於いて損はねえ。充分戦力になりうるだろう」

「そう、か。なら、こちらも()の目的を果たす為に動くか」

「俺にも周囲の奴らにも教えずなにやってるか知らねえが、ちゃんと理由があるんだろうな?」

「もちろん。私は人類の勝利の為に戦っている」

「はっ! いままでやってきた事を思えばよくいうな。…………信頼、裏切るんじゃねえぞ」

「当然だ」

 

 俺と奴はそのまま真逆の方向へと足を向ける

 俺は他の部下たちの処へ。

 奴は本部の奥の方へと静かに消えていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の変態機動

1、空中で微調整とばかりにくねくね動き回る。
2、ワイヤーを腰に巻きつけ曲芸回転
3、逆さの姿勢で切ったり、ブレード投げまくり


アオイはもうサーカス団にでも入団すればいいんじゃないだろうか?

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