Ideal・Struggle~可能性を信じて~   作:アルバハソロ出来ないマン

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この世界ではゴーレムⅠがアリーナの隔壁弄ったりしてません。

まるで何かが駆けつけてくれるのを待っているみたいですね(棒読み)



可能性の獣

『コード03、承認。第0格納庫3番コンテナを第2アリーナ西側ピットへ接続。リフトアップ開始』

 

「――いいですか、堺くん。堺くんが許されるのは3分間の戦闘行動のみです。シールドエネルギーだけは補充してありますが、その他の装備の一切は補充されていません。無茶だけはしないでください」

 

「分かっています。千冬さん、山田先生――ありがとうございます」

 

「......ふん、子供が何かをやりたいと言っているのだ。それを支えてやらなくて、何が大人だ。いいか万掌、今回の件で発生した責任は私が全て背負ってやる。お前はただ、自分の安全のことだけを考えて戦え。いいな」

 

「――――はい!」

 

無機質なアナウンスが聞こえる中、制服を脱いでISスーツに着替えながら山田先生にそう言われ、使用可能武装はセシリアと闘いが終わったままの状態だと改めて告げられる。それに前も聞いたという意味で把握していると返し、千冬さんと山田先生に無茶を聞いてもらった事を感謝した。すると千冬さんは、自分が押し負けた事に恥じているのか、僅かに耳を朱に染めてそっぽを向きながら、それでもしっかりと大人の在り方の1つを示してくれた。その後、全てを背負ってやると言った千冬さんの顔はとても素敵で、俺もこんな大人になりたいと憧れを抱けるものだった。信じてくれた千冬さんや山田先生、その他大勢の先生方からも支援されて俺は今、想角に再び乗れる機会に巡り逢えた。俺はその信頼に応えなければならない。

 

『リフトアップ完了。コンテナ解放。注意、取扱危険物収容コンテナです。注意、取扱危険物収容コンテナです。解放中、注意してください』

 

眼前の搬入口のフロアがエレベーターの様に上に上がっていき、押し上げたコンテナがその姿を現す。赤色の警告灯が鳴り響くブザーと共に回転しその巨大な扉を施錠している縦3段のオートロックが外され、X字を形成するように掛けられた斜めのロックも同様に外れていき、コンテナが開けられていく。

 

「――......」

 

「堺くん。気を付けて」

 

コンテナの扉が完全に開放され、ブザーと警告灯が止まりコンテナ内の天井に設置されたオレンジの蛍光灯が点灯し、その中央部に存在する大量の鎖で繋がれた想角が暗闇から浮かび上がる。それを見た千冬さんは息を静かに呑み、山田先生は俺の身を案じて声を掛けてきた。二人の不安を拭う為に振り返ってからサムズアップをし、想角の下へ駆け出す。

 

「想角、聞こえていなくてもいい。大勢の人たちがお前は危険なISだと言うんだ。操縦者を兵器のパーツにする、とても危険な兵器だと。俺も、資料を見せてもらった。製作者の意見も書いてあって、疑い様がなかった。だけど、それでも俺はお前を選びたい。山田先生っていう、少し慌ただしい先生だけど、すごく人間的にカッコいい人がいてさ。その人が、俺に教えてくれたんだ。ISと操縦者は互いが互いを理解しあうパートナーのようなものだって。だから、俺はたった1度しかお前に乗ってないし、お前だって俺をほんの数十分程度観察しただけだ。そんなんで、俺たちが互いを把握しあえるなんて思ってない。だから、俺はお前が殺人マシーンなんかじゃない、もっと別の可能性を秘めたISだって信じてる。お前を俺の下に送り届けてくれた人は、お前を殺人マシーンだと言って罪の意識に捕らわれてる。お前を使わせてしまった大人たちは、俺みたいな子供に残酷な仕打ちをしたと苦しんでる。でも俺はそうは思ってない。だから、だからな、想角......お前に意識があるのなら、俺の心を理解し、お前に掛けられた重りを取り除きたいという意志があるのなら......俺と共に、闘いたいと言うのなら、俺の声が聞こえているのならば――――俺の声に従えッ!来い『想角』!!!」

 

想いの丈の全てを想角に触れながら語り掛けた瞬間、想角を縛り上げていた鎖が一斉に解き放たれ、待機状態だった想角が独りでに装着状態へと展開し、そのまま怯えるようにゆっくりと俺に手を伸ばし始める。それの意味を理解した俺は嬉しさから笑い、想角の手を此方から掴んだ。

 

「一緒に行くぞ想角!俺を宙へ、仲間たちの下に連れていってくれ!」

 

その言葉に呼応するように装甲の内側から赤い光を一瞬放ち、想角は俺の周りを3周ほど回転した後、背後に回り込んで俺を抱きしめる様に包み込み――俺は再び想角を身に纏った。しかし、今回はそれだけで終わらず更に装甲自体が輝きを放ち......想角の一次移行(ファースト・シフト)が完了した。

 

「一次移行......!」

 

「......認めた、のか?」

 

山田先生が驚愕の様子で呟き、千冬さんも僅かに瞳を開いているのが見える。だからこそ、心配は掛けさせまいと静かに機体を浮かしてカタパルトレール内へ移動を開始する。

 

「いいか、想角。お前は俺の感情を読み取り、それを力に変えるマシーンなんだ......だから、俺と一緒に闘ってくれ。お前だけじゃない――俺も一緒に、だ」

 

装甲の継ぎ目から漏れ出す赤い光は徐々にその彩度を増していく。ISにも心があり、解りあえた。だから、想角だけにやらせはしない。俺も、何処までも一緒に闘う。

 

 

 

 

(――――仲間を助けに行こう、想角

 

 

――パイロット保護機能解除...解除拒否。システム掌握...共有へ変更。装甲連結解除。『NT-D(NewType-Drive)』作動。

 

 

 

一瞬だけ、真っ赤な光が翡翠色の虹を伴う輝きを宿すが即座に赤を取り戻し――装甲各部の連結装置が解除され、『デストロイモード』が発動した。

 

「万掌!」

 

「堺くん!」

 

千冬さんと山田先生が叫ぶが、その心配は杞憂に終わる。頭部の"変身"が開始されるが、覆面のように口元を覆っていたマスクはバイザーと共にやや前方へ展開し、左右のサイドアーマーが回転して降りてくる人型のマスクと()()()()()ように変形した。俺の目の位置に収まるように移動し、装着され直したソレが全天を見回す全方位視界を提供し――純白のブレードアンテナが左右に割れ、V字アンテナへと変形し、周囲に自分の存在を誇示するかのようにフレームから迸る緋色の光を外へ溢れさせた。

 

「――――大丈夫です。想角は、俺と共に在る」

 

「――と、いうことは」

 

「はい、制御できました」

 

「......よし!万掌、即時出撃だ!行ってこい!」

 

「了解!堺万掌、IS『想角』――強制解除!」

 

今度は手綱を握れている、問題ない。そう告げると千冬さんは即座に俺の背中を叩いて発進を許可したので、それに応えるように声を張り上げてカタパルトレール内から千冬さんと山田先生が退避したのを確認し、そのまま想角の出力を引き上げていく。あの時はただ耐えるだけだったこの推力を自分で操作出来る事に感動を覚えながら、通常時とは比べ物にならない速度でアリーナへとその身を投げ出し――鈴音を襲わんとしていた全身装甲の未確認ISを見やる。肩と頭が一体化しているようなデザインで、腕が爪先よりも長く、歪な形をしていた。同じ全身装甲タイプでも、想角がどれだけデザイン性に優れているのかが分かる瞬間だった。右腕に収納されたホルダーからビーム・サーベルのグリップを180度回転して展開させながら、抜刀せずそのままマゼンタ色の刀身を形作り、ビーム・トンファーを鈴音に狙いを定めていた射撃兵装に突き刺した。

 

「バンショー!」

 

「はぁ!?これが万掌!?」

 

絶対防御が作動していないという事は、それは武装であり破壊しても問題ないということだ。操縦者を傷つけることがないと理解した俺はビーム・トンファーを突き刺したまま、『デストロイモード』と化した事で手に入れた出力に物を言わせ、スラスターから噴き出す真っ青な噴射炎を色濃くさせながら、徐々にではあるが射撃兵装を溶かし、焼き切っていく。

 

「......!」

 

兵装を焼き切られていくのを眺めていた未確認ISが空いていたもう片方の手を此方に向けた事で、鈴音に向いていたヘイトを此方に移せたと確認する。即座にビーム・トンファーを収納し、最大出力でアリーナ上空へ逃げると、ノロノロと動いていた先程とは違い俺の危険性を数段階引き上げたのか機敏な動きで両腕の射撃兵装の4基中3基がビームを散らしていく。

 

「――――ぐ、ぅうううう、――ウォオオオオオアアアッ!」

 

想角がその射線を予測し、それを回避する為にかなり無茶な軌道を描いて逃げてくれる。が、その都度急停止や鋭角回避軌道を取るのでそれに耐え切れず苦悶の声を上げると想角が速度を緩めるので、俺の事は気にするなと吼えると再び出力を上げ始めた。サイコフレームが放つ光が尾を引いて僅かに残っていくので、それを見ていれば俺がどれほど頭のおかしい挙動で回避軌道を取っているかが分かるだろう。

 

「バンショー大丈夫!?ハイパーセンサーでも追いきれないんだけど!」

 

「俺の心配はいいッ!それより、注意を引きつける!遠距離武装がないから、3機で同時に畳みかけるぞ!」

 

「ダメっ!私のエネルギー残量が少なくて、ちょっと厳しいの!」

 

「――!じゃあ、なんとかしてくれ!それまではこっちで対応する!」

 

一夏が個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)で無事を訊ねてくるが、無事を気にするくらいならさっさと終わらせてしまった方が身体に掛かる負荷は軽いと考え、3機同時攻撃を挑むと返すと、一夏の白式はもうほとんどエネルギーがないのか鈴音が一夏の前に立ち、何時でも攻撃を防げるように盾になっているのを確認して顔を顰めてしまうが、すぐに気持ちを切り替えどうにかして攻撃手段を確保しておくように伝えて一度通信を終了させる。

 

「......」

 

対空攻撃は意味がないと理解したのか、動きを止めた未確認ISはその腕から発する砲撃も停止させ――まっすぐ両腕を大きく開いたと思ったら、そのまま機体を独楽のように回転させながらビームを撒き散らす、子供の駄々のような攻撃方法を取ってきた。

 

「なんだ、そりゃあ!」

 

高出力が故に小回りの利かない状態のままスラスターを軽く噴かしただけでも10mは裕に移動してしまう想角を必死に微調整させて回避軌道を取るがそれでもまぐれ弾が時々直撃し、シールドエネルギーが削られていく。ふざけた攻撃ではあるが、高出力機であるとランダムに蒔かれる弾幕ほどやり辛い物はない。しかも射撃武器だけならまだやり用はあるが、奴はその巨腕を利用して殴りかかってくる始末だ。動けるパターンが制限され、その制限された空間の中から回避軌道を行い逃げるがビームを掠ってダメージが蓄積していく。

 

「バンショー!鈴に背中撃ってもらうから、それを合図に突っ込むね!」

 

「はぁ!?せ...はぁ!?」

 

「詳しく説明してる時間ないのよ!合わせなさい、万掌!」

 

時折回避軌道から反転、全力噴射で急接近し、その長すぎる腕を潜り抜け懐深くに入りつつビーム・トンファーを突き立ててエネルギーを削るが攻撃可能時間は短く、余り大したダメージも入っていない。これではダメだと思い、ビーム・サーベルの出力を引き上げようとしたタイミングで一夏から再び通信が入り、話し掛けられた内容を理解できずに驚愕していると、鈴音から時間がないから合わせろとだけ短く伝えられる。背中撃つって、何考えてんだ!

 

「行くよ!バンショー、鈴!」

 

「ほんと、どうなってもしらないからね!」

 

「――く......ああ、目晦ましくらいはやってやるさ!」

 

結局短い時間の中で、別の攻撃手段を思いつく事の出来なかった俺は仕方なしに一夏の作戦に乗った。想角が出力を引き上げ、紅蓮の残光がより鮮烈にその軌跡を残しながら多角形軌道を描きつつ、徐々にではあるが未確認ISの近距離圏内に飛び込む。左右の腕部から折り畳まれたビーム・サーベルのグリップを展開し、更にバックパックのスラスターから伸びる2本のビーム・サーベルを引き抜いて疑似4刀流を完成させ、4本のグリップ全てから伸びるマゼンタ色で形成された刀身は出力が上がっていくに連れて純白へと変化し、高出力モードへと切り替わったサーベルで斜め上下に挟み込むように振るい、一息で右腕の武装を溶断してから手にしていたビーム・サーベル2本を左腕の砲身2つへ突き刺した所で未確認ISからカウンターパンチを食らい吹き飛ばされた。

 

「――今だ!」

 

「ありがとう、バンショー!」

 

吹き飛ばされた衝撃でアリーナのシールドに展開したままの高出力ビーム・トンファーが突き刺さり、再形成されたばかりのシールドが再び消滅した。だが、既に避難は完了しておりアリーナは無人になっているため、シールドが割れても人的被害は出ない。今一度立ち上がろうと想角を動かすが『デストロイモード』が限界を迎えたのか、サイコフレームから発する光が消滅し、ビーム・トンファーが使用不可能状態になり強制的にその刀身が収納されグリップ部分が折り畳まれる。輝きを失い灰色になったフレームを覆い隠すように展開していた装甲各部位が元に戻っていき、V字アンテナはブレードアンテナに、人型のマスクは無機質なバイザーへとその姿を変えた。アリーナの席を少し押し潰し、埋まってしまっている俺の数メートル隣にやってきた人物に目をやれば、視線を感じたのかその人物は、毛先のロールした金髪を優雅に靡かせ、耳に付けた真っ青なイヤリングを見せつけながら上品に笑った。

 

一夏が鈴音の衝撃砲で得たエネルギーで右腕を失ったISに急接近し、零落白夜を使い残った左腕を切り落とすだけに留まらず、零落白夜にシールドエネルギーが根こそぎ食われた未確認ISは、操縦者保護機能を奪われた。しかし、そこで白式が強制解除され、一夏が未確認ISの前で生身の体を晒してしまう。

 

「――信じてるからな」

 

「ええ、お任せください。私――セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの射撃は、正確でしてよ」

 

隣に立っていた友人に声を掛けると、その期待に応えんとばかりに瞬時に展開された4基の《ブルー・ティアーズ》が防御能力を失った未確認ISの装甲を容赦なく一方的に撃ち抜いていく。

 

「再起動されないように徹底的にやってくれ」

 

「ええ、勿論ですわ」

 

埋まったままの想角の肩に座りながら、ビットだけを展開したセシリアは無駄な動きの一切をせず、的確に未確認ISの装甲を焼き落としていく。一度再起動した様に思えた未確認ISだったが、ダメ押しのレーザーの雨により今度こそ完全に機能を停止させたようだ。

 

「友人に助けを請われれば、私セシリア・オルコット、何時でも馳せ参じましてよ」

 

セシリアはそう言ってからISを完全展開し、埋まったままの俺を引き抜いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。うやむやのまま終わったクラス対抗戦の最中に起きた未確認IS襲撃事件の裏側に携わった一夏、鈴音、俺、セシリアは誓約書を書かされ、全生徒に箝口令が敷かれたことで話題にする事さえ咎められたそれは、誰もが気にしていながらその一切を口にすることは無く――あれから特に問題も起こらない、普段通りの日常を教室で過ごしつつ、手の中に納まる物を眺めていると谷本さんと鷹月さんに声を掛けられた。

 

「あれ、堺くん?なーにしてんのっ!――あ、それ!」

 

「え、なになに?あ、もしかして!」

 

「ああ、帰ってきたんだ」

 

「嬉しそうだねー」

 

「――もう帰ってこないかも、って思ってたからさ」

 

「あはは、何ソレ、大袈裟!ただの修理だったんでしょ?あー、でも分かるなぁ。ちょっと考えちゃったりするよね」

 

「だから、帰ってきてくれて喜んでるのさ。――おかえり、想角」

 

手の中に納まる、首に掛けられるように鎖が付いた純白のブローチは一角獣の首から上をイメージした形状をしており、その目には翡翠の宝玉が嵌められている。おかえり、と声を掛けると、想角はその瞳を僅かに光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

桜井

 

「主任。我々は――――」

 

「ああ、解っているとも。我々は彼に救われた......あの歳の子供が、我々の罪を赦し、拭ってくれた。ならば我々は彼の為に、出来る事をするとしよう。それが、子供を応援する大人がやるべきことだ」

 

「ですね、主任」

 

堺万掌。制御不可能と投げ捨てられた暴走機『想角』の手綱を握り、それに認められた少年。あれを見せられては我々としても黙っているワケには行かない。恩返しの意味を籠めて、彼の為に追加装備を作る。我々研究者に出来る事は、それくらいしかないのだから。

 

 

 

 

 




これにて1巻分は終了です。

ゴーレムⅠ戦の描写増やそうと思ったけどこっちの箒とか絶対そんな事せんやろって思ったので大人しくさせたりしてたら予想以上にペラくなりました。ゆるして
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