やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。   作:乃木八

10 / 28
第四話「魔法の授業スタート!13個目の謎!?ふしぎなちょうちょを探せ!」Bパート

 

「時間がないわ…」

 

もう間近に迫っているザアザア雲を見上げてリコが焦燥を滲ませ呟いた。

 

「みらいが帰ってこないモフ……迷ってたら大変モフ」

「そうね…八幡さんも戻ってこないし……世話が焼けるわね」

 

そういうとリコはモフルンを抱き上げる。

 

「八幡さんはともかく、あなたがいないとあの子も不安でしょ」

「違うモフ、みらいにはリコが居てあげないとだめモフ」

「え?」

 

思わぬモフルンの言葉に目を丸くするリコ。

 

「みらいは知らないマホウ界でも、色んなことがあっても、リコがいたから頑張れたモフ」

「………」

 

リコを真っ直ぐ見つめて、モフルンがそれにと続ける。

 

「八幡だってそうモフ……モフルンはみらいが一番好きモフ、でも、リコと八幡も好きモフ、リコは二人と一緒は嫌モフ?」

「わ、私は……」

 

モフルンの問いにリコは言葉に詰まってしまい、ふと、二人と出会ってからの出来事が思い浮かぶ。

 

ベンチでイチゴメロンパンを並んで食べたこと、倒れていたリコに手を差し伸べてくれたこと、そしてお揃いの箒に嬉しそうにはしゃいでいたこと…。

 

不安だらけだったナシマホウ界でお腹をすかせていたリコにおにぎりととっても甘いコーヒーをくれたこと、捻くれた言動に呆れて、あの子と二人で笑ったこと…。

 

思い浮かべたことはどれも他人にとっては何気無いことかもしれないけれど、リコにとっては全部が初めてでかけがえのない出来事だと思えた。

 

「…いくわよ!」

 

決意の表情でそう言うとリコは森の奥へと走っていく。

 

 

 

「甘い匂いモフ」

 

しばらく森を走っていると抱き抱えているモフルンが呟いた。

 

「甘い匂い?」

 

そう聞いて思い浮かぶのはダイヤとルビー、二つのリンクルストーンが輝いた時の事だ。

 

「もしかしてあの子のダイヤを感じたの?」

「わからないモフ…でも甘い匂いは二つするモフ!」

 

二つならおそらく、みらいのダイヤと八幡のリンクルストーンだろうと考えたリコはモフルンの鼻を頼りに進む。

 

「ここからモフ!」

 

たどり着いたのは図書館、その中にある巨大な扉だった。

 

「よりによって!」

 

その扉は校長が行ってはならんと言っていた知識の森と呼ばれる書庫に通じている扉。一度入ったら校長ですら迷う場所だ。

 

「……っ!?」

 

一旦、扉の前で立ち止まり、少し開いている隙間から中を覗くと、巨大な本棚が倒れていた。

 

乱雑に溢れている本から、この本棚は自然に倒れたのではなく、何か凄い力で倒されたというのがわかる。

 

「………」

 

少しの間、驚き固まってしまったリコだが、覚悟を決めて中へと入っていった。

 

 

 

━その頃、みらいと八幡は宙を舞う本棚に気を付けながら先へ進んでいた。

 

「……」

「もうどこまで来たのかまったくわかんねぇな…」

 

八幡がこう言っている間にも本棚は移動をし続けており、もはや、どっちが来た道で、進んでいるのか、戻っているのかすらわからない。

 

チラリとみらいの方を見ると、不安そうな顔でポーチの肩紐を握りしめている。

 

無理もない、どこにいけば正解なのかわからない場所、しかも今はナシマホウ界から来た二人のみ。つまり、頼れる存在がいないのだ。

 

「ぁ………」

 

そんなみらいに何か声をかけようとしたが、この状況で、みらいを元気づける気の利いた言葉など八幡には思浮かぶはずもなく、押し黙ってしまう。

 

「………」

 

無言のまま先に進む二人。その様子を本棚の上から謎の影がじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「いるんでしょー!!どこなのー!!」

 

書庫の中を走りながら大声で二人を探すリコ。

 

━ドシンッ

 

「…!?」

 

何かが倒れるような凄い音が聞こえ、リコが音をした方を見ると緑色の何かが煙の中から飛び出す。

 

「…急がないと……!」

 

二人が危ないと思ったリコは、急いで音の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ八くん!危ないっ!!」

 

二人で宛もなく歩き続けていた最中、突然みらいが叫んで、八幡の方に飛び込んでくる。

 

「っ痛…なんだ…?」

 

飛び込んできたみらいに押されて一緒に倒れ込む八幡。目線をあげると、さっきまで八幡が立っていた場所を緑色の何かが高速回転して通り過ぎ、本棚に激突した。

 

「プリキュアだな?」

 

激突し、地面に落下した緑色の何かが声を発して起き上がる。

 

「「!?」」

 

そして二人はその緑色の何かの姿に息を呑んだ。

 

「お初にお目にかかる、我はドクロクシー様に仕えし、魔法戦士ガメッツ」

「ドクロクシー…」

「闇の魔法使いか…!」

 

ガメッツと名乗ったのはプロレスラーのように鍛え上げられた筋肉と武人のような兜を纏い、その背中には甲羅を背負っている亀の大男だった。

 

「もう一人はどうした?…まあいい、お手合わせ願おう」

 

次の瞬間、ガメッツがその巨体からは想像できないスピードで突進してくる。

 

「っ!?」

「きゃっ!?」

 

ヤバイと感じた八幡はみらいの手を思いっきり引っ張り、二人は寸前のところで突進をかわした。

 

━ドゴォォンッ

 

凄まじい衝撃音が響き渡って本が飛び散り、巨大な本棚がいとも簡単に倒れる。

 

「これは…やばいな……」

 

突進の破壊力を目の当たりにした八幡は額に嫌な汗が浮かぶのを感じて呟いた。とてもじゃないがあんなもの、かすっただけても粉々にされてしまう。

 

「どうした?何故本気を出さん?」

 

煙の中からガメッツが飛び出し、二人の前に立ちはだかる。

 

「バッティやスパルダを退けたという戦いぶり、我にも…見せてみよっ!!」

「っ朝比奈!こっちだっ!!」

 

ガメッツ筋肉がさらに膨れ上がるのを見て八幡はみらいの手を引き、全速力で走った。

 

━ドゴォォン━ドゴォォン━ドゴォォン…

 

連続して突進してくるガメッツを毎回スレスレでかわす二人。だが、その度に本棚が倒れ、逃げ道をどんどん潰される。

 

「ちっ…このままじゃまずい…」

 

「みらいー…」

「返事をしなさーい!!…」

 

逃げながら八方塞がりなこの状況をどう切り抜けるか考えていた時、本棚の向こうからモフルンとリコの声が聞こえた。

 

「ぁ…リコちゃんっ!モフルンっ!」

 

みらいが二人の呼ぶ声の方へ走る。

 

「逃さぬ!」

 

走り去るみらいを逃すまいして後を追おうとしたガメッツを八幡が遮った。

 

「ぬ?お前は…」

 

ガメッツが何かいうより速く、八幡は杖を取り出して唱える。

 

「キュアップ・ラパパ!閃光よ、爆ぜろ!!」

 

杖の先から強烈な光が放たれ、八幡の視界も白く染まった。

 

(これで奴の視界を奪えた筈、後は二人が合流すれば…っ!?)

 

何も見えない八幡に衝撃が走り、何かに締め上げられる感覚が広がる。

 

「がっ…!?」

「…惜しかったな、魔法使いよ」

 

驚くべきことに八幡を締め上げていたのは視界を奪われ、混乱しているはずのガメッツの手だった。

 

「な……ん…」

 

目は見えないが、自分の置かれた状況を察して驚きの声を出す八幡。

 

「悪いが、お前が油断ならない輩だというのはマンティナから聞いていた、なら警戒するのは当然であろう」

「ぐっ…」

 

ガメッツの言葉に八幡は自分の浅はかさを後悔する。

 

まさかプリキュアでもないただの高校生である八幡が警戒されているとは夢にも思わず、安易に一度見られている魔法を使い、自らの視界も塞いでしまった。

 

(もう少し冷静に考えれば予想できたことだ…二度も邪魔をしている俺を警戒しているのは当たり前だった…!)

 

後悔してもすでに遅く、八幡がどれだけ暴れようとしてもガメッツの腕はびくともしない。

 

「…むこうか」

 

ガメッツは八幡を捕まえたまま、みらいが走り去った方へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みらいモフ!」

「あっちから聞こえる!」

 

みらいの名前を呼びながら探していたリコとモフルンは返事の聞こえた方へと走り、ようやくみらいを見つける。

 

「何で書庫にいるの!校長先生に駄目って言われたでしょ!!」

 

走りながらリコはみらいを叱りつけた。

 

「だって!ちょうちょが入っていったから、捕まえないと合格出来ないでしょ!」

「まったく、無茶して…」

 

本棚越しで言い合う二人は互いに互いのためにここまで来た、みらいはリコの合格のため、リコは迷いこんだみらいを心配して。

 

本が抜けた隙間からようやくすれ違っていた二人が対面した。

 

「リコちゃん!」

「みらい~」

 

再開したモフルンが安堵した声を出し、みらいとリコが隙間から互いの手を重ねる。その時、遠くで何かが光った。

 

「…来てくれてありがとう……」

「あなた…」

 

重なる手に驚くリコはみらいの顔を見て更に驚く。

 

よほど不安だったのだろう、いつも元気いっぱいだったみらいからは想像もつかないような顔をしていた。

 

そして今は安心した表情でリコを見つめている。そんなみらいにリコは優しく微笑んだ。

 

「もう一人のプリキュアだな?」

 

安心したのも束の間、後ろからガメッツが悠然と現れる。その手には八幡が握られていた。

 

「八くん!?」

「八幡さん!?」

 

悲鳴じみた声を上げる二人にガメッツは八幡を放り投げる。

 

「ぐっがっ…」

 

二度三度バウンドして八幡は二人の足元まで転がり、呻いた。

 

「八くんっ!大丈夫っ!?」

 

無事を確かめるためにみらいが駆け寄ると八幡はおぼつかない足取りで立ち上がる。

 

「げほっ…大丈夫…だ…」

 

ふらつく八幡にみらいが肩を貸して支えた。

 

「ようやく揃ったかプリキュア!ならば…」

 

ガメッツが髑髏の杖を取り出して両の拳を合わせ、呪文を唱える。

 

「魔法、入りました。出でよっヨクバール!」

 

唱え終えるとガメッツの甲羅に魔法陣が浮かんで、そこへ剣が描かれた本と鮫の描かれた本が吸い込まれた。

 

「ヨクバール!」

 

現れたのは、鮫の体に髑髏の顔、それに背びれと尾ひれ、胸びれまでもが刃になっているヨクバールだった。

 

「出陣だ!ヨクバール!」

「ギョイ」

 

ガメッツの号令でヨクバールが宙を泳いでみらい達に迫る。

 

「こっち!」

 

みらいの呼ぶ声にリコは本棚の隙間をくぐり抜けて、合流し、二人で八幡に肩を貸して走った。

 

「ヨクバール…」

 

さすがに肩を貸しながら逃げるのは難しかったようで、あっさり追い付かれ、真横をヨクバールが通りすぎる。

 

「…もういい、俺を置いてお前たちだけで逃げろ」

 

このままだと、逃げられないと踏んだ八幡は自分を置いていくようにと提案した。

 

少なくともそうすれば、今よりは速く走れるようになり、逃げられるかもしれないし、プリキュアに変身する隙もできるかもしれない。

 

「「「嫌!」だ!」モフ!」

「なっ!?」

 

速攻で声を揃えて拒否され、思わず声を出す八幡に三人がそれぞれ言葉をかける。

 

「八くんを置いていくなんてできない!」

「ええ!いつもいつもあなたばっかりに無茶はさせないわよ!」

「モフ!八幡も一緒モフ!」

「お前ら…」

 

三人とも意思は固く、八幡の提案は却下された。しかし、八幡のせいで速度が落ちているのは確かで、いずれ逃げられなくなる。

 

こっち…

 

「…声?」

 

どうするか考えていた八幡の耳に誰かが呼ぶような声が聞こえた。

 

「は…」

「あ…」

「モフ?」

 

みらい達も何かに呼ばれたような気がして辺りを見回す。

 

「ヨォォォ!!」

 

近くで聞こえた鳴き声に八幡が振り向くと、いつの間にか真後ろまで迫っていたヨクバールの大きな口が見えた。

 

「っ全員箒で逃げろ!!」

 

咄嗟に思い付いたことを叫ぶ八幡。その直後、ピンクの煙が巻き起こり、中から二本の箒が並んで飛び出す。

 

━ガチンッ

 

ヨクバールの噛みつきが空振りに終わって、歯と歯のぶつかり合う音が響いた。

 

「ギリギリだったな…」

 

額に汗を浮かべて八幡が呟く。

 

「そうね…ってあなたその箒に乗れたの!?」

 

驚いた声を出すリコ。八幡の箒はピーキー過ぎて乗れないと言われていた代物で、今のようにリコの箒と同じ速度で飛ぶ何てことは到底出来ない筈だ。

 

「いや、一か八かで隣の箒と同じ速度で飛べって唱えたら上手くいった」

「そんな曖昧な呪文で…?」

 

そんな説明では納得できないといった顔をするリコだったが、すぐにそれどころではないと頭を切り替える。

 

「それよりも…」

「うん…さっきのなに…?」

 

箒にぶら下がっていたみらいが疑問を浮かべた。

 

「呼んでいる…?」

 

八幡が呟いた直後、散乱する本棚達の向こうで何かが光輝く。

 

「「「「………」」」」

 

輝きに吸い寄せられるように白い本棚へとたどり着き、目の前に降り立った四人。その視線の先には一冊の本があった。

 

「本?」

「この本が呼んでたの?」

 

みらいとリコが本に触れる。八幡も触れようとしたが、後ろから迫る気配を感じて振り返る。

 

「っもう追い付かれたのか!?」

「覚悟!!」

 

八幡の声でみらいとリコも振り返ったが既にガメッツとヨクバールはすぐそこだ。

 

「「っ……!」」

 

ヨクバールの大きな口がみらい達に襲い掛かったその時、二人が触れていた本が先程までとは比べ物にならない虹色の光を放つ。

 

「「わぁっ…!?」」

「なにも見えない…!?」

「うわぁぁっ!?」

「ヨクバァール!?」

 

敵も味方も関係無く、全てが光に呑み込まれた。

 

「…これは……」

「どういうこと…?」

 

光が収まると景色が一変していた。暗く、無造作に本棚が漂っていた知識の森が、空のように明るくなり、雲の中から本棚が突き出している。

 

━ボフンッ

 

「わっ!?」

 

雲の下から現れたヨクバールに驚くみらい。

 

「…どんな魔法を使ったのかわからんが…もう逃がさんぞっ!!」

 

ヨクバールの上に乗っていたガメッツが吠えた。

 

「…この開けたばしょなら…」

「モフ!変身するモフ!」

 

八幡とモフルンの言葉にみらいとリコは手を繋ぐ。

 

「「キュアップ・ラパパ!」」

 

「「ダイヤ!」」

 

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!!」」

 

光が二人を包み込んで消えると、魔法陣と共に変身した二人が現れた。

 

「ふたりの奇跡!キュアミラクル!!」

 

「ふたりの魔法!キュアマジカル!!」

 

「「魔法つかいプリキュア!!」」

 

ダイヤの力を身に纏い、二人はポーズを決める。

 

「やっと本気になったかプリキュア…我が魔法、ヨクバールの攻撃を受けてみよっ!!」

「ヨクバール!」

 

変身した二人を見て更に好戦的な笑みを浮かべたガメッツがヨクバールに乗って突進してきた。

 

「っここはまずい!こっちだモフルン!」

「モフ!」

 

慌ててモフルンを抱え、八幡が箒を片手に本棚から飛び降りる。

 

「キュアップ・ラパパ!箒よ、二つ隣の本棚まで飛べっ!?」

「モフ~!?」

 

何度体験しても慣れないスピードに驚く八幡と初めてのスピードに目を回すモフルン。

 

そして、二人が飛んでいったのを見てミラクルとマジカルも跳躍してヨクバールをかわす。

 

━ドゴォォンッ

 

突進したよって、さっきまで四人立っていた本棚を粉々に粉砕したヨクバールは再び雲の中に潜った。

 

「消えた!?」

 

姿を見失ったミラクルとマジカルの死角からヨクバールが飛び出す。

 

「ヨクバァール!」

「「きゃぁぁっ」」

 

死角からの一撃をもろに食らった二人は吹き飛ばされた。

 

「「くっ…!!」」

 

受け身をとったが衝撃を逃がしきれずに本棚の上を滑る二人。

 

「うわぁっ!?」

 

ギリギリで踏みとどまったマジカルに対して、ミラクルは滑り落ちてしまう。

 

「…っ!!」

 

寸前のところでマジカルがミラクルの手を掴んで落下は免れたが、次はどうなるかわからない。

 

「ミラクルっマジカルっ…」

 

八幡に抱き抱えられたモフルンが心配そうな声を出して二人を見つめる。

 

「このまま死角から攻められ続けたら…」

 

二人が危ないと考えるが、今の八幡には打つ手がなかった。

 

先程放った目眩ましの魔法は警戒していたガメッツにあっさり防がれてしまったし、まともに箒で空を飛ぶこともできない。

 

「つまらぬ、この程度かプリキュア…」

 

落胆した声を出してガメッツとヨクバールは再び雲の中に潜る。

 

「どこからくるのかわからないっ…」

 

引っ張りあげたミラクルと一緒に辺りをキョロキョロと見渡すがどこにいるのか全く見えない。

 

「ヨクバァッ!!」

「「きゃあぁっ!?」」

 

今度は真正面からの攻撃で二人はバラバラに吹き飛ばされた。

 

「っ…さっきは正面…次は右?…わぁっ!?」

 

予測をたてて右側を警戒したマジカルを嘲笑うかのように左から攻撃を仕掛けてきたヨクバール。

 

「マジカルっ!!」

 

ミラクルが跳躍し、吹き飛ばされたマジカルの手をとって近くにあった本棚に着地する。

 

「次はどっち…?」

「ふっ!!」

 

マジカルが再びどこからくるのか予測しようとしている隣で、ミラクルが真正面に向かって思いっきり飛び出した。

 

「!?」

 

迷いなく飛び出しっていったミラクルに驚いた顔をしてその背中を見つめるマジカル。

 

「ヨック!」

「はぁっ!!」

 

雲の中から飛び出してきたヨクバールの鼻っ柱にミラクルの拳が突き刺さる。

 

「一体どうやって…」

 

いくらマジカルが考えても予測出来なかったヨクバールの動きを、まるでどこに出てくるか、わかっているように迎撃したミラクル。

 

その様子にマジカルがハッとした表情を浮かべて、みらいの言葉を思い出した。

 

考えているだけじゃみつからないよー!

 

「考えているだけじゃなく動かなきゃ…! 」

 

頭で考えてから動くのではなく直感で動く、それが時として必要な事だと理解したマジカルは勢いを付けて後ろを振り向き、直感で拳を突きだす。

 

「もう少しっ!」

 

マジカルが繰り出した拳は後ろから迫っていたヨクバールに寸前のところで当たらなかったが、直感で動く事が効果的だと確信した。

 

「考えるより動かなきゃ!!」

 

そこからミラクルとマジカルが直感で攻撃し、少しずつダメージを与えることは出来ているが、決定打に欠ける。

 

「このままだと、あいつらの体力の方が先に尽きる…」

 

少し離れた本棚から戦いを見ていた八幡が呟いた。

 

確かに攻撃は当たり始めたが大振りの攻撃は相変わらず避けられる。

 

それに直感で攻撃するといってもどこからくるのかわからない状況は神経を磨耗されるのだ。

 

「モフ…どうしたらいいモフ…」

「せめて一度だけでも、来る方向がわかれば…」

 

モフルンと八幡が頭を悩ませるが、来る方向がわかれば初めから二人は直感に頼ったりはしないだろう。

 

それに八幡には手札がない。箒は乗りこなせていないし、唯一使える魔法もガメッツに警戒され、効果がなかった。

 

「目眩ましは通じない、だからといって、あの魔法じゃ他にはせいぜい照明の代わりくらいにしかならな…い?」

「モフ…?」

 

八幡がそこまで言うとモフルンが首を傾げ、二人は顔を見合わせる。

 

「「それ」だ!」モフ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このままだとまずいわね…」

 

直感で攻撃していたマジカルが一旦、離脱して戦況を把握し、呟いた。

 

「はぁっ!!」

「ヨクッバァール!」

 

ミラクルの攻撃はヨクバールに命中したが浅く、再び雲の中に潜られてしまう。

 

(攻撃は当たるようになったけど…やっぱり直感だけじゃ限界が…)

 

八方塞がりのこの状況を打開する案が浮かばず頭を悩ませるマジカル。そんな時、遠くから声が聞こえた。

 

「ミラクルー!マジカルー!」

「モフルン?」

「と八幡さん?」

 

その声のする方を見ると八幡とモフルンが手を振っている。

 

「一体何を…」

「もしかしたら…マジカル!」

「へ?」

 

二人の意図がわからずに首を傾げているマジカルの手を握って、ミラクルが跳躍、ヨクバールから距離を取り、八幡とモフルンがいる本棚に着地した。

 

「プリキュア…わざわざ戦えない者を巻き込むとはどういうつもりだ?」

 

跳躍した二人を見て、ガメッツが訝しげに言う。

 

確かにガメッツは八幡を警戒していたが、それはあくまでも不意討ちや目眩ましなどの邪魔の話で、直接戦う力がないことは、さっきまでの攻防で証明された。

 

「まあいい、次で終わりだ!」

「ヨクバァール!」

 

プリキュアに止めをさすべく、ヨクバールは四人がいる本棚に向かって雲の中を最高速度で進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━って作戦なんだが…いけそうか?」

 

跳んできたミラクルとマジカルにざっと思い付いた案を説明する八幡。

 

「…やってみないとわからないわ、それにそもそも上手くいくのかしら?」

「それこそやってみないとわからん…ただ、成功したとしても通じるのは一回だけだ、二度はない」

 

八幡の言葉にマジカルは不安そうな顔を浮かべる。

 

「…やってみようよマジカル」

「ミラクル…でも…」

 

もし失敗したら…そう思うと踏み出せないマジカルにミラクルが大丈夫と手を握った。

 

「もし失敗しても、なんとかなる!…ううん、なんとかしてみせる!だから大丈夫だよ!」

「ミラクル…」

 

それに…と続けるミラクル。

 

「私は二人を信じてる、きっと上手くいくって」

「モフルンも!モフ!」

 

笑顔でそう言い切るミラクルにマジカルはポカンとした表情を浮かべた。

 

「…まあ、やれるだけのことはする。だから、後は任せた」

「八幡さん…」

 

ミラクルの言葉に照れているのか、そっぽを向きながら早口で言う。

 

「…わかったわ、私も二人を信じる」

「マジカル…!!」

 

覚悟を決めたマジカルとミラクルが作戦通りに八幡の前に立った。

 

「信じてる…か……」

 

前に立つ二人の背中を見つめて八幡がぼそりと呟き、その意味を考える。

 

(そんな言葉はただの押し付けでしかない。勝手に期待されて、失敗したら信じると言ったその口からお前が悪いと謗られる…)

 

八幡にとってそれは、そんな欺瞞に満ちた言葉の筈だった…しかし、あの二人から聞いたその言葉からは、不思議とすんなり受け入れられた。

 

(なら…俺は…あいつらを……)

 

続く言葉を胸に秘め、杖を取り出した八幡は二人に問う。

 

「チャンスは一度だ、準備はいいか?」

「大丈夫!」

「いつでも来なさい!!」

 

その返答に八幡は息を大きく吸い込んで、杖を真上に掲げた。

 

「キュアップ・ラパパ!閃光よ、爆ぜろ!!」

 

杖の先から凄まじい光が放たれ辺りに降り注ぐ。

 

「っ…凄い光……でも!」

「…見つけた!」

 

光に照らされて雲の中に黒い影が浮かび上がるのを見つけた二人は、その影に向かって思いっきり突っ込んだ。

 

「ヨクバァール!!」

「はぁぁっ!!」

「たぁぁっ!!」

 

雲の中から飛び出してきたヨクバールの顔面に二人は同時に蹴りを放って真上に吹き飛ばす。

 

「「やったぁ!!」」

「うわぁぁぁっ!?」

 

その衝撃でヨクバールとガメッツが別々に吹き飛んだ。

 

「ヨクバァールッ!!!」

 

吹き飛ばされたヨクバールが怒りのままに突進してくるのを二人は見逃さない。

 

「今モフ!」

 

モフルンの合図と共に二人は伝説の杖を構える。

 

「「リンクルステッキ!」」

 

「「ダイヤ!」」

 

杖の柄にダイヤのリンクルストーンがセットされた。

 

「「永遠の輝きよ!私達の手に!」」

 

輝く光のカーペットが一面に広がって二人はそれぞれリンクルステッキ頭上で構える。

 

「「フルフルリンクル!」」

 

二人が描いた三角形が合わさってダイヤの形となり、突撃してきたヨクバールと激突した。

 

「「プリキュア!」」

 

「「ダイヤモンド…」」

 

ヨクバールが大きなダイヤモンドに包まれる。

 

「「エターナル!!」」

 

呪文と共にヨクバールを包んだダイヤモンドが宇宙の彼方に吹き飛ばされた。

 

「ヨクバァー…ル」

 

宇宙の彼方でヨクバールは浄化され、元通り二冊の本に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、吹き飛ばされたガメッツはというと…

 

「ぐあぁっ!?」

 

勢いよく図書館の天井を突き破り、外に放り出されて仰向けの状態で地面に落下した。

 

「おのれっ不覚をとった、おのれプリキュアッおのれおのれおのれおのれぇっ!」

 

甲羅がつっかえて立ち上がれずに、仰向けの状態で手足をバタバタさせながら喚くガメッツ。

 

そこに追い討ちをかけるようにザアザア雲が現れてガメッツの真上で土砂降りの雨を降らせる。

 

「ぬぅぅ…!!オボエテーロ!!」

 

完全に捨て台詞にしか聞こえない呪文を唱え、仰向けのままガメッツは撤退していった。

 

 

 

「プッ…アッハッハッハッ!ヒィッ…まったく、あんまり笑わせないでくださいよ」

 

ガメッツが消えた後、木の影から現れた人物がお腹を抱えて笑う。

 

「それにしても、ガメッツさんまでやられるとは…俄然、興味が湧きましたねぇ…プリキュア…いや、それよりもやはり、気になるのは彼の方かしらね…」

 

その人物はそれだけ言うと、校舎がある方向に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~上手くいって良かったね~」

 

みらいが安心して胸を撫で下ろしながら呟く。

 

「そうね…あの光の中で敵を見つけられるか不安だったけど成功して本当、良かったわ」

 

リコもみらいと同じく胸を撫で下ろした。

 

「…まあ、この明るい空間でヨクバールの影が浮かび上がるかどうかは賭けだったな」

「モフ~」

 

無事戦いを切り抜けた安心感で八幡はその場に座り込み、モフルンも安堵のため息を吐く。

 

現在、四人は謎の本を見つけた白い本棚の上に集まっていた。

 

「あれ…でもなにか忘れてるような……?」

 

そう言って首を傾げるみらいに八幡が呆れたような顔をして答える。

 

「…課題の蝶、まだ見つけてないぞ」

「あっ!?」

「そうだった…!」

 

どうやらみらいだけではなく、リコも忘れていたらしい。

 

「はぁ…今から探すしかないな」

「探すって言ってもそんな簡単に…」

「あ、ちょうちょだ!」

「「え?」」

 

その言葉に驚いてみらいの方を見ると本当に紙の蝶がひらひらと飛んで来ていた。

 

「…こんなにあっさり見つかるとは……」

 

今まで迷ったりしてたのは何だったんだとぼやく八幡を他所に、蝶はみらいが抱えて持っていた謎の本の表紙に止まる。

 

「そぉっと……」

 

リコは蝶が逃げないよう慎重に手を近付けて、覆うように包み込んだ。

 

「やった!リコちゃん、捕まえた!!」

 

みらいが喜びの声をあげた瞬間、抱えていた謎の本が虹色に光輝く。

 

「「「「!?」」」」

 

突然の出来事に四人は固まったまま動けず、その輝きに呑み込まれてしまった。

 

 

 

 

 

━チュンチュンチュン…

 

四人の耳に鳥の囀ずりが聞こえる。

 

「外に出られた…?」

 

何が起こったのかわからずに呆然としたみらいが呟いた。

 

「この本のおかげ…?」

 

みらいが持ってる本に全員の視線が注がれると、突如、本が粒子となって消え、中からスマートフォンくらいの端末らしきものが現れる。

 

「本…?いや…スマホか?」

 

全員が困惑する中、本のページがめくられるように謎の端末の表紙が開いた。

 

「ほぇ?」

 

開かれたその部分から植物の芽が生えて、みるみる成長していく。

 

「「………」」

 

すくすくと伸びきったそれは、ゆっくりとピンク色の蕾をつけていった。

 

「モフ…?」

 

蕾は徐々に花を開くと、中からピンク色に光る何かが姿を見せる。

 

「えぇっ!?」

 

そのピンク色に光る何かから、ちっちゃい手のようなものがぴょこんっと出て来て、驚きの声を上げるリコ。

 

「これは…」

 

光の中からうっすらと輪郭が浮かび上がった。

 

「わあ…っ!!」

 

一際、強く輝くと萎んだように光が収まり初め、やがて花も消えてしまい、ピンク色の光に包まれた何かだけがみらいの手に残される。

 

持っていた謎の端末を懐にしまうと両手で光を受け止めるみらい。そして、包まれていた光が消え去るとそこには小さな赤ん坊が眠っていた。

 

「赤ちゃん!!」

 

目を輝かせるみらいの声に、赤ちゃんが反応を示す。

 

「はー!」

 

短いが元気よく声を発した赤ちゃんは口をムニャムニャさせ、すーすーと寝息をたてて、眠ってしまうのだった。

 

 

 

━五話に続く━

 





次回予告


「寒いモフ~!」

「ほんと寒い……暖かい場所でだらだら過ごしたい」

「まるで氷の島ね、モフルン、八幡さん」

「今日!も頑張ろうねモフルン!八くん!」

「みらい?リコ?」

「…俺を巻き込まないでもらえますかね?」

「魔法で暖めてあげるよ二人とも!」

「私の魔法の方が凄いわよね?二人とも!」

「ふんっ!」

「ふ、ふんっ!」

「…もしかして喧嘩モフ?」

「…モフルン、あっちで一緒に暖かい飲み物でも飲むか?」

「モフ~!」





次回!魔法つかいプリキュア!やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。

「氷の島ですれ違い!?翻弄される八幡と魔法がつなぐ友情!」





「キュアップ・ラパパ!…」

「今日もいい日になぁれっ!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。