お嬢様は猫を育てることにしました   作:SINSOU

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お嬢様、名付ける

「いや・・・やめて・・・!止めてください!」

 

目の前にいる彼女の手が私の方へと向けられる。私の身体を押さえ、口元を歪める彼女と、顔を赤らめる私の姿が鏡に映る。

 

「何を恥ずかしがっている。そうは言っても、おまえの体は正直じゃぁないか」

 

「ち、違い・・・ます。これは、わ、私の意思じゃ・・・!」

 

私は必死で嫌々と顔を振るう。その姿が鏡越しから見え、私の心を辱める。離れようともがくも、あの人の手はまるで岩のように硬く、私の自由を奪う。急に身体を押さえる力が無くなり、あの人が私から離れた。その顔をまるでおもちゃに飽きたかのような、つまらなそうな表情。

 

「ならやめるか?私はやめてもいいのだぞ?」

 

彼女は手に持っているそれを私に見せつける。

 

「あ・・・」

 

私は、自分が零した言葉に戸惑った。あれ?私は今、何を言ってしまったの?違う、今のは私の意志じゃない。そう思っているのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ん?なぜそんな顔をするの?やめてと言ったのはアナタよ、小猫ちゃん(キティ)?」

 

そう言って、彼女はそれを仕舞おうと化粧棚へと向かおうとする。私の目は、彼女の手に収まっている『それ』を追ってしまう。 

 

()()()

 

そう思ってしまった。その瞬間、まるで決壊したダムのように、その言葉が溢れだす。

 

欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!!

 

駄目、駄目です!私は必死に心を落ちつけようにも、一度壊れたダムに蓋をすることは出来ない。一度その快感を知ってしまった私は、それを堪らなく欲してしまう。

 

「待っ・・・て・・・」

 

私から漏れた言葉はとても小さかった。それでも、目の前のあの人は足を止め、こちらをくるりと振り返った、口元を歪めて。

 

「どうするんだ?」

 

それは確認の言葉。私の意志で決めろという言葉。足元は崖だと言うのに、谷底に見えるのは光を放つ誘惑。私は自分で決めた。

 

「・・・け・・・さい・・・」

 

「なんだ?何か言った?」

 

あの人が私の方へと歩いてくる。カーペット越しの足音が響き、私の息が荒くなる。そして私の目の前に立ち、彼女は私の顔を見つめる。

 

「・・・けてください・・・」

 

「聞こえないわよ?」

 

彼女は私の耳元へ顔を動かし、そっと囁くように尋ねた。

 

「アナタはドウシテ欲しいの?」

 

そっと温かい風に抱かれたような気がして、私は

 

「続けてください!止めないでください!お願いします!私にそれをください!」

 

その言葉を出してしまった。私の言葉に、ゆっくりと口元を歪め、細い三日月のような形に笑う。

 

「そうか、正直者にはご褒美をやらないとな」

 

その人の手に持つそれが私に向かって近づき、そして私に触れ、そっとなでる様に動いた。

 

 

「んきゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「あらあら、そんなに喜んでくれるなんて。ならもっとやってあげるわね」

 

それが動く度に、私はビクンビクン

と身体を振るわせる。気持ちよさを体が覚えてしまっている。いえ、()()()()()()()()

もう、この快楽に逆らえない。

 

 

「いい加減にしてください!!」

 

 

そんな中、急に割って入るように声が聞こえた。声の方を向けば、息を荒げているメイドさんが立っている。その顔はまるで茹蛸のように真っ赤で、湯気が見えてしまいそう。

 

「毎回毎回聞かされる私の身にもなってください!いくら気持ちいいからと、誤解されるような会話は止めてください!」

 

「?」

 

そんなメイドさんの声をどこ吹く風のように、むしろ何を言っているんだ?と言いたげに首を傾げる女性。

 

「何も問題はないだろう?」

 

同意を求める様に私に顔を向ける。私は首をコクコクと縦に動かす。なにせ、

 

「髪を梳かしているくらいで何を慌てているのだ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

髪を櫛で梳かされる。撫でられるような柔らかさを感じながらも、頭を刺激される気持ちよさ。櫛が動く度に、私の身体は小刻みに震える。力が入らず、彼女に身体を預けることしか出来ない。だらしなく蕩けた自分の顔を鏡で見ながら、私はこの人に屈服するのであった。

 

 

 

 

 

「ショッギョォムジョォ、ヤッイヤァイヤ」と鼻歌を奏でながら私の髪を梳いているのは、この屋敷のお嬢様。私たちの目の前で、顔を手で覆いながら身体を震わせているのは、このお嬢様の専属メイド。この光景は毎回の光景(いつも通りの日常)です。髪を梳かし終えたのか、お嬢様はにっこり笑顔で頭を撫でる。掌から伝わる温かい心地よさに、私は自然と目を細めてしまう。落ち着いたのか、メイドさんはゆっくりと手を顔から離した。ただし涙目になっている。

 

「今日はこれで良いな」

 

そう言いながら、お嬢様はピンクのリボンとフリフリが付いたスカートと同じようにリボンが付いた服を持って来る。着たくないとブンブンと顔を横に振るも、お嬢様は聞く耳を持たない。結果、私は恥ずかしさで顔を真っ赤にする。丁寧に、長い髪をまとめる為にリボンまで付けられた。

 

「では行くとしよう」

 

お嬢様は瞳を細め、私に笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

「おはようございますお嬢様」

 

「ええ、おはよう」

 

「おはようございます」

 

カツンカツンと、硬い音が響く長い廊下を歩いてると、何人ものメイドや執事とすれ違う。その度に、目の前のお嬢様は笑顔で挨拶をしていく。その姿は、さっきまでの傍若無人ではなく、本当のお嬢様に見える。

一方で、すれ違う度に彼らの視線を受ける私は、びくりと身体を震わせる。その度に後ろのメイドさんがポンと肩を手を置き、大丈夫ですよと声をかけてくれる。歩いている間、私は周りに目を配る。床と同じように真っ白な壁と、そこに飾られている絵画の数々。私に芸術の良さは分からない。でもなんとなく見いってしまう。けれど、()()()()()()()()()、なぜかどの絵からも異質なモノを感じてしまう。赤い髪の女性を描いた絵を見ると、まるで私自身が絵に見られているような感覚に陥って・・・。

 

「駄目ですよ、魅入られてしまいます」

 

メイドさんが注意してくれた。

 

そして歩いている内に、目の前に大きな扉が現れた。扉には猫のような動物が描かれており、二つの取っ手からして両開きなのでしょう。コンコンと、お嬢様が扉をノックする。

 

「入りますわ、お父様お母様」

 

取っ手に手をかけ、お嬢様は勢いよく扉を開けた。バァアァーン!と音がするように開かれた扉。そしてそこから目に入ったのは、紅い絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリアの灯りに照らされた部屋。中央には輝くように磨かれた机があり、その周りに席が置かれている。お嬢様に沿うように、一歩部屋へと踏み入れる。その瞬間、何かに刺されたような感覚に陥る。身体を見回しても、何も刺さっていないのに、身体が痛みを感じている。

 

「お兄様、お姉様。少し度が過ぎますよ?」

 

その一言が聞こえた途端、身体の痛みがなくなった。そのまま中央に進んで行くと椅子に座っている四人の姿が見える。お髭を生やした恰幅の良い男の人、その右側には眼鏡をかけた少年。左側には口元を笑みに歪めた女性と、ニコニコと笑う細目の少女。彼らを前にして目の前のお嬢様が、スカートの端を掴み、スッと腰を少し落とす。

 

「おはようございます。お父様お母様。お兄様にお姉様もお変わりなく」

 

互いに挨拶を交わすと、目の前の女性と目があった。口元に手を当てると、何かを呟いている。

 

「では始めるとするけど、準備はいいかね?」

 

「構いませんわお父様」

 

男性が声を上げる。それは低い音なのに響く様な声色。私は言葉に意味に首を捻った。一体何を始めるのでしょうか?

 

「あら、その子に伝えてなかったの?」

 

女性が口を挟む。

 

「そういえば、すっかり忘れていましたわ」

 

悪びれ去る様子もなく、お嬢様はくるりと私に向くと、私の視線にまで腰を落とす。

 

「今日は貴女のとって大切な日なの。私は手を出せないけど、貴女なら大丈夫」

 

ごめんなさい、意味がわかりません。ちゃんと説明してもらわないと私には何が何だかさっぱりです。そんな私を放置して、お嬢様は「終わりましたわ」と非情の言葉。待ってください、まだ理解が追いついてないんですけど。

 

「ではこれより、我が娘の新しい家族を認めるための試験を行う」

 

そんな私を余所に、そんな言葉が告げられるのであった。

 

 

 

 

 

白い部屋の中、一人孤独に呼吸していた。ただ死なないために息を吸っていた。優しかった姉様がいなくなり、残ったものは姉様の罪。主殺しという大罪を背負わされた私は、何も知らされずに世界から拒絶された。誰も彼もが私を睨み、憎み、罵倒を、嘲笑した。

そんな世界に生きる意味を喪い、独りで消えようとした時に、この人は現れた。まるで突如吹き荒れた嵐のように、私を部屋から連れ去っていった。

いきなり目の前に現れたこの人に、私は恐怖していた。また私は憎まれるのか?また私は傷つけられるのか?ならばどうして私を連れ出した!どうして死なせてくれなかった!嫌だ!もう嫌だ!もう傷つけられたくない、痛いのは嫌だ、恐いのも嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、世界なんて大っ嫌いだ!

そんな私を、この人は撫でてくれた。「お前はいい目をしているな」そんな言葉と一緒に。その顔は、憐れみも、嘲りもなく、ただ真っ直ぐに私を見ていた。しきりに撫でた後、彼女は一言「ご飯にしようか」なんて言っていたっけ。

 

気づけばどれくらい経ったのだろう。この人に連れ去られ、一緒にご飯を食べ、一緒に眠るようになったのは。

 

「私は何かを抱かないと寝れないの。だから一緒に寝てほしい」

 

なんて言われた時、最初は疑心が強くて断った。なんて馬鹿なことを言ってくるんだろう、そんな思いで。でも、ずっと過ごしている内に、いつの間にか私はこの人に抱きつかれて寝むるようになった。この人の温かい体温と、伝わってくる心の音が、いつの間にか私にとって安らぎとなっていた。今では何も言われずに一緒に眠ることが当たり前になっている。メイドさんにしても、いつの間にか愚痴を聞かされるようになった。「お嬢様はもっと回りを見るべき」「私を労ってほしい」等々枚挙に厭わない。当初は同じように恐い人なのかも?と疑ってはいけれど、普段の振り回されている姿を見ていると、それも気のせいだと思うようになった。

 

私は一体どうなってしまったんだろう?私には姉様しかいなかったのに、その姉様の顔がいつの間にかぼやけてしまっている。優しかったはずの姉様なのに、今では何をしてくれたのかも曖昧。

 

そんなことよりも、私はこの人たちと一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。この人たちだけが、私を、私を・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ小猫ちゃん(キティ)、貴女に新しい名前を与えるわ」

 

「名前、ですか?」

 

「ええ、いつまでも小猫ちゃん呼ばわりは貴女に失礼だ。()()()()()()()()()()()()

 

お嬢様はそう言うと、ドジャァ~ン!と音を奏でる様に、小さなチョーカーを取りだす。

 

「本当なら駒を使うのが当たり前なんだが、私は()()が嫌いでね。こうした駒を細工した物を与えている。もちろん、転生ではないから種族は変わらん」

 

お嬢様は手にしたチョーカーを私に身に着けた。カチャリと音が聞こえると、私は何かに包まれるような感覚に陥った。

 

「お前の名前はヴァイス、ヴァイス・フラウロスに決まりだ。ふふん、私ながら実に良い名前だ」

 

腕を組み、頻りにうんうんと頷くお嬢様。私は頻りに自分の名前を繰り返し呟く。その度に、私は新しく変わっていくような気持ちになる。もう、昔の私ではなくなっていく。

 

「では私も名乗るとしよう。私の名はファレグ、ファレグ・フラウロス!フラウロス家の次女にして貴女の主。そしてお前の年上の姉だ」

 

そう言って、ファレグお嬢様は私に手を差し伸べ、にこりと笑う。

 

「ではまずは、食事にしようか」

 

「はい!」

 

私はその手を握りしめた。もう二度と、置いていかれない様に。




アンケートありがとうございます。
はぇ~、皆さんカオスが好きなんですねぇ~。

こりゃ魔改造をしろという思し召しなのですね。常識に囚われてはいけないのですね(緑の巫女思考)

猫の教育方針について

  • 物理最強(原作風)
  • わぁい!狩りごっこだね!(メイド)
  • 素材の持ち味を生かす(猫魈)
  • お嬢様等の悪影響(カオス)
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