VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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今回は現状の確認といったところです。
話は次回から進みます。

各人の動き

リヴァイ兵士長――トロスト区郊外の調査兵団御用達の宿屋。食事を済ませお着替え中。
アオイ――トロスト区中央大通り北側『小鳥の大樹亭』。起きたばっかり。
エルヴィン団長――トロスト区郊外調査兵団臨時本部。極秘行動開始。
キッツ隊長――トロスト区中央区駐屯兵団支部。朝食を取りながら部下と今日の打ち合わせ中。
ナイル師団長――トロスト区北側憲兵団詰所。昨晩、英気を養おうとワインを飲みすぎて爆睡中。










トロスト区、1日の始まり

 紅蓮の色に染まった世界で特訓は最終段階へと達していた。

 世界最強の調査兵団リヴァイ兵士長の技術を――世界を救う為の力を――受け継ぐために!

 

 

「てめえの全てを(さら)け出してみろッッ!! 誰にも届かない未来(さき)に全身全霊を賭けていけぇぇぇ!!!」

「これが俺のぉぉぉぉっ――全・力・だぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」

 

 緩やかに流れる世界。

 千変万化の刃。

 長年の修行の果てに得た力。

 俺は眼前の目標を全て切り裂いて――――

 

 

 

 

 

 

 

 ドンドンッ!!

 

「うおぁぁぁ!? …………あれ?」

 

『さあ本日は待ちに待ったトロスト区の祭典!! 御来訪の皆さま方――もうしばしお待ちください!』

 

 外はがやがやと騒がしい。

 驚きのあまり、ベットの上で目が覚めた。

 

「…………そりゃ、そうだよなぁ。リヴァイ兵士長があんなに熱血とかあり得ないって」

 

 夢……熱血精神溢れるリヴァイ兵士長に立体機動の奥義を伝授して貰うというトンデモなぶっとびストーリー展開だった。

 ベットからよいしょっと降りて窓を開け放つ。

 差し込む朝日に少し目を細めながら青空を見上げる。雲1つない快晴日より。

 

 眼下に視線を落とすと、大通りにはいくつもの屋台が建ち並び、せっせと店主達が仕込みをしていた。

 遠くを眺めてみると訓練用の木像巨人が立たせてあるのが判る。

 トロスト区の各所に建てられてそれは市民用に立体機動のパフォーマンスを行う為のものだ。

 

 ドンドンッ!!

 

 

 開催は確定であると告げる炸裂弾の爆発音が鳴り響く。

 

「一瞬なんだと思ったけど、そうか……大砲の音か」

 

 ドオンッ! という発射音と共に僅かに宿が揺れた。

 トロスト区市民にも事前に説明はされているが、実は実弾を発射している。

 空に打ち上げるわけなんて勿体ないマネはしていない。

 巨人に向かってのガチ発射だ。

 

 どうして発射しているんだといえば、俺とリヴァイ兵士長の為だ。

 さすがに巨人の集団と正面切って戦闘を行うのは無謀……なので最初から有利な状況で戦いを開始するための仕込みが大砲の攻撃に繋がる。

 巨人はうなじを切り取らなければ永遠と再生し倒すことはできない。

 

 しかし大砲の弾に使われている、鉄の金属片が入ったら?

 常時高温である彼らでも行動を阻害されるのでは、という事で開発されたのが技術班が開発した新弾装、新型ぶどう弾だ。

 

 壁上固定砲には2つの弾種がある。

 一撃で巨人を屠れる威力のある榴弾と、散弾銃(ショットガン)のように弾を散らして行動を阻害させるぶどう弾の2つ。

 

 今日は試験運用も兼ねて、耐熱性と硬度を増した新型ぶどう弾を使っているそうだ。

 あれだ、きっと、この世界独特の金属、黒金竹とか使っているのかもしれない。

 できるだけ巨人の体内に喰い込み、特に間接部分に直撃したときに絶大な威力を発揮するとか。

 

 巨人の人体構造にも詳しいハンジさんが駐屯兵団に提案したらしい。

 本来なら他兵団同士の仲は悪いので無視されやすいのだが、キッツ隊長が一考の価値があると、資金提供を条件に技術班に要望書を出していたらしい。

 

 ごちゃごちゃ言ったけど、要は俺達にかなり有利な条件で戦えるということだ。

 ハンネスさんも新兵達に壁上固定砲の使用要領を教えるいい機会だと言っていた。

 射撃練習も兼ねてるとは……。

 

 新型ぶどう弾で巨人の動きを阻害――当然、立体機動装置を十全に使用する為に家屋や臨時で設置した柱も各所にある。

 小さな横溝で巨人を嵌めたりと、安心して戦える親切設計だ。

 巨人からすれば心折設計といったところか。

 

 俺はうーんと大きく背中を伸ばしてされ着替えようとしたところで、

 

 ピコンッ!

 

 メニュー画面が強制表示された。

 

「そういや最近メニュー画面を見てなかったなぁ。ついでにステータスも見ておこうかな」

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

『アオイ・アルレルト』

 性別・男 11歳

 所属兵団『見習い調査&駐屯兵』

 称号『黒金の双翼』

 

 

 LV21→23

 

 筋力 :97→103

 敏俊性:125→129

 器用さ:71→80

 頑強 :159→174

 体力 :113→130

 知性 :74(+36)→84

 

 運  :20(不運)

 残ポイント(上昇値4)=16P→24P

 

 【天賦】天才  :成長率特大アップ

 【才能】利発  :成長率中アップ&知性20%アップ

 【才能】激情の守護者:1対多数の圧倒的不利な状況で戦闘を行うと10%の確率で全能力中上昇。『誰かを守る為なら、自らの魂を穢し、野獣になっても構わない』。天賦スキル『リミッター解除』を習得するための必須スキルの1つ。4つの才が会得した時、人は人を超える存在となる。

 

 【体質】微再生 :常人より怪我&病気の治りが早い

 【体質】復活  :1日に一度だけ即死ダメージを喰らっても万全の状態で復活できる

 【回避】生存本能:致命傷になる攻撃を反射的に避ける

 【回避】縦横無尽:上下左右の移動速度10%UP

 【探知】夜目  :暗闇でもよく見える

 【探知】気配察知:30m内の気配を敏感に察知。マップ敵表示可能

 【才能】器具の才能:立体機動装置の扱いがうまくなる。また機械にも強くなる

 【叡智】逆転発想:閃き。知性30%アップ。ときおりとんでもないことを思いつく

 【攻撃】投刃  :ブレード系武器を投げつけるとき命中率上昇

 【生活】狩猟  :狩りが巧くなる。狩るとき隠蔽能力上昇

 

 

 【運命】希望の変革者:運命の女神は変革を認める。『絶望を希望に変えんとする者よ、遍く未来は定まらず』――スキル効果、ミッション報酬変化。決まり切った未来は訪れない、未来は誰にも分からない。通常以上の成果を得られる場合もあれば、報酬を達成しない方がいい結果を生む場合もある。しかし、時には避け得ぬ絶望すら希望へと捻じ曲げることもある能力。 

 【運命】鎖状の奇縁さじょうのきえん:『縁を手繰り、人は繋がっていく』。見知らぬ人と出会いやすくなる。

 【運命】滂沱の決意ぼうだのけつい:ハンネス生存確定以降、取得可能。『1人の男は悲しみ涙を流し決意する、それを見た子供も悲しませたくないと決意する』。効果無し。死の連鎖に捉えられた魂を救うほど、その効果は真価を発揮する。

 

 

 

 

 

 新スキル取得!

 

 【回避】自在機動:ワイヤーに頼らない立体機動の移動速度10%UP

 

 

 

 

【立体機動装置の性能】

 

 アンカーの射出速度【70】

 ワイヤーの巻き取り速度【70】

 空中で方向転換する為の後部ガス噴出量の調整【60】

 

 値:0~100 

 ※ガス消費量2割増

 

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

「ふーむ、思ったよりレベルが上がってないな。まあ巨人からの攻撃を回避してばっかだったし、回避スキルは当然といえば当然だったのかな。リヴァイ兵士長の特訓のお陰かも。さて……ミッションも出てるな……」

 

 ポンと空中のボタンを押してミッション内容を確認する。

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

 

【ミッション】――【VSリヴァイ!! 巨人の討伐数を競えっ!!】

 

・トロスト区の祭典『巨人狩り』で巨人を倒せ! 倒すほど報酬UP!

 

※報酬固定

 

 

【報酬一覧】

 

・1体撃破――――ナック・ティアスが『俊敏(移動速度上昇)』習得

 

 2体撃破――――トーマス・ワグナーが『生存本能(回避能力上昇)』習得

 

 3体撃破――――ミリウス・ゼルムスキーが『協調性(連携能力上昇)』習得

 

 4体撃破――――ダズが『忍耐力(頑強上昇)』習得

 

 5体撃破――――フランツ&ハンナが『絆(同スキル所持者がいると全能力微上昇)』習得

 

 6体撃破――――ミーナ・カロライナが『即応態勢(次の行動を迅速に取れる)』『俊敏(移動速度城署)』習得

 

 7体撃破――――104期訓練兵団希望者、50名増加

 

 8体撃破――――駐屯兵団の兵士練度が10%上昇

 

 9体撃破――――マルコ・ボットが『秀才(成長率中UP)』『支援(支援攻撃能力上昇)』習得

 

 10体撃破――――ミケ・ザカリアスが『闘志(危機的状況で筋力大上昇)』習得

 

 11体撃破――――調査兵団希望者30名増加

 

 12体撃破――――ハンジ・ゾエが『天性の閃き(知性40%上昇)』習得

 

 13体撃破――――リコ・ブレチェンスカが『奇襲(移動速度30%&筋力10%上昇)』習得

 

 14体撃破――――キッツ・ヴェールマンが『隊長指揮(部下の全能力が微上昇)』習得

 

 15体撃破――――エルヴィン・スミスが『天才(成長率極大上昇)習得』

 

 16体撃破――――リヴァイが『鬼神奮闘(巨人1体を撃破するごとに全能力5%ずつ上昇、24時間有効)』習得

 

 17体撃破――――アオイが『投刃乱舞(ブレード投げ連続攻撃可能)』習得

 

 18体撃破――――アオイが『リミッター限定解除(5分間のみ全能力極大上昇、1時間に1回)』習得

 

 19体撃破――――アオイが『超幸運(常に運の値が100となる)』習得

 

 20体撃破――――アオイが『リミッター解除(発動時全能力極大上昇)』習得

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

 なんというか……報酬が凄まじいな。

 つーか20体もやっこさんは来るんでしょうか……?

 

「むむむ~~報酬は素晴らしいけど、絶対後半のスキルなんて習得不可能に近いよな。リヴァイ兵士長が強すぎだし」

 

 ゲーム的に言えばあればほぼ不可能って判ってる報酬の類だ。

 きっと達成できるのは廃人様かTASのような御仁だろう。

 

 とりあえず今回の報酬は仲間が強化されるようだ。

 104期メンバーが固まっているので、手堅く狙っていけたらいきたい。

 特にさら~りと混ぜ込んであるのでスルーしそうになったがマルコの生存フラグがある。

 

 もしかしたら能力向上で未来の危機を回避できるようになるのだろうか?

 

「しっかし、それだったらトーマスとかミーナとかは関係ないのかな。彼らの生存フラグみたいのがあったら知りたいのだけど……?」

 

 うん……?

 

 隅っこに説明文があるぞ。なになに――

 

「『人によっては生存フラグ自体が存在しません。そういう人はとにかく鍛えないと死亡します』……? おい、それは……いや、現実ならそんなもんなのか?」

 

 なんという投げやり説明。とにかくってなんだよ、とにかくって。

 

「でも考えてみたら生存フラグ(・・・)ってのもおかしい言い方だよな」

 

 フラグっていってもちょっと間違えば死んでしまうのが現実ってもんだし。

 巨人との戦闘なら尚のこと。

 こういうのは気にし過ぎるといけない気もする。とはいえ――

 

「マルコだよなあ、問題は。関係ないって思っても、無視して死んだらそれこそ嫌過ぎるし……」

 

 マルコ・ボット……104期メンバーの一人で憲兵団を目指す少年だ。寛容かつ冷静で現実的な洞察力と判断力、効率的で総合能力に優れる。エレンからは指揮官に向いていると言われ、将来有望だった。

 同じ兵団希望者だからかジャンとも仲が良い。安全な内地行きで憲兵団の目指す人達の中では珍しく王に仕えることを純粋に目指していた。性格的にも取っ付き易く104期メンバーでも屈指の良い人だ。

 

 だが彼もトロスト区の戦いで戦死することとなる。

 しかも誰にも気づかれずに半身を喰われ死んでいた。

 恐らく助ける上では非常に困難な人かもしれない。

 どういう状況で死ぬのかが未知数な為に対策を建てるのが難しいのだ。

 どうしても助けたいのだが……。

 

「兎に角あれだ、9体は是が非でも倒したいな。フラグってのがどういう類のものかは判らないけど、出来ることはしないと」

「アオイさーんご飯ですよー!」

「あっ判ったー! 今行きまっす!」

 

 クリスタがドアを挟んで朝食が出来たことを伝えてきた。

 俺は着替えを済まして食堂へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミッションにトロスト区で起こるであろう騒動(敵さんが何やら企み中)が入ってないのは理由があります。
大した理由ではないですが……。

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