Ideal・Struggle~可能性を信じて~   作:アルバハソロ出来ないマン

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オリ主の心が僅かに折れる回です。

オリ主は本当に片付けが出来ません。千冬さんを参考に全部の家事を一夏ちゃんにやらせたら絶対こうなると思います。

なんとかギャグっぽさに舵切りたかったんですけどギャグセンスないから......


第18話

5月末日。

 

「万掌さん!回避をユニコーンに任せすぎていますわ!だからこそ――そこ!」

 

「――ぐ、まだだッ!いけるな、ユニコーン!」

 

学年別個人トーナメントに向けて俺はセシリアに模擬戦を依頼していた。理由としては新兵装の照準調整や一次移行によるユニコーンのスラスター推力比の調節に加え、何よりも『デストロイモード』が制御可能になったことでそっちの出力確認や推力比調節の早急な確認が必要だったことと、何より実践経験が圧倒的に薄いのでそれを補う意味も含めて機体を動かしている。

 

セシリアもセシリアで、ビットの攻撃やレーザーをタイミングよく無効化されてしまっていては勝負にならないので俺の癖や動きを把握し、類似した兵装が登場しても動揺することなく的確に攻撃を行える訓練の意味が強い模擬戦だ。つまり、これは互いに利益のある行為であり目的もはっきりとしていた為初めてやり合った時よりもお互いの動きはかなり変化していた。

 

セシリアはビットの操作に夢中になると本体の動きが止まってしまう弱点を、直線的な加速で移動しつつ慣性で宙を滑っている間にビットを操作することで直線的な軌道でこそあれど足を完全に止めることのないビット操作を可能にした事で克服している。それに対し俺は、アームド・アーマーDEの追加によって増設されたスラスターに振り回されながらなんとか自分の好みにあった出力に絞ることに成功し、『デストロイモード』時には却って制御することを放棄しユニコーンに全ての機動を委ね、俺は武器を超音速戦闘下で当て続けることを目標にしていた。頭部マシンガンも非常に威力が上がり、セシリアのビットに5発も叩き込めればその機能を停止させるほどの威力を発揮するようになったことで問題なくサブ武器として取り回せるようになり、総合的に火力が向上している。また、アームド・アーマーDEのビーム・キャノンによってビーム・マグナムを撃たずとも牽制射並びに主力兵装として振り回すことが出来るようになっている。あとこれは、桜井主任達には秘密だが意外と鈍器としての性能も高く、瞬時加速によって急速接近してから思い切り殴りつけることでそこそこの威力を持ったシールドバッシュを放つこともできる。が、それは飽くまで武装が全て無くなった最終手段であり、ビーム・キャノンもあるので基本は遠距離兵装とシールドが一体化したモジュールだと考えている。

 

「セシリアも、実弾兵装を要求したらどうだッ!」

 

「既に要請していますが、本国の上は頭が堅い様でして――《ブルー・ティアーズ》の試験だけしていればいいというのですッ!困った御方たちですこと!」

 

「だったら、俺との戦闘データを提供すればいい!『Iフィールド』があればその特殊兵装は意味がないと、最前線に居る兵士の経験を教えてやれ!」

 

「......よろしいので?」

 

「俺のアームド・アーマーDE(コイツ)はイギリスのビーム技術提供によって成り立っている物だ。まぁ桜井主任に前もって相談はしたが、別に言い触らされて困る技術でもないと言っていたし、問題はないだろう!」

 

「その言葉、後悔する日が必ず来ますわよ!」

 

「もうしてるさ!一方向に盾を構えさせて、残った3基の集中攻撃!またビットの操作能力が上がったんじゃないのか!」

 

両脚部にマウントされた3連装ミサイル・ポッドをオンラインにし、アイトラッカーによってビット4基全てを即座にロック。当たってくれればいいレベルの考えで、左右から2発ずつ単発でミサイルを速射し、右手に持ったビーム・マグナムを左手でフォアグリップを握りながらセシリア目掛けて構える。トリガーを押し込んだ瞬間に内部の冷却システムが大きく唸り声を上げて冷却を開始し、エネルギーパック内のエネルギー全てを砲身が吸い上げ32基の荷電装置を通過して増幅されたオーバーヒート寸前の破壊力の塊が砲口にチャージされていく。空間を歪めて光を押し退けるほどの密度を獲得した白光球の周囲に、そのエネルギーの高さを証明するかの如く放電現象が誘発されながら解き放たれた。真っ白な太陽を追尾していく赤と青の線に紫電が迸る拡散ビームがセシリアの回避先を塞ぐように空間を抉り取りながら突き進んでいく。それをセシリアは直角上昇に切り替えることで射線から容易く逃れていき、俺はビーム・マグナムが決定打にならない、対策の講じられた武器だと思って歯噛みしてしまう。コイツを当てるには綿密な誘導か、2発以上の誘導射撃をして射線に誘い込んでから撃つ必要がありそうだ。それに、ビーム・マグナムは足を止めながらでないと安定して撃てない為、避けられるとノックバックの反動を押し殺している間に必ずカウンターを貰ってしまう。強い兵装ではあるが、弱点もそれなりにある。報告はしておいたが改良は難航しているらしい。ビーム・マグナムをまたやられては困るので頭部マシンガンをオンラインにしつつ、ビットを追い続けているミサイルが撃墜されない様にセシリアを追い払いながらスラスターを吹かして一気に接近する。するとセシリアは一度ビットを完全格納状態に戻し、自身のシールドエネルギーでミサイル4基のダメージを吸収した後で再度ビットを射出して攻撃を仕掛けてくる。アームド・アーマーDEを展開し、正面のレーザーとビット1基の攻撃を拡散させ無力化するが、後方に回り込んだ3基のビットからの集中攻撃を受けてシールドエネルギーが大幅に減る。

 

「私も、負けていられないということです。機体に頼っているだけで勝てるほど甘い女じゃありませんわ」

 

「――なら俺も、負けてられないな!」

 

「その目ですわ万掌さんッ!闘志を滾らせなさい!」

 

「ああッ!行くぞセシリア!――――ユニコー」

 

『アリーナ使用時間終了です。両名、ピットへ退却してください』

 

「ォン......」

 

「――――ふぅ......今日はここまで、ですか」

 

「......の、よう......だな」

 

「そこまで落ち込みますの?」

 

「だって、気分最高潮でデストロイモードになろうとしたら......これだよ」

 

「お気持ちも分からないことはないのですが、切り替えていきましょう。どうです?お茶でも飲みながら反省会というのは」

 

「......そうしよう」

 

セシリアも日々、成長を続けているらしい。俺も強くなりたい、強くなって、一夏を守りたい。あの日、守れないと嘆いた俺の言葉を覆す為に、一夏だけでも守れるようになりたい。そう思ってユニコーンに俺の想いをぶつけると、ユニコーンはそれに呼応してサイコフレームを熱く滾らせ始める。今ならイケる、そう思って声高々にユニコーンに『デストロイモード』を発動させようとした所でアナウンスが掛かり、アリーナ使用時間を使い果たしたことを知らせてきたことで一気に萎えてしまった。セシリアも昂っていた様子だったが、目を伏せ深呼吸を数度繰り返し気持ちを切り替えたようでビットを収納し、手にしていたスターライトmk3も粒子に変えて格納した。俺もそれを見て本当に気落ちしつつビーム・マグナムを仕舞い、砲口を向けていたアームド・アーマーDEを初期位置に戻す。オンラインのまま放置されていた頭部マシンガンと両脚部の3連装ミサイル・ポッドをオフラインに切り替えてすっかり輝きを失ってしまったユニコーンと共にアリーナを後にし、ピットを抜けてセシリアとのお茶会に向けて更衣室で制服に着替えてから、セシリアとの反省お茶会を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お引越しです」

 

「「はい?」」

 

「織斑さんのお引越し先のご都合が付きましたので、ご連絡しに来ました。年若い男女が同室というのも、かなり問題になっていまして。ようやく1つ解決できました」

 

その日の夜。一夏が部屋の掃除を終わらせて一息ついていたので、セシリアから頂いた紅茶をメモに書き留めた通りの手順で淹れていき一夏に提供してやると、美味しいと言いながら味わう様に飲んでは頬をだらしなく緩めているので、本当に美味いのだろう。セシリアに感謝をしながら二人でゴロゴロと過ごしていると、寮の部屋をノックしてから俺と一夏の名前を呼ぶ山田先生の声が聞こえたのでドアを開け、招き入れると開口一言目に一夏の引っ越し先が決まったと告げてきた。俺の入学で色々とトラブルがあり、そのうちの一つがこの男女同居問題だったのだろうが、俺の個室は用意出来なかったらしく代わりに一夏の部屋が用意できたとの事だった。

 

「えっと、バンショー......その、ね?......一人で部屋の片付け、できる?」

 

「無理」

 

「洗濯物畳むのは?」

 

「グッチャグチャでいいなら」

 

「お、お風呂掃除は?」

 

「何とかできる」

 

「トイレ掃除」

 

「無理」

 

「――あ、甘やかし過ぎたー!」

 

「詰んだ......」

 

これで同室じゃなくなったか、と一人感慨深く耽っていると一夏は何やらギチギチと首を此方に回し迷子になった子どもに話しかけるような優しい口調で俺に部屋の片付けが出来るかと訊ねてきた。あっ無理だ。洗濯物は皺だらけでいいなら畳めるがそもそも洗い方を知らない、一夏が全部やってしまっていたから。風呂掃除は俺がたまにやっていたので何とかできる。トイレ掃除なんてしたことすらない。一通り聞いたのか一夏はわなわなと震え出し、一人頭を抱えて蹲ってしまう。俺は逆に手で顔を覆い天井を見上げてこの残酷な別れを嘆いた。

 

「お願いします山田先生!私をこのまま万掌の同室に置いてください!じゃないと万掌は明日から皺だらけの学生服着たダメな感じの男子高校生になっちゃうんです!」

 

「えぇ!?そんなこと言われましても!ダ、ダメですよぉ、男女が同室なんていうのは!」

 

「いちかぁあ~」

 

「堺くんからすごいダメ男オーラが!しっかりしてください堺くん!堺くんなら出来ますよ!」

 

「違うんです先生、多分万掌は出来ると思うんですけど、私が全部小学校の頃から何かに付けてやってたら楽しくなってきちゃって、中学校に上がってからは自分から進んで全部やってたらこうなっちゃって......!」

 

「小学校の頃から!?堺くんがこうなった原因が完全に織斑さんのせいじゃないですか!」

 

「だから困ってるんです!お願いします先生、万掌がダメ人間になっちゃう!」

 

「母さんも居ないしなぁ......ああ俺、本当に色々な人に支えてもらって生きてきたんだな......ユニコーン、俺たちも誰かを支えていこうな......それもきっと、解りあう為に必要な物なんだよ」

 

「戻ってきてよ万掌!ほら先生、いいんですか!?万掌があんな風(何処か遠くを見てる感じ)になってますよ!」

 

「これは想定していませんでしたけどぉ......ダメな物はダメなんですよ、織斑さん......可哀想ですけど、堺くんには明日からこんな感じで......えぇ......うぅん......ど、どうしましょう」

 

一夏が俺のダメっぷりを指差しながら、明日から俺が見るも耐えない冴えない感じのキャラになって登校することを危惧して同室に留まろうと山田先生に嘆願するが、山田先生もようやく解決したと思った問題が拗れ、ここにきて新たに浮き出てきた俺の負の側面を知って驚愕しているのか非常に困惑している。普段通りに一夏の名前を呼んだはずなのに心が折れてしまっているせいか非常に情けない声が出てしまった。両膝を着いて絶望にうちひしがれていると山田先生は肩を揺すりながら俺なら出来ると俺の可能性を信じてくれた。しかしそれに待ったを掛けたのが一夏だった。

 

一夏は事ある毎に小学校の頃から俺の世話を焼き始め、最初の頃は文句を言いながら俺にやらせたりもしたのだがそれも時間が経つに連れて何も言わなくなり、むしろ俺がやろうかなと言い出すと即座にそれを咎めて自分からやり始め、更に性別が変わってからは積極的にやるようになってしまったことを山田先生に悔いながら報告すると山田先生が俺がこんな感じになってしまった事の発端は一夏にあると本当に驚いていた。思えば、部屋を掃除するのはほとんど一夏で、たまに母さんが掃除に来るくらいだった。料理も一夏か母さんがしていたし、俺は本当に飲み物を淹れることくらいしか出来ない。洗濯のやり方も、服の畳み方も適当で何となくでしか分からない。洗剤と柔軟剤の違いも分からない俺は誰かと手を取り解りあえるのだろうか。

 

ああ、俺は本当に色々な人に助けてもらい、支えられて生きてきたんだ。なぁ、ユニコーン。俺たちも、そう在れるように生きていこうな。手にしたユニコーンのブローチにそう言葉を投げかけると、瞳に埋め込まれた翡翠が光を放ち俺に共鳴したように思えた。その様子を見た一夏は山田先生に縋りつきながらむしろ脅すような勢いでダメになっていく俺を指差して訴えている。山田先生も引っ越しの案内を伝えに来ただけでこんなに深刻な事態に直面すると思っていなかったのか非常に悩みながら抜け道を探している様子で、あれやこれやと考えを巡らせては頭を悩ませ、解決策が見つからなかったのか山田先生まで頭を抱え出した。

 

本当に解決策がないのか?俺がこのまま、ダメ人間として完成してしまって終わりなのか?

 

違う。俺は、誰よりも俺の可能性を信じているはずだ。他人を信じるのに自分を信じられないわけがない。

 

 

 

「――――......一夏」

 

「!? 万、掌......」

 

「俺は、一人でも......大丈夫だ。やってみせるさ」

 

「堺くん......」

 

「万掌......!立派に、なって――!」

 

「俺は信じる。俺が一人でも掃除も、洗濯も、何もかもが出来る可能性を信じている!」

 

「――頑張ってね万掌!私も応援するから!」

 

「なんでお引越しだけでこんな感動物っぽい雰囲気になるんですか......?」

 

 

誰かに頼る時も必要だが、それは今じゃない。俺は一人でも大丈夫だと一夏に伝え、泣く泣くの別れをした。

 

 

伽藍堂になってしまった部屋で寂しさを覚え、一夏という存在の大きさを改めて実感し、一夏はあんなにも俺の心を満たしてくれていたのかと自覚した。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「おっはよー堺くん!って、すごい顔してるけどどうしたの?」

 

「おはよう鷹月さん......いやちょっとね。アイロン掛けが思ったより難しくて」

 

なんとか制服の皺だけでもと思いアイロンを掛けてみたが皺を伸ばすのが思った以上に難しく、蒸気の吹き出る部分を間違えて触り火傷した親指と人指し指の保護された部分を見せながら、俺は少しはにかんで見せた。

 

一夏は目頭を熱くしていた。

 

 

 

 

 

 

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