ジゼル異世界出張日記~ハドラー子育て日記番外編~   作:ディア

1 / 3
今回は一話きりとなっていますが近いうちに次話を投稿したいと思います。


第1話

大魔王バーンが倒れ、新たに魔界を統べたのは雷竜ボリクスの孫であるジゼルと元魔王のハドラー。ジゼルとハドラーはそれぞれ魔竜王と魔王を名乗る──ハドラーは改めて名乗る──ようになって数年。魔竜王として暮らしているジゼルだが、ある不満点があった。

 

「ハドラー様成分が足りないいぃぃぃっ!」

 

だだっ子のように暴れ、転げ回るジゼル。彼女の不満は魔竜王となってから多忙極まる生活を送っており魔王であるハドラーとのコミュニケーションがここ数日なくなっていたからである。ラーゼルやフレイザードそしてハドラー親衛騎団等ハドラーと関わりが深い息子達とはよく会うのだが、ハドラー本人とは中々会えずにいた。その為不満が爆発し、現在のように転げ回ってストレスを発散していた。昔に比べればまだマシな方である。

 

「リリルーラ解除しなくても良いじゃない……バカ」

魔竜王となってからハドラーにリリルーラの登録を解除され、ジゼルは不満を抱いていた。ハドラーが解除した理由はジゼルがしょっちゅうハドラーの元に訪れてしまい、ハドラーの仕事に影響を与えてしまうからである。自業自得ともいう。

 

「はぁ~、やらないと駄目よね……」

散々暴れ回り、頭を冷やし気が済んだジゼルが書類を捌く為に机の上を見ると何故か日記帳がそこに置かれていた。

「えっ、この日記帳は……!!」

ジゼルはその日記帳を凝視、隠し、忍び足の三テンポで自らの部屋に持っていく。いくら本職でもここまで要領良く運ぶことなど出来ない動きだった。

「ふひひひ……まさかこんなものを手にするなんて思いもしなかったわ」

不気味な笑い声を上げ、その日記帳を眺める。それだけでもジゼルは何とも言えない幸福感に満たされてしまう。

「ハドラー■■■日記……この潰れた文字には愛妻家と入るに違いない。ハドラーの文字は間違いなくハドラー様が書かれたもの。ハドラー様の事だから禁呪法を使って読めないように呪いをかけているはず。念のためシャナクしておかないと酷い目に遭う……シャナク」

シャナクで呪い──ありもしないが──を解き、さらに笑みを増すジゼル。そしてその本を開いた。

 

「ハドラー様、この不肖の妻ジゼルが読ませて頂きます!」

そしてその瞬間、ジゼルの視界は光に包まれた。自称ハドラーの愛する妻、他称魔竜王はこうして異世界へと旅立った。

 

 

 

「……ここは?」

ジゼルは、頭にクエスチョンマークを浮かべながら天井を見つめ、辺りを見渡すとジゼルが先ほど手にしていた日記が逆戻りしたかのように新品になっていた。

「気がついたか」

その声はジゼルが何度も聞いた声であり、そして他のことをいくら忘れようともこの声だけは忘れようがない声である。

「ハドラー様……!」

その声の持ち主はジゼルの夫であり、魔王ハドラーその人であった。

 

「俺を知っているのか? 女よ」

「知っているも何も……!?」

ハドラーが他人を見るようにジゼルに声をかけると、ジゼルは違和感に気づく。妻であるジゼルをハドラーは突き放したりはしない上に、ジゼルの知るハドラー特有の匂いが感じられなかった。

「ハドラー様であってハドラー様でない。一体どういうこと?」

「おい、何をぶつぶつ言っている?」

あまりの違和感にジゼルがそう呟くとハドラーが眉を顰めながら声をかける。

 

「失礼しました。私の名前はジゼル。魔界に住む竜です」

「なら貴様は冥竜王ヴェルザーの差し金か?」

「冥竜王ヴェルザーなる竜は大昔に死んでいます」

「なんだと?」

「現在魔界は大魔王バーンが死に、冥竜王ヴェルザーも死に、代わりに魔界を統べる魔族の王と竜の女王が夫婦となり統一されました」

「つまり、お前はその魔王と竜の女王の支配下にある竜なのか?」

「いいえ違います」

「ではお前は竜の女王の勢力争いに負けた竜なのか?」

「いいえ違います。私こそ魔界を支配している竜の女王そのもの。その夫はハドラー様なのです」

「なんだと!?」

どや顔のジゼルの言葉に驚きを隠せないハドラー。こちらのハドラーは魔王になるどころか死んでおり、現在は甦って竜の子供を育てている。そのハドラーが魔界を制し魔王として君臨しており、自分が知らない女を妻にしていて明らかに矛盾している。

 

「もっとも私の知るハドラー様は身体の中にある私のマヒャドで凍りついた黒の核晶を埋め込んでいる為に私の匂いがこびりついています。考えられる可能性としては一つ」

「お前がいたか、いないかの違いだろう?」

「間違いなくそうでしょう。大魔王バーンの部下だった頃、親衛隊隊長として私が配属され、何度も顔を合わせています。しかし貴方のその様子を見る限り私との面識はないことから大魔王軍結成時代に既に私が死んでいたか、あるいは元々いなかったかのどちらかになります」

「ところが何らかの原因で、お前から見たパラレルワールドの俺がいる世界に迷いこんだ」

「ええ。しかしここは魔界でもなければ地上でもなさそうですが、いったいここはどこなのでしょうか?」

「ここはコーセルテル。竜術士と竜の里だ」

ジゼルは聞いたこともない土地の名前を聞かされ、本当に異世界に来てしまったのだと実感し、頭を抱えてしまった。




感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。