やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。   作:乃木八

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プロローグ

 

比企谷八幡は昔から目が特徴的だと言われてきた。

 

小学校に上がる頃にはその目が原因でいじめられる。

 

「目が腐っている」だとか「その目が気に入らない」とか「比企谷菌がうつる」とかまあ小学生にはよくあるいじめ。他にも上履きを隠されたり、高学年になると下駄箱にゴミを入れられたりと色々。

 

先生も初めはやんわりと注意していたが、そのうちそれもなくなり、見てみぬ振りが当たり前になっていった。

 

まあ、そんなこともありだいぶ捻くれた性格になったらしい。

 

それでも中学生になる頃にはいじめもなくなって、他の人ともある程度は普通に接していた。

 

そんなある日、一人の女の子に告白した。

 

好きになった理由はボッチの俺にも話しかけてくれたから、まあボッチ男子によくある感じのあれだ。

 

ちょっと優しくされるとすぐに勘違いしてしまう例のアレ。

 

結果は言うまでもなくあっさり振られ、その上次の日の朝、クラス全員にラブレターをさらされるという公開処刑付きだった。

 

その日の夜、俺は涙が止まらなくて文字通り枕をびっしょり濡らし泣き疲れ寝た。

 

人間、どれだけ憂鬱なことがあっても日々の習慣は変わらないらしくいつも通りの目が覚めてしまい、涙が乾いて少しザラついた枕をみてどんだけ泣いてたんだよ…と自分に呆れ返る。

 

「はぁぁ……なんかどうでもよくなったな」

 

引くほど涙を流したからなのか昨晩あれだけ悲しかった出来事に対してなにも感じなくなっていた。

 

「ん?なんだこれ…石?」

 

枕元をみると少し赤黒い光る石が置いてある。よくみると装飾が施されていて単に石というよりはアクセサリーといったほうが正しいのかもしれない。

 

「こんなもの持ってたっけかね」

 

記憶を辿ってみるも見覚えがない、そもそもこのアクセサリー、色合いはあれだがデザインは女の子向けに見える、それに俺はアクセサリーを集める趣味なんてない。となると―

 

「小町か?」

 

考えられるのは妹の小町がこっそり寝ている俺の枕元にこれを置いたという可能性だが……

 

「それはないな」

 

寝ている兄(涙で顔グシャグシャ)の枕元にこっそりアクセサリーを置いとくとかそんな意味のわからないことを小町がするとは思えない。

 

となると、朝起きたら誰のものかもわからない謎のアクセサリーが枕元に置いてあったということになる。

 

「じー……」

 

問題のアクセサリーを手にとって見る、普通ならこんな誰の物とも知れない気味の悪いものは捨てるのだろうが、何故か捨てる気になれなくて机の上に置いておくことにした。

 

いつも通り朝の支度をして、いつも通りの時間に家を出て、通いなれた道を通り学校向かう。

 

「そういえば小町にアクセサリーのこと聞くのも忘れてたな…まあいいか、多分知らないだろうし」

 

なんとなくだが、あのアクセサリーについては誰に聞いてもわからない気がする。なにか普通じゃない力を感じるというか……危ない危ないまた黒歴史を再発するとこだった。

 

そんなことを考えているうちに学校についてしまった。駐輪場に自転車を止め、下駄箱で靴をはきかえる。

登校ラッシュにはまだ少し早いため人がまばらな廊下を進み、後ろの扉から教室に入った。

 

俺が教室に入るとすでに登校していたクラスメイトたちが一斉に俺に視線を向けヒソヒソしながら笑いあっている。

 

(大方、昨日のラブレターの事だろうがあれだけ笑ってたのにまだ笑い足りないのか)

 

内心でクラスメイトに呆れながら席につきイヤホンを耳につけて寝た振りをする。

 

1日中ヒソヒソや笑いは絶えなかったが特に反応することもなく放課後まで一人で過ごした。

 

「おい比企谷、よくそんな顔してられるな、この勘違い野郎恥ずかしくないのか」

 

帰り際、俺が特に何の反応もしないことに痺れを切らしたのかクラスメイトの男子が分かりやすく挑発?的なことをしてくるが無視する。

 

「おいっ聞いてんのか!?このヒキガエル!」

 

背後からさらに悪口と思われる言葉に聞こえない振りをして足早に家へ帰った。

 

この日を境に平穏だった中学生活は一変する。

 

次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、何を言われようが取り合わず、授業が終われば帰る。そんな日々を卒業まで繰り返して俺の中学時代はボッチのまま終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――春、俺は同じ中学の奴らがいないであろう学校を選びそこを受験し無事合格、今日の入学式をへて晴れて高校生の仲間入りだ。

 

その高校は中高一貫校で高校から入学する人はあまりいない。まあ、だからそこを選んだんだが。…家からも近いし。

 

少し早めに家を出て、自転車を引きながらこれから通うことになる津成木第一学校までゆっくり歩ことにした。途中、横断歩道の赤信号が見えたので立ち止まる。

 

「早く出すぎたな…」

 

入学祝いとして買ってもらったスマートフォンで時間を確認しつつそんなことを呟きこれから始まる高校生活について考える。

 

周りは中学からのエスカレーター式ですでに仲のいいグループが形成されていることだろう。そんな中に俺が入っていけるとは思えない。なんなら話しかけることすらままならないまである。

高校からのやつは俺を含めても五人程しかいないらしい。多分バラバラに振り分けられるだろうからクラスは別だろう。

 

つまり、必然的に高校でもボッチロードまっしぐらということだ。

 

「まあ、あのまま中学の奴らと一緒のところに進むよりはマシか」

 

気を取り直して高校では大人しくボッチ生活を満喫しようと決め、顔をあげるといつの間にか横断歩道の信号が青になっていた。

 

「入学式!ワクワクもんだぁ!!」

 

後ろから元気な声が響き、俺の横を中学の制服を着た少女が駆け抜ける。入学式ということはあの少女は今日から中学生なのだろう。

 

(中学と高校で違うとはいえ、俺とは真逆だな)

 

一方は入学式の日にボッチ生活を覚悟するという後ろ向きな考えで登校、一方はワクワクしながら前向きに入学式に向かっている。

 

(まあだからといって俺はあの少女の様に前向きになれないし、なる気もない)

 

そんなことを考えていると視界に猛スピードでこっちに走ってくるトラックが入ってきた。信号機は赤だがあのトラックは止まる気配がない。

 

そして隣を駆け抜けていった少女はこれからの入学式で頭がいっぱいなのか突っ込んでくるトラックに気付かず横断歩道を渡っている。

 

別に少女が間違っている訳ではない、歩行者用の信号は青なのだから普通車が突っ込んでくるなんて事はありえないし、思いもしない。

 

トラックと少女の距離はもう十メートルを切った。

 

もし、この時冷静だったら少女に向かって大声で呼び掛けるという選択肢が浮かんだかもしれない。

 

けど、この時の俺は考えるより先に走り出していた。

自分でも信じられないくらいの早さで少女に追い付く。

 

(もう抱え込んでも、引っ張っても間に合わないっ)

 

とっさの判断で少女の背中を突き飛ばす。その瞬間、みている景色がスローモーションに見えた。

突き飛ばした少女は無事トラックの射程から外れている。突然突き飛ばされた事に驚いたのか、少女はつんのめってこけそうになっていた。

 

横を見るともうトラックが目の前まで迫っている。この速度で激突されたらアウトだろう。よくみればドライバーはハンドルを握ったまま寝ている。

居眠り運転、通りで止まるそぶりもなくクラクションも鳴らさないわけだ。

 

ぶつかる、そう思った瞬間何かが光った気がした。

 

 

 

ゴスッ_____キィィィィィッッッ

 

 

 

鈍い音と甲高い音が朝の町に響く―

 

―そして比企谷八幡の意識はそこで途切れた。

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