Ideal・Struggle~可能性を信じて~   作:アルバハソロ出来ないマン

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オリ主の専用機が手元にない状態なので、みっちり練習している一夏ちゃんが穴をあける訳もないので穴空けイベントも、飛行訓練のシーンも、放課後訓練もないです。

イベントスキップとかじゃないです。ほんとですよ(震え声)

オリ主がクラス代表してる訳じゃないのでお祝いパーティは1組のみです。

最近いちかわいい出来てなかったね......仕方ないけどごめんやで......シリアス入るとどうしてもね




鈴の性格を考慮した上で、何も知らず、告白もしてない鈴が一夏ちゃんを目撃した場合、どういう一言目を取るのかをずっと考えてました。

本当に最後に少ししか出てこないのにめっちゃ悩みました。

プロットには鈴ちゃん登場としか書かれていない。

見切り発車が過ぎる。

後書きにオリ主プロフィール的なのと本文に書かなかった小ネタをごちゃ混ぜにして載せておきました。長いのでご留意ください。

あといつものうっかりで想角の出力というか速度の記載をしてなかったので10話の後書きを更新しておきました。ご確認ください。


追記:一夏がチョロインかどうかという疑問が感想に寄せられていたので自分なりの考えを記載しておきました。同様の疑問がある方は感想欄からご確認ください。お手数をおかけします。まぁぶっちゃけるとチョロインですよね


第12話

「と、いう訳であのISは非常に危険性の高い物だという事だ。そのコピーされた資料を閲覧し、読了後は私か山田先生に返却するように。2時間以上の所持を許さないので、そのつもりでな。書かれていることにショックを覚えるかもしれないが、それは後にして今はお前が一体どんな風に使われたのかをよく知っておけ。では山田先生、後は任せます。私は凍結処理に立ち会ってきますので、これで」

 

「は、はい。お気をつけて」

 

保健室のベッドに寝かされた直後、千冬さんと山田先生、そして来賓者用のプラカードを掲げた中年の男性が入ってきてから、試合内容を振り返って反省会を一夏と箒としていたところ、ISについて説明があるらしく人払いをされた後にプラカードを掲げていた男性――桜井主任というらしい――の説明を千冬さんが引き継ぎ、資料を手渡してきて、すぐに山田先生にこの場を任せて退室していった。保健室に残った山田先生と桜井主任の目を気にしつつ、資料を手に取り読み始める。

 

「――――これだ。『デストロイモード』......そうか、コイツが......そう、か」

 

痛む右腕に顔を顰めながら、ページを読み進めていく。『インテンション・オートマチック・システム』。『ムーバブル・フル・サイコフレーム』の項目に記載されているところにも思うものはあったが、それよりも、何よりも先に、あの"変身"が知りたかった。そして、資料の残りページ数が僅かになった所で、機体資料がコピーされたページが表示された。載っていた機体は、想角の"変身"後の姿だった。それからそのページ内に書き留められた物の全てを読み、自分がISという『兵器』を動かすパーツにされていた事を知った。千冬さんが、IS学園が処分すると言いだす訳だ。

 

「堺くん。この一件の全ては、我々の不徳に集約される。大人であるはずの我々が、子供である君をあのように恐ろしい物に乗せてしまったこと、謝罪させて頂きたい。――――誠に大変失礼をしました!!!」

 

資料を捲る音だけが保健室を包み、資料を全て読み終えた後に山田先生に返却すると、山田先生は酷く哀し気な表情で俺を見てから資料を受け取り奥へと下がっていった。そして、代わりに前に出てきた桜井主任が、謝罪をしたいと言って、土下座をした。

 

「――ちょ」

 

「この謝罪に意味がないことは分かってます、ですが―――腐りきった、体裁だけは保とうとする国に代わり、私程度の頭でしかないが、この通り、下げることを赦して頂きたい!でなければ、我々は良心すら失いかねない!」

 

「あ、頭を上げてください。俺は別に、謝罪なんて――」

 

「――――本当に、国に何と言われようと止めるべきだった。例え私の首が飛ぼうとも、止めるべきだった......!このような事態を招くと知っていたのに、私は、我々はそれを見過ごした!薄氷よりも薄いプライドと君の安全を天秤に乗せ、あろうことか下らないプライドが勝ってしまった!」

 

「......謝罪なんて、本当に必要ありません。頭を上げてください」

 

そこには、色々な物に縛られた大人がいた。保健室の床に額を擦りつけ、涙を流しているのか嗚咽交じりに謝罪をする大人がいた。人の心を保ちたいと願っている大人がいた。守るべき物の多さに耐えられず、膝を着いた大人がいた。守りたい2つの物を天秤に架けてしまった大人がいた。だから、謝罪は受け取りたくなかった。

 

「桜井主任は、すごく、良い人なんですね」

 

「――そんなことはない!私は、犯罪者だ!君を殺し掛けた、犯罪者の一人だ!だから、償いをさせてほしい!君の言う事なら、どんなことにも従おう!それで君の気が晴れるのならば!どんな要求でも受け入れる!」

 

「......だったら、俺に想角を、今一度」

 

「――――」

 

「想角をもう一度、俺に。使わせてください」

 

「堺くん!?何を言い出すんですか!ダメに決まってるじゃないですか!私は絶対に使わせませんよ!」

 

桜井主任の芯の通った在り方を尊敬した。だから、頭を上げてほしかった。しかし桜井主任は、自分のことを犯罪者だと言った。だから俺は、桜井主任は犯罪者ではなく、現存するISの中で最高峰の機体を俺に与えてくれたのだと証明する為に想角の手綱をもう一度握りたいと嘆願した。山田先生は普段のビクビクとした様子は一切感じさせず、気迫に溢れた教師然とした態度で俺を叱りつけた。それも、当然の事だろう。

 

「お願いします。もう一度、俺に。お願いします」

 

「堺くん!」

 

「――――なぜ、資料を見たのに。なぜ、もう一度アレに乗ろうと?」

 

「要は、『デストロイモード』さえ発動させなければいい、あれほど優れた機体はありません。『デストロイモード』さえなければ、暴走はしません」

 

「......」

 

「俺は桜井主任のような、子供に頭を下げることが出来る人を、犯罪者にしたくはありません。だから、俺が桜井主任は犯罪者ではなく、立派な研究者だと証明します。想角を乗りこなすことで、証明してみせます」

 

「......君は――」

 

「――む、無理ですよ!もう既に凍結処理が始まっているんです!諦めてください!」

 

強く、強く。頭を上げた桜井主任の目を見て熱望する。資料を見て分かったが、『デストロイモード』だけが特出して危険なだけなのだ。つまり、裏を返せば『デストロイモード』を発動させなければ危険性は圧倒的に低い物ばかりということ。だから、もう一度俺に想角を与えてほしかった。今度は、完璧に扱い切ってみせる。そうした覚悟を滲ませていると、山田先生から既に凍結処理が始まった旨を告げられる。

 

「今すぐじゃなくてもいいです。破棄される3か月後までに――――お願いします、先生。お願いします、桜井主任」

 

俺は頭を下げて頼み込んだ。桜井主任は一応検討するが無理だろうと言ってIS学園を後にし、山田先生は全職員に伝えはするが此方も同様に無理だろうと言われて保健室から退室していった。

 

 

 

その日の内に、口外禁止ではなく、研究所の面子があったため言いだせなかったが実はISに重大な欠陥が見つかったので現在研究所へ返送し原因の解明をしている、というシナリオの方がやりやすいと判断されたらしく修正の加えられた嘘が学園中に意図的に流され、俺は専用機を修理してもらっている生徒という扱いに落ち着いた。真相を知っているのは学園の教師陣と研究所職員、そして俺だけである。後日、次世代IS運用総合統括研究所から新しい専用機の製作に取り掛かるが予算が降りるのが5月からだと言われ、そこから基本フレームの構成などを行うこともあってか到着が7月下旬になる旨が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いう訳で!織斑さんクラス代表決定おめでとー!」

 

『おめでとー!』

 

クラッカーが連続して弾ける音が響き、一夏の頭の上に大量の紙テープと紙吹雪が乱れ積る。一夏はまだ自分がクラス代表になったことを疑問に思っているのか、笑顔を作っているがその口元は引き攣ったままだ。夕食後の自由時間に、1年1組の生徒が食堂を借りて一夏のクラス代表就任祝いをしようと言いだしたので、1年1組の生徒だけでやることになった今夜のパーティは、細やかながら各自が好きに飲み物を手に取り交友を深めている。一夏はクラスメイトたちにお祝いの挨拶を一人ずつされながら頭の上に乗った紙テープやら紙吹雪やらを丁寧に退けていた。

 

「よう、人気者だな」

 

「バンショー!もうくったくただよー。肩かしてー」

 

「なっ...あ、あのなぁ、馬鹿を言うんじゃない。もう少し距離感ってもんをだな......」

 

「でもずっと隣で手握り合ってたじゃない」

 

「――――............そう言われるとそうだな。距離感的にもそこまで変わらないか?」

 

「じゃあ問題ないね!ね!今度味噌汁も作ってあげるから!」

 

「別に物で釣らなくてもいいだろ。仕方ないな、ほら」

 

「わーい!」

 

一夏に挨拶をしに行こうとする度に、一夏に声を掛けたクラスメイトたちがその足で先日の模擬戦の話を持ち出しては労いの声や心配する声を掛けてくるので俺は返答に困り、ただ苦笑いのような愛想笑いを作る事しかできずにいたが、挨拶も一通り終わったようで落ち着き始めていた一夏の隣に声を掛けてから座り、持ってきたオレンジジュースを一夏の空のグラスに注いだ。一夏は俺の到着を大いに歓迎し、即座に肩を貸してくれと頼んでくる。気疲れでもしたのかと思ったが人目もあるし、距離感というものを保ってほしいと思って口に出した言葉はすぐに一夏に返され、思い返していると、確かに距離感的にはそこまで変わらないことに納得しつつあると一夏はそれを念押しして、更に味噌汁で俺を釣ることで了承させる。最終的に俺が折れる形で一夏に肩を貸してやると腕を抱きながら、二の腕に顔を擦りつけてきた。そこまでしてもいいとは言っていないが、言う気力も無かったし嫌な気もしなかったのでそのまま放っておいてオレンジジュースを自分のグラスに注いでちびちびと消費することにした。

 

「待たせた。何か軽く摘める物でもと思ってな。チョコレートを貰ってきた」

 

「ありがと、箒」

 

「気にするな、万掌もどうだ」

 

「悪い、夜のチョコはパス。気を遣ってくれたのにすまんな」

 

「甘い物はダメだったか?」

 

「夜がダメなだけで、朝とか昼ならイケるんだがな」

 

「夜にチョコはちょこっとなーって?」

 

「は?」

 

「あー!ごめんてー!」

 

右腕を一夏に遊ばれていた所に、箒がプレートに1粒1粒包装されたパーティ向けのチョコレート菓子を載せて持ってきた。一夏の右隣に座った箒は一夏にチョコを渡しながら俺にも勧めてくるが遠慮する旨を告げると、甘い物がダメだったかと訊ね返してくる。夜はダメで朝や昼は大丈夫だと答えると、一夏が下らないギャグを言い出したので立ち上がりつつ肩から引き剥がそうとすると途端に謝り抱き着く力を強めてくるので、剥がすのを諦めてソファに座り直した。コイツは男でも女でもギャグセンスは培われなかったらしい。

 

「御機嫌よう、()()()()

 

「......あ、ああ。御機嫌よう、セシリア嬢」

 

「あら、いやですわ万掌さん。私の事は気軽に、セシリアとお呼びくださいな」

 

「わ、わかった。セシリア」

 

「はい!」

 

3人で占拠していたコ字型テーブルで賑やかに雑談をしていると、セシリア嬢、いやセシリアが俺のことを名前で呼んでくるものだから、つい驚愕してグラスを落とし掛けてしまう。自分も名前で呼んでいるのだから堅苦しい言い方を止めろと言われ、その通りにして挨拶を行うと満足したのか、セシリアは胸の前で両手を合わせて笑顔を作った。

 

「一夏さんと篠――いえ、箒さんも、御機嫌よう」

 

「こんばんは、セシリア」

 

「ああ、お前も一緒にどうだ。万掌、空けてやれ」

 

「わかった」

 

「まぁ、よろしいので?ではお言葉に甘えて、失礼しますわ」

 

「――――しかしセシリア、急に俺の事を名前で呼ぶなんてな。何か意味でもあるのか?」

 

「決闘は終わりましてよ。ならばあとは御学友であるだけ。親睦も個人的に深まったと感じましたので、お名前でお呼びしたということです」

 

「なるほど」

 

セシリアは同席していた一夏と、箒の名前を途中で言い直し同じ様に挨拶を交わし、箒は篠ノ之性で呼ばれなかったことに気を良くしたのか、セシリアにこの席で雑談を共にするか尋ねながらも迎え入れる気があるようで、既に俺に距離を詰めさせ机に空きを作らせていた。それを見たセシリアはそこまで用意されていては断る事も出来ず、元々断る気はなかったようだが、それでも嬉しそうにコ字型テーブルのソファーに腰を沈めた。セシリアが持参していた紅茶を一口飲むのを確認してから、急に名前を呼んだことに対して含むものでもあるのかと訊ねると決闘は終わったので余所余所しい感じを出すのは止めにしたとのこと。たしかに、同じクラスであるなら仲良くしたいものだと納得する。

 

「それなら改めて。よろしく、セシリア」

 

「はい。このお付き合いが終生まで続く事を願いますわ」

 

「そう在れるよう、互いに努力していこう」

 

「ええ、勿論ですわ」

 

一夏の肩を左手で叩き、いったん右腕を返してもらったあとセシリアに向き直って右手を差し出す。セシリアがそれの意味を理解したのか、カップを音を立てる事なく置いてから同じ様に右手を差し出し、握手を交わした。力強く握り合った手に、永遠の友情が続く事を願って、互いがそれを維持できるように祈りを籠め、努力することを約束した。

 

その時、カメラのフラッシュが焚かれセシリアと俺は突然の出来事に驚きながら其方の方向に目を向けると、見慣れない生徒が居た。いや、見慣れないのも当然だった。リボンの色で学年を判断できるIS学園の制服だが、そのリボンの色が2年生の物だったのだ。

 

「初めまして、二年の黛薫子です。新聞部の部長やってまして、取材いいですか?」

 

「写真撮ってから聞くんですね......」

 

「ではではズバリ、どうですか堺くん!オルコットさんとの握手の感想は!」

 

「あ、一夏のクラス代表就任とかじゃないんですね」

 

新聞部の部長、二年生の黛薫子さんが名刺を差し出してから取材のアポをこの場で取り始める。それに写真を既に無許可で撮られていたことを突くと一切話に乗らず、黛先輩はセシリアとの握手の感想を聞いてきた。この先輩苦手かもしれない。顔には出さず心の中でなんとなく苦手意識を抱きながら一夏の取材はしないのかと訊ねた。

 

「女子のクラス代表なんてごまんと居るもの。あ、でも織斑先生の妹さんだっけ。じゃあ取材させて貰おうかな!」

 

「扱いが軽い!私抗議します!」

 

「堺くんとのツーショットで許して」

 

「私に答えられる範囲ならなんでも答えます!」

 

「チョロすぎるわね」

 

「......」

 

「ま、まぁ万掌さん、あまり心配しすぎても身体に毒でしてよ」

 

黛先輩の一夏の扱いに少々思う所があり、ムッとするが一夏が先に抗議の声を上げた事で鳴りを潜める。が、俺とのツーショットなんかですぐに陥落してしまう幼馴染のチョロさが心配になり頭を抱えるとセシリアが苦笑をしつつ励ましの声を掛けてくれた。一夏が女になってから精神的に幼くなったような感じがしてならない。まぁしっかりするときはしっかりしてくれるし問題はないだろう。多分、メイビー。

 

「で、どうでしたか!?」

 

「どうと言われても。この友好関係が国に影響されない範囲で続けていきたいと思ってますし、セシリアは終生までと言いましたが、俺個人の意見を言うのであれば代を跨いでも遺し続けたい関係にしたいと思ってます」

 

「万掌さん......私もそれを望みます。再度、握手をお願いしても?」

 

「分かった。この縁が何代も続く事を願い――」

 

「――続くよう努力し――」

 

「――維持していこう。よろしく、セシリア」

 

「こちらこそ」

 

「真面目ねー。スキャンダル性が全然ないわ」

 

セシリアは俺の言葉が琴線に触れたようで、先程の発言を訂正してから再度握手を求めてくるので、それに応じる。その言葉に掛けた想いが嘘にならないように努めなければならない。また一つ、この学園に来てから大切な友人が一人増えた。いやもしかしたら、ここまで縁を深めたのはセシリアが初めてかもしれない。

 

「そういえばセシリアが俺のIS学園生活初の友達になるのか......?」

 

「えぇ!?堺くんの初めてはオルコットさん!?」

 

『何ぃー!』

 

「すごい事実の歪曲を感じる」

 

「えぇと、こういう時はどの様にすればよろしいのかしら......」

 

「俺が聞きたい」

 

何ともなしに呟いた一言が、黛先輩の手で凄まじく品のない方向に捻じ曲げられる。クラスメイトたちも反応してしまい、収拾を付ける事を放棄した俺は天井を見上げて放心しているとセシリアがこんな状況に陥ったことがないのか、俺に対処を聞いてきた。既に諦めていた俺は、その方法を知りたいと言うと、セシリアは苦笑を一つ漏らして紅茶を飲む事で答えず、スルーする方向性で決めた様だ。

 

それからはクラス全員で集合写真を撮り、なぜかクラスメイト全員とツーショットを撮られ、ヒーローショーやマスコットキャラとの触れあいの時間を思い出しながら応じていたそれも終わり、その日はそれで解散となった。

 

なお後日、俺の初めてがセシリアだというとんでもない捏造を互いが互いに否定をしなかった事からクラスメイトたちに更なる勘違いを与えたようで今度こそはヤバいと思い、俺とセシリアの両名は誤解を解いて回ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明くる日の朝。

 

「転校生?この時期に?」

 

席に着くなり相川さんに話しかけられた俺は、転校生がやってくるという噂のそれに疑問を抱いた。4月も終わりに近いこの時期に、なぜ転入なのだろうか。それを訝しむのは俺だけではないようで、教室中に広がる声を聴いているとだいたいの話題が4月にやってくる転校生の話で持ち切りになっていた。

 

「うん、不思議だよね。中国の代表候補生らしくて、もしかしたら堺くんに接触する意味も籠めて送り込んだんじゃないかって噂になってるの」

 

「といっても今の俺のISは修理中だけどな」

 

「あはは、災難だったね。やっぱり色んな国の特色を混ぜるとエラーが出るのかな」

 

「そうなのかもしれないな。で、中国の代表候補生だって?」

 

「うん。詳しいことは分かってないんだけど、2組に来るらしいよ」

 

「なるほど」

 

相川さんがそれらしい理由を述べてきた為に顔を顰めながら溜息を吐いてわざとらしく修理中だという嘘をさも当然の様に言うと、相川さんは軽く笑った後に多国籍ISについてのトラブルを想像し始めたので、それに同意しつつ話題を逸らすために再び中国から来るという代表候補生の噂に目を向けさせた。相川さんは話題のすり替えを疑う様子も無く、すぐに話に乗ってくれて2組にやってくるという追加の情報まで話してくれた。騙しているのがすごく辛い。また、俺の席にはやってきていない一夏は大勢の女子に囲まれながら、クラス対抗戦には必ず勝ってくれと念押しされているようで、その理由がなんとも女子らしく1位になったクラスには優勝賞品として学食のスイーツ半年フリーパスが配布されるためだそうだ。当然、一夏も舌の好みが変わったのか甘い物を大変好んで摂る様になった為この機会を逃すまいと燃えている。

 

「まぁ、大丈夫じゃないかな。専用機のあるクラスって今の所1組と4組だけらしいし」

 

「いや――」

 

「――その情報、古いよ」

 

谷本さんがフラグにしか思えない発言をした直後、2組から1組へと廊下を歩きながら、1組のスライドドアを開けた人物から伝わる強い自信の波長を感じ取った俺は谷本さんの言葉を否定しようとしたタイミングで、被った。否定した人物に目を遣る事無く、この自信満々の波長を持つ中国人の知り合いを探せば、該当するのは一人しかいない。髪型を変えていなければツインテールで、身長も変わっていなければ150cm程だろう。八重歯が特徴のサバサバとした女の子。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

チラリと目を向ければ、やはり思い描いた通りの人物が、腕を組んで立っていた。彼女の名前は(ファン)鈴音(リンイン)。箒が小学4年生の折に転校してしまった後、入れ替わる様に転校してきたその人である。男だった一夏を知る仲の良かった幼馴染の最後の一人であり、俺が懸念していた人物でもあったが、まさかこうも早く来るとは思わず仏頂面の裏では肝を冷やし、一夏が女であることがバレないように祈っていた。なぜなら鈴音は中学でもクラスが違った為に、一夏が女になった理由の一切は説明されず、突如連絡が取れなくなり何も言わずに転校し、久々に再会したら自分の想い人が女になっていたという訳の分からない状況になるからだ。何を言われるか分かった物ではないし、政府が絡んでいるとはいえ幼馴染をずっと騙し続けようとしていたのだ、許されるものではない。

 

「――よう、鈴。お前相変わらず小さいな」

 

「ぶっ飛ばすわよ万掌!」

 

俺は最初の一言を切り出し、ヘイトを敢えて此方に向けさせることで鈴音が一夏に気付かないで居てほしいと願うが、鈴音は直感が大変鋭い為、何をしても気付かれる時は気付かれるので、一夏に気付かず帰っていく確率は25%程――――ああ、いや、たった今0%になった未来が視えた。

 

「このクラスの代表に、織斑一夏って名前の奴が居たんだけど」

 

「あっ」

 

「万掌。アンタが居るなら一夏も、私の知ってるあの一夏でいいのよね?織斑一夏なんて名前、そうそう見れるモンじゃないわよ」

 

鈴音の口から早速その話が上がり、視えていても声を漏らしてしまった。鈴音は俺が居る事と重ねて、織斑一夏と言う名前が別の誰かの偶然の一致という訳ではなく、鈴音がよく知るあの一夏だと睨みを付けた様だ。相変わらず勘も鋭いし、頭もよく回る。小学生時代に散々色んな事で遊び続けた罰が遅れながら帰ってきた気分にさせられた。

 

「で、なんで万掌しか報道されてないのよ。一夏は何処よ一夏は。いーちかー!居るんでしょー!出てきなさい!」

 

「一夏って......」

 

「すぐ、そこに......」

 

不味い。そう思ったが鈴音の声は1年1組によく通り、必死に知らぬ存ぜぬを貫いていた一夏を一人、また一人とクラスメイトの視線が集中していく。これはよろしくないと悟るが、ここから誤魔化すのは至難の業、というか無理だ。箒の時みたく急いで口を塞ごうかと思うが、それよりも先に見慣れた出席簿が鈴音の頭を強く叩きつけた。

 

「ふぎゃっ!」

 

「何をしている」

 

「いったいじゃない!誰......よ......」

 

「もうSHRの時間だ。さっさと教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん!?」

 

「――織斑先生、だ。二度は言わんぞ。入口を塞ぐな、邪魔だ。堺も席に着け」

 

「あ、あははは......そうさせて頂きます。万掌!昼休みに話聞かせてもらうわよ!」

 

そこには千冬さんが立っていた。俺にしか分からない様に目線で「騒がれてないな」と問いかけられた気がしたのでそれに頷き1つで返すと頭を叩かれた鈴音が怒りながら顔を後ろに向け、即座にその怒りを鎮火させた。千冬さんは俺の返答に安堵の息を漏らしながら、SHRにはまだ気持ち早いが鈴音に向けてそういい、動揺した鈴音は千冬さんの名前を呼び、もう一発追加で頭を叩かれた。そして、退けと言われては立つ瀬も無く俺の昼休みを拘束する約束を取り付けて急いで帰っていくのだった。助かりました、と千冬さんが俺を席に押し返そうと背中を押したタイミングで伝えると、気にする事はない、妹の為だと小声で返事が返ってきた。

 

一先ず危機を乗り越えたことに俺と一夏と箒が揃って肩の力を抜き、午前中の準備時間の間に一夏と箒と机を囲み、最初に箒に鈴音の立場を説明し、それからはひたすら鈴音の対策を3人で練り続けるのだった。

 

 

 

 

 




セシリア戦が終わってコメディーしてもいいかなって思ったので気持ち盛ってます(センスはない)

プロフィール紹介 オリ主

・名前:堺万掌 土に界、数字の万に掌と書いて堺万掌。両親に色んな人達と友達になれる様にと込められた名前。

・歳:15歳

・誕生日:8月22日(サイコロ振って決めました)

・趣味:中学生時代まではゲーム。 IS学園に進学してからはモチベーション維持の為体力作りを趣味にした模様。 現在誰に見せる訳でもないが筋肉を付けようと必死になっている。

・好物:「一夏」の作った味噌汁。 最近はこれ以外の味噌汁を飲んでも何か違うと言って気に入らない様子。

・嫌いな物:物ではないが話し合う余地があるのにそれを放棄して暴力に訴える人。争い。戦争。



・人物紹介的と書いてない小ネタ的な何か。人となりっぽいなにか。

物心着いた頃から暴力を嫌い、誰とでも仲良くなろうとその手を伸ばし続けた。同年代の子供たちよりも数倍認識能力が高く、感受性も豊かであった為に恥じらいを持つようになってからは『絶対に泣ける映画』などを避ける様になる。戦争映画などでも、戦死し帰還できなくなった人達の遺された家族に感情移入してしまうのでこちらも同様に避ける様になった。殴られても殴り返さない小学校低学年だったが、決して殴られて大泣きすることはなく、それを見た一夏が仲介に入り、一夏が殴られたときによく泣いていた。殴られていなくても、殴らせてしまったことで泣いた。小学校を卒業する手前あたりで一夏に殴られたら殴り返せと言われ、それ以降は話し合えば解決できる事柄を暴力で解決しようとする存在に対して容赦なく殴り返す様になる。
一夏によく世話を焼かれていた小学生時代であったために自分で片付けをするのが苦手になってしまい、一夏はそれを咎めながらも全部やってしまうのでどんどん甘えていく負のスパイラルに今もなお嵌っている。多分抜け出せない。何かと世話を焼いてくれる一夏に恩返しの意味を籠めてお茶を自分で淹れたところ褒められ、それ以降はどんどんと飲み物を自分で作るようになり家族や千冬などにも振る舞う様になる。中学校に進学し、両親から貰った入学祝で買った物は手動のコーヒーミル。
中学生になってからは思春期を迎えたことで同級生の恋愛感情に共感し過ぎて大変な時期もあった。特に中学校生活で作った初めての友人、五反田弾の影響もあってか真面目な態度でありながら下ネタを平然といいクラスを爆笑の渦に巻き込んだり、年相応にはしゃぐ姿も見受けられた。中学3年に上がってからは一夏が女性になってしまった事件もあり、下ネタを控え、恥じる様になり、一夏の扱いに困るクラスメイト達が離れていく中で必死に一夏の心を守り続け、変わりゆく男と女の違いに困惑する一夏を優しく受け入れ続けた。
極度のストレスから突発的にヒステリックに陥る一夏を宥めるのも、心無い言葉を掛けられ傷ついた一夏を癒すのも、怒った一夏の怒りを解消するのも、泣きだす一夏の涙を止めるのも全て対応した。苦しい時も、辛いときも、楽しい時も、哀しい時も、大変な時も、とにかく女性になった一夏の心が壊れてしまわない様に寄り添い続けた。そして、これでもかと言うほどに一夏に尽くし続けた結果「片付けが出来ないけど一夏を安心させることが出来る万掌」と「家事全般を完璧に熟すが万掌が居ないと不安になり、居ると甘え続ける一夏」の泥沼マッチポンプが完成した。なお、無意識的にではあるが一夏の苦楽を自分の苦楽として共有し続けた為に一夏を親友であり幼馴染という括りで割り切ることが出来ず恋愛対象として見ており、一夏は言わずもがなである。

IS学園に入学してからは一夏が同年代の女子と普通に会話出来る事に安堵を覚えていた。ISに搭乗したことでより高度に発達した認識能力の影響で入学当初は頭の中に流れ込み続ける他人の感情の奔流に苦しんでいたが、想角のデストロイモードにより全方位視界が塞がれていながらも相手の位置を感知する感覚を学習した事で知覚能力を制御することに成功しており、4月下旬の時点で自らの意思で他人の感情を視る感覚のON/OFF切り替えが可能になっている。が、その代わりに他人の行動がどう変化し、どのような影響を与えるかを把握する予測能力が若干衰えている。これはデストロイモードによる脳波の酷使が影響したと思われているが一過性の物なのか後遺症なのかは不明。
IS学園に進学してからは一夏と同室が続き、思春期男子特有の衝動の発散の為、より一層筋トレに励むようになる。
箒の中に渦巻いていた悪感情を発散させ一夏と仲直りさせた時には、幼馴染二人が泣き笑いを浮かべながら帰ってくる未来を視ており、道場の掃除をスキップしながら行っていたのを剣道部員たちに目撃されていたりする。

共感覚の影響からか後天的な物かは分からないが、素の口調で話す事はほとんどなく、今の所素の口調で話せているのは家族と一夏と箒と鈴音と弾と数馬のみ。本来はもっと下らないギャグも言うし、年相応に崩した言葉遣いや態度をとりもする。セシリアの時など態度を露骨に変える時は、相手がそういう在り方を望んでいることを無意識的に察知してしまい口調が自然とそう変化してしまう為である。仲良くなって本音で話し合えるようになると素の口調になる。





内緒話

IS学園入学後の一夏曰く「男の頃でも大好きだったが、今はそんな言葉じゃ全然足りない」

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