Ideal・Struggle~可能性を信じて~ 作:アルバハソロ出来ないマン
すごい今更ですけど原作よりだいたい皆強くなってます。
これから先は原作キャラもオリ主の影響で装備とか変更して、よりオリ主対策を取ったISにしていくことになるかと思います。
古戦場という逃げられないイベント(義務)が始まったので更新がやや不安定になります。
ご了承ください。
シャルロットのこれからを千冬先生に話した翌日。
昼休みも終わりに近づき、午後の授業で使う教材を一度取りに寮まで戻ってきた帰り道でのことだった。
「――なぜ、こんな所で教師など!」
「......やれやれ。何を言い出すかと思えば、またそれか。いい加減に何度も同じことを言わせるな。私には私の役割がある。それだけだ」
「このような極東の地で、どのような役割があるというのですか!」
「私も教師という仕事は最初は仕方なくだったが......ふっ、なかなかどうして遣り甲斐というものを感じている私だ。生徒に頼られ、生徒に信じられ、助けを請われ、生徒が望む大人で在り続ける。ひどくむず痒い感触のそれが今では心地の良い物になりつつある。この日本の、IS学園で私が持った役割は多いが、今、私が果たすべき役割は生徒を守ることだ。これ以上の遣り甲斐のある事をした事はない」
「――っ、お願いします教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力の半分も活かされない。それに、我がドイツであれば教官はより遣り甲斐を得られることかと存じます」
「ほう」
「だいたい、そもそもこの学園の生徒など教官が教えるに足る存在ではありません」
「なぜだ?」
「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かだと勘違いしている。そのような者たちに教官が時間を割かれるなど――」
「――そこまでにしておけよ、小娘」
「――!」
「15歳にしてもう選ばれた人間気取りか。見ない間に随分と偉くなったものだ」
「わ、私は......」
「さて、次の授業が始まるな。さっさと教室へ戻れ」
「......失礼します」
校内の一角で騒いでいた生徒はボーデヴィッヒで、それを訊いていたのは千冬さん。そのまま無視して通り過ぎようとも考えたが、事ある毎に一々見下してくる奴の対処には飽き飽きしていた。なのでそのまま事が過ぎるまで隠れてやり過ごすことにした俺は、ボーデヴィッヒの言葉に思う所は多少はあれど、それに完全な同意を示すことはできなかった。千冬さんにしては珍しく明るい声色で今の仕事が楽しいと言っていたものだから、驚いて声を上げかけた。そして、生徒に頼られるのが良い物だと言ってくれたことで肩の荷が少し降りたような気になれた。ボーデヴィッヒはその後もドイツに帰ってきてくれと言っていたようだが千冬さんにドスの利いた声で脅され、静々と帰っていった。そろそろ俺も移動するかな。
「で、こんな所で盗み聞きとはな。異常性癖とは感心せんぞ、堺」
「......ボーデヴィッヒに絡まれたくなったんですよ。問題は起こさないように言われたので」
「くくく、そうか。感心な態度だ」
「――織斑先生」
「なんだ」
「シャルルの事、本当にありがとうございました」
「気にするな。盗み聞いていたなら知っているだろう。生徒を守るのが私の、今果たすべき役割だ。故に堺、お前も果たすべき――為すべき事をしろ」
「勿論です。俺は絶対に投げ出しません」
「だろうな。よし、見逃してやるからさっさと教室へ行け」
「ありがとうございます!」
何事も無かったかの様な顔で廊下を歩き出そうとすると何時の間にか隣に居た千冬さんに声を掛けられ、ボーデヴィッヒと問題を起こしたくなかった、千冬さんにも止められていたから避けるのは当然だと答える。すると千冬さんは何が面白かったのか小さく笑い、僅かながらに見上げながらその吊り上げたままの口角で俺を褒めながら肩を数度叩く。これ以上弄られるのも何か釈然としないので話題を逸らす為にシャルロットの事(自室ではシャルロットと呼び、それ以外ではシャルルと呼んでいる)を話題に上げ再度頭を下げると、千冬さんは盗み聞いていたなら、と前置きをしつつ自らの役割を説明し、俺にもやらなければならない事があると教えてくれる。だからこそ、途中で投げ出す事はしないと宣誓すると、幼稚園から今までの俺を知っている千冬さんは目を伏せて何も見ていないから走ってもいい、と言外に伝えてきたので、それに甘えて軽く走らせてもらい、俺は無事5限目に間に合うのだった。
放課後。
「バンショー、今日も模擬戦やるよね?」
「ああ。今日使えるアリーナって何処だったか」
「第3アリーナだっけ?」
「では、行くとするか」
シャルル、一夏、箒を引き連れて廊下を歩きつつ時折話しかけてくる女子生徒たちと一言二言話しながらアリーナを目指していると第3アリーナが近付くにつれて喧噪が聞こえ、次第に俺たちを追い抜いて走っていく女子生徒まで現れる始末。その異常事態に只事ではない何か起きているのかと状況を聞くために女子生徒に声を掛けようとした。
「堺くん!」
「国津さん、今日って利用者少なかった気がするんだが、何かあったのか?」
「それがね、セシリアさんと凰さんが――――ボーデヴィッヒさんと模擬戦やってるって!それで私、急いで堺くんの事止めに来たんだ!堺くん、織斑先生に言われてるんでしょ?問題を起こすなって。絶対にこれ、堺くんを誘い出す為にやってるんだよ!だから、行っちゃダメ!」
「あ、玲美!ヤバいよ、セシリアさんと鈴ちゃんがもう一方的に...って...堺...くん......」
「さゆか!バカ!」
「ご、ごめんね玲美!堺くんも聞いた事忘れて!」
「万掌、我慢だよ」
「分かってる」
「ぼ、僕が様子を見に行こうか?」
「いいやデュノア、行く必要はない」
「ありがとう、国津さん。知らずに行っていたら何をするか分からなかったと思う」
国津さんに軽い事情の説明を受け、その直後に夜竹さんからセシリアと鈴音の状況が好ましくない旨を意図せず伝えられる。一夏は感情を殺した様に呟き、俺はそれに短く返す。シャルロットが偵察を申し出るがそれを箒が却下する。ボーデヴィッヒは俺や一夏が一向に勝負に乗らない事に業を煮やしたのか、ついに俺や一夏の友人に手を出す事で俺たちを釣り出す事に切り替えた様だ。俺はわざわざ止めに来てくれた国津さんに感謝の言葉を伝えた。
「う、うん......行かない、よね?」
「セシリアや鈴がどういう立ち回りで動くのか、見ておきたいから行く」
「わー!ダメ、ダメだって!」
「大丈夫だよ。いざとなったら僕が止めるから」
「という事で、通らせて貰う。わざわざ来てくれたのに、ごめん」
「わ、私たちも行くよ!ほらいくよさゆか!」
「あ、うん!」
国津さんの肩を軽く押して道を開けてもらった後、シャルロットと一夏、箒が俺の後に続き、それを追いかける形で国津さんと夜竹さんが来る。観客席へ入るとアリーナでは黒煙が上がっており、それを切り裂く様に影が二つ飛び出してくる。飛び出してきたのはセシリアと鈴音で、両機体共にかなりISにダメージが入っているらしく苦い表情のまま同じ方向を見ていた。視線の先に目をやれば、そこに居たのは残りの一人。ボーデヴィッヒが真黒なISを着て多少のダメージ痕は見られたが涼し気な顔をしている。セシリアや鈴音のISはアーマーの一部が完全に消滅しており、もはや機体の制御さえままならないと見ただけで分かる。セシリアと鈴音は二人で挑んでいるのにも関わらずボーデヴィッヒに対して有利を取れないでいるようで、ボーデヴィッヒが桁外れの戦闘力を誇っていることを暗に示していた。眉を寄せてアリーナ観覧席出入り口から離れた所で模擬戦の顛末を見る事に決めた俺たちは、時折聞こえてくる谷本さんと夜竹さんの制止の声をバックミュージックに試合を食い入るように眺めた。
「シャルル。ボーデヴィッヒのIS、レーゲン型だな?」
「うん、『シュヴァルツェア・レーゲン』っていうみたいだよ」
「そうか。それ以上の情報はいい。どうせ見せてくれる」
シャルルにボーデヴィッヒの名前だけを短く訊ね、再び模擬戦を眺めていると、セシリアと鈴音は互いを一瞬だけ目配せをして頷き合い――仕掛けた。鈴音の衝撃砲が開き、訓練機なら一撃で沈めてしまう火力を誇る不可視の一撃を叩き込もうとするがボーデヴィッヒがその右手を突き出しただけで衝撃砲を完全に無力化したのか、何時まで経っても衝撃砲がボーデヴィッヒを襲うことは無かった。兵装支配系、もしくはユニコーンのシールドのようにIフィールドのような物が組み込まれているのかもしれない。鈴音の衝撃砲を無力化したまま、肩から本体と接続された一対のワイヤーブレードを射出したボーデヴィッヒは、それを撓らせながらセシリアのビットが放つ迎撃射撃の雨を潜り抜け鈴音の駆る甲龍の右足を捕らえた。撫で斬るだけでなく捕縛も可能だと理解できたその兵装に思わず眉を寄せてしまう。セシリアの狙撃とビット4基の同時射撃をボーデヴィッヒは容易く回避してみせるが、それを予期していたセシリアは更に追撃を敢行する。前面から2基、背後から2基、そしてセシリアが鈴音へ集中したヘイトを自身に向けさせるためにボーデヴィッヒの眼帯側へ回り込んでのスターライトmk3による射撃。5方向からの同時射撃の内、肩に取り付けられた大型砲が火を噴きスターライトmk3の射撃を相殺し、ボーデヴィッヒが右手を突き出した瞬間に視界内のビット2基が空中で突如としてその動きが止まり攻撃が出来ず、残った背後からの射撃は対処し切れずに被弾したボーデヴィッヒは苦々しく顔を歪めた。背後を取ったビットに対処する為にボーデヴィッヒは方向転換をしようとするが、セシリアがそれを許さず、ボーデヴィッヒの頭上を取って一方的に射撃を続けヘイトを稼いでいく。それに耐え切れなくなったのか、ボーデヴィッヒは捕縛した鈴音をセシリアへ叩きつけた。ワイヤーブレードを使った振り子運動による攻撃。単純ではあれど、鈴音を使った射線回避と盾の役割を兼用した有効的な一撃だった。衝突による影響で互いに姿勢を崩した両名を仕留める為にボーデヴィッヒは瞬間的に加速し、接近する。
「瞬時加速......!」
「砲撃戦も、近接格闘も出来るのか......」
一夏が自身の得意とする瞬時加速を見て驚愕に染まり、俺もそれを見て眉を寄せる。ボーデヴィッヒの駆るISは砲戦をメインにしており近接兵装はいざという時の手段だと思っていたばかりに自ら接近してくることは予想外だった。しかし、接近戦ならば鈴音にも幾分かのアドバンテージがあるはずだ。その巨大な1対の刀を連結した状態で振り回して攻撃するのかとも考えたが、鈴音はすぐにそれを解除し取り回しを優先させた。そうした原因はひどく単純で、ボーデヴィッヒの両手首に付いた袖状のパーツからプラズマブレードが展開し、左右から襲い掛かってきた所為だろう。鈴音はそれに対処すべく手数を増やす目的で連結を解除し左右の腕を自由に振るいたかった様だ。左右から不規則な軌道を描いて迫りくるプラズマブレードを肩、腕、肘、手首、手、指、掌、それら全てを柔軟かつ素早く、かつ巧みに動かして弾き返す鈴音は距離を縮められない様に少しずつではあるが後退をしており、ボーデヴィッヒはそれを追い詰める様に急速に距離を詰めていく。正しく縦横無尽に幾度も襲い掛かる刃の嵐をアリーナの形状に合わせて立体的機動で回避する鈴音だったが、ボーデヴィッヒは再び両肩のワイヤーブレード、更に両腰部からも同兵装を展開し計6本の触手が鈴音を狙う。鈴音はそれに歯噛みしながら衝撃砲を使い手数を増やし対抗しようと試みるが、その目論見はボーデヴィッヒの左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴き鈴音の衝撃砲を打ち砕いた事で破綻してしまう。強い衝撃を受けて体勢を大きく崩した鈴音を見逃すボーデヴィッヒではなく、即座に距離を詰めてプラズマブレードを鈴音目掛けて振るった。それを黙って見ているセシリアではなく、鈴音の援護の為に遠距離戦専門のはずのセシリアは自ら懐に飛び込みながら正確な射撃で鈴音を狙っていたプラズマブレードを融解させ消し飛ばし、鈴音とボーデヴィッヒの間に割り込みながら腰部アーマー内に秘匿されたミサイルビットを自爆覚悟で射出しボーデヴィッヒに一撃を叩き込んだ。
「セシリアは無事か!?あんな距離でミサイルなど......無茶をする!」
「煙が晴れるまでは分からない......けど、多分......」
箒が思わず数歩アリーナへ近寄り、シャルロットはそれに対しセシリアの安否は不明であり、ボーデヴィッヒに対しては恐らくあの一撃はそこまでのダメージにはならないと言外に匂わせる。黒煙が晴れ、セシリアと鈴音は爆風に呑まれ地面に叩きつけられていた。対してボーデヴィッヒは装甲に僅かながらの破損痕が見られるだけで機能に影響は無さそうであった。酷く冷めた顔で地に伏せる両名を見下ろしたボーデヴィッヒは瞬時加速で接近し、近い位置に居た鈴音を蹴り飛ばし、2本のワイヤーブレードでセシリアを拘束したまま肩の主砲で肉薄砲撃を敢行し、宙を転がる鈴音も同じ様にワイヤーブレードで手繰り寄せた。そこから一方的な攻撃が始まる。もはや手も足も出ない二人に武装は必要ないと判断したのかワイヤーブレードで拘束したままのセシリアを、鈴音を、拳で殴り付けるだけの模擬戦でも、試合でもないリンチが始まった。シールドエネルギーがあっという間に消し飛んでいるのだろう、機体維持警告域を超えて操縦者生命警告域にまで達したそれは展開したISの一部が粒子と化して消滅していきつつあった。しかしそれでもボーデヴィッヒは殴る事を止めない。むしろ、ボーデヴィッヒはアリーナの中央部から遠く離れたこの観覧席からでも見えるほどに口元を笑みで歪め、醜い笑いを浮かべた。
「――ごめん、万掌」
「ダメだ。一夏」
「...っ!でも!」
「ダメだ」
一夏がそれを見ていられず、零落白夜を使いアリーナのエネルギーシールドを破壊して突入しようとするが俺が止める。一夏も分かってはいるのだろうが、友人を見捨ててしまうくらいなら問題を起こすなという千冬さんとの約束を反故にして行くべきだと訴えかけてくる。が、それでも俺は決して認めなかった。
「いいの万掌!?セシリアも鈴も、あんなに苦しん、で...――――」
「分かってる。だから、ダメだ」
とうとう我慢が出来なくなった一夏が俺の方を振り返り、言葉を詰まらせた。一夏の目は、俺の握り締めた右手に集中し、その掌から零れ落ちる鮮血に目を見開く。
「堪えろ、一夏」
「......分かった。ハンカチ当てるから......手、開いて」
一夏がハンカチを取り出し、広げた掌を見て眉を寄せ、ハンカチで爪が食い込み肉の裂けた患部を塞ぎ、手の甲側で結んでくれた。千冬さんとの約束は果たすべき責任だ。決して問題を起こさない。起こしてはならない。感情で動いては行けない時もある。それが、今なんだ。手当されたばかりの手を眼前に開いて――閉じる。握っても爪が掌に食い込むことは無く、怒りで拳が震えあがるが、手首を左手で掴むことで抑え、まるで自分の意思に反して今にも殴りかかりそうな拳を下げていく。そうして、下げた先に見えたボーデヴィッヒは、ISの解除されたセシリアと鈴音の首にワイヤーブレードを巻き付け、俺と一夏を愉悦に歪んだ顔で見つめ、手を此方へ向けて――「来い」と挑発する。しかし、決してそれに乗らない俺たちに愉悦に歪んでいた顔を徐々に憎々しげに歪めながらセシリアと鈴音を投げ捨て、アリーナのシールドエネルギーを食い破る勢いで突進を開始するボーデヴィッヒだったが、それを止めた人が居た。
「――やれやれ、ガキは世話が掛かるから面倒だ」
「......教官」
千冬さんその人であった。生身のまま打鉄の近接ブレードを手に持ちボーデヴィッヒの突進を食い止めた千冬さんの表情を此方から窺い知ることは出来ない。
「堺。私が来るまでの間、よく堪えた。織斑、お前も堺に止められるまでも無く自制出来るようになれ」
「なぜ此処に、教官が」
「織斑先生と呼べ。堺が殴りかかる前に止めてくれと頼んできた生徒たちに応える為だ。今の私はIS学園の教師なのでな。これが私の責任の1つであり、お前が増やした私の仕事だ」
「――っ!」
「これ以上の憂さ晴らしをすることは許さん。ボーデヴィッヒ、お前は学年別個人トーナメント開催までの期間の一切の私闘を禁止する。やりたければそっちでやれ」
「......教官が、そう、仰るのなら」
千冬さんは最初に堪えた俺を褒め、次に一夏を軽く叱責し、それからボーデヴィッヒを見た。ボーデヴィッヒは感情を殺した表情で千冬さんに質問をするが千冬さんはボーデヴィッヒに増やされた教師としての仕事を果たしただけだと皮肉を混ぜつつ回答を示した。ボーデヴィッヒはその言葉に動揺し、千冬さんから私闘の一切を学年別個人トーナメントまでの間禁止される処分を受け、やりたければそっちでやれと言った時だけ顔を俺たちの方へ向けた。つまり、その言葉は俺たちも対象に入っているのだということだ。ボーデヴィッヒは茫然自失とした様子で、その言葉に頷きISを解除してアリーナのピットへその姿を消していった。
「さて――堺、織斑、篠ノ之、デュノア!オルコットと凰を保健室へ連れていけ!」
織斑先生のその一言で俺たちは閲覧席から走ってアリーナ内へ入り、セシリアと鈴音を担架に乗せて保健室へ運び出した。