やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。   作:乃木八

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第二話「ワクワクの魔法学校へ!…帰ってもいい?校長先生はどこ!?」Bパート

 

「魔法の杖って木に実るんだ…」

 

校長先生を探していたはずのみらいだが、杖の木の不思議に心を奪われていた。

 

「左様、杖の木はマホウ界の各地に存在し、我々を見守ってくれている、マホウ界に新たな命が生まれるとそれを待っていたかのように杖は木から実り…そしてその子に授けられる」

「へぇ…」

「ほー…」

 

魔法使いの杖は自然からの贈り物、マホウ界の神秘に感心する二人。

 

「……しかし、ここにある木はもう数百年、杖を実らせておらん……長きに渡る役目を終えたのかもしれんな」

「「………」」

 

実らなくなって数百年、ということはそれよりずっと前からマホウ界の人々を見守ってきた事になる。

 

「…すげえな」

「…うん」

 

その歴史を感じて、思わずそんな言葉が漏れた。

 

「君達はあちらの世界の子だね?ここで何を?」

「…あっ、この学校の校長先生を探してるんです!」

 

青年の問いで当初の目的をようやく思い出したみらい。

 

「ほぅ……校長を?また、何故?」

 

校長という単語に僅かだが、表情を変えた青年の反応を八幡は見逃さなかった。

 

「…何処にいるかご存知ですか?」

「……その前に校長に何の用かね?」

 

やはり、目の前の青年は校長の居場所を知っているらしいが簡単には教えてくれない。

 

それも仕方ないだろう。違う世界から来た人間を怪しむのは当然、理由も聞かずにおいそれと校長先生に会わせるわけにはいかないのだ。

 

青年の問いにみらいは正直に答える。

 

「今、とっても困ってる子がいて、助けられるなら…力になりたいんです……私の大切なモフルンを守ってくれた…」

 

始まりは好奇心からだった。ワクワクに惹かれ、魔法使いを探して、リコに出会い、助けてもらった。だから、次は自分の番だと。

 

みらいのリコを助けたいという気持ちに八幡も自分の気持ち、理由を口にする。

 

「……俺は朝比奈みたいに助けたいとかじゃない…ただ、ここまで関わった以上、何もせずあいつ一人に責任を取らせるのは間違っている……」

 

最初は巻き込まれて偶然だった。その後もなし崩しで関わって、失敗を意地でも認めないけれど、あいつのめげない姿勢は素直に凄いと思った。だから、俺が何か出来るのなら。

 

「どうしてもその子の……」

 

「出来ることがあるなら……」

 

「「力になりたい」!!」

 

 

答えが揃う。その瞬間、二人の想いに応えるように杖の木が虹色に光輝き始めた。

 

「わぁ!?」

「なっ!?」

「これは……」

 

突然の光に驚いて杖の木を見る二人。今までなかった杖の木の変化に青年も戸惑っている。

 

「モフ?」

 

輝きが収まり呆然としている最中、何かを感じたモフルンがみらいの手からくるりと落ちた。

 

「わわっ!?モフルン!?」

 

ポンッ、トッ、タンッ、ポヨンと木の根元まで転がったモフルンはきれいに着地して鼻をくんくんと鳴らす。

 

「くんくん…モフ~!!……とっても甘い匂いがするモフ~♪」

 

モフルンが興奮したように見上げる先の枝には、光輝く蕾のような物が芽吹いていた。

 

「なんと……!?」

 

青年が信じられない物を見たような顔で呟く。

 

「杖が……実った……?」

 

枝の先の蕾は徐々にその形を変え、二本の杖となってゆっくり、二人の目の前に落ちてきた。

 

「魔法の……杖?」

「どうして杖が……」

 

二人は両手を差し出して杖を受けとる。みらいの手には先がハートになっている杖が、八幡の手には先が輪っかになっている杖がそれぞれ握られていた。

 

「おそらく、君達を選んだんだろう」

「私達を……」

「………」

 

手の中の杖をしばらく見つめる二人。やがてみらいが杖を握りしめ、杖の木を真っ直ぐ見つめ頭を下げる。

 

「ありがとうございました!!」

「モフッ!」

 

みらいにならい、モフルンをもペコリと頭を下げた。

 

「……ありがとうございました」

 

八幡も二人に続けて頭を下げ、お礼を口にする。

 

「…この世界が…この子達を迎え入れようと言うのか……」

 

ずっと魔法使いを見守ってきた杖の木を見上げ、呟く青年。その場にいる全員が風に乗ってそよぐ葉の音にしばらく耳をかたむけていた。

 

━━ドォォォォンッ

 

その静寂を破るように突如、大きな地響きが轟き、建物を揺らす。

 

「何だ?」

「えっ?なに!?」

「モフ~ッ」

 

音に驚いたモフルンがみらいの腕の中に飛び込むと、更に建物が大きく揺れ、みらいがバランスを崩してよろめいた。

 

「わぁっ!?」

「モフ!?」

「っ…」

 

八幡はとっさに倒れそうになっていたみらいを支える。

 

「……大丈夫か?」

「あっ……ありがとう八くん!」

「モフ~びっくりしたモフ」

 

いくら妹と同い年くらいの女の子でも密着したままというのはまずいと思い、無事なのを確認すると八幡はさっとみらいから離れた。

 

「外で何が……」

 

四人は揺れが収まるのを待って、外に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨクバァァールッ」

 

建物の外では羽を生やしたトラックに大きな髑髏の顔がついた怪物、ヨクバールが紫色の煙を撒き散らしながら飛び回っていた。

 

「我がヨクバールよ、プリキュアをいぶり出して捕らえるのです」

 

この騒動を引き起こした張本人、コウモリ男バッティが煙の届かない上空からヨクバールに指示を出している。

 

「ギョイッ」

 

指示を受けたヨクバールは旋回して更に煙を撒き散らし続けた。

 

「校舎が…」

「あの怪物は…っ!」

 

飛び回る怪物と校舎の惨状を目にしたみらいと八幡。すでに学校全体に紫色の煙が広まって、校舎の中にも充満しつつあった。

 

「あっ…リコちゃん!!」

 

教室で待機しているリコの身を案じてみらいが走り出す。

 

「っ待ちなさい!」

「朝比奈っ!……くっ」

 

青年と八幡が止めようとするが、すでにみらいの姿はなく、八幡は急いで後を追った。

 

 

 

 

階段を駆け降りて、剥き出しになっている大きな橋の渡り廊下をみらいは走り、その少し後ろを八幡が追いかけている。

 

「はっ、はっ、はっ」

 

煙に覆われて視界が悪い中を全力疾走で駆け抜ける二人。不意に、聞き覚えのある声が聞こえて足を止めた。

 

「見つけましたよ……」

「わぁっ!?」

「お前は…っ!?」

 

そこには髑髏の杖を右手に持ち、マントを風になびかせて、コウモリ男バッティが待ち構えいた。

 

「さぁお嬢さん、このバッティめと一緒に来ていただきましょうか?」

「いやだ!学校を滅茶苦茶にする人の言う事なんて……」

 

誰が聞くもんか!と強い意思を秘めた瞳で要求を突っぱねるみらい。

 

「…だな、だいたいそう言ってはい行きますって付いていく奴はいないだろ」

「フッ……ならば」

 

要求を拒否されたバッティは凶悪な笑みを浮かべ牙を剥き出しにしてみらいに襲い掛かる。

 

「っ……」

「モフッ……!」

 

襲い掛かってくるバッティに対してモフルンは怯えてしまい、みらいは足がすくんで動けない。

 

「っ朝比奈!!」

 

八幡はバッティとみらいの間に割り込み体を盾にして二人を庇った。

 

「力ずくで連れ帰らせてもらいます!!」

 

痛みを覚悟して目をぎゅっとつむった八幡の耳にこれまた聞き覚えのある声が聞こえる。

 

たぁぁぁぁぁぁっ━━!?

 

バッティもまた声に気付いてその方を見ると箒に乗ったリコが上下左右に蛇行しながら猛スピードで突進してくるのが目に入った。

 

「うぉっと!?」

 

慌てふためいて空中で手足をバタバタさせて回避を試みるがあまりのスピードに間に合わず激突し、吹き飛ばされてしまうバッティ。

 

「どぉぁった!?」「った!?」

 

ゴチンッ━━ドシンッ━━

 

派手な音と共に落ちたバッティとリコ。そんな光景に一瞬、呆然とした二人だったがすぐに我にかえってリコの元へ駆け寄った。

 

「リコちゃんっ!!」

「いったた~……あっ…落ちてないから!狙って体当たりしたんだし」

「…案外大丈夫そうだな」

 

こんな時にまで強がるリコを見て八幡は呆れながらも内心、無事だったことに安心する。

 

「無事だったんだね~」

 

リコの強がりをスルーして無事をなのを確認したみらいも良かったと胸を撫で下ろした。

 

「あなた達の方が危なかったでしょうが!……まったく、世話が焼けるわね」

 

文句を言いながらプイッと横を向くリコ。顔が少し赤く見える気のせいだろうか。

 

「リコちゃん!」

「?」

 

名前を呼ばれてそっぽを向いていた顔をみらいの方へ向けると目の前に手が差し出される。

 

「また助けてもらっちゃったね、ありがとう!」

「ぁ…」

 

みらいの満面の笑顔と差し出された手にリコは目をぱちくりさせてそれを見つめた。

 

「そうだな、助かった…その…あれだ…ありがとう」

 

八幡もみらいに続いて素直に告げる。

 

「………」

 

みらいの満面の笑顔と八幡の素直な言葉に戸惑うリコの顔は先程よりも赤くなっていた。

 

「…ん」

 

リコがおずおずと差し出されたみらいの手をとる。すると、不思議な事に二人の胸の辺りからまばゆい光と共にリンクルストーンが現れた。

 

「リンクルストーンが…」

「えっ!?」

「また光った!?」

 

光輝く二人のリンクルストーン、その輝きはみらいを追って渡り廊下の下まで来ていた青年にも目にも映る。

 

「?……この輝きは」

 

渡り廊下の下から見上げた青年は驚きの表情を浮かべた。

 

「…もう一人のお嬢さん、探す手間が省けましたよ!!」

 

吹き飛ばされていたバッティは語気を荒げてヨクバールをけしかける。

 

「ヨクッ」

 

迫るトラック型ヨクバール、このままでは四人共やられてしまうだろう。

 

「きたわ!?」

「っ……どうする!?」

「ダイヤの光を信じるモフ~!」

 

モフルンがみらいとリコを見てそう告げるとみらいは決意の表情で浮かべた。

 

「リコちゃん!」

 

その表情を見たリコは頷き()()()と同じようにみらいと手を繋ぐ。

 

「「キュアップ・ラパパ!」」

 

「「ダイヤ!」」

 

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!!」」

 

呪文を唱えると二人とモフルンを光が包んで見えなくなった。

 

「これは……あの時と同じ」

 

思い出すのは八幡がビルの屋上から目にした光。箒の上で追い詰められた二人が起こした奇跡の魔法。

 

「伝説の……魔法使い」

 

光が晴れて、魔法陣の中から伝説の魔法使い、プリキュアに変身した二人とモフルンが飛び出す。

 

「ふたりの奇跡!キュアミラクル!!」

 

「ふたりの魔法!キュアマジカル!!」

 

「「魔法つかいプリキュア!!」」

 

ポーズを決めて、華麗に着地する二人。渡り廊下の下からその光景を見ていた青年は信じられない物を見たような顔で呟いた。

 

「プリキュア……伝説の魔法使い、プリキュアか!?」

 

変身した二人をバッティは待っていたと言わんばかりに再びヨクバールをけしかける。

 

「今度は手加減しませんよ!」

「ヨクバァールッ!!」

 

ヨクバールは髑髏の顔からカラスのくちばしを覗かせて二人に突進した。

 

「「ふっ……はぁぁぁぁっ!!」」

 

その突進に対して二人はヨクバールに向かって跳躍、そして同時に跳び蹴りを放つ。

 

「ッヨクバァ!?」

 

二人の跳び蹴りがヨクバールの顔面にめり込み、派手に羽を散らしながら後方へ吹き飛んだ。

 

「ョ…クバァルッ!」

 

空中で体勢を立て直したヨクバールはお返しとばかりに無数のタイヤを高速回転させて飛ばしてくる。

 

「「ふっ!!」」

 

気合いと共に前に向かって飛び上がり、襲い掛かる無数のタイヤを空中で身を翻して華麗にかわす二人。

 

━━ドンッ、ドゴォンッ

 

「あっ」

 

音に反応して後ろを向いたミラクルの目に、よけたタイヤが校舎に直撃して派手に崩れるのが見えた。

 

「はっ、たぁっ、ふっ」

 

校舎が壊れる事なんてお構いなしで攻撃を仕掛けてくるヨクバール。その攻撃をマジカルはひとつ、ひとつ、叩き落としてこれ以上被害が広まらないように立ち回っていた。

 

「あっ……くぅっ…」

 

マジカルが反射的に避けてしまったタイヤが杖の木のある建物の方へ向かっているのに気付いたミラクルはものすごい速さでそれを追いかける。

 

「ふっ!あぁっ」

 

タイヤに追い付いたミラクルはその勢いのままタイヤに向かって思いっきり体当たりをしてどうにか軌道を逸らす事に成功した。

 

しかし、その代償にミラクルも吹き飛び、渡り廊下の下へ落下してしまう。

 

「ふぁっ!?ミラクルッ!!」

「危ない!」

 

モフルンと八幡の悲鳴と共にかなりの高さから地面に叩きつけられたミラクル。

 

「ミラクル!」

 

落ちていったミラクルの元へマジカルが駆けつけ、心配そうに覗きこむ。

 

「…ちょっと痛かった」

「もぉ…」

 

えへへと額をさすりながら笑うミラクルにマジカルは心配させないでと眉を寄せた。

 

「良かったモフ~」

「ちょっと痛かったで済む高さじゃないだろ……」

 

安堵するモフルンと無事を喜びつつ、改めてプリキュアの凄さを目の当たりにした八幡。

 

「あっ危ないモフッ!」

 

安心したのも束の間、再びタイヤが二人を襲う。

 

「っ…」

「わぁ!?」

 

間一髪のところでマジカルがミラクルの方へ飛び込み回避できたが、避けたタイヤが杖の木のある建物に直撃してしまった。

 

「あっ、このままじゃ学校が……」

 

幸い建物は倒壊せずヒビが入る程度で済んだが、次、直撃すれば確実に崩れてしまうだろう。

 

「…何とかしないと、このままじゃ学校に通えなくなっちゃう!!」

「ええ!あっ…でも、私はもう……」

 

退学になるからと俯くマジカルにミラクルは自信満々な声で言いはなった。

 

「大丈夫!」

「?」

 

何が大丈夫なのかとマジカルは怪訝な顔でミラクルを見つめる。

 

「だって、まだ校長先生とお話ししてないんだから…会いに行こう!二人で……ううん、モフルンと八くんも一緒にみんなで!!」

「……ほんと、お節介なんだから」

 

ミラクルの言葉に敵わないなという表情でマジカルが頷いた。

 

「モフ」

「……変身してもあいつは変わらないな」

 

そんな二人の様子をモフルンが笑顔で見守り、八幡もまた苦笑する。

 

「早くプリキュアを捕まえるのです!」

「ギョイッ!」

 

苛立つバッティがヨクバールを叱咤し、それに応えるために鼻息を荒くして二人へ突撃した。

 

「ヨクバァァル!」

 

突撃してくるヨクバールを真っ直ぐ見つめ、二人は決意と共に言葉をぶつける。

 

「校長先生に会いに行くんだから…」

 

「私達の…」

 

「「邪魔をしないで!!」」

 

二人の想いに応えるように杖の木が輝いて、リンクルストーンが共鳴する。

 

「ふぇ?」

「なに?」

 

杖の木から虹色の光が空へ、そしてモフルンの胸のリンクルストーンダイヤに降り注いだ。

 

「モフ?」

「光が…」

 

降り注いだ光がダイヤに反射して二つに別れてミラクルとマジカルの元へと向かい二人の杖を包み込む。

 

「魔法の杖が…」

「これもダイヤの力…?」

 

降り注いだ光は二人の杖を変化させた。杖の柄にはリンクルストーンダイヤがセットされていて持ち手が長くなっている。

 

「リンクルストーンがこの世界の力を二人の杖に導いた…あれは……」

 

戦いを見守っていた青年は何かを知っているようで驚き、口を開いた。

 

「輝きを纏いし伝説の杖、リンクルステッキ!!」

 

伝説の杖、リンクルステッキが今、伝説の魔法使いの手に収まる。

 

「マジカル!」

「ミラクル!」

 

ステッキを手にした瞬間、二人は何をどうすればいいのか直感的に理解してお互いにステッキを構えた。

 

「させませんよ!!ヨクバール!」

「ヨクバァァルッ」

 

リンクルステッキの登場に焦りを感じたバッティの指示にヨクバールが今までで一番の速さで突撃するが、すでに構えていた二人の方が早い。

 

「これなら…」

 

━━パチンッ

 

二人の勝利を確信した八幡の耳に指を弾いたような音が聞こえた。

 

「何だ?今の音…」

 

ビュォォォォッ━━

 

「きゃあっ!?」

「っ杖が!?」

 

突如、ミラクルとマジカルの前で強烈な突風が起きて手にしていたリンクルステッキが飛ばされてしまう。

 

「ヨクバァッ!!」

 

突風に気を取られている間にヨクバールが更に速度を増す。突然の出来事に二人は回避する暇もなく直撃を受けてしまった。

 

「わぁぁっ!?」

「っきゃああ!?」

 

その威力はタイヤ攻撃の比ではなく、二人とも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「ミラクル!マジカル!」

 

モフルンの悲痛な声が響く。あのまま勝てるはずだったのに謎の突風のせいで全てがひっくり返ってしまった。

 

「くそっ……!」

 

悪態をついた八幡は考えるより先に足が動き、二人の元へ向かっていた。

 

向かう最中、頭の中では様々な考えが浮かぶ。

 

二人は無事なのか?

 

向かったところで何が出来るのか?

 

そもそもどうして向かっているのか?

 

ぐるぐる考えが頭の中を駆けめぐり、まとまらないまま戦いの場に足を踏入れる八幡。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息も絶え絶えに辺りを見回すと倒れている二人を見つけ、急いで駆け寄る。

 

「うぅ……」

「っう……」

 

かなりダメージを負ってはいるが、大事に至ってはないようだった。だが、このままではいつ追撃がくるかわからない。

 

「どうする……?」

 

さっきまでの戦いはとてもじゃないが普通の高校生である八幡が割って入れるようなレベルじゃない。むしろ、居ることで足を引っ張る可能性が高いだろう。

 

「ぅ……八くん?」

 

悩んでいる内に意識を取り戻したミラクルが八幡の方を見て呟いた。

 

「…気が付いたみたいだな、大丈夫か?」

「う…ん、なんとか……っマジカルは!?」

「…んぅぅ…ここは……」

 

マジカルも気が付いたようでキョロキョロ周りを見回している。

 

「フフッ、どうやらここまでのようですね、お嬢さん方?」

 

勝ち誇った笑みを浮かべ、バッティがゆっくり近づいてきた。

 

「くっ……」

 

いまだ倒れたままの二人を庇うように八幡はバッティと対峙するが、その足は小さく震えていた。

 

敵わないのは百も承知、この状況で立ち塞がるからには、前みたいに軽くあしらわれる程度では済まないだろう。

 

それが目に見えているため体が恐怖しているのだ。

 

「おや?また貴方ですか、フッ無駄なことを…」

「………」

 

立ちはだかる八幡を特に障害になるとは思ってないバッティはその姿を見て嘲笑う。吹けば飛ぶような存在が無謀なことをしていると。

 

「…無駄なんかじゃない!!」

 

声に驚いて振り向くとそこには傷を負いながらも立ち上がったミラクルがいた。その瞳は真っ直ぐバッティを見据えている。

 

「八くんは……助けてくれた!今もこの前も…誰だって怖くて逃げ出してもおかしくないのに守ってくれてるの!!」

 

ミラクルの言葉にマジカルも立ち上がり、続く。

 

「そう…ね……捻くれてるけど優しい…何だかんだでここまで付いてきてくれて…退学になりそうな私を庇ってくれた……今だって!!」

 

二人が何をいっているのか八幡には一瞬、理解できなかった。

 

助けようとした、けれど何も出来なかった、庇った訳じゃない、ただ責任を押し付けたくなかっただけ、逃げ出さなかったのだってそんな無責任なことはしたくなかったから、結局のところ全部自分のためだ。

 

「フッ、フハハハッ何をいうかと思えば、結果が伴わなければ何の意味もない。所詮、彼には何もできませんよ」

 

その通りだと八幡は思う。助けようとしたって助けられなければ、なにもしてないのと一緒。バッティのいうように八幡にはこの窮地を救うような力はない。

 

「それは違う!結果がどうとかじゃない、助けようとしてくれる…その想いに私は勇気を貰ったの!だから…」

 

「意味がない?そんなわけないじゃない私はその優しさに踏み出す力を貰った!だから…」

 

「八くんを」「八幡さんを」

 

「「バカにしないで!!」」

 

二人の叫びに再び応えるように飛ばされていたステッキが輝きを放つ。

 

「この光は…」

 

リンクルステッキの光はミラクルとマジカルの後ろの方からだ。

 

「くっ…しかし、この距離ならば貴女方がたどり着く前にヨクバールの攻撃が届くっ!やれ、ヨクバール!」

「ギョイッ!」

 

突撃体勢に入るヨクバール。このままだと攻撃の方が早い、何が手はないかと八幡は必死に考えを巡らせるがなにも浮かばない。

 

(っ…これじゃ結局()()変わらな…い…?)

 

何かが引っ掛かって思考が止まる。ふと、ポケットへと手を伸ばし、そして思い至った。

 

「っミラクル!マジカル!」

 

後ろを振り向き、二人に視線で合図を送る。前は伝わらなかったが今なら伝わる気がした。

 

「…わかった!」

「…任せたわよ!」

 

意図を理解した二人は八幡を信じて頷くと目をぎゅっと(つむ)って後ろへと思いっきり跳んだ。

 

「行かせませんよ!ヨクバールっ!!」

「ヨクバァァル!!」

 

凄まじいスピードでヨクバールが迫る中、八幡はポケットから魔法の杖を出して構える。

 

(一か八かだ、イメージしろ…魔法の使い方なんてわからない、でも、あの時と同じように…!)

 

思い出すのは、二人の元へと瞬間移動した時、あの時はリンクルストーンの力があったからかもしれない。それでも、今はその感覚を頼りにするしかないのだ。

 

「何をしようと無駄ですっ貴方たち魔法使いの退屈な魔法では闇の魔法は止められない」

 

(思い浮かべるのは光…映画や漫画、ゲームで見るような閃光弾のイメージ)

 

ヨクバールはすぐそこまで来ている。八幡は意を決して呪文を唱えた。

 

「キュアップ・ラパパ!閃光よ、爆ぜろ!!」

 

その瞬間、杖の先から文字通り目が眩むような光が発せられて目の前が真っ白に塗り潰される。

 

「ヨクバッ!?」

 

光は当然目の前にいたヨクバールの視界も塗り潰し、驚いたヨクバールは混乱して明後日の方向へ突っ込んでしまった。

 

「ぐっ……目がぁっ!?」

 

少し離れたところにいたはずのバッティにも効果が及んだようで目を押さえてうずくまっている。

 

「今だ!!」

 

自身の放った魔法で視界が奪われている中、八幡は後ろへ跳んだ二人へ叫んだ。

 

「いくよ!マジカル!!」

「ええ!ミラクル!!」

 

二人はリンクルステッキを拾い、そして構える。八幡の合図と共に目を閉じていた二人には魔法の効果は及んでいない。

 

「っまずい…!ヨクバール!!」

「ヨッヨクバッ?」

 

危機を感じたバッティが指示をとばすが、ヨクバールの視界はまだ回復しきっていないためどこに向かっていけばいいのかわからず、戸惑っていた。

 

「「こっちよ!!」」

 

その最中、ミラクルとマジカルが自分達がいる場所を声で知らせる。

 

「ヨクバァッル!!」

 

声がする方へ全速力で突進するヨクバール。しかし、すでに二人はリンクルステッキを手に待ち構えていた。

 

「「ダイヤ!」」

 

「「永遠の輝きよ!私達の手に!」」

 

二人が手を繋ぐと地面からキラキラした光の粒が溢れ一面を埋め尽くす。

 

「「フルフルリンクル!」」

 

呪文を唱えながら上段に構えたステッキで空中に図形を描くと、二人の描いた図形が繋がりダイヤの形となって、迫り来るヨクバールと激突する。

 

バチバチと火花を散らしてぶつかり合う光と闇。その均衡を破ったのはプリキュアの光だった。

 

「「プリキュア!」」

 

ダイヤの図形が魔法陣へと変わり、闇を押し返す。

 

「「ダイヤモンド……」」

 

杖を掲げて繋いだ手をぎゅっと固く握ると光が強さを増して魔法陣が輝いてヨクバールをダイヤモンドの中に閉じ込めた。

 

「「エターナル!!」」

 

繋いだ手を放つように前へとつきだす二人。するとヨクバールを閉じ込めたダイヤモンドが砲弾のように空へと吹き飛んでいく。

 

「ヨクバール……」

 

ダイヤモンドは大気圏を越えて宇宙へと飛び出した。そして閉じ込められていたヨクバールは浄化され、そのまま宇宙の彼方で弾けて元の羽根とトラックに別れて地上に降りていった。

 

「なっ…ヨクバールが!?」

 

ようやく視界が回復したバッティは浄化されていくヨクバールを目にして驚愕の声を出す。

 

「私の魔法を破っただと…!?くっ……オボエテーロ!!」

 

バッティは自らの魔法が破れたことが信じられないといった表情をしながら呪文を唱え、撤退していった。

 

「…あれって捨て台詞じゃなくて呪文だったのか」

 

その場から消えたバッティを見て一人納得する八幡。すると、ヨクバールに壊された校舎がきれいに元に戻っていく。

 

「この前もそうだが一体どういう仕組みなんだこれ……」

 

元通り直った校舎を見てそんなことを考えているとみらいとリコ、そしてモフルンが八幡の方へと手を振っているのが見えた。

 

「おーい八くーん」

「モフ~!」

 

元気なみらいとモフルンの声を聞いて無事なことを確認しつつ、三人が待つ方へと八幡は向かい合流する。

 

 

 

 

 

 

 

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「そういえば、俺がやろうとした事がよくわかったな?」

「え?」

「何のこと?」

 

全員の無事を確かめた八幡は疑問に思っていたことを口にした。

 

「いや俺が目眩ましを使ったとき何も言わなかったのに目を閉じてたからよくわかったなと」

 

あの時は直感的に伝わると思った八幡だが、冷静に考えてみると普通はあのやり取りだけでわかるはずかない。

 

「うーん……あの時はなんとなく八くんのすることが伝わってきたっていうか…」

「そうね、私もなんとなくこうするんじゃないかって思って……」

「なんとなくかよ……」

 

返ってきた答えがあまりに漠然としていて少し呆れる八幡。

 

「……そうだ!あの時八くんが唱えた呪文、かっこよかったよね~!」

 

みらいの一言が八幡の心にグサリと刺さる。

 

「……そんなことないだろ」

 

唱えている時はとにかくイメージに集中していてなんとも思わなかったが、思い返すと八幡の黒歴史に新たな一ページが刻まれるレベルで恥ずかしかった。

 

「ええ~かっこいいよ!だって爆ぜろってスッゴい言いたくなるもん」

「……頼むから勘弁してくれ」

 

イメージしやすかったとはいえ閃光よ、爆ぜろなんて中二病全開のフレーズを言うんじゃなかったと八幡は激しく後悔する。

 

「爆ぜろ…閃光よ…爆裂……」

「おい朝比奈、その辺にしといた方がいいぞ」

 

みらいの中で何かが目覚めそうになっていたので八幡はその道を通った者として忠告を出した。

 

「……ところで、その杖どうしたの?」

 

今まで自然とスルーしていたが、みらいも八幡もいつの間にか杖を持っていることに驚くリコ。

 

「あー…そういえば言ってなかったな」

「えーと、これはね…」

「二人が杖の木から授かったのだ」

「「「「?」」」」

 

答えようとした二人の代わりに別の声が答える。突然会話に入ってきた声に四人は疑問を浮かべて声のした方を向いた。

 

「あ~杖の木のところで会った人」「え…?」

「いやその通りだけどそれはないだろ……」「あっあっあっ……こっ」

「「?」」

 

声の主はみらいとモフルン、そして八幡が杖の木がある部屋で出会った青年だった。

 

平然としている二人とはうって変わって驚き口をパクパクさせているリコに何事かとみらいと八幡は視線を向ける。

 

「こっ校長…先生!」

「…え?」

「…は?」

 

青年のまさかの正体に唖然とする二人。するとみるみる内に青年の服装が豪華なものへと変わっていった。

 

「ええ~!?この人が…魔法学校の校長先生?」

「左様…」

「まさか…本人だったとは……」

 

校長先生の居場所を知っているどころか本人だなんて想像もしていなかった八幡は若すぎだろと呟く。

 

「あっあの、校長先生!お話があるんです!!」

 

みらいは青年の正体に驚きながらも意を決して切り出し、リコもみらいの後に訴えた。

 

「私達、プリキュアに…」

「みなまで言うな」

「「え?」」

 

直談判をしようとしていた矢先に止められ、困惑する二人。

 

「もう事情はさっき朝比奈から聞いて知ってるって事だろ」

「あ…」

 

そう八幡の言うとおり、杖の木の部屋でみらいは校長先生とは知らず青年に理由を話していたのだ。

 

「……授業を受けてもらいたい…君達三人に」

「授業?ってことは……」

 

校長先生の提案にリコは混乱する頭を整理しながら考える。

 

「退学なんかじゃないってことだよ!良かったね!リコちゃん!!」

「あ…ええ!」

 

喜びのあまり満面の笑顔でリコに抱きつくみらい。リコもようやく理解したようで声が弾んでいた。

 

「「「「ん?」」」」

 

喜ぶみらいとリコを見て八幡とモフルンも顔を綻ばせたが、校長先生の言葉に四人は疑問を覚える。

 

「ちょっと…待てよ」

「君達…」

「三…人?」

「モフ」

 

三人、つまりリコだけではない。そこには当然……

 

「今、三人って言いました?」

「ああ、君達もだ。しばらくの間、この学校にとどまってくれないだろうか?」

「は……?」

「え……?」

 

 

 

 

 

 

「「「ええぇぇぇっ~!!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

マホウ界の空に三人の声が響くのだった。

 

 

 

 

「モフ?」

 

 

 

━三話に続く━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…せっかく手を貸してあげたのに負けるなんてね……まあ、面白いものも見れた事ですし、良しとしましょう……フフフ」

 

物陰から戦いを観察していた人物は妖しく笑うと校舎の中へ消えていく。

 

 

その視線を向けられていた四人はその事に気付く筈もなかった……。

 

 





次回予告


「みんなで一緒にお買いもの~♪」

「寄り道はしないわよ?魔法学校に通う準備なんだから」

「おかしい、いつの間にか俺の春休みが補習授業に変わってやがる…」

「モフッ甘い匂いモフ!」

「なになにっ!?クッキー?イチゴメロンパン?」

「あーなんかマッ缶飲みたくなってきたなぁ」

「あの甘いコーヒー?私も飲みたい…っそうじゃない、だーかーら……って、この光!ひょっとして新しいリンクルストーン!?」




次回!魔法つかいプリキュア!やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。

「魔法商店街でショッピング!通うなんて聞いてないんですけど…?目覚めるルビーの力!」






「キュアップ・ラパパ!今日もいい日になーれ!」

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