VRゲームで進撃の巨人~飛び立つ翼達~   作:蒼海空河

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エルヴィンさんの視点が意外と長くなりました(^_^;)


謙遜とパクリと

 目を輝かせながらやってきた少年達は少し離れた位置で立ち止まった。

 すぐ傍までやってくるかと思ったが。

 おそらく任務の最中だから邪魔しないようにとの配慮からだろうか。

 なかなか微笑ましい。

 少しだけ昔を思い出す。

 私にもあのような時代があったのだと。純粋な眼差しで空を翔ける自由の翼に憧れていたのだろう。

 

(ふ……昔とはな。まだ10年と少し前のことじゃないか。随分と老けこんだものだ)

 

 巨人との戦いで極限の精神状態になんどもこの身を置いていると、命が削られていると錯覚する。

 長く生きた老人の気分だ。

 団長ではないがそろそろ引退時期なのではと勘違いしてしまう時さえある。

 それでも人類のために――最善を尽くす覚悟で臨む。

 例えどんな犠牲を払ってでも、だ。

 子供達の熱い視線を受けつつ、俺は先ほどの話しを進める

 

「それでアルレルト宅に行きたいのですがどうでしょうか?」

「ああ……だがなぁ」

「お願いします。次回の壁外調査ではアルレルト氏の力が必要なのです」

「迷惑でなければご一考のほどよろしくお願い致します」

「お願いしまーっす!」

 

 私が深くお辞儀をすると、ミケとハンジも続いて頭を下げる。

 頭を下げるだけで承諾を得られれば安いもの。

 子供も見ている前だ、無碍にはできまい。

 相手は腕を組んで「ムム……」と悩んでいる。

 

(しかし顔を突き合わせるだけでそこまで悩むものか……? いや他の兵士はそこまで駄目という風では無さそうだ、先ほどと比べ警戒度は下がっている。そうなると、このベテラン兵士には他者と違う思惑が混じっているということか?

 だがアルレルト氏が地位の高い人物ではない事は既に調査済み。一般人なら自宅へ訪問することを遮る法はない)

 

 そこまで考えていたところ突如、別方向から声で思考を中断することとなった。

 

「アルレルトってお前じゃないかアルミンッ! なんかやったのか?」

「ぼ、僕がするわけないじゃないか。あ、でも兄さんならやりそうだけど……。でもたぶんお爺ちゃんに用事なんじゃないかな? 家には色々資料がたくさんあるし」

「おいエレン、アルミン、ちょっと黙っててくれっ!」

 

(使えるな……)

 

 後ろ手でサインを出す。

 パンッと私のマントを叩き、片方が了解の意を示した。

 

「ん~? 君達はアルレルトさんを知っているのかい?」

 

 ハンジが素早く少年達の元へと向かう。

 さすがと言いたいところだが、彼女は用事を手早く済まして巨人を見に行きたいのだろうな。

 だがさすが交渉毎においても彼女は心得ている。

 まるで風のように一瞬の隙をついて駐屯兵の合間を通り、少年達の元へつき話しかける。

 こうまですれば相手も迂闊に手は出せない。

 調査兵団に好意的なのも利用できる。

 子供とは時に領主すら手を焼かせる鬼札となるのだから。

 

「知ってるもなにもアルミンの家だからなっ!」

「エ、エレンッ、僕が説明するから……」

 

 どうやら気の弱そうな金髪の少年がアルレルト氏の関係者のようだ。

 

「なら話は早いね! ちょっとだけ君のご両親にお話しがあるんだ。な~に、ちょっとした恩があってね、お礼を伝えたいかったんだけどお家が判らなくてさー。よかったら案内してくれないかい?」

 

 無論、お礼は言うが本来の目的はそこではない。

 だが嘘をついているわけではないので間違ってもいない。

 全てを話していないだけだ。

 

「ああ、いいぜ!」

「なんでエレンが返事するかなー……」

「だって調査兵団だぜ! きっと壁外の話とかするんだろうなー。いいなーアルミン」

「でもお爺ちゃんに用だなんて、なんかあったのかな……もしかしてお父さんとお母さんについてかな……」

「んー? 君のご両親は――」

「少し前の壁外調査で……」

「あ……済まないね、それは」

「いえ……でもお父さんとお母さんの話では無いんですか?」

「御免ね……。お爺ちゃんといったね。その人に用事があるんだ」

 

 機転を利かしてハンジが無難に答える。

 しまったな……膨大な数の戦死者リストには目を通したが、それより数の少ない行方不明者までは時間の関係で目を通していなかった。

 だが逆に利用できるな。

 彼らもアルミン少年の話が出たことで暗い表情で意気消沈している。

 誰だって人の死については軽口を挟めまい。

 事ここに至れば駐屯兵達に止める術はない。

 もう気にする必要はもうないな。

 

「任務の最中お邪魔して申し訳ありませんでした。私達はこれで――」

「……くそっ、変なことすんじゃねぇぞ」

「もちろん承知いたしております。市民の皆様を守ることも兵士の任務の1つですから」

 

 相手からすればいけしゃあしゃあと、とでもなるのかもしれんな。

 私は軽く頭を下げ2人の少年に顔を向ける。

 

「では済まないが案内していただけるか?」

「ああっこっちだぜ!」

「エレン待ってよ~」

 

 無邪気な少年達を前に私はハンジとミケを傍に寄せる。

 

「どうした?」

「交渉の手札となる情報が欲しい。これから長い付き合いになるかもしれない人物だからな。済まないが2人は一度宿をとった後、アルレルト氏の情報を集めてくれ」

「わかった」

「あいよ」

「調査兵団は市民の風辺りが強い。私服に着替えてやるように」

「「了解」」

 

 これでいい。

 今日は顔見せと家の位置さえ把握できれば上出来だ。

 後は如何様にもできる。

 

 私から離れていった兵士2人を少年達は「彼らには任務があるから」との一言で納得してくれたようだ。

 そしてアルレルト宅へと着く。

 

「お爺ちゃーん! お客さんだよー!」

「なんじゃ、アルミン。帰りが早いのぅ~、してそちらはどなた様かな?」

 

 安楽椅子に座って外を眺めていたのは落ちついた学者然としている御老人だった。

 なるほど、本人の雰囲気もそうだが、部屋の壁にはぱっと見、私の身長を超える大きな本棚にはびっしりと隙間なく蔵書が収められている。

 街の知識人として彼は慕われているのかもしれない。

 軽く頭を下げながら、

 

「突然の訪問申し訳ありません。私は調査兵団所属エルヴィン・スミス分隊長であります」

「ほうほう。しかし調査兵団の方がこの老いぼれに一体何の御用で?」

「貴方が私達に当てた手紙について――といえば判るでしょうか」

「手紙……? はてそんなもの送った記憶は無いのですが……」 

 

 記憶に無い……?

 とぼけているのか?

 探ってみるか。

 

「そんなことはないでしょう。商人に越しに渡してきたでしょう」

「……いやボケてつもりはないが、そんな物したためた記憶も送った覚えもないのじゃが」

「そんなことは――」

 

 あえて駐屯兵ではなく商人と間違って言ったのだが表情、声音に変化なし。

 どうにも話しに食い違っている印象を受けるが……情報不足だな。

 もう少し集めてみよう。

 老人は(おもむ)に空を見上げたあと、席を勧めてきた。

 

「おっと、儂とした事が御客人を立たせたままとは失礼じゃったな。どうぞ座りなされ。アルミン、お茶を用意してあげなさい」

「あ、う、うん!」

「エレンもアルミンと一緒に行くと良い。今アオイが変わった料理を作っておる。食べていくと良いじゃろう」

「ありがとうお爺さん! にしてもアイツどこ行ったのかと思った家にいたのかよー」

「スミスさんもどうだね。もう夕方じゃし兵士は食べられる時に食べた方が良いと思うのじゃが」

「……では御相伴に預かります。しかし御老人は――」

 

 アオイとは御老人のことではないのか?

 疑問に思った私は再度老人にそのことを尋ねようとした処、3人の子供達がキッチンからやってきた。

 

「エレンつまみ食いするなよー」

「いっやうめぇなこれ!」

「聞いてねー」

「そういう兄さんこそ作りながら食べてたよね?」

「俺が採って俺が作ったんだぞ。俺にはこの料理を先に食べる権利を有している」

「だからってバクバク食べ過ぎ。そもそも今日はどこに行ってたのさ」

「いつもの山奥の川にいったら熊がいたから素敵ダンスしながら一緒に魚とり競争して、相手がズルかましてこっちの魚をぶん捕ろうとしたから延髄蹴りでノックアウトさせた」

「僕はどこから指摘すればいいのか分からないよ…………」

「うははははっっ! そう褒めないでくれ」

「褒めてないッ」

「何故だ!? 最近、ミカサに鍛えられたおかげで熊と対峙しても勝利できるようになったんだぞ! 肝心の本人には惨敗するけどなっ」

「なんかミカサが恐い女の子になっていくよ……」

「そうか? アイツはいつも通り、俺の後をくっ付いてくるだけじゃないか」

「幼ミカサがアヒルの子供みたいにくっ付いてくる、だと!? いや羨ましくない、羨ましくなんてないからな。ちくせう」

「……私はアヒルじゃない……」

「ぎゃーっまた出てきたーっ!」

「うわびっくりしたよミカサ! ……もしかして僕達の後ろにいたの?」

「別に。普通に一緒にいただけ」

「なんだミカサいたのか。お爺さんが飯くれるっていうから一緒に食べないか?」

「うんわかった。お母さんには言ってあるから……」

「お、さんきゅ」

「エレンはなんで普通に対応してんだよ……これが主人公様の力だとでもいうのか……ッ!?」

 

 ワイワイと子供らしいやり取りでこちらへとやってくる。

 会話から推測するに大皿を持った黒髪の少年がアオイという名前のようだ。

 

(しかし子供だったとは。身長は140~150程度か? 訓練兵団もまだ入団できない年齢じゃないか。この場で少々図って見るか……)

 

 少年がこちらを向いたとき、

 

「ッ!」

 

 一瞬、目を見開き硬直する。

 どうも当たり、のようだ。

 ミケの疑っていた通りなにかしら思惑があるのかもしれないな……。

 

 

 

 

 

 食事が始まり変わった料理を目の前にした。

 『川魚の山香炙り焼き』と命名されたそれは綺麗に骨を削ぎスライスされた魚に香草などを練り込み、炙り焼きという手法で表面は軽く焦げ目が、中はレア状態といった具合に調理されている。川魚といえば芯まで火を通さなくてはいけないのだが、高温で一気に表面を焼き上げたとか。

 タンパクな川魚ながら香草が良い味を引き出し、ソースに付けるとまた違う味を楽しめる。

 何故こんな調理法を知っているかは不明だが、これもこの少年の秘密に関わるのかもしれない。

 エレンという少年から調査兵団の質問をされ、アルミンという少年から外の景色などを尋ねられ、ミカサという少女はエレン少年に付きっきりだった。

 しかし肝心のアオイ少年だけは黙して語らず静かに料理を食している。

 だが私にはわかる。これは彼なりの意思表示。

 おそらく今は話さないと言外に語っているのだろう。

 ならそれに付き合うのが一番無難。

 私は食事が終わり席を立つとき少年を視線を送る。

 

「……ミカサとエレンは帰るんだよな?」

「ええ」

「ああ、今日は料理ありがとなっ。あとぶんたいちょーもまたお話聞かせてくれよっ!」

「モチロンいいとも」

 

 2人が先に家のドアから外に。

 

「では私も」

「アルミン、食器片付けて貰っていいか? 俺はちょっとスミスさん送っていくよ。シガンシナは入り組んでるしな」

「ああ、うんわかった兄さん」

「それじゃあ――」

 

 1、2時間経っただろうか。

 日は落ちかけ薄闇に包まれている。

 灯りがそこかしこに灯される中、大人と少年は肩を並べて歩く。

 つまり――――絶好の機会というわけだ。

 

「よろしいかね?」

「ああ、はい」

 

 落ちついた受け答え。

 この少年は思った以上に精神面で成熟しているようだ。

 

「例の手紙の主は君でいいのか?」

「そうです」

「『長距離策敵陣形』――――私も似たようなものを考えていてね……君の手紙は正に完成型と言ってもいい。どうやって考え付いたんだい?」

「ただの落書きみたいなものです。適当に閃いたものを書き殴っただけの……。その一部でも調査兵団の役に立ってくれればと思ったんです」

「謙遜も過ぎれば嫌味になる。君は誇っていいんだ。あれは間違いなく次の壁外調査で真価を発揮するだろう」

「机上の空論って言葉もあるじゃないですか。どんな事態になるか判らない……」

「いや私が保障しよう。あの陣形は調査兵団にとって画期的なものとなるとね」

「だけど対する巨人はその全てを理解しているわけじゃない。結果出し証明するまでは……」

「……」

「……」

 

 カラスの鳴き声も止んだ時間。

 街は支配するのは歓楽街から届く喧騒と各家々から聞こえる団欒(だんらん)

 まだ寝るには早いこの街で男2人は静かに歩みを進める。

 

(先の子供らしい騒ぎをするかと思えば、存外、悲観的な物の見方、考えをする少年だな。しかしそれでこそあの陣形を作り得たと言える。あれは最悪の最悪を考え、ただひたすら臆病になって練らなければ作れない代物。悲観とは現実的、実利的とも共通する必要な才能(・・)だ。これは予想以上に逸材かもしれないな……)

 

「ところで君は調査兵団に興味はあるかい」

 

 頭の良い少年だ。

 ここは1つ腹の探り合いより正面きっての方がいいかもしれん。

 私はそう考え攻めたところ意外な返答が返ってきた。

 

「元々調査兵団にいくつもりだったので」

「ッ! そうか。しかし知っているか、調査兵団は――」

「5年で9割――死亡率のことでしたら知っています。知り合いに駐屯兵団の方もいらっしゃいますし」

「知っていて尚進むと? 平和な日常を捨て危険極まりない巨人の支配する世界へ足を向けると」

「壁の中が平和と誰が決めたんでしょうか? 籠の中の鳥はいつまでも翼を使わなくいいのか。籠が壊れ飛び立たなくては生きていけなくなったとき鳥はどうなるんでしょうね……」

「いつか壁が突破されると?」

「昔、シガンシナ区の門が突破されたこともあるでしょう。どんな要因にせよ巨人が存在する限り人類は戦う力を持ち続けなくてはいずれ死にます。だからこそ調査兵団なんです。積極的に目を向けなければ真実はなにも見えない。知るためには外に出て巨人達に立ち向かわなければいけない、そう思います」

 

 完璧だな……。

 彼は現状をほぼ100%見抜き把握している。

 人類がこのまま壁という籠の中で安寧に過ごすという選択肢の先には滅亡の2文字しかないことを理解しているのだ。

 キース団長――どうやら英傑たらんとする逸材は居たようです。

 彼の頭脳、そして最近王都で騒がしている『義族』――この2つを手に入れれば人類は更に突き進むことができるに違いない。

 なればこそ、彼には一度来てもらわなくては。

 多くの資料が集まる調査兵団に触れ、彼の更なる成長を促した方がいい。

 

「……どうだろうアオイ君。調査兵団を希望するというなら一度来てみないか? 元々私は君とこの『長距離策敵陣形』を煮詰めるためにきたのだ。その頭脳、人類の為に役立てては貰えないだろうか」

 

 その言葉に対する少年の答えは首を縦に振るという動作で行われた――

 

 

 

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 エルヴィンだんちょーーーーーーーー!!!

 

 おちつけ俺。

 モチツケ……餅つくんだ。

 

 違う。

 

 超VIPPERな御仁がやってきた!

 金髪の七三分け気味の髪型のあの人。

 

 エルヴィン・スミス――――調査兵団代13代団長。その冷静ながら状況に応じて作戦を代える柔軟な思考の持ち主。彼が考案した長距離策敵陣形を始め様々な策を考案し実行してきた。時には多くの犠牲を払う覚悟で戦いに臨む姿に賛否両論だが決して現状に満足せず外へと向かう姿は多くの人々を救う事さえでるはずだ。

 

 そんなエレンに匹敵する超重要人物が何故やってきた。

 いやすいませんたぶん手紙だよね。

 

 でもここまで行動力がある人だとは――――いやかなり行動的だった気がする。

 すんませんエルヴィン団長!

 貴方が考案するはずだった長距離策敵陣形パクっちまいましたーーー!

 

 なんかチラチラ食事しながらこっち見てらっしゃいますし。

 絶対見逃さないぞってメンチ切ってるっす。

 結局俺は自分の作った料理に楽しく舌鼓をうつことができず、内心汗だらだらで静かに料理を食べるハメになった。

 誰の所為? 俺の所為だな……ぐすん。

 

「例の手紙の主は君でいいのか?」

「そうです」

「『長距離策敵陣形』――――私も似たようなものを考えていてね……君の手紙は正に完成型と言ってもいい。どうやって考え付いたんだい?」

「ただの落書きみたいなものです。適当に閃いたもの書き殴っただけの……。その一部でも調査兵団の役に立ってくれればと思ったんです」

 

 だから偽物なんです。

 きっと貴方が考案すればもっと完全無欠の代物が出来上がるはずなんですよ。

 

「謙遜も過ぎれば嫌味になる。君は誇っていいんだ。あれは間違いなく次の壁外調査で真価を発揮するだろう」

 

 人の考えたものをマルパクリ……謙遜じゃなくて恐縮してるんだい。

 

「机上の空論って言葉もあるじゃないですか。どんな事態になるか判らない……」

「いや私が保障しよう。あの陣形は調査兵団にとって画期的なものとなるとね」

「だけど対する巨人はその全てを理解しているわけじゃない。結果出し証明するまでは……」

 

 やめてーやめてーもう褒めないでー俺のHPゼロっすよ団長。

 じくじく罪悪感っていう名のブレードが俺の良心を削ぎ落して行くよー(泣)

 

「……」

「……」

 

 ち、沈黙が辛い。

 心が千切れそう。

 

「ところで君は調査兵団に興味はあるかい」

 

 ほっ、話しが変わったモチロン興味バリバリですぜ旦那。

 でも緊張で頭がゆであがってきた……。

 常にこちらを値踏みするような視線を向けてくるし、緊張の糸がぷっつんと切れそうだ。

 

「元々調査兵団にいくつもりだったので」

「ッ! そうか。しかし知っているかい調査兵団は――」

「5年で9割――死亡率のことでしたら知っています。知り合いに駐屯兵団の方もいらっしゃいますし」

「知っていて尚進むと? 平和な日常を捨て危険極まりない巨人の支配する世界へ足を向けると」

「壁の中が平和と誰が決めたんでしょうか? 籠の中の鳥はいつまでも翼を使わなくいいのか。籠が壊れ飛び立たなくては生きていけなくなったとき鳥はどうなるんでしょうね……」

「いつか壁が突破されると?」

「昔、シガンシナ区が突破されたこともあるでしょう。どんな要因にせよ巨人が存在する限り人類は戦う力を持ち続けなくてはいずれ死にます。だからこそ調査兵団なんです。積極的に目を向けなければ真実はなにも見えない。知るためには外に出て巨人達に立ち向かわなければいけない、そう思います」

 

 えっと……なんていったっけ?

 

「……どうだろうアオイ君。調査兵団を希望するというなら一度来てみないか? 元々私は君とこの『長距離策敵陣形』を煮詰めるためにきたのだ。その頭脳、人類の為に役立てては貰えないだろうか」

 

 なんかイエスorノー的な会話。

 長ったらしいセリフで良く聞こえんかった。

 周囲が微妙い地味に煩いんだよ。

 家庭の団欒とみせかけて夫婦げんかしてるリア充どもの巣がそこかしこにあるから!

 判らないときはイエスだ日本人。

 そして俺は2週間ほど調査兵団の御厄介になることとなった。

 

 なして…………?

 

 

 

 

 

 ――2週間後――

 

「やっと休めた……マジで死ぬっす……」

 

 俺は現在トロスト区の宿屋で一休み中だ。

 

 あのあと何故か俺がしばらく調査兵団で御厄介になるという話しが進み、エレンに羨ましがられたり、アルミンに子供の心配をする母親のような対応をされたり、しばらくエレンと気兼ねなく過ごせるからずっとあっちに行っていいよというミカサさんの100%交じりけない笑顔をいただき(あれ……目から汗が流れてきたぞ……)

 2週間――エルヴィン団長に兵の指揮の仕方や過去の記録をどっさり教えられ、その上で『長距離策敵陣形』の話をみっちりすることとなった。

 男と二人っきりで。

 うん……なんて色気の無い空間なんでしょうか。

 ミケやハンジさんと知り合えたのはいい。

 ミケさんに匂いを嗅がれ馬鹿にしたような顔を向けられ、ハンジさんには不用意に振った巨人話で一晩マッハ語りされ原作エレンと同じく寝不足になったり。

 体格が小さい人用の立体機動装置を付けさせて貰い使い方を教えて貰ったのはよかった。

 『器具の才能』のお陰か2週間でメキメキ上達し、一応飛ぶこと事態はできるようになった。

 これでもジェットコースターは得意なんだ。

 フリーフォールは苦手だけどなっ!

 何度も吐いたけどな!

 

 キース団長にも出会いました。

 髪がふさふさだった。

 たまに気づいていない人がいるけど、104期の教官になるあのパゲならぬハゲとこのキース団長は同一人物。

 頭皮の草原は一体どこに消えてしまったのかは巨人の生態と同レベルで謎だ。

 あと初対面でハゲってこぼしてしまいぶん殴られました。すんません……。

 「儂はまだハゲてないッ! まだ大丈夫だッ!!」って必死に弁解していた姿に涙がホロリ。

 

 余談だがこの時点でリヴァイ班のメンツはまだ調査兵団に来ていない。

 確か846年頃だったはず。つまり今頃どこかの訓練兵団で今日も汗水流して訓練中というわけです……。

 ペトラやオルオさんと出会えないとはガッデム!!

 

 

 そんなこんなで過ごした2週間最後エルヴィン分隊長から、

 

「未来のホープ君の入団を心待ちにしている。次の壁外調査では我らの実力を見せよう!」

 

 と明るい笑顔で言ってくれた。

 そうだ――来年なんだよな……。

 シガンシナ区壊滅は。

 

 俺は勤めて表情には出さないようにしながら少しだけ落ち込んだままトロスト区で一泊することとなった。

 着いたのはまだ昼間。

 俺は送るためについてきた調査兵のアレクさんとクレアさん(原作関係無しの方々ですがイケメン&美女さん……そして恋人同士orz)に少し街を周りたいとお願いして現在散策中だったりする。

 

 リコさんやヒッチに会えないかなーとそして俺は出会う。あの人に。

 

 

 

「助けてくれてありがとね!」

「ああうん変なオチが付いてたけどな……」

「そんなことないッ! とってもカッコよかった」

「マジで!? いやーははははは! それならよかったよかった」

 

 ちょろい言うなし。

 可愛い三つ編みの美少女に褒められて喜ばない男は男じゃない!

 

「ところで名前はなんていうの?」

「俺はアオイ・アルレルトって言うんだ。出身はシガンシナ区。ちょっとした用事で今日はトロスト区に来てたんだ」

「私はミーナ・カロライナよろしくっ!」

 

 ビシッと元気よく右手をあげてエセ敬礼をした少女。

 原作キャラの1人ミーナ・カロライナだった。

 どうでもいいけど、俺ってミカサ以外の女性って微妙にメインじゃないサブな方々とばっかり合ってるようなーと思う今日この頃だった。

 

 

 

 

 




へたなことすればそりゃ呼ばれますよアオイさん(笑)

ミーナはトロスト区出身です。
リヴァイ班の4人は850年の時点で揃って19歳位らしいです。844年なら13歳……ペトラ13歳、JCです。オルオさん19歳って顔じゃない(笑)
多分、巨大樹の森でエルヴィン団長が秘密裏に作戦を伝えていたメンツが5年以上昔から団にいた先輩方――リヴァイ班は誰も知らされてない=入団歴5年未満という考えからだと思います。

後1、2話挟んだら850年原作開始となります。

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