Ideal・Struggle~可能性を信じて~   作:アルバハソロ出来ないマン

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初IS戦闘です。IS原作から戦闘描写真似ようかと思って1巻を手に取ったら一夏くんが武器抜いたと思ったら27分後に飛んでたんですけどどういうことですかね。


頑張って想像力に身を任せて書いてたら1万字超えたのでいったん区切って投稿させてもらいます。ゆるして


後書きにオリISのスペックを載せておきました。重量は速度が乗ってれば地面に大穴開けるくらい重いっぽいんですけど明記されてなかったのであきらめました。とにかく滅茶苦茶重いってことにしておいてください。

めっちゃ長くなったから読むときはお腹いっぱいになるかもしれません。私は書いてるうちに何度かお腹いっぱいになりました。

追記:速度書き忘れてたので書き足しておきました。福音の速度が2450km/h(原作では450km/hで超音速を超えたと誤字されている)で、それに追いつかれてやられていた代表候補生たちを参考に算出したそれっぽい速度にしてます。


第10話

箒と一夏が仲直りを果たし、3人で食事を共にするようになってから1週間が経った月曜日。

 

セシリア嬢との模擬戦が行われるこの日の為に一夏と箒の両名からは徹底的にISに関する動きを教え込まれた。実際に動かせていないので分からないが、入学前に起動させた時の感覚を思い出しながらイメージを重ねることで多少なりとも動きは理解できるようになった気がする。一夏は先にセシリア嬢との戦闘を済ませており、今は着替え中の為この場にいない。模擬戦の一切を俺はネタバレを避けるために敢えて見ていなかったが、一夏が駆る専用機の白式は武装が近接ブレード一本という非常に舐め腐った物でセシリア嬢と渡り合っていたらしい。箒から聞かされた際には俺に届くISもそうなのかと思うと不安でいっぱいになった。盾を希望していたから盾しか積まなかったけどいいよな等と言われたらどんな顔をするか分かったものじゃない。

 

「――――」

 

「......」

 

「――――ええい、鬱陶しいぞ万掌!少しはじっとできんのか!」

 

第3アリーナの待機室に設置されているベンチに座ったまま、まだ来ないISを今か今かと待ちながらソワソワとし続けていると、最初は何も言ってこなかった箒だったが流石に20分以上動かれると気になるらしく、注意をしてくる。

 

「仕方がないだろ、セシリア嬢を待たせるのはマナー違反だ。時間だけが過ぎていく事が落ち着かないんだ」

 

「万掌はやけにあのオルコットとやらに甘いが――惚れてるのか?」

 

「違う。淑女を待たせるのは悪い事だから、だ」

 

「私たちはよく待たせるのにか?」

 

「気心知れた仲ならアレだが、セシリア嬢はイギリスの国家代表候補生だ。国籍のない専用機持ちとしては仲良くしておきたい思惑がある」

 

「卒業後はイギリスに行く気か?」

 

「その可能性も0じゃないって話さ。それにこれから色んな国の奴らが接触してくるだろう。千冬さんから聞かされたが、俺を欲しがる国は多いらしい」

 

箒と昔のような口調で会話をしつつ、セシリア嬢を特別視するのかと早速睨まれるが仲良くしておいて損はないだろうと返すと、卒業後の話が出てきた。行くとも限らないが行かないとも限らないと言いつつ、これからはもっと多くの国の間者が声を掛けてくるだろうと返すと箒はあからさまに疲れた顔をつくり頭を抱えた。

 

「あの喧しさには未だに慣れんが、今後お前の周りでは多国籍化されたあの喧噪が出来上がるのか。今から頭が痛くなってきたぞ万掌」

 

「――俺そんなハーレム系のキャラに見えるか?」

 

「IS学園でたった一人の男だろう、もはやハーレム以外の何物でもない」

 

「全員レズの可能性もある」

 

「そこまでバカだったか貴様......バカだったな」

 

「小学校時代と比較するんじゃない。今の俺は多少はまともになってるだろ」

 

「変わってないさ。人を信じ続けるところが、ちっとも変ってない」

 

箒は俺が将来、世界各国のIS操縦者たちを侍らせてチヤホヤされる空間を作ると予想しているらしく、今から頭痛の種が増えると懸念しているようだ。IS搭乗者として親しくしたいと思ってはいるが個人間で仲を深めるのは別問題だと考えていた俺は思い切ってあまり聞きたくない質問をすると、箒は考えなくても納得できる返答をしてきた。そのまま認めるのも俺が節操無しだと思われそうなので有り得ないだろうが可能性としては0じゃない理論を提唱すると箒はジト目で俺を見てから少し考えた様に顎を引き、開き直った様に軽快に罵った。おそらく小学生時代を振り返ってのものだろう、今の俺は違うと答えれば人を信じる所が全然変わっていないと言われて、そうかなと思いながらも唸ってしまう。

 

「こんなやり取りをするのが懐かしい。今の私は、とても恵まれている......一夏は変わってしまったが、私たち3人の関係は変わっていない。――ああ、これを忘れたくはないな......」

 

「忘れないさ。お前は思い出しただけだ」

 

「お前は少しは恥じらいと言うものがないのか......?聞いているこっちが恥ずかしくなる」

 

「人前で散々泣いた奴が言う事じゃないだろー」

 

「それを蒸し返すか!?」

 

箒は胸に手を当てて目を伏せ、感慨に耽りながらそんなことを言い出す。俺は箒が何時の間にか忘れてしまっていただけだと言ってやれば、箒は本当に恥ずかしいのだろう、耳を少し赤らめて訊ね返してくる。人前で泣いた奴が恥ずかしいとかいってもなー、とお道化て笑いながら、箒は今度こそ顔まで赤くして此方に身体を向けながら小さく叫んだ。

 

ああ、本当に懐かしい。昔はこんなやり取りをよくしたものだ。またこうして、こんなことが言い合える日が来るなんて夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

二人で小学生時代にまで戻ったやり取りを懐かしがっていると、スライドドアが開き、一夏が戻ってきた。

 

「くー......あとちょっとだったんだけどなぁ。セシリアはやっぱり強かったよ」

 

「一夏!どうだった、怪我はないか」

 

「うん、大丈夫だよ箒。それより、バンショーのISは?」

 

「まだ届いてない」

 

「あちゃー......セシリアのこと、待たせちゃうかもね」

 

一夏はやりきった表情をしていながらも悔しさを滲ませており、一夏なりに全力でやってきたのだと理解できた。箒は一夏が戻ってきた途端駆け寄り怪我の具合を聞いている。一夏は無事を告げつつ俺の専用機の確認を取ってくるが、首を横に振りながら簡潔に伝えると苦笑を浮かべた。セシリア嬢を待たせることはないように何時でもラファールに乗れるように調整はしてあるが、出来る事ならこの一戦から専用機に乗っておきたいものだ。専用機と言うものは最初から操縦者に合わせて用意された物ではなく、操縦者が乗り続けることで専用機になっていく機体の事を指す。その仕様上、届いたばかりの専用機とは名ばかりの出荷状態であり、操縦者の特性の一切を知らない。その為、乗り続けることで操縦者を理解してもらう必要があるのだ。だからこそ、この一戦は専用機で出たかった。だが、時間的にもう厳しいだろう。

 

残念ではあるがラファールで望もうと思い待機室を出ようとしたところ、山田先生とドアを挟んで鉢合わせた。

 

「あ、堺くん!届きましたよ、専用機!」

 

「来ました?」

 

「はい!此方に搬送されましたので、急いで来てください!」

 

山田先生の言葉に耳を疑いオウム返しをしてしまったが、力強く相槌を打たれ聞き間違いでは無かったことを改め山田先生の案内に従い進んでいく。

 

「来たか。搬入口を開ける。少し下がっていろ」

 

辿り着いたピット搬入口の前に立っていた千冬さんは俺たちの到着を確かめると足元を指差して区切られているテープの外側に待機するように忠告し、俺たちが離れたことを確認してから搬入口の防壁扉を開けるスイッチを押した。黄色の警告灯が回転し、搬入口が解放されるサイレンが数度鳴り響く。非常に重いのか、ゆったりと上下に開いていく扉を眺めていると上下と斜めに開く2枚の扉が開かれ、中が次第に外の世界に晒されていく。完全に開かれた扉の奥に鎮座する専用機を、作業用ライトが点灯し光を与えた事で、細部がはっきりと見えるようになった。

 

そこには、白が居た。

 

「白式みたいに――真っ白」

 

「ああ、だが......これは」

 

「―――全身装甲(フルスキン)......」

 

一夏は、白式に似た配色に感嘆の息を漏らし、箒は自分の知っているISと比べ、その異質さに息を呑み、俺は自分が乗ることになったこの機体を見て驚いた。何せこのIS、本来なら存在するはずの肩付近に浮く大型スラスターが存在していない。更に手足を覆うような装甲ではなく、全身を包み込むタイプの異質なデザインで、どちらかと言われればISではなくロボットであった。

 

「時間が惜しい。堺、最適化は戦闘中にやれ。初期化は終わっているらしい」

 

「分かりました」

 

千冬さんに急かされ、制服を脱いで下に着ていたISスーツを露出させる。ISスーツとは、ISを装着する際に着用するユニフォームで操縦者とISの情報伝達を最適化する機能が備わっているものの事を指す。女性物のデザインしかなかった為、俺のこれも制服同様に特注品である。女性は旧式の学校指定水着に似たデザインだったが男であれを着るのは正直キモ過ぎたので、胸の辺りまでを覆う長袖タイプの上着と踝までを覆うタイツのような下着を頼んで作り上げてもらったのだ。適当に脱ぎ捨てた制服は例の如く一夏が回収し折り畳んでいた。さすがにこの状況ではしっかり片付けろなどと言えないのか、心配そうな表情で俺を見てくる。

 

「触れれば、装着されるんでしたよね」

 

「はい。それが堺くんの専用機『想角(ソウカク)』です」

 

「ユニコーンで」

 

「は、はい?」

 

「想角はちょっとダサいです。ユニコーンがいい」

 

「――――名前は後にしろ、堺。今は一秒でも早く装着してくれ」

 

ISの目の前に立ち、改めて外観を見れば、騎士の鎧を思わせる重厚な白色の厚みに、金属の光沢が鈍く光を放ってその質量感を物言わずともひしひしと伝えてくる。やはり特徴的なのは、この頭部に付いている巨大なブレードアンテナだろう。これ一つあるだけでこのISの全体のフォルムが引き締まってみえた。フルフェイス型の頭部の正面はバイザー型の、細い糸のような目と口元を覆う無機質なマスクが主張する騎士の兜のような安心感があった。懸念していたスラスターの代わりは何かと思ってISの背後を見れば、心許なさそうな小さいバックパックが一つ付いているだけだった。これで本当に大気圏を超える性能があるのかと訝しみながらも機体に触れようと伸ばした所で山田先生からこのISの名前が伝えられ、ユニコーンの方がかっこいいからユニコーンに改名したいと言ったら千冬さんが頭を抑えて催促をしてきたので一先ず諦めて、想角に手を触れた。その瞬間、想角の前面装甲が開き、フルフェイスの顔面は左右に割れ、俺を迎え入れる体勢を取った。

 

「分かっているとは思うが、ISに全て委ねる気持ちで、座るような感じでいい」

 

千冬さんの言葉に従いながら、背中を向けて搭乗を補助する為の取手を掴み懸垂で身体を持ち上げて身体を想角の中へと押し込む。細部まで身体が収まったことを確認すると、想角はゆっくりと展開していた装甲を元の形へ戻していき、俺が完全に収納され――――視界がクリアになっていくのを感じ取った。前方を見ているだけなのに、背後までよく見える。それと同時に違和感を感じていた四肢の感触が馴染み、完全に一体化したような錯覚を受ける。いや、実際に馴染んだのだろう。今の一瞬で想角が俺の四肢に合わせたのだ。広がる視界の中で、OSが立ち上がっていくのが分かる。網膜に直接表示される各種モニターされている数値は一切の違和感がなく元々そこにあったのだと思う程に自然だった。

一夏と箒が色々と理論立てて説明してくれたISの事前知識などまるで全て意味がなかったかのように馴染んでくる。いつもと同じように身体を動かせば、寸分のラグすら起こさず、完全に思い通りの動きをしてくれる。これで最適化が終わっていないというのだから、驚くばかりだ。

 

「ハイパーセンサーは問題なく作動しているようだな。よし、行ってこい。ああ、そのまま歩くなよ。最悪床が抜ける」

 

「――はい」

 

千冬さんに言われていなければそのままピットの床を踏み抜いていたかもしれず、少し焦りながら身体を浮かせる。頼りなく思えたこのバックパック状のスラスターは予想以上の出力を噴出しているようで、思わず高度が上がりすぎたことに慌ててスラスターの出力比をアイトラッカーで表示させた設定の項目からマニュアルで調整し直す。自分の身体に馴染む数値に調整し終えた所で機体を浮かせたまま前方へ移動すると、まるで無重力空間を移動しているかのようにスムーズな移動を行う事が出来る。心配そうに見つめる幼馴染二人にサムズアップをして横を通り過ぎ、カタパルトレールへ移動した。視界の端に映る表面装甲最適化完了率は25%を超えており、今こうして待機している間にも膨大な量の計算を処理し続けている。俺がスタンバイOKの合図を送ると、天井に吊り下げられた3基の信号灯が一斉に3カウントを取り始める。腰をやや落とし、前屈姿勢を取りながら武装一覧を表示させ、最初に目に付いたシールドを左腕にマウントし、次にビーム・マグナムを呼び出して右手に装備する。

 

3、ISスタンバイOK、予想進路に障害物なし。カタパルトレール内に退避遅延者確認できず。

 

2、ゲート解放完了、誘導灯点灯開始。カタパルトレール内隔離完了。

 

1、最終確認開始......システムオールグリーン、発進シークエンスの最終項目の譲渡を確認。

 

信号灯が、待機を告げる赤から、青へと切り替わった。

 

「――堺万掌、IS『想角』 出る!」

 

背部のスラスターから全力で噴き上げた噴射炎がカタパルトレール内に暴風を巻き起こして追い風となり、一気に加速した俺は外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

「セシリア嬢、待たせてしまい申し訳ない」

 

「お気になさらず。搬入が遅れた旨は既に耳にしておりましたので。それにしても――随分と物々しい恰好ですわね」

 

「騎士のような装いで俺も驚いたよ」

 

アリーナの直径は200m。既に待ち構えていたセシリア嬢の眼前120mほどの位置で機体をゆっくりと停止させ、謝罪から入る。セシリア嬢は俺が遅れていた原因を聞いていたのか、特に気にしてないと言った上でこの全身装甲の見た目を興味津々といった様子で観察している。

 

「しかし、防御力はありそうですわね。安心しました。これで――」

 

セシリア嬢が話している最中に、網膜に投影されたディスプレイにアラートが鳴り響く。セシリア嬢の持っている武装、六七口径特殊レーザーライフル《スターライトmkⅢ》にマーカー識別式《WEAPON》がロックを掛けた。

 

「――存分に――」

 

警戒、敵性IS操縦者の左目が射撃モードへ移行。

 

警告、セーフティロック解除。

 

警告、敵性IS、射撃体勢へ移行。

 

警告、トリガー確認。警告、初弾エネルギー装填確認。

 

発射まで0.4秒。回避を推奨―――

 

試合開始を告げるブザーが鳴り響いた。

 

「――戦えそうですわ!」

 

警告を知らせるウィンドウが立て続けに表示され、それらすべてを一目見て閉じて視界をクリアにした後、ISに二度と表示するな、邪魔で見えないと伝える。せっかくマーカーがあるのだからソレを使って安全、注意、危険の三段階に色分けするだけだと教えると、即座に反映される。早速それを活用してか、激しくマーカーの大きさが切り替わり主張をしてくるので意識を向ければ、砲口が白く光りスターライトmkⅢが初弾を吐き出していた。それに対し想角が自動的に左腕を胸の前に寄せマウントしたシールドを突き出す事で初撃を防ごうとする。レーザーがシールドに触れる瞬間、シールドごと貫かんと迫っていたレーザーの光は視えない球状の何かに当たったようで円を描いて分散し、逸れていく。散光と化したレーザーは俺を通り過ぎていき、見当違いな位置に次々と着弾した。

 

「――なっ......エ、エネルギー拡散力場?......Iフィールド!?何なんですの、これは!」

 

セシリア嬢は初弾を未知の方法で防がれたことで困惑し、ISが解明した情報を読み上げ困惑の色を強めた。

 

「複合新技術搭載型試験機、第3.8世代IS『想角』......次世代IS運用総合統括研究所が俺の為に用意した実験機―――らしい」

 

想角から送られてくる情報をそのまま読み上げると、セシリア嬢の息を呑む音が聞こえた。

 

「3.8世代.....!?そのシールドといい、油断しない方が良さそうですわね......文字通りの新技術の塊、退屈せずに済みそうです!」

 

セシリア嬢は恐れるどころか、笑みを深めて此方を獰猛に睨み返した後、脚部に装備された4基の小型自律兵器を射出する。マーカー《WEAPON》グリーンを示していたそれらが、一斉にレッドに変わったことで警戒を強めた。小型自律兵器《ブルー・ティアーズ》。ビットとでも呼ぶべきそれを四方に散らし、セシリア嬢のスターライトmkⅢの計5基が、マーカー《WEAPON》レッドを点灯させ、それぞれのマーカーが拡大、縮小を繰り返し警告を発している。一気に5つの砲門から狙われることになった俺は、シールドの弱点を見破られた事に舌打ちを一つしてから右手に握ったビーム・マグナムのフォアグリップを左手で掴むことで安定させ、最も近い位置に存在するビットを狙おうとした所でビットが一斉に動き出した。

 

「そう簡単にやらせるワケにはいきませんわ!さぁ堺さん、私とブルー・ティアーズが奏でるワルツを踊りましょう!」

 

「ダンスを女性から誘うのは、どうかと!」

 

「気にしないでくださいまし!」

 

静の世界であった空間が、一気に動へと移り変わっていく。セシリア嬢が人間本来の視点、死角に置いたビットからレーザーを飛ばし、俺は飛んでくるその光を見てから浮遊する程度に留めていたスラスターの出力を思い切り引き上げ、包囲網から逃げつつ軽口を叩けば、セシリア嬢は笑みを浮かべたまま短く言葉を切った。直線機動で移動していると、予測進路に撃ちこまれるレーザーの軌道を想角が捉えた為、速力を一切落とさないまま左側へロールし回避。一撃避けただけで、レーザーの雨が止むわけではない。出力を少しずつ落としながら右へ身体を傾け射線から逃れつつ、下方から左右を塞ぐ形で発射されたレーザーに対処する為に足を地面に向けながらバックブラストを吹かして機体を強制停止させる。

 

「――ッぐ、ぅうううう!!!」

 

身体に掛かる慣性をある程度は想角が負担しているとは言え、予想以上の衝撃に思わず声が漏れる。が、そこで足を止める暇はなく、即座にバックブラストを中断して浮力を切り、落下していく。これ以上は下から狙うことは不利だと思ったのか、セシリア嬢はビットを全基上方に上げさせて、ビーム・マグナムで狙われないようにするためか小さく、不規則的な軌道を描いて躍らせている。しかし、それでもいつかは撃つ機会が訪れると信じて、想角に射撃照準を起動させてから、左腕にマウントしていたシールドを収納し、代わりに大味な武装を呼び出した。

 

「――――何、を!」

 

取り出したのは、ハイパー・バズーカ。米軍が開発した280mm大口径無反動ロケット兵装だ。今回、想角に積まれている弾頭は数多くの敵を一射で効率的に撃墜する目的で開発された、散弾を積んでいた。

 

セシリア嬢が武装を切り替えた事で警戒をより一層強めビットを素早く動かして攻撃位置に着かせるが、俺の方がコンマ数秒早い。想角の照準補助を受けずとも適当に撃てば周囲一帯を大多数のベアリング弾が襲うのだ。狙うだけ、無駄というものだ。肩をバイポッド代わりに固定し、片手で撃てるように改修されたそれを担ぎ、引き金を引いた。ロケット噴進で進んでいく弾頭の射線には目もくれず、残弾こそ残っているものの次弾装填は収納した所でやらせればいい、今はビットの対処が優先だと優先順位をビットに繰り上げして即座にハイパー・バズーカをシールドへ切り替えて襲い掛かってくる3基の内2基のレーザーをシールドで拡散させて無効化するが、一発は対処し切れずに右足の装甲版が焼かれた。

 

「――くっ!この!」

 

自分の実力不足で被弾してしまった事に苛立ち、頭部に装備された7.62mmマシンガンをオンラインに切り替え照準補助を想角に任せたまま撃ちっ放しにしてビットを追い払う。5発に1発の割合で装弾されている曳光弾のおかげで射線修正は非常に楽であった。だが、どうしても射撃を行う際にその場でとどまってしまう癖があるのか、射撃に集中してしまうせいで見えていても動けない状況が出来上がってしまい、セシリア嬢に背中を撃ち抜かれて墜落する。そのタイミングで、先ほど発射したハイパー・バズーカの弾頭が炸裂し空を埋め尽くす程のベアリング弾が飛来した。バスバスと音を立てて至る所に突き刺さるベアリング弾に自爆の危険があることを感じ扱いには注意しようと思いながら、俺は地面に叩きつけられたまま急いでシールドの影に入る様に機体を丸め、被害を最小限に抑えた。

 

「――っ、無茶なことを!」

 

「無茶をしなければ、勝てなさそうなので」

 

セシリア嬢は俺を追いかけるビットの操作に夢中になっていたのか低速で飛来するハイパー・バズーカの弾頭の意識優先度を下げていたようで、炸裂したベアリングの多くをまともに受けたらしく装甲の至る所に破損痕が見られる。幸いにもビットへの被弾は軽微だったのか、問題なく動いている4基のそれを見て俺は顔を顰めた。次こそは当てる、と右手に装備していたビーム・マグナムを下げ、再装填が終わったハイパー・バズーカを取り出すと、セシリア嬢は顔色を変えてビットの全基による同時射撃によってハイパー・バズーカの砲身を融解させた。電気系統がスパークしたのか、黒煙を上げながらバチバチと音を立てるハイパー・バズーカをいつまでも担いでる訳には行かず、眼前に放り投げてからシールドで前方をカバーすると、すぐに爆発が起きて機体を煙が飲みこんだ。

 

「それは使わせません」

 

爆炎と煙が吹き上がるハイパー・バズーカの残骸からスラスターの出力を上げて飛び出しながら、右手にビーム・マグナムを呼び出す。このままではジリ貧になると分かっていたので、どうにかして形勢を逆転とまでは行かずとももう一撃、当てておきたいところだ。頭部マシンガンを斉射しながら射線修正をしていく内に分かった事が一つだけあるが、この想角の照準補助がとても甘いのだ。予測位置射撃を照準補助に任せきってしまえば、その時から直線で動き続けた場合の位置を割り出すだけで全く役に立たない。故に俺は、照準補助機能を切って武器の照準をディスプレイに投影するマニュアル射撃にした。その代わりに、想角には回避機動を任せる事で今まで担当していた攻守の役割を切り替える。

 

「――行くぞ、想角!」

 

装甲の継ぎ目が甘いのか、内側から赤い光が一瞬だけ薄らと漏れ出した事に疑問を抱きながら俺はビットを潰しに高度を上げさせ、空へ上がった。想角がかなり無茶な機動で身体を曲らない方向へ捩じろうとするのでその都度注意しながら学習させていき、ついにセシリア嬢の気力が尽きてきたのかビット2基の機動が重なる瞬間が訪れることを視た俺は、そのポイント目掛けてビーム・マグナムを構え、チャージを開始する。マニュアル照準に苦戦しながらも、ここだと思った位置でピタリと腕を止め、フォアグリップを握り固定したビーム・マグナムのトリガーを押し込み、装填されたパックカートリッジ内のエネルギー全部を砲身が吸い上げ、荷電を開始する。砲口の先端から空気が追いやられ、真空が生成される。それを一気に引き戻す様に空間が歪み圧縮され白いエネルギー弾が生成され、周囲にスパーク現象を引き起こしつつ更に歪んでいき、白光弾が輝き出す。それだけで、この砲口に蓄積しているエネルギーの総量に驚愕するがこれはチャージされているだけであり、まだ発射されていない。更に砲身から砲口へエネルギーが過剰供給され、砲身が発する熱でビーム・マグナム自体の照準が陽炎で揺らぎ始めるも外付けされたラジエータが急速冷却を開始することで揺らぎは収まり、チャージされ終わったビーム・マグナム弾が、甲高い発射音を堂々と吼えて突き進んだ。トリガーを押し込んでから発射まで、実に0.3秒。白い高熱を宿したエネルギー弾が真っ直ぐにビット2基が重なるであろう場所目掛けて空気を焼き尽くしながら進んでいく。

 

「――!」

 

セシリア嬢がそれに気付き、僅かながらの抵抗としてビットの軌道をずらすが既に遅い。手前にやってきたビットの1基を白光球が呑みこみ、一瞬の内にその姿を光に変えて消し飛ばす。続く2基目は軌道を反らして最も破壊力のあるエネルギー弾を避けるが、それを追尾して伸びていく青と赤の拡散ビームが紫電を迸らせ、射線から離れていたビットを捉え、コンマ数秒ほど掛けて溶断してみせた。食い散らかす相手を見失ったマグナム弾はアリーナを覆う大規模エネルギーシールドに衝突し、シールドの形状を可視化させるほどの白雷を引き起こしてアリーナを覆い、霧散した。

 

撃った瞬間に機体が水平制御を維持しているにも関わらず、押し退けられ、錐揉み回転をしながら落下し掛けた所で想角が全力でバックブラストを放出し、スラスターを左右姿勢制御へと配分比を変更して噴射しながら姿勢を安定させ、地面に着地させてくれる。ビーム・マグナムに使った使用済みのパックカートリッジが押し上げられ、排出されて新しいカートリッジが装填される。砲身は既に完全冷却されており、すぐにでも次弾を撃てる体勢が整っていた。今度は地に足を着け固定しているため、連射だって出来る。間違いなく、このビーム・マグナムが、想角の主力兵装だと理解した瞬間だった。

 

 

「―――――く!」

 

 

「さぁ、ダンスを続けようか。セシリア嬢」

 

 

一度に2基のビットを失ったことでセシリア嬢はビーム・マグナムを最大限に警戒し、仇敵を見るような目で睨みつけてくるが、俺はその視線を心地良い物だと思いながらビーム・マグナムの砲口をセシリア嬢本人へ向けた。

 

 

 

 

想角が発する生体補助機能が昂る精神を抑えながらも最適な行動を実現させ続けていく。

 

 

表面装甲最適化完了率85%...

 

 

――機体を覆う装甲の奥から、赤が溢れ始めていた。

 




オリ主搭乗IS 現状公開可能情報に限り記載。

・名前-想角(ソウカク) オリ主命名「ユニコーン」

・世代-第3.8世代機(束曰く) 

・身長-(待機状態):217cm (着装状態):277cm (デストロイモード):297cm

・速度-(着装状態:巡航速度):1670km/h (着装状態:最高速度):2240km/h (デストロイモード:巡航速度):2900km/h (デストロイモード:最高速度):3620km/h   

・零速→最高速度到達時間-(着装状態):25.324秒 (デストロイモード):1.89秒


※デストロイモード時の速度は巡航速度、最高速度、零速→最高速度到達時間のいずれも操縦者の状態を考慮していない条件下で算出された値を記載。

・経緯
本機はそもそも次世代IS運用総合統括研究所が設計した物ではなく、篠ノ之束によって本来渡される予定だった防御偏向型IS「フェネクス」が破壊され、代替機として送られてきた篠ノ之束が作成したISである。篠ノ之束が本機と共に次世代IS運用総合統括研究所に送り付けてきた参考資料と取扱説明書には研究者たちがオリ主に届けるのを中止するべきだとの声が多く上がったが、研究所の成り立ちが特殊なこともあってか各国の面子を潰すワケにもいかず搬送期限ギリギリまで兵装を作成し直し、インストールしていた為まともなテストすら出来ないまま搬送された。



・独自特徴
1.思考操縦システム「インテンション・オートマチック・システム」
従来のISと異なり、このシステムは理論立てたイメージを元に動かすのではなく、自分自身の肉体の一部としてISを認識して動かすことが出来る篠ノ之束が自作した操縦補助プログラム。原理としては、操縦者が発する脳波を機体に一切のズレなく反映させることで肉体を駆使した時と同じ動きを再現させるというもの。操縦者は自分の手足の様にISを動かし、ISは敵性反応の探知を分担出来る為、より高度なレベルでISを操縦することが可能になった次世代技術の試験モデルが組み込まれている。また、これの特徴の一つとして、操縦者の好戦性を無意識のうちに高めていく作用が確認されると資料に記載されており、本機を装着し続けることで完璧な戦闘行動を実現させる兵士の育成が可能になっている。オリ主が持つ特出した認識能力によってシステムの一部が上書き修正されており、後述の「サイコフレーム」と連動することで本機以外のIS操縦者の思考を探知してオリ主に伝えるセルフアクティブソナーの役割を発現させている。

2.駆動式内部疑似骨格「ムーバブル・フル・サイコフレーム」
人間が発生させる脳波を探知する特殊なコンピューターチップを金属粒子なみのレベルで封じ込めた新素材「サイコフレーム」と展開装甲の試験技術の1つとしてフレーム自体が可変する「ムーバブルフレーム」構造を合体させた新技術を全身に転用した全く類を見ない新機軸のフレーム構造。篠ノ之束が第4世代ISの特徴である展開装甲の内部に組み込もうと「サイコフレーム」を開発するも、予想外の事態が発生し続けた為に「オカルト」扱いし、投げ捨てた失敗作であったがオリ主のIS学園入学を聞きつけ、入学祝として作り上げた本機の全身に、良かれと思って組み込んだ。
「サイコフレーム」単体での構想は、敵が発する脳波をいち早く受信して対応を早める目的で頭部付近にのみ使用するというものだった。

3.デストロイモード
操縦者がISの生体補助機能を以てしても制御しきれない強い衝動に襲われた際に発動するリミッター解除機能。デストロイモードが発動すると全身の装甲が展開し内部フレームが拡張、ブレードアンテナがV字型に割れ、バイザー状に顔を隠していたフェイスガードが上方へ数段階に分けてスライドし搭乗者の視界情報を完全にシャットアウトした後双眸の瞳を持つ人を思わせるマスクが頭部サイドアーマーの回転に合わせて展開する。この状態になると「インテンション・オートマチック・システム」の機能が変質し、操縦者は一切の機体操作への干渉が不可能になり本機を動かす重要パーツと認識される。デストロイモード稼働時の操縦者は脳波を感知する機能と肉体を乗っ取られ、肉体が裂けるような急停止や慣性機動も容赦なく行う『兵器』のパーツになる。解除される条件は"変身"してから5分が経過するか、操縦者が抱いていた情動の原因の排除を確認した時。操縦者が失神・死亡した場合に限り、生身の人間でも安全な高度・地形が確保された地点に降下した後に解除される。
篠ノ之束が制御しようと試みたが、制御するのは不可能に近かったので逆に操縦者を交換可能パーツとして扱う方向に修正したところ奇跡的に成立してしまった悪魔の技術。

単一仕様(ワンオフアビリティー)
第2段階へ到達しなければ使用できない為、現在は判明していない。


・基本武装
1.ビーム・マグナム(外付ラジエータ装備)
本機の主力武装。マグナム弾と呼ばれる専用のエネルギーパックを最大で5基連結し、一射で1基分のエネルギーを全て使い切る代わりに現存する全てのエネルギー系ライフルの4倍強の威力を持つビームを発射する。ビームの軌道周囲にはビーム・サーベルと同質の紫電が散っており、これを掠めただけでもシールドエネルギーに無視できないレベルのダメージを叩き出す威力がある。ただし、携行弾倉数が少なく、腰部後方のアーマー左右に5発分のエネルギーパックを装備しているものの、最初から装填されている分と合わせても15発しか発射できない。余りにも強力なエネルギーを一度に放射する為、片手で撃つと操縦者に甚大なノックバックダメージを与えかねない懸念から、90度角で展開可能なフォアグリップが左右に装着されており、両腕で構えることが可能になった。また、2秒以上の砲身冷却時間を取らずに連射し続けるとエネルギーパックから供給される大容量エネルギーが砲身から砲口へ供給されるセッションで動作不良を起こして誘爆し、本兵装が消滅する事故が発生したことがあった為それを避ける目的で急遽ラジエータを外付けし、5射分までなら砲身冷却時間を待たずとも連射が可能になった。

2.ビーム・サーベル
リアスラスターの役割も果たしているバックパックに2基、前腕部ホルダーに1基ずつ、計4基を装備。いずれも通常時に基部を折りたたまれ収納されているが、必要に応じてグリップが180度展開し装備することが可能になる。背部のサーベルはデストロイモードにのみ展開され、それ以外では使用する事が出来ない。デストロイモード中に限り、両腕部のサーベルは手に持たずとも瞬間的に移り変わる戦局の中で突発的接近戦に対処できるようにホルダーに収納された状態でもサーベルとして機能させることが可能。この状態を「ビーム・トンファー」と呼ぶ。

3.ハイパー・バズーカ
280mm大口径対群体攻撃用無反動ロケット兵装。実体弾火器兵装で、非使用時は砲身を短縮した状態でバックパック中央部に固定できる。が、主に収納された状態で隠蔽兵装扱いすることで、不意打ちによる殲滅を狙うことが多い。発射後に時間差で炸裂し、周囲にベアリング弾を撒き散らす散弾を装填している。砲身には拡張装備用のレールマウントが備えられ、次世代IS運用総合統括研究所の設立に出資した各国の規格兵装が装備出来るようになっている。(例:グレネード・ランチャー、ミサイル・ランチャーなど)
ビームマグナム弾の予備エネルギーパックを外す代わりに、此方の予備マガジンを腰部後方のアーマーにマウントする事が出来る。基本的に使い捨て式で、撃ち終わった後は放棄して本体の機動性を向上させる。アメリカが在庫処分として寄越してきた。

4.7.62mm頭部マシンガン
頭部のアーマー内に内蔵された小型機関銃。ロシアの強い希望により搬送2日前に急遽増設された武装。5発に1発の割合で曳光弾が装填されており発砲中の射線修正が可能。主に牽制用に使用するが、的確に当て続けることで脅威に為り得る威力を有している。納期がギリギリになったのは2割ほどコイツのせい。

5.シールド
4枚の花弁状のサイコフレームパーツが「X」字型に展開し、中心部に対エネルギー兵装用の拡散力場発生装置、通称「Iフィールド」が露出する。基本的にこの展開ギミックはデストロイモード時に機能するが、通常状態であっても「Iフィールド」は機能する。この兵装は搭乗者、ISの何方もが危険を察知していない完全な不意打ちであっても自動で展開され、性能試験ではビーム・マグナム2基の同時射撃すら拡散させる効力を確認している。ただし、零落白夜を防ぐことは出来ず、「Iフィールド」が生み出す粒子自体が無効化され攻撃を通してしまうことから、さらなる改良が必要であるとされた。
サイコフレームパーツは篠ノ之束から渡された参考試料の1つであり、それを加工してシールドに収めたことでサイコフレームを持つシールドが出来上がった。
「Iフィールド」は次世代IS運用総合統括研究所が威信を掛けて作り上げた新技術ではあるものの製作コストの高さ故に本来装備させる予定であった量産型ISに組み込むという目論見が破綻し凍結されていた。しかし、今回の騒動で装備を何とか水増しして誤魔化したかった次世代IS運用総合統括研究所はこのプランに目を付け、倉庫の奥で眠っていた「Iフィールド」の現物を流用した。






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