アカネ「私の太股太いですか?」
グリッドマン「太いです」

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原作後のアカネちゃんの話。原作、アニメ、ボイスドラマ、お悩み相談室等のステマを一気にこなすスタイル!
我慢出来ずに二時間程度でポポイと書いたんで設定とかに穴があるかもしれません。


グリッドマンお悩み相談室

「うぅ……」

 

季節は夏、燦々と暖かい陽光がカーテンの隙間から差し込み、ツクツクボウシがその名の通り鳴く中、新条アカネは自室に籠り、ベッドの上で蹲り、うーうーと唸り声を上げていた。

 

「りっかぁ……たしゅけて……」

 

布団を被り、涙目になりながら自身の最も信頼する友の名を呼ぶ。だがその助けに応えるべき彼女はいない。

当然の事だ。その友達――宝多六花は、この世界には存在しない人間なのだ。

 

「うぇぇ……」

 

こんな事なら、と思い返し、部屋の隅にある机の上に視線を移す。そこには大事な友達より受け取った、定期入れがポツリと置いてあり、その存在を認めた途端、彼女の最後の言葉を思い出して思い直す。

本当は、こんな所で、こんな事をしている場合じゃないのに。大事な場面で勇気を出せない自分が嫌になる。

 

彼女、新条アカネは、臆病で、ズルくて、どこにでもいる、普通の少女だ。

そして――とある世界で、神様だった少女だ。夢の中で、夢の世界を作り上げる、自分と言う存在のように、彼女は悪魔に唆され、世界を作った。理想の自分が存在出来る世界を作ったのだ。本当の自分ではない、誰からも好かれる自分になりたかった。だからコンプレックスを全て覆い隠し、虚構の鎧を身につけた。

 

他の同年代の少女に比べて貧相な胸は豊満に実らせ、その癖必要以上に主張する太股はカモシカのようにしなやかにして。本当はクラスの隅でぽつんと座って、あたかも私は寂しくないですと言う風体でカチカチと携帯端末をいじっているキャラクターなのに、皆の、クラスの中心にいるような、男女問わずに好かれる明るいキャラクターに成り済ました。

 

でも、寂しがりやな彼女はそれだけでは満足出来なかった。理想の世界で、理想の自分になって、理想通りに過ごす。そんな日常が何だか虚しくて、彼女は、もう1人の彼女を作った。それが――彼女が助けを求める親友、宝多六花。本当の自分である。

黒いロングヘアーに、若干主張の乏しい胸、反対に主張しまくっている太股。性格は少し盛ったかもしれない。人付き合いを別段必要とせず、バッグの中はかなり散乱、訳の分からない焼き鳥の缶詰めまで入れ、女子高生なんてこんなもんじゃない?朝からエッグベネディクトとか食ってんでしょ?言うアカネの偏見が詰められた少女。

彼女は、自分を好きになるように特別作った。そんな彼女を作ったのは――本当の自分を、誰かに好きになって欲しかったからなのかもしれない。

 

だけど、当然その世界の者達は、クラスメイトは本当の自分、六花よりも理想の自分、アカネの方が好きだった。そう――たった1人の少年を除いては。

そんな彼だからこそ、アカネを退屈から救う、夢のヒーローになれたのかもしれない。

 

自分が見る夢の中の神は自分だけど、全てが自分の思い通りにいく訳ではない。嫌な事も、苛立つ事もある。アカネを神様である世界もそうだった。ムカつく奴も、思い通りにならない事もあった。

だからアカネは理想の世界を完璧なものにする為に、不要なものを切り捨てようと、殺そうと、自分が大好きな怪獣を使って壊そうとした。好きな怪獣が暴れて、嫌いな奴を殺す。一石二鳥だと思った。どうせこの世界の人間は自分が作ったのだと思って、彼等の意思など気にせずに意気揚々に。

 

だけど――悪の怪獣を止めようと、正義のヒーローが現れた。夢の世界の中に、電脳の世界から、電光の如く巨人が降り立った。六花を好きになった少年がなるヒーローは次々とアカネが作る怪獣と退屈を砕き、倒していき――遂には、アカネの心を救った。

 

そうしてアカネは夢の世界から現実の世界に戻り、今に至る。この世界に戻る最後の瞬間、宝多六花は彼女がもうこの世界に戻って来ない事を願った。彼女が現実の世界で堂々と生きる事を願った。

だから――。

 

「だから……引きこもったままでいちゃいけないのに……」

 

怖い。外の世界に出る事が。本当の自分のまま、生きる事が。誰かに嫌われでもしたらショックで立ち直れないかもしれない。それ程に、彼女の心は打たれ弱かった。あれだけ勇気を貰ったのに、あれだけ皆が頑張ったのに、面倒臭い自分が嫌になる。そんな退屈に過ごそうとする彼女を救おうと――。

 

『新条アカネ』

 

「……!?」

 

『君の使命を、果たすんだ』

 

夢のヒーローが、現れた。

 

「グリッドマン……?」

 

ガバリと被っていた布団をはね除け、アカネは長い黒髪を靡かせ、キョロキョロと辺りを見渡す。呟く名はヒーローのもの。自分を救った、電光の超人のもの。だけど待てど探せど声の主の姿は見えず、空耳かと思って、落胆した溜め息を漏らして俯いた時。

 

『君の使命を果たすんだ』

 

その視線の先にあったスマホの画面の中で、銀色の鎧を纏う赤い超人がイケボを放つ姿があった。

 

「ほ……」

 

『君の使命を果たすんだ』

 

「ほぁぁぁぁっ!?」

 

思わずその場から飛び退き、バックステップするアカネ。しかしその先にはタンス。ガンッ、と強く背中をぶつけ、衝撃を受けて飛び出した棚で頭を打って痛みで蹲る。

 

「うぇぇぇ……りっかぁ……!」

 

『私はハイパーエージェント、グリッドマンだ』

 

「知ってるよぉ!君の名前を間違えた訳じゃないよぉ!て言うか何でいるのぉ!?」

 

涙目で六花の名を呼ぶアカネに何を勘違いしたのか、超人、グリッドマンが自己紹介する。その意外な天然っぷりにアカネは堪らず突っ込みを入れ、矢継ぎ早に質問攻めをグリッドマンにお見舞いする。

彼女が驚くのも無理はない。当然の事だ。何故使命を果たし、地元に帰った筈のグリッドマンがアカネのスマホの中にいるのか、おずおずと歩み寄り、その手に取る。どうして自分のスマホをこんなにも警戒しながら取らねばならないのか、甚だ遺憾である。

 

『私はハイパーエージェントだ』

 

「だから知ってる……ってその情報は初な気がする……何?ハイパーエージェントって……職業なの……?」

 

『君は心の弱さを突かれ、アレクシス・ケリヴに利用された』

 

アレクシス・ケリヴ。黒いマントを纏った、グリッドマンと同じような超人の名だ。

アカネの心の弱さと神の如き力を利用した存在であり、今はグリッドマンに倒され、封印されている。

 

「う、そうだけど……そう直球で言われると傷つく……」

 

『面倒臭いな、君は』

 

「傷つくぅ!」

 

『だから今後、奴のような存在に利用されないとは限りない。君が一人前になるまで、アフターケアに来たと言う訳だ。暇だし』

 

「アフター……ケア……え、え?もしかして暫く私のスマホに住み着くって事!?」

 

グリッドマンが来た理由――それは未だに弱い心を持つアカネをアレクシスのような存在から守りつつ、悪魔の誘うに乗らない強さを持たせようと言う事らしい。理由は分かるのだが――人間、女子高生にとって大事な物であるスマホに勝手に住み着かれるのは勘弁してもらいたい。

 

「あの……せめてパソコンか何かにしない?六花の家にあったジャンクみたいに……」

 

『断る。君の傍で君の成長を促す為、こちらの方が都合が良いからだ。口答えは成長してからにして貰おうか』

 

「ひぇぇ……」

 

存外スパルタらしいグリッドマンがぴしゃりとアカネのせめてもの願いを切り捨てる。これではおはようからおやすみまで、ハイパーエージェントに生活を管理されてしまう。

このままではいけないと感じているアカネであるが、あれやこれやと口出しされるのは嫌だと面倒臭い彼女は何とかしようとグリッドマンに反論しようとする。

 

「で、でもスマホは必要だし」

 

『別にスマホを使うなと言っている訳ではない。私の事は悩み相談にでも乗るアプリとでも思えばいい。調べたい事は言ってくれれば検索しよう』

 

「それで良いのハイパーエージェント……?」

 

何だかコンピューターワールドのハイパーエージェントを下らない事で贅沢に利用してしまっている気がする。アカネは眉をひそめ、ううんと下唇を噛むが、それで良いらしい。グリッドマンはそんなアカネを無視し、「それにしても」と話題を変える。

 

『君は怪獣が好きなんだな。画像フォルダや検索結果が怪獣の名前だらけだ。後どうにかにして太股を痩せる方法』

 

「わぁぁぁぁぁっ!?ちょっ、ちょちょっ、余計な事しないでよ!だから嫌だったのに!」

 

デリカシーの欠片もなく、乙女の秘密を暴き、フムフムと頷くグリッドマン。悪気がない分質が悪い。このハイパーエージェント、アカネの作った世界でも、宿り主がお前の事好きなんだぜと少女にばらした前科持ちなのだ。一ミリたりとも油断出来ない。こうなったらとアカネはスマホを地面に叩きつけて壊す方法を考えるが、結果スマホだけが壊れそうなので思いとどまる。2次元の存在が3次元の存在を害す事が出来ないように無駄な事だ。理不尽を感じる。

 

『あとは――怪獣コンテスト……?』

 

「――」

 

グリッドマンが何気無しに呟いた一言に、アカネが固まる。別に、知られたくなかった事ではない。知って欲しかった事でもないが。

 

『成程……ファンの作った怪獣のイラストや模型を募集して、採用者のものを作品内に登場させると言う企画か。君も応募するのか?』

 

何か感じ入るものがあったのか、若干ワクワクとしているような声音でアカネに問いかけるグリッドマン。そんな意外な一面にアカネはクスリと笑みを溢し、視線を机の上に移す。そこにあったのは、六花から貰った定期入れと、作りかけの粘土の怪獣が。機械で出来た恐竜のような姿をしている。

夢の世界で怪獣を作ったように、現実の彼女も手先が器用で、こう言った美術系統に関しては才能を感じさせる。当の本人は余り自覚してないようだが。それを見つめ、アカネは目を細める。

 

「うん……あれだよ」

 

『――』

 

機械の恐竜を見て、グリッドマンが息を呑むのが分かった。何故だろうか、アカネは首を傾げつつ、もしかしてアレクシスみたいに凄いって思ってくれているのだろうと結論づける。スマホを持ったまま、机に歩み寄り、グリッドマンに良く見えるように自作の怪獣を紹介する。

 

「作りかけだけどね……私、結構恐竜系の怪獣が好きでさ」

 

『……そうだろうな』

 

アカネの言葉を聞いて思い返す。思えば、彼女が作る怪獣は、差はあれど恐竜型のものが多かったと。目の前で対峙していたグリッドマン本人が良く理解している。あれは彼女の趣味が全面に押し出されていたのだろう。

 

『この怪獣の名前は……何て言うんだい?』

 

「うーん、まだつけてないんだ。恐竜とか、竜とか関係する名前にしようと思ってるんだけど」

 

思いの外食いつくグリッドマンに驚きながら、アカネが微笑み、顎に手を当てて考え込む。

 

『なら……ダイナドラゴン……と言うのはどうだろうか?』

 

「ダイナドラゴン……?……うん、良い、良いねそれ!」

 

グリッドマンから送られた怪獣の名を気に入ったのか、アカネが初めて生き生きとした笑みを浮かべる。これが本当の新条アカネだ。好きな事に正直な、綺麗な笑顔を見せる少女。こうして近くで笑顔を見るのは初めてになるな、とグリッドマンは保護者のような目線で彼女を慈しむ。

そして、胸の内で彼女に感謝する。こんな形であるが、この怪獣――ダイナドラゴンと再会出来たのだから。これも運命か、とグリッドマンはダイナドラゴンへと視線を移す。今はまだ未完成、だけど、完成したその時は――今以上に、素晴らしい姿になるのだろうと。

 

「でも……おかしいよね」

 

『?何がだ』

 

「だってさ……女の子だよ?女の子が……怪獣好きなんてさ、しかも、この年になって」

 

生き生きとした表情から一転、アカネが俯き、唇を噛む。彼女は特撮作品等に登場する怪獣が好きだ。そんな自分が普通じゃない事も、理解している。普通じゃない自分が、受け入れられない事も、分かっている。怪獣が好きな自分では、好きになってもらえない、だけど、怪獣が好きじゃない自分じゃなくなるのも、嫌で。

 

『新条アカネ』

 

「……何?」

 

『聞かせて欲しい。君はどうして、怪獣を好きになったのか』

 

そんなアカネの不安を、悩みを、グリッドマンは不器用ながらも消し飛ばそうとする。グリッドマンは言った。自分の事は、悩み相談のアプリとでも思ってくれと。そして新条アカネは悩みを吐露した。ならば、ハイパーエージェントが応えぬ訳にはいかない。

 

「カッコいいから、力強いから、兎に角言葉に表せない程に凄いから――私は怪獣を、好きになったんだ」

 

『なら、おかしくなんてない』

 

別段、特別な理由がある訳ではない。アカネの目に、魅力的に移ったから、好きになっただけの事。その答えを、グリッドマンは全面的に肯定する。アレクシス・ケリヴとは違う、薄っぺらい返事だけの肯定とは違い、心の底から力強く肯定する。その即答に、アカネは目を丸くしてスマホを見つめる。

 

『カッコいいものをカッコいいと思うのは、当然の事だ。美しいものを美しいと思うのは、当たり前の事だ』

 

「グリッドマンも、カッコいいとか、その、美しいとか思うの?」

 

『……私も、君が作った怪獣と同じ、作られた存在だ』

 

「え」

 

『正確には、この見た目だが。とある少年達が描いたこの姿に――私は惹かれたのかもしれない。君と同じように、カッコいい自分になりたくて』

 

ハイパーエージェントは元々姿を持たぬ存在だ。そんな彼が、グリッドマンと言う姿を得て、初めてハイパーエージェント、グリッドマンとなった。そこには、ヒーローになる事で、巨大な敵に立ち向かう勇気を得たいと言う想いがあったのかもしれない。少なくとも、彼は現在、このグリッドマンと言う姿を気に入っている。

 

『カッコいいだろう?君のダイナドラゴンに、負けない位に』

 

「ぷっ……うん、そうだね」

 

『それに六花が言っていた筈だ。君は彼女達の神様なんだから……どこにいっても堂々とするべきだ』

 

「む、女の子同士の話に聞き耳立ててたの?」

 

『駄目なのか?』

 

「ちょくちょく天然だよね。グリッドマンって。初めて知った」

 

何だろうか、アレクシスは、全面的にアカネを肯定してくれた。それも良い、これも良いと、耳障りの良い言葉でアカネの全てを肯定してくれた。

グリッドマンは、アレクシスと違って空気が読めないし、デリカシーに大きく欠ける。それは悪いと否定するし、かなりのスパルタだ。これだけ見れば、アレクシスの方が良いと思える。

だけど、グリッドマンはアカネの欲しい言葉をくれる。アカネに自信をくれる。肯定する時は、力強くしてくれる。

 

「私も、グリッドマンに負けない位にカッコいい怪獣を作るよ。夢のヒーローになれる、怪獣を」

 

『私も応援しよう』

 

「うん、ありがと。グリッドマン」

 

『だが学生の本分も忘れないように』

 

「うっ……はぁーい……行きたくないけど、頑張る」

 

『行け――君の使命を果たすんだ』

 

「そのグリッドマンっぽく言い直したのなんかムカつくんだけど……私は六花達の神様だから、堂々としないとね」

 

『気合いで何とかするんだ』

 

「その見た目で根性論!?」

 

きっと、何だって出来ると、長く閉じられたカーテンを開き、眩しい陽光に目を慣らす。

季節は夏。夢の世界で復活したカーンデジファーと言う敵を倒すべく、グリッドマンが赴き――完成したダイナドラゴンがそんな彼の助けとなるのは、また別の話。




アカネちゃんがギャラクトロン作ってる世界線もあるのかもしれません。
SSSSの世界は夏っぽいんですが、リアタイに合わせるとアカネが目を覚まして「初夢のヒーロー……」とか言ってくれた可能性もなきにしもあらず。

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