Ideal・Struggle~可能性を信じて~ 作:アルバハソロ出来ないマン
10話にて想角の速度を記載していなかったので書き足しておきました。
感想にて「一夏チョロイン?」という質問があったので感想欄にて自分なりの考えを書いておきました。ぶっちゃけるとチョロインですが読みたい方はお手数ですが感想ページへ飛んで閲覧をお願いします。
鈴音と再び心を繋げ合わせた一夏と俺。そして箒も加えたグループが出来たその翌日。
もはや指定席となったコ字型テーブルを囲み朝食を摂り、登校すると生徒玄関前廊下に大きく張り紙が張り出されていて、多くの生徒が足を止めてそれを眺めていた。
「おはよう、あの人集りは?」
「あ、堺くん。おはよう。なんかクラス対抗戦の対戦表らしいよ」
「へぇ。一夏は何処とやるんだ?」
「おはよー堺くん。織斑さんの1回戦の相手ね、2組だって!」
すぐ傍に居た鏡さんに声を掛けると、どうにもそれはクラス対抗戦の対戦日程表らしく一夏が初戦をどのクラスと闘うのかに興味を持った俺は何となく訊ねてみると対戦表を見に行っていたのか、前方の人込みから抜け出してきた谷本さんが報告をしてきた。
「2組ってことは――」
「さっそく私とやり合うって事ね。一夏!手加減無用よ。絶対負けないからね!」
「こっちも本気でやるよ、鈴!」
「そうやる気を出していてもまだ数週間も先の話だろう。今からそんなに闘気をぶつけ合って気が持つのか?」
一夏と鈴音は既に闘志をぶつけ合っており、良い意味で緊張感のある雰囲気を形成している。が、箒が一歩引いた位置から明日明後日の話じゃないのに今からそうも気合いを入れて意味があるのかと訊ねた。
「まぁ放課後の訓練には気合いが入るかもな」
「そういえばバンショーって、今IS修理中だけど放課後はどうするの?」
「ISを動かすのに最低限必要なのは体力だ。ISがない今、知識も必要だが俺にはそれ以上に体力が必要だと自覚している。だから今は肉体作りの最中だよ」
「何よ万掌、アンタもうIS壊しちゃったワケ?」
「重大な欠陥が見つかったらしくてな。研究所の職員が押しかけてまで回収していったよ」
「多国籍兵装が装備出来るISってのも大変ねぇ。互換性多すぎて潰れるんじゃない?」
「だから今修理してるのさ」
箒の問いに対してモチベーションの維持、もしくは増強が出来るという意味では効果があるかもしれないと返すと放課後のIS訓練に参加できていない俺を心配してか、一夏が放課後は何をするかと聞いてきたので理屈立てて発言をするが要は基礎トレーニングを集中的に積んで体を作っている段階である旨を伝えると、鈴音は俺が自分の専用機をダメにしたと思っているらしく、揶揄うような表情を作るので用意された台詞をそのまま喋る。実際シールドエネルギーだけは凍結中でも補充されているので修理には違いないだろう。それに対して鈴音は同情しつつ、予想した疑問を挙げたのでその結果がこれだよと呆れ気味に自嘲すると、その場に居た事情を知る人たちは軒並み苦笑した。
実際には千冬さんと何度も話し合い、想角を再び装着する許可を具申しているがその都度却下されている。もう高校生なのだから我が儘を言うなと言われたが、想角の優れた機動性はどうしても捨てがたいと思ってしまう。武装も強力で、継戦能力の低さこそ目立つものの優秀な機体だと思ったのもまた事実だ。『デストロイモード』さえなければ、の話に限るのが難点だが。実は千冬さんを含めたIS学園と次世代IS運用総合統括研究所と俺で話し合いを続けていく中で何度も争点に上がったのが『デストロイモード』の発動条件だった。それさえ明確に分かれば使用させないように封印し、俺もそれを意識しなくて済む。ただ条件が『操縦者がISの生体補助機能を以てしても抑えきれない衝動に襲われた時』というもので、それはつまり感情を排除した兵士になれと言っているようなものだという意見が学園、研究所の出した回答であり、それを肯定する事は出来ないと言われてしまった。
「ほら、ぼさっとしてないで行くわよ」
「バンショー、置いてくよー?」
「――悪い、今行く」
先日行われた対策会議の内容を思い返して耽っていると、鈴音に肩を叩かれ時計を指し示され視線を向けるとSHRが始まるまで6分を切っており、既に対戦表の前に居た生徒たちも各自クラスへ移動を開始していた。一夏がやや離れた位置で俺を呼んだので、それに返事をしつつ小走りで追いつきクラスへと向かった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
千冬
「いい加減に諦めろ、堺」
「そこを、なんとか」
「――――お前も分からん奴だな。想角は危険すぎる。そうおいそれとお前に返却できる代物ではない」
「お願いします」
「なぜそうまでしてあれに拘る。あれは確かに優秀だが現存する機体でもあれに匹敵する性能を持つISは多い。言ってはなんだが、お前の執着は異常だ。まるで、あのISに憑りつかれているようだぞ」
今日もまた、懲りずに万掌がやってきた。もうこの会話も毎日しているせいか、私が万掌に返す言葉が無くなりつつありテンプレート的な会話で事を済ませようとしてしまう。万掌の執着は異常だ。あれ以外のISを全く受け付けようとしない。今日こそはその理由を聞いておきたい、そう思って私はきつい口調で問い詰める様に万掌を睨みつける。
「――――桜井主任が、俺に想角を渡したことを悔やみ自分を犯罪者だと罵ったので......俺は桜井主任を犯罪者にしたくはありません。だから、想角を乗りこなすことで桜井主任の無実を証明してみせます」
「綺麗言だな。口にするのは酷く簡単なソレだが、実現にはどれほどの時間がかかる?それに、そもそも実現出来るのかも分かった物ではない」
「だからこそ、もう一度乗って確かめたいんです」
「......駄目だ。お前はもう高校生なんだ。通らない事もあると理解しろ」
「千冬さんは、迷ったりすることはないんですか」
「織斑先生と呼べ。なんだ、急に。迷いはするさ、私は人間だ。だが、それと同時にこのIS学園の教師という小さい規模ではあるが抱えるものは巨大すぎる組織を動かす部品、そのパーツに過ぎない。故に教師であるときは迷いはしない」
万掌の口から出るそれは、余りにも理想的過ぎた。それが一番なのだろうが、それを信じられる者はいない。あの資料にも、束が制御を諦めたとあるのだ。奴が投げ出すということは、そういう事なのだろう。諦めろと暗に言うと、万掌は私が迷わない人間だと思ったのかそんな事を訊いてくる。教師としての私は迷わないが、一人の人間としての私は迷いもする、そう返した。
「俺は、どうするのが正しいんでしょうか」
「どういう意味だ」
「想角を自分の意思でコントロールして桜井主任の罪を拭いたい、その一方で織斑先生の指示に従うことが正しいと思っている自分も居るんです。どっちが、正しいんでしょう」
「それは私や桜井主任、ましてや他の誰かが決めるものではない。お前が決めるものだ」
「決められないから、こうして迷って、俺が正しいと思った事をしているんです」
人の行動に正しさなどという明確な指針はない。その時の状況、それを見ている人物の思想、主義、宗教、イデオロギー、様々な物が複雑に絡み合い善悪の概念を作り出す。だからこそ、誰かに正しさを求めてはいけない。正しさを誰かに教えられた瞬間からそれは自分自身の正しさでは無くなってしまうからだ。
「その2択だけが、今のお前に示された道とは限らない。今のお前がどんなつもりで行動をしようと、その行動は大勢の人間の運命に介在しているものだ。お前は被害者であれど、その責任を果たす必要がある」
「――どうやって、でしょうか」
「それを私の口から言ってしまえば、想角をお前が諦めることでこの問題は解決する。新しいISを貰い、あれは完全に破棄され、全てが丸く収まるだろう。だが、お前はそれが正しいと思ってはいない。だから私の正しさとお前の正しさは違う。故に何も言う事が出来ない。自分で考えろ堺。正しい選択というものは存在しない。結果が後から付いてくるだけだ。だからこそ、考えることを止めるな。道は見えていないだけで多く存在する」
「......難しい、話ですね」
「いずれ理解できる日が来る」
「俺は、俺は――――......また、来ます」
万掌の決意に満ちていた目をよく見れば、その瞳は迷いに揺れていた。私もまだ、教師としての底が浅いようだ。こうして生徒である万掌から持ち掛けられなければ気付けないのだから。万掌の澄んだ瞳に見られると凝り固まってしまった歯車としての自分が揺らいでしまうような気がした。だから、柄にもなく長々と背中を押してしまったのだろう。万掌は呑み込もうと必死になっているがまだ理解は出来ていないようだ。だが、今はそれでいい。悩み続けろ、万掌。考える事を止めてしまえば、人は終わってしまうからな。
そうして万掌を送り返した後、山田先生が近くにやってきた。
「堺くん、今日も来ましたね......」
「――ふぅ」
「織斑先生......?どうか、なさったんですか?」
「いえ......私にも子供が出来れば、あのような事を言う日が来るのかと思ってしまいまして」
「正しさの証明は、難しい物ですよね」
「だからこそ、社会は善悪を明確化する為に法を作ったんです。だが、今回ばかりは法の及ばない範囲の話になる」
ようやく、少し本音を漏らせる人間が近くに来たことで内に溜めこんでいた気持ちを吐き出すことに成功する。万掌は、非常に難しい場所に立っている。それこそ、その後の全てを決めるターニングポイントのような物に。山田先生も思う所があったのか、難しい顔をして判断に困る話が始まる。
「私も、教師として正しい事をしていると思っています。でも、その一方で堺くんの熱意に応えたいと思ってしまうんです」
「我々は決して揺れてはいけません。我々が揺れてしまえば、教師を正しいと思う生徒を惑わせてしまうことになる。個を押し殺し毅然とした態度で向き合わなければならないのです」
「それは、とても難しい話です。歯車として動く大人を、子供に見せるというのは......とても、とても、どうにもならない現実を、見せてしまうようで......」
「大人になったという事が、嫌になりますね」
「はい......」
山田先生は教師経験が短いこともあってか、万掌の言葉にかなり揺れている様だ。私でさえ、揺らされ掛けている。だが、教師としての立場を明確化してしまった以上、それを覆す訳には行かない。教師が生徒の前に立ち道を示さねばならない。織斑千冬という個人の意見も存在するが、それを公の場に持ち込むべきはない。それは山田先生にも言えることだ。
「――――辛気臭い話はここまでにして、山田先生。飲みに行きましょう。我々は歯車であろうとしても、人間です。たまには息抜きが必要でしょう」
「――はい、そうですね」
だからこそ、こうして疲れた心を何らかの手段で癒し、再び歯車として回るために潤滑させるのだ。いずれ、人の誰もが味わうことだろう。
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万掌
試合当日、第2アリーナ第一試合。組み合わせは一夏対鈴音。新入生でありながら両者共に専用機持ちという異例の光景に、アリーナの席はほとんどが埋まっていた。俺の視線の先にはアリーナの中央に居る二人の幼馴染。白式と
「あの肩......ヤバそうだな」
「万掌さん、何かお気づきに?」
「いや、俺がそうだと言うだけで鈴音がそうとは限らないと思うが――――本来、近接兵装というものは忍ばせておき、万が一の場合に使う物だと俺は思っている。だから最初からその近接兵装を見せるということは鈴も一夏と同じように近接兵装のみしか持っていないのかも、と最初に考えた。だがもしかしたら、あの肩に何か仕込んであるのかもしれない」
「注意を逸らす為の、近接兵装ですか」
「まだ分からないが、どちらにせよ警戒はした方が良いだろう。俺の勘もそう告げてる」
試合が進む中、白式と巨大な二つの刀を警戒に振り回して斬り合う甲龍を見ていると、巨大な肩に付いているスパイク・アーマーに目が留まりそればかりに集中してしまう。というより、無視してはいけないと直感が告げていた。それをポツリと漏らすと、隣に座っていたセシリアがそれに反応したので、俺の持論である近接兵装は最後まで隠しておくのが正しく状況によって適時使うべきだという考えを述べながら、それに沿わない鈴音の戦闘スタイルに違和感を感じると伝える。セシリアの言う通り、注意を近接兵装に集中させ、あの肩で何かするつもりなのかもしれない。故に警戒はしておいて損はないと考え――
「銃なら......」
「はい?」
「鈴のISが、仮にあの二本一対の巨大刀が主力兵装とするなら、第3世代特有の特殊兵装がないということになる。そうなった時、近距離で斬り合いながら中距離に対応するとなれば?」
「――肩に中~遠距離兵装を積んでいるかもしれないということですのね」
「ああ。俺なら絶対に、そうした戦い方をする」
「万掌さんの戦闘方法は中距離を射撃兵装でカバーしつつ高機動性を以て強襲する近中距離即応戦術ですので、あの専用機を使うのならそれが正しいかと」
途中で、もしかしたらという考えが脳裏を過りセシリアに相談を持ち掛ける。セシリアならば《ブルー・ティアーズ》のようにビットという特殊兵装を装備しているように、第3世代機というのは何らかの特殊兵装を装備していることが条件だ。だが鈴音の近接兵装はどう見てもただの武器にしか見えず、一夏のような零落白夜が隠れているとも思えない。だったらあの甲龍が第3世代機だと仮定するなら、その答えは自然と肩に行きつく。そうなった時、何を用意するかと問われれば俺なら遠距離兵装を積む。そうして近距離戦闘の弱点をカバーする。そうした自論を展開すると、セシリアは俺の戦術は俺の想角に沿った正しい戦術であると評価された。
その様に試合の展開を眺めながら、時折浮かんだ疑問をセシリアに投げかけセシリアが答える、セシリアが復習の意味で聞いてくる機動方法をどのような理屈でやっているのかとその目的を答えつつ試合を見ていると、俺たちが懸念していた甲龍の肩がスライドして中央部が外に露出する形になった。
「――やはりか!」
「あれは......『衝撃砲』ですわね」
その大きさは何かを撃ち出すには十分な空間で、それを見た俺は一気に一夏が不利になったことを悟って苦い顔を作る。セシリアは冷静にそれを観察して、思い当たる節があったのか、聞いた事のない単語がセシリアの口から出てきた。
「どういう兵装なんだ?」
「万掌さんの読み通り、あれは遠距離兵装です。空間自体に圧力を掛けて砲身を形成し、余剰エネルギー自体を砲弾として撃ち出す空間利用兵装ですわ」
「つまり砲身を必要としない、最小限の搭載スペースさえあればどこでも遠距離攻撃が可能なのか!?なんだそれは、チートだろ!」
「ええ、確かにインチキ臭いかもしれませんがもっとも恐ろしいのはその収納スペースの少なさではなく、空間自体を圧縮して砲弾にするので――ISのハイパーセンサーであっても、その砲弾を視認するのが極めて困難だという点でしてよ」
「砲身も、砲弾も見えない不意打ち特化の遠距離兵装...!しかも空間を使うということは、残弾を気にしなくていいということ!俺も欲しい!――じゃなくて、一夏の奴、大丈夫か!?」
「確かに羨ましい兵装ではありますわ。それにどうやら、射角も制限が無さそうで。真上に逃げても、真下に逃げても、背後に回っても砲口が追尾しています。本当に厄介な武装ですこと」
「益々ずるいな...!是非とも想角に欲しい装備だ。ビームマグナムだけじゃ継戦能力に不安があったんだが、あれなら幾らでも撃てる」
セシリアからの説明を聞く度に、その胡散臭い性能に驚愕する。そのあまりの性能の高さについ本音を口走ってしまったが遠距離兵装を持たない一夏は相性の観点から最悪の試合展開になってしまっている。例え接近出来たとしてもあの巨大な刀で防がれ、その間にあの衝撃砲で袋叩きに遭う。攻防に隙の無い、恐ろしいISだと理解した時には一夏は押されており、たった今零落白夜を起動した。おそらく、次の一合に全てを賭けるのだろう。
「次で決めるおつもりの様ですわね」
「ああ、だが――――!避けろ、一夏!」
思わず手に汗握ってしまい、ハラハラしつつ立ち上がって試合の展開の不利を嘆きそうになる。が、そのタイミングで眉間に電気が弾ける感覚――察知能力が一夏の危機を悟った。咄嗟に叫ぶが一夏には通じず、一夏は
真上から、何か来る。
ビーム・マグナムを数発以上受けてもビクともしなかったアリーナのシールドがいとも簡単に破壊され、アリーナの中央へ何かが落ちた。強烈な轟音と震動が第2アリーナを包み込み、アリーナは土埃に覆われていて状況を詳しく知ることは出来ない。その出来事に、アリーナは静まり返り、土煙が少しずつ晴れていき、未確認の全身装甲ISが立っていたのが見えた。そして、そのISは一夏に狙いを定め――――
「――!セシリア、避難誘導を!」
「っ、お任せを!万掌さんは!?」
「ISがない、避難するさ!」
「お気をつけて!皆さま、どうか押さず冷静に避難を開始してくださいまし!」
その場で息を呑んで硬直してしまった事に舌打ちをしてから、同じく呆然としている専用機を持っているセシリアに避難誘導をしてくれと頼むと、状況が状況なだけにセシリアは素早く対応に移りながら俺はどうするかと訊ねてきたので短く避難すると答えてその場から離れる。背中に投げかけられたセシリアの声にサムズアップをしながら、俺は管制室へと走り出した。
「――――織斑先生!」
「......堺、何の用だ。後にしろ」
「俺に、想角を!」
「今はそれどころでは――」
「――だから、使わせてください!」
管制室のドアをタックル気味にぶち破り、転がり込むように入室しつつ千冬さんの名前を叫ぶと、千冬さんは俺が此処に来た意味を知りながらも、誤魔化すようにして俺に目をくれる事無くモニターを眺め続けている。想角を使わせてくれ、と叫んだ。千冬さんはすぐに否定しようとするが、それを食い気味に被せ、再度、想角の使用許可を望む。
「――――駄目だ。お前に限らず、IS学園の全生徒を我々教師は預かっている身だ。お前を出撃させ、万が一の事でもあれば私はお前の両親に合わせる顔を無くしてしまう」
「だからって!それで一夏や鈴が狙われてるのを見過ごせって言うんですか!」
「......教師が対応に当たる。お前が出るまでも無い」
「その教師たちは!一体いつやってくるんですか!避難誘導だって出来てない、通路は生徒たちでごった返し!一夏たちが持ちませんよ!今だってああやって狙われて、アリーナのシールドを簡単に破壊する兵装に襲われ続けている!一夏も鈴も、シールドエネルギーが少ないんです!いつ落ちるか分からないんです!」
「――それでも、だ。それでもお前は教師を信じて待てばいい。我々教師を信じろ」
千冬さんはただ、信じろとばかり言う。モニターの映像は、あの正体不明のISに襲われ苦戦している一夏と鈴音がなんとか紙一重の回避を繰り返している映像が途切れ途切れに見えていた。
「それは、歯車としての回答ですか。それとも、人としての回答ですか」
「大人として、責任を伴う立場としての人間の回答だ」
「―――!ずるい事ばかり!アンタ達大人はいつもそうだ!そうやって抜け道ばかり探して!」
「聞き分けろ。ガキが騒ぐな。お前達は大人に守られていればいい」
大人は卑怯だ。そうやって抜け道を平然と用意して、何もかもを覆そうとする。――――そっちがその気なら、こっちだって!
「......どっちなんですか」
「何?」
「もう高校生だからと言ったり、今みたいに、子供扱いしたり......!」
「――!」
「俺たちは、俺たち高校生はどっちなんですか!大人なのか、子供なのか!どういう扱いをされればいいんですか!自分の行動に責任を持つ立場なんだから行動を選べと言ったかと思えば、選ぶことさえ許されず守られていればいいと言う!俺はどっちの言葉を信じればいいんですか!」
「それは......」
もう高校生なんだからと言われ、まだ子供なんだからと言われる。俺たちは、どっちの言葉を信じて動けばいいのか分からない。大人を信じていたいし、自分の中に眠る可能性も信じていたい。どっちを選べばいいのか、分からなくなる。
「織斑先生は俺に言ったじゃないですか......正しい選択をしろって。俺は、今の織斑先生の言う事は正しいと思えるんですけど......そうじゃないんです。ただ正しいだけで、人として、心のない対応にしか見えなくて......俺は、信じられないんです......」
「堺くん......」
「織斑先生は、一夏が、たった一人の家族が危険な目に遭ってて、それでも、それでもなお......歯車で在り続けるんですか?それが、大人なんですか......?」
千冬さんの言葉が全く理解できない......理解したくない。心を捨てることが大人になるという事なら、俺はこの『心』を捨てたくない。山田先生が、掛ける言葉もないのか伸ばし掛けた手を胸に戻すのが見えた。
「――――そうだ、それが大人だ」
「違う!アンタのそれは諦めだ!心をすり減らすことを恐れ、型にハマったことだけしていればいいという諦めだ!」
「......」
「アンタは正しいと思ったことをしろと言った!道は見えてないだけで、幾つも存在すると言った!それに、選択は俺がするべきことだとそう言った!だからそうしたのに、なんでそれを許してくれないんですか!」
「ガキが!いい加減、喚き散らせば思い通りに事が行くと思うな!」
「ぁが!」
千冬さんの肩を掴んで、それでもなお怒りが収まらず胸倉を掴み上げて思うが儘に言葉を吐き出した所で、一本背負いを目に見えない速度で叩きこまれ、床に押し付けられ関節を極められる。
「私とて思うところは多々ある。だがな堺、それを押し殺さねば仕事にならんのだ。私は今、教師として、仕事をする人間としてお前の命を預かっている。解ってくれ......!」
「解らない......解りません、解りませんよ......俺には、全然!解りませんよ!そんなこと!でも、解らないからって、大人だからって!俺たちの全部を否定されたら、一体、何をすればいいのか分からなくなる!大人を信用できなくなりますよ!」
「それを理解するのがお前達学生の仕事だ!」
「それはエゴだろうに!善かれと思って押し付けたことの全てが、当事者たちにとって善い物になるとは限らない!自分で考えろと言いつつ、考えを押し付けてくる!アンタは矛盾の塊だ!」
「ぐ.....!」
背中に腕を回され、そのまま体重を乗せて関節を極め続けながら顔を耳に寄せて諦めさせてくる千冬さんの言葉に反論して、頭を大きく振ってヘッドバットを叩きこむ。鼻面に当たったのか、拘束が緩んだ隙を突いて千冬さんを肘で押し退けて、距離を取りつつ立ち上がった。
「俺は――――俺は、桜井主任の為でも、先生たちの為でもない......ただ、自分の為に......あそこで戦ってる幼馴染たちを助けたいだけなんです......俺に、その力があるから――」
「それも、エゴだろうに......」
「そうですよ、これも、俺のエゴです。――――エゴだからこそ、俺は今、この場で何もしない正しさよりも、消える事のない間違いを選びます。迷って、悩んで、こうして織斑先生に暴言まで吐いて......それでも、それでも!俺は、親友を救おうとするこの行動が間違いであったとしても!俺は後悔しません!――――だから!お願いします!」
エゴを押し付け合って、何方が正しいのかもわからない。織斑先生には織斑先生の正しさがあるのだろうし、俺は俺の心の中で決めた正しいと思った事に従う。
そうでしょう!?
「――――千冬さん!」
「―――!」
千冬さんの、息を呑む音だけが聞こえた。
感想でいちかわいいタグつけてもええんやで(超意訳)と頂いたので付けさせていただきました。