Ideal・Struggle~可能性を信じて~   作:アルバハソロ出来ないマン

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おかしいな、プロットではそろそろせっしーと闘ってるはずなのに闘うどころかランチ食いに行ってるぞこいつら




こんな進行速度で福音戦までやれるかな......プロットぺらっぺらなのにどういうことなの

誤字脱字多いので気付いたら修正していますが節穴モノアイなので見落とし等多々あると思います(ザクⅠ)


第8話

「何で起こしてくれなかったんだよ......」

 

「だってあんまり気持ちよさそうに寝てたから......起こすのは悪いかなぁって」

 

 

 

 

波乱の入学式の翌日。

 

こんな話を切り出した理由は、日付が変わってから3時間と少し経った所まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日は部屋に着いてからすぐに寝てしまった俺はIS学園の夕食を取り損ねたまま、朝の3時に目を覚ました。空腹を訴える腹を満たそうと食堂に行こうかと思ったが携帯に表示される03:12の文字を見て携帯をベッドに放り投げ、静かに寝息を立てる一夏を起こさない様に部屋を探ると、テーブルの上にラップを掛けた状態の和食セットとメモ用紙が置いてあった。

 

「『万掌へ。よく寝ているので起こすのは気が引けたので食堂で貰って来た和食セットを置いておきます。冷めているかもしれないけど食べてください 一夏より』――か」

 

俺はすぐにメモをテーブルに備え付けてられているスタンドライトで照らしながら読んで、一夏の気遣いに感謝しつつラップを剥がして、静かに食事を摂った。

 

「味噌汁が冷てぇ......」

 

せめて暖かい汁物を飲みたかったが、それは今日の朝食に取っておくことにして、手早く食べ終えてからすぐにジャージに着替え、自室を後にする。

 

時間にしておよそ7時間。十分すぎる睡眠時間を得た俺は眠気など存在せず、自室で筋トレでもしようかと思ったが一夏を起こしてしまうのは申し訳なかったので、こうして日も昇っていない真っ暗なグラウンドに立っている。時間だけはあるのをいいことに柔軟と準備運動にたっぷり1時間ほど掛けて身体を温めきってから、グラウンドを走ることにした。走る距離も大切だが、それよりもフォームを重視し呼吸法も意識して走る。長距離を走って身体を馴染ませ、中距離を走る有酸素運動と短距離を走る無酸素運動を交互に何セットか繰り返した後、再び長距離を走って崩れたフォームを修正し息を整える。それをひたすら繰り返し、日が昇り始めたところで汗を吸ったジャージが気持ち悪くなったので脱ぎ、グラウンドから離れた位置に移動してから地面に置いて、その場で筋トレを開始する。このタイミングでちらほらと他の生徒たちも運動着や部活動の練習着を着た状態でやってきて各々で集まったり、部活動の仲間で固まり始めているようだ。

 

「あ、やっぱり堺くんだ。おはよう、早いね」

 

「わ、わ。本当だ、お、おはよう」

 

その中で、俺に近付いて挨拶をしてくる女子が2人居た。

 

「ん、ああ、おはよう。確か、相川さんと、鏡さん......だよな?」

 

「名前覚えててくれたんだ!嬉しいなぁ」

 

「うん、あってるよ」

 

この二人は、同じ一年一組の生徒で自己紹介は俺よりも前にしていたのでよく覚えている。相川さんは中学の頃ハンドボール部に所属していて、こっちでもハンドボール部に入りたいと言っていた。フルネームは相川清香だったと思う。ジョギングやスポーツ観戦が趣味の、スポーツ好きの女子だ。

 

こっちの鏡さんは、鏡ナギと言っていたはず。中学では陸上部に所属していて、相川さんと同様にこっちでも陸上部に入りたいと言っていた。黒いロングヘア―に赤いヘアピンを付けているのが特徴だ。実家が寿司屋だとかなんとか。

 

「それにしても、随分と汗かいてるけど何時から居たの?」

 

「ああ、昨日夕飯を取る前に気疲れしてたみたいでな。部屋に着いたらそのまま寝ちまったんだ。で、起きたら朝の3時過ぎでさ。眠くもないから身体を動かしに来た」

 

「3時!?」

 

「今日だけだよ。毎日やってたら逆に体調不良になる」

 

筋トレを中断して、手に着いた土汚れを払おうかと考えたが女子の前で砂埃を立てるのも申し訳ないと思い、そのままに会話を続ける。

 

「ふぅん、それにしても――――良い身体付きですなぁ、ぐへへ」

 

「ぐ、ぐへへ?」

 

「反応に困るんだけど、喜べばいいのか?」

 

タンクトップ姿で、露出する肌に玉のような汗を浮かべる俺を天辺から爪先までじっくりと見た相川さんは女子が発していいものではない音を口にして鏡さんに引かれている。俺も素直に喜べばいいのか悩んでしまった。

 

「中学の頃はスポーツとかしてたの?」

 

「いや、国際交流活動部に入ってた」

 

「それは何をする部活なの?」

 

「一応の部活動の目的は、世界各地の人々の文化形体とか、色んな国の色んな人の習慣とか、伝統文化みたいな奴を世界各国の学校の生徒と交流したりする、って感じだったかな」

 

「へー!堺くんはその部活で外国とか行ったの?」

 

「残念だけど、今はデジタル通信が発達したからさ。だいたいの交流は全部ネットの通話でやり取り。昔はホームステイみたいな事もしてたみたいだけど、部員が少なすぎてうちの学校じゃやらなかったかな」

 

「そっかぁ。それは残念だったね」

 

「ああ。それで、相川さんたちは何しにグラウンドに?」

 

「私たち、毎日朝練をするつもりだから」

 

「ああ、そうか。運動部に入りたいって言ってたしな。じゃあ、あまり引き留めない方が良かったかな」

 

「ううん、全然。堺くんは毎日来るの?」

 

「出来る限りそうしたいと思ってるし、やる気もある」

 

「そっかそっか。あ、そろそろ練習始めるみたいだから、この辺りで。またあとでね!」

 

「またね堺くん!朝ご飯一緒に食べようねー!」

 

「一夏も一緒だけど、それでいいならー!」

 

「いーよー!」

 

駆け足気味に離れていく相川さんたちが途中で振り返り、朝食を共に摂ろうと言ってくれたので一夏も一緒で良いなら行く、と返すと許諾されたので、朝食は相川さんたちと共に摂ることに決めた。

 

「俺も、もう少し動かすか」

 

話していた間に、少し冷えてしまった身体を温める為に運動部のジョギングからやや離れた後方に付いて、一緒にジョギングを行った。

 

「ねーねー、君が噂の男性操縦者?」

 

「俺以外に男がいなければ、俺の事だと思いますよ」

 

「身長高いねー、どれくらいあるの?」

 

「去年の身体測定では、180.8cm。今はもう少し伸びてるかと」

 

「わーおっきー!じゃあ、体重は?」

 

「そっちは毎日計ってます。今朝はまだですが、昨日は73.6kgでした」

 

「筋肉すごいねー、鍛えてるの?」

 

「ええ、まぁ」

 

はずだったのが。何時の間にかジョギングをしていた運動部の先輩方に囲まれて、質問攻めにあっていた。しかもペースを上げても平然と付いて来る上に、話していても息が上がらないのだから大したものだと驚愕する。

 

「いきなり代表候補生に啖呵切ったって聞いたけど本当?」

 

「まぁ、事実はそんな感じでしょうね」

 

「ISの動かし方分かる?あれだったら、教えてあげようか?」

 

「相手の情報も、調べるだけ調べておこうか?」

 

「結構です。先輩たちのご厚意はありがたく思いますが、まずは自分の力でやれるだけの事をして挑みたいので。気持ちだけ受け取らせて頂きます。そろそろお邪魔でしょうし、自分はこの辺りで失礼します」

 

親切心に俺とまた会話する理由を作りたいという欲を巧い具合に隠した声を、立ち止まって切り伏せる。ありがたく思うけど邪魔しないでくれ、と強い口調で言いきって立ち去る。これ以上は付き合う理由もないだろう。

タオルを地面に畳んで置いたジャージのポケットから引き抜いて、汗を拭ってからペットボトルに入れた水を飲み柔軟を始める。しかし、ISの操作練習の申し出は受けても良かったかもしれない、と先程言い切った自分の言葉を恨めしく思い始める。本当に悔しいが、俺のIS適正はC。断るには早計だったかもしれないが、それでも自分の力でセシリア嬢に臨みたいという気持ちも嘘ではなかった。

 

ただ、ISもISで訓練機の申請には1週間ばかり掛かってしまうと言われ、千冬さんからは専用機が届くからそれを待て、と言われる始末。何時来るのか分からない物を待ち続けるなど、あまりしたくはなかったがこればかりは俺の意思が動く部分は無く、結局受け入れるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、柔軟も終わらせて部屋に帰ってからシャワーを浴びて着替えたところで一夏が目を覚まし、俺と入れ替わる形でシャワーを浴びに行った。一夏が着替えるというので先に着替えを済ませていた俺は廊下で待ち、一夏と合流してから寮の廊下で相川さんと鏡さん、それと布仏さんたちと待ち合わせを果たし、5名で食堂の一角のコ字型のテーブルを独占する形で食事を摂ることになり――冒頭へ至る。

 

熱めの味噌汁に焼き立ての鮭はこれ程までに美味い物だったのか、と思うと是非とも昨日の夜も焼き上がったばかりの鮭に、椀にまで伝わる熱を確かめながら湯気の昇る味噌汁を飲みたいと思ってしまう。それ故に起こしてくれなかった一夏をチクチクと刺すように愚痴を零すと、一夏は照れ笑いを浮かべつつ受け流すばかり。

 

「いつまで食ってる!食事は迅速に効率良く取れ!遅刻した者にはグラウンドを10周させる罰を与えるぞ!」

 

なんでそこで照れ笑いなんだよ、と追及しようとしたところで千冬さんがカウントダウン宣言をするものだから、全員が慌てて食事を流し込む様に食べ始める。俺も、その内の一人だった。

 

ISの訓練をどうにかしなければと思うも手段が見つからず、八方塞がりでなんとかなるかという軽い気持ちではとてもじゃないが望めない。今日の放課後にでも、千冬さんに相談してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2限目。

 

「ということで、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話――一緒に過ごしていく内に分かり合うものなんです。操縦時間の長さに比例して、ISも操縦者の特性を理解するということなんですね。それにより、操縦者はISを、ISは操縦者を互いに理解しあって、より性能を引き出す事が出来るようになります。これはISに携わる上で最も重要かつ、最も基本的なことですからね、しっかり覚えていてください」

 

山田先生が、この時間の授業の〆にかなりタメになることを話してくれた。ISを理解しようとすれば、ISも応えてくれるのだろうか。可能性はあるはずだ。

 

「次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 

山田先生が教室から出ていったのを皮切りに、クラスの女子が一斉に俺の机の周りに集まり始める。その中には布仏さんに、相川さん、鏡さんの姿も見受けられた。

 

「ねぇねぇ堺くん!」

 

「しつもーん!しっつもーん!」

 

「お昼は空いてる?放課後ヒマ?夜時間ある?」

 

一気に騒がしくなった俺の周りで、人の好奇心が木霊する。余りに重なって聞こえる声に顔を顰めて片耳を抑えつつ通る声で言い返す。

 

「悪いけど、質問は一人ずつ順番にしてくれ。耳が痛い」

 

「あ、じゃあ私から!好きな食べ物はなんですか!」

 

「味噌汁」

 

「次、私!彼女いますか!いたことはありますか!これから作る予定は?」

 

「いない、いない、ない」

 

「ワンチャンありってこと?私狙ってもいい?」

 

「俺が君を好きになる可能性も0じゃない、とだけ」

 

『きゃあああー!』

 

よくもまぁここまで騒げるものだと感心しつつ小さく返事を返していくと、俺の何を気に入ったか知らないが、俺をパートナーとして狙ってもいいか、と訊く女子の質問に可能性は0じゃないと答えると一気にクラスが沸いた。

 

「休み時間は終わりだ小娘ども。そら、散れ散れ。また次の休み時間にでも続きをしろ」

 

ぱんぱん、と千冬さんが手を叩きながら入ってくる。それと同時に蜘蛛の子を散らす勢いで俺の席に群がっていた女子たちが帰っていった。

 

「堺、お前宛てに用意されていた専用機だがな、少しトラブルが起きて届く機体が変わった。それに合わせて到着も遅れるだろう。最悪の場合は訓練機でオルコットとやり合う事になるかもしれん。どうする、いざという時は日を改めるか?」

 

「いえ、その時はその時です。訓練機だろうと、やってみせます」

 

「いい返事だ。学園側でもなるべく急がせよう」

 

トラブルで俺の乗る機体が変わったという旨を千冬さんから伝えられ、最悪の場合は訓練機でセシリア嬢と模擬戦を行うこともあり得るかもしれないと言われる。それに対し俺は、訓練機だろうとISを動かせていないのだから習熟はそう変わらない、という意味で訓練機でもやってみせる、と言い切った。どっちみちギリギリまでISに乗れないことが分かったのだし、それならいっそ割り切ってしまった方が悩む必要はなくなるというものだ。

 

「専用機......一年の、この時期に?」

 

「しかも、堺くんの反応からしてもっと前から予定されてたってこと?」

 

「つまり政府の支援があるってことで......」

 

「いいなぁ」

 

クラスの女子の反応は様々だが、IS関連に関する受け止め方は完全に俺とは異なっているようだ。それに関して思う事はあれど、口にはしない。まだ、それを口に出来るほどの立場を得ていないからだ。ならば今は黙して伏せるべきだろう。

 

「あ、あの。織斑先生。ずっと気になっていたことなんですが、篠ノ之さんってもしかして――――篠ノ之博士の関係者、なんでしょうか」

 

まぁ篠ノ之という苗字はそう多くない。それに、IS学園に居ればいつかバレてしまうものだろう。だが、タイミングが悪すぎる。

 

「そうだ、篠ノ之はあいつの妹だ」

 

あ。

 

千冬さんが、地雷を踏んだ。

 

「え、えええーっ!このクラス、IS関係の有名人の身内が、二人も居る!」

 

「ねえねえ、篠ノ之博士ってどんな人?やっぱり天才だったりする?」

 

「篠ノ之さんも天才だったりして!ねぇ、今度ISの操縦、教えてよ!」

 

不味い。止めようと立ち上がるが、それより先に箒が限界を迎えるのが先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――私を、あの人とッ!

比較するなぁあああッッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

声に、怒りの赤が焼き付いていた。箒の発した言葉は、まるで熱した鉄のように、眩い赤が脈打っていた。言葉に色がついて見えるなど、ありえないと思うだろう。現に俺も初めてみたそれに目を見開いてしまった。

 

余りに強烈な怒気に、群がっていた生徒たちは一斉に黙り――教室の空気が死んだ。

 

 

 

「はっ――――はぁ、はっ......大声を、出して......すまない。ただ、ただ――――私は、あの人とは関係ないんだ。私は、あの人じゃない......教えられることは、何も、何もないんだ」

 

盛り上がっていた所に、冷や水をぶちまけられた女子たちだったが、箒のあまりの気迫に臆したらしく、触らぬ神に祟りなしといった様子で席に戻っていった。この一件で、箒に束さんの話を持ち掛けるのはタブーであると知れ渡り、以後は誰も箒に束さんの事を聞く者はいなかった。

 

「よし。授業を始めるぞ。山田先生、号令を」

 

「は、はひっ!」

 

いつもとは違う静けさの中で、授業は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏」

 

「分かってる、箒のことだよね。でも、今の私が行っても逆効果じゃない?」

 

「それでも、だ。お前が行く事に意味がある」

 

「―――そう。どっちでいけばいい?私?俺?」

 

「今のお前でいい。割り切らせるには、それしかない」

 

「ん、分かった」

 

昼休みに入ると同時に、近付いてきた一夏に箒のガス抜きを任せる。一夏も察していたようで、話し合いは予想以上にスムーズに終わった。これで箒は、俺に感情の矛先を向けるようになるはず。あとは、その感情をどのように乗り越えるのか、だ。俺の予想では、一波乱あるだろうと踏んでいる。俺と一夏も、飾らない言葉をぶつけあって、少しずつ解消しあって、納得した身だ。そんなすぐに解決できる問題だとは思ってない。だから箒がどのような理由であれ俺に助けを乞えば、俺はそれに応じるつもりだ。一夏も、きっとそれを解ってる。解った上で何も言わないのだから、信頼されているのだろう。裏切るワケにはいかない。

 

 

 

そうして、一夏が箒を無理矢理連れ出して教室を出ていった後、セシリア嬢が俺の席へやってきた。

 

「堺さん、よろしかったので?私は別に、延期されてもよろしくてよ」

 

「セシリア嬢、あまり困らせないでほしい。そもそも男が女性を待たせるのはマナー違反だろうに」

 

「それでつまらない闘いをされては、期待した分の損失が大きくなります。茶葉を寝かせることで紅茶の葉が出来るように、待っていた方が良い場合というのもありますわ」

 

セシリア嬢は、開口一番に俺の現状を案じてきた。やはり出来た女性だと感心させられる。あれほどの啖呵を切り合った間柄であるのに普段通りに接してくれるとは。心の広さが違うと実感させられ、俺もそれほどまでに広い心を持ちたいと思ってしまう。

しかもセシリア嬢は、模擬戦の日時を変更してもいい、つまり俺の専用機が届くまで待ってもいいと申し出てきたのだ。だが、流石にそれは悪い。俺にも男の意地というものがあり、それを悟らせない様に女性を待たせるのはマナー違反だとよくある言葉を使うが、それに対しセシリア嬢は茶葉を発酵させることで紅茶になる様に、待つのは悪い事ではないのだと反論してきた。これにはさすがに返す言葉がなく、言葉を詰まらせてしまった。

 

「どうなさいますの?今なら私も時間の余裕がありますので、織斑先生へ決闘の日時延期の嘆願にお力添え致しますが」

 

「――――いや、大丈夫だ。どんな機体であろうと、セシリア嬢を裏切るような無様は晒さない。それに、織斑先生もかなり無茶なスケジュールを組んでいるようだしな。俺一人の都合で大勢の人に迷惑を掛けるのはいただけないだろう」

 

「真面目ですのね。もう少し臆病さが抜ければ、その凛々しいお顔も勇ましく見えましてよ」

 

「セ、セリシア嬢...!」

 

「あら、少々悪戯が過ぎたかしら。ふふ、申し訳ありませんわ、堺さん」

 

セシリア嬢は俺が決闘日時の変更を望めば、共に千冬さんの下へ赴いて頼んでくれるとまで言うが、そこまでしてもらうわけにはいかない。だから俺はより強い口調で、千冬さんの都合と、大勢の人と有耶無耶の大多数も巻き込んでセシリア嬢への返答とした。また言い訳染みたな、と思って口を軽くへの字に曲げて反省していると、セシリア嬢は俺の反省している表情を凛々しい顔だと言った上で、昨日のことも絡めてだろう、「利用するなら堂々としていろ、そうすれば良い顔になる」と煽ってきた。これに根負けして、勘弁してくれと言おうとしたところでセシリア嬢が俺の眼前に人差し指を出して言葉を制した後、謝罪をしてきた。レスバトルで勝てる気がしない。

 

「さて、会話も楽しめたことですし、堺さんも日時の変更を申し出る気もないとの事でしたので」

 

「―――?」

 

「堺さん、ランチをご一緒に。いかがですか?」

 

「――――大変失礼をした。是非とも、ご一緒に。そして、許されるのであれば、次は俺から誘わせてほしい」

 

「あら、もう次を予定されるおつもりかしら?せっかちなお方ですのね。ふふふ。ええ、ええ、冗談です。ああ、もう。そんな顔をなさらないで。でも、そうですわね――――それは、これから私が見て、私が決めることでしてよ」

 

「セシリア嬢。急ぎ過ぎたと自覚はしているが、もう少し手心を加えてほしい。貴女と話しているとつい気持ちが急いてしまう」

 

「焦る必要はありませんわ。貴方が私と決別しない限り、時間は有限であれど、無限に存在しますもの」

 

「たしかに、その通りだ。――――しかし、ランチタイムは間違いなく、今の俺たちが共有する時間の中で、最も限られた物だ。お手を、レディ」

 

「......まぁ。――――うふふ、エスコートをお願いしますわ、ジェントルマン」

 

「お任せを」

 

セシリア嬢が持ち掛けてきた話の本題は、ランチの誘いだった。これはやってしまった。軽いノリを交わせる相手であれば女性からの誘いもまぁ悪くはないのだろうが、今回ばかりはセシリア嬢である。散々貸しを作っておいて、ランチの誘いまで向こうから切り出されたとあっては返そうと思っても返しきれない物が出来上がってしまう。焦る気持ちが抑えられず、つい次のランチは俺から声を掛けると言ってしまった。口に出した瞬間、しまったと思うが口を塞ぐことも出来ず、出てしまった言葉はセシリア嬢の耳に届いてしまった。やはり予想通りというか、そこを突いてきたセシリア嬢のレクチャーに思わず苦い顔していると、セシリア嬢は笑ってそれを許してくれた。それに急ぎ過ぎたと素直に自白をしたうえで、セシリア嬢が性別の垣根を超えた、人として見たときに余りにも魅力的だから、つい急いでしまうと本心を吐露する。そうするとセシリア嬢は俺との関係が破綻し、解り合えなくならない限りはこういう機会は無限に存在するとフォローしてくれた。その言葉に嬉しさを抱き、同意するがやられ続けるというのは少々嫌いなので、今度は此方から先手を取りに行くことにした。セシリア嬢の前に立ち、時間を引き合いに出して此度の目的であるランチタイムは最も限られた時間であると言い切ってから、手を拝借しようと伸ばす。そこでセシリア嬢は僅かながらに驚き、桜色に染めた頬を隠すこともせずに、俺の手を取ってくれた。ようやくというか、やっとというべきか。なんとか一撃、入れることが出来たようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後にセシリア嬢自らが淹れてくれた紅茶は、今までに味わったどの紅茶よりも美味だった。

 

是非とも、また共に飲みたいものだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――万掌」

 

「なんだ、箒」

 

「放課後。顔を。貸せ」

 

「場所は」

 

「剣道場」

 

「分かった。放課後だな」

 

セシリア嬢と限界まで昼休憩を満喫した後、教室に戻ってくると真黒な瞳をした箒が、力なく俺を呼ぶ。それに合わせる形でそっけない態度を作りつつ短い言葉を交わし合う。

 

俺が場所を確認したところで、フラフラと覚束ない足取りでポニーテールを揺らし、自分の席に戻っていく箒を内心危なっかしく思い、支えようと伸ばした手を、一夏に掴まれることで留めた。――ここで、手を伸ばしても意味がない。自分で乗り越えてもらうしかない。俺たちは、ただ背中を押す事しかできないからだ。

 

俺は、伸ばした手を下げて箒の方に向けた身体を教壇側へ戻した。

 

 

 

 

 




優しい言葉を掛けるだけが、悲しみを乗り越えさせる事じゃないと思うんです。

厳しい言葉も必要で、距離をとったりすることも大事だと思うんです。

次の話で、箒の鬱憤を大きく発散させます。

箒が好きな方たちには、お見苦しい話になるかもしれませんが、私のイメージする、この頃の箒ならこう思うだろう、こういう行動に出るだろうというイメージで書いていきますのでご了承ください。





いちかわいいが少なかった気がする(台無し)
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