やはり俺が魔法使いでプリキュアなのはまちがっている。   作:乃木八

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第三話「魔法商店街でショッピング!通うなんて聞いてないんですけど……?目覚めるルビーの力!」Aパート

 

ここはナシマホウ界のみらいの家。みらいの祖母である結希かの子は帰りの遅い孫娘からの電話を心配そうに受けていた。

 

「あら、みらい?魔法使いは見つかったの?」

「うーん、見つかったていうか…私もなれちゃいそうなの!」

「え?」

 

魔法使いを探しに出掛けていった孫娘がその魔法使いになれちゃいそうという事に目を丸くして驚くかの子。

 

「えっと、魔法使いのリコちゃんに会って、それから八くんとも会って、猫がフワッて喋って、箒で空飛んで、それから…色々あってカタツムリでマホウ界に来たの」

「ざっくりしすぎだろ……」

「はぁ…」

 

電話代わりの魔法の水晶に向かって身ぶり手振りを交えながら話すみらいに八幡とリコが呆れて首を振り、校長先生は苦笑している。

 

「魔法学校で校長先生が春休みに勉強しようって」

「はあ…?」

 

みらいの説明が要領を得ないのもあるが、あまりの出来事にかの子は状況が飲み込めていない。

 

「とにかく、色々あって……おばあちゃんっ!私っ入りたいの!魔法学校に!!」

 

うまく伝わってないことはみらいも分かっていた。だからこそどうしても入りたいという気持ちを正直にかの子にぶつける。

 

「……」

 

リコはそんな二人のやり取りを心配そうに見守っていた。

 

「…そうかい」

「「?」」

 

水晶から、かの子の声が返ってくる。その声音は穏やかかで優しく、リコと校長先生が意外そうな顔をしていた。

 

「みらいが決めたことなんでしょ?応援するよ」

「わぁ…やった~!!」

「モフ~」

「…すげえな」

 

喜ぶみらいとモフルン。その様子を見ていた八幡はかの子の懐の広さに思わずそう洩らす。

 

「お父さんとお母さんには言っておくから、頑張りなさい!」

「ありがとう!!」

 

孫娘へエールを贈るかの子の表情は水晶越しでも優しく微笑んでいることがわかる。

 

(きっと朝比奈のおばあさんには説明なんて半分も伝わってないだろう。だが、朝比奈を信じてやりたいことを応援すると言っている…)

 

そんな信頼を向けられるみらいを八幡は心の中で少し羨ましいと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった!お母さんには小町が伝えとくね」

「え…?」

 

みらいの方は無事許可が取れたので次は八幡の番ということで家へ連絡し、ここでダメと言ってくれれば…と淡い希望を持ちつつ、簡単に事情説明したのだが、あっさりと許可されてしまう。

 

「お土産はお兄ちゃんの楽しい思い出で、あっ今の小町的にポイント高い!」

「いやいや、えーと、小町ちゃん?きちんと話を聞いてた?お兄ちゃん春休みの間帰ってこれないんだよ?」

 

困るでしょ?と小町に問うとため息を吐きながら全くしょうがないごみぃちゃんだなぁと呆れた台詞と共に答えが返ってきた。

 

「別に、小町はお兄ちゃんがいなくても困らないよ?それにどうせ家にいてもお兄ちゃんはだらだらとしてるだけなんだからいい機会でしょ」

「ぐっ…間違ってないから言い返せない」

 

妹の正論に言いくるめられる兄。小町はこれ以上兄が言い訳して逃げれないようにするために会話を打ち切ろうとする。

 

「それじゃあみらいさん、リコさん、こんな捻くれた兄ですがよろしくお願いします…じゃお兄ちゃん頑張ってね~」

 

ガチャリと電話を切る音が響いてその場がシーンとなった。

 

「やられた…」

 

こうなってしまえば、もはや通うしかない。そもそもみらいとリコが会話に入ってきた時点で小町の反応が変わったことに気付くべきだったと悔いる八幡。

 

ある意味みらいと同じく送り出された八幡だが、その内容は真逆と言ってもいいだろう。信頼されたみらいとは違い、丸投げされたのだから。

 

「…ともかく、二人とも許可が下りたようだね。なら、必要な物を揃えに買い出しへ行ってきなさい」

「必要な物…ですか?」

「モフ?」

 

落ち込む八幡を他所に話が進んでいく。

 

「左様、ではリコくん案内は任せた。魔法の絨毯を呼んであるからそれに乗っていくといい」

「はっはい!…それじゃ行くわよ二人とも」

 

リコに促されてみらいとモフルン、その後に続いて足取りの重い八幡が続いた。

 

「はぁ……何でこんなことに…」

 

二人の後をついていきながら八幡はため息をつき、校長とのやり取りを思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人が声を揃えて叫んだ後、みらいと八幡は校長の提案にそれぞれ違う反応を見せていた。

 

「あのっあのっそれってつまり、魔法学校に通うって事ですか!?」

「左様、春休みの間だけリコくんと一緒に授業を受けてもらいたい」

 

校長に確認をとるとみらいは嬉しそうに笑ってはしゃいでいる。それとは対称的に八幡の表情は暗い。

 

「…それは俺も通わないといけませんか?」

「いや、あくまでもお願いであって強制ではない」

 

強制ではないという言葉に八幡はこの話を断ろうと考えていた。

 

「ええっ!?八くん一緒に通わないの…?」

「…俺が通う必要はないだろ」

 

悲しそうな顔をするみらいから目を背けながら八幡は通わなくてもいい理由を並べていく。

 

「俺がここまで来たのはリンクルストーンを持ってくるのと事情を説明するためだ。伝説の魔法使いに変身した朝比奈はともかく、俺は通う必要がない」

 

八幡は言い終えると、ポケットからリンクルストーンを取り出した。

 

「これはここに置いていきます。調べるなりなんなり好きにしてください」

「そんな…」

 

みらいの表情がさらに曇る。

 

(これでいい。俺は朝比奈のついでに誘われただけ…ただの高校生がこれ以上魔法なんてものに関わるのは間違っている)

 

「ふむ、君が本当に嫌なら私は退こう。しかし、私は伝説の魔法使いだからという理由で授業を受けてほしいわけではない」

「え…?」

 

予想外の校長の言葉に八幡は驚き、思わず声を漏らした。

 

「君達の想いに杖の木は応え、杖を与えた。つまりそれはこの世界が君達を受け入れたのだ。ならば一人の魔法使いとしてそれに応えなければなるまい」

「受け入れた……」

 

伝説の魔法使いだからではない。つまりみらいのついでではなく、八幡もまたこの世界に受け入れたということだ。

 

「そうだよ!プリキュアだからなんて関係ない、八くんだって私と同じだもん!!」

 

未だに驚いたまま考えがまとまらない八幡にみらいはそれに、と続ける。

 

「八くんだってリンクルストーンを持ってるんだから、もしかしたらプリキュアになれるかも知れないよ!!」

「…そうね、可能性はあるかも」

「…は?」

 

とんでもないことを言い出したみらいとそれに頷くリコ。

 

「いくらなんでもそれはない…お前、俺にあのフリフリの衣装が似合うと?」

 

八幡は自分があのフリフリの衣装を着て戦うところを想像して身震いした。

 

「あはは…」

 

みらいもその光景を想像したのか、ひきつった笑いを浮かべる。

 

「…ともかく、二人ともご家族に連絡してはどうかな?通うかどうかは決めるのはそれからでも遅くはない」

 

変な方向に話が逸れかけたが、ともかく校長の提案で八幡とみらいは家に連絡をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━そして今に至る。

 

「そうだった…それから家に連絡したら、小町が出て、事情を説明するため二人を呼んだら態度が急に変わって話し半分のまま送り出されたんだった…」

「なに一人でブツブツ言ってるの…?」

 

思い返して後悔している八幡の顔を見て少し引いてしまったリコ。それほどまでに今の八幡は暗い。

 

「おお~!魔法の絨毯!!ワクワクもんだぁ~!!」

「モフ~」

 

それとは反対にみらいは初めて乗る魔法の絨毯にはしゃぎ、モフルンも絨毯の上でポヨンッポヨンッと跳び跳ねていた。

 

「…あんまりはしゃぐなよ、危ないから」

「わかったモフ!」

 

跳び跳ねるモフルンに注意する八幡。あれから四人は校長先生が手配してくれた魔法の絨毯に乗り町へ向かっている。

 

魔法の絨毯には四人の他に駅のホームで見た謎の生き物がハンドルを握り、運転手として同乗していた。

 

「それにしてもよく許してくれたわね」

 

はしゃいでいたみらいにリコが問う。八幡もその話に興味があり、耳をかたむけている。

 

「…おばあちゃん、いつも私を信じてくれるんだ、だから何でも正直に話せるの」

「……ふぅん」

「ほーん…」

 

嬉しそうにおばあちゃんのことを話すみらいを見てリコは少し羨ましそうに俯き、八幡もまた何かを考えるように上を向いた。

 

「リコちゃん、ありがとね」

「え?」

 

突然、みらいからお礼を言われたリコは何のことかと思い顔をあげる。

 

「買い物に付き合ってくれて」

「校長先生に頼まれたし、それに私も補習授業の準備があるから」

 

気にしないでとリコが言うと、嬉しそうに笑うみらい。

 

「モフッ町が見えてきたモフ!」

 

モフルンの声に前を向くと大きな木の上にある町が見える。雲から突き出たその木は下からではとても登れそうにないことから、マホウ界での移動手段が主に空を飛ぶことだというのが分かる。

 

「わぁ…大きいね…」

「そうだな、どんだけでかいんだよ…」

「ちなみに、あれ全部お店だから」

「「「ふぇ?」」」

 

大きな町、その全てがお店ということに驚く三人。

 

「あらゆる魔法の道具が揃う、魔法商店街よ」

 

魔法商店街、その言葉にみらいは目を輝かせワクワクいっぱいの笑顔を浮かべる。

 

「今、魔法商店街っていいましたっ!?」

 

みらいの元気な声が空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「招き猫?」

「モフ」

「これまたでかいな」

 

魔法の絨毯から降りて広場に来た四人はその中心に建っている炎の灯ったランプを持つ大きな猫像の前にいた。

 

「この像は町のシンボルでね、情熱の炎を守っているの」

「情熱の炎?」

 

その説明に首をかしげるみらい。八幡もまじまじと情熱の炎を見つめている。

 

「この街には古い伝説があるんじゃ」

「「「?」」」

 

四人は背後から声を突然声をかけられて驚き、振り向くとそこには杖をついたおじいさんがいた。

 

「フックさんっ?」

「知り合いか?」

「ええ…でも」

 

どうやらリコの知り合いだったらしいが何やら少し渋い顔をしている。

 

「遥か昔、この街が深い闇に覆われたときのことじゃ…」

 

そしてフックは街の昔話を語り始めた。

 

「光を失い、街は荒れ果て、人々が輝きを失いかけた…その時、突然炎が吹き出した、炎は人々の心に希望とそして情熱をもたらしたのじゃ」

 

フックが語ったのは情熱の炎の由来にまつわる話だった。その話にみらいと八幡は聞き入っている。

 

「闇は消え、街は再び活気を取り戻したそうな…炎は人々の情熱を宿し、今でもこうして燃え続けておる」

「へぇ…」

「ほー…」

 

話を聞き終えた二人は情熱の炎の方を向いてその歴史を感じていた。

 

「お嬢さん、そしてお兄さん、ペガサス横町の伝説もまたすごいぞ、遥か昔…」

 

話に聞き入っていた二人を気に入ったのか嬉々として話そうとするフック。

 

「うぅ…あ、買い物があるから行かないと…」

 

慌ててその話を遮ったリコが、みらいの手を引いて歩き出したのでフックに一礼してから、八幡もその後をついていく。

 

「…話始めたら止まらないんだからっ」

「さっきの顔はそういう理由か…」

 

リコが渋い顔をした理由に確かに話が好きそうなおじいさんだったなと納得する八幡。

 

「甘い匂いがするモフ」

「「「え?」」」

 

抱えられていたモフルンがいきなりそんなことを言い出した。

 

「甘い匂いって…まさか」

 

また何かが起こるのかと思って身構える八幡だったが、特に何も起きない。

 

「あれじゃない?」

「あれ?」

 

みらいの向いた方を見るとわたあめを売っているお店があった。

 

「モフッ!」

「「おいしそう~っ!!」」

 

声を揃えてお店の方へ前のめりになるみらいとモフルン。

 

「もうっ!お菓子食べに来たんじゃないから!」

「…そうだな、あんまり寄り道してもあれだし」

 

リコは腰に手を当てて、はしゃぐ二人を注意する。八幡もそれに同意するが、心の中では二人と同じくおいしそうだなと思っていたことは黙っておく。

 

 

 

その後、四人はまず制服を揃えるために服屋へ来ていた。

 

「商店街で一番腕がいいと評判のフランソワさんの服屋よ」

「「おぉ~」」

「一番腕がいいって言われると値段が怖いな…」

 

今回、魔法の道具を揃えるにあたって、お金は学校が出してくれるらしい。校長先生いわく、こちらが頼んだのだから当然とのことだ。

 

だから、値段の心配もする必要はないのだがあまり高いものだとさすがに気が引ける。

 

「まぁ…腕はいいんだけど……」

「え、何、なんかあんの?」

 

困った顔をして言い淀むリコに八幡は一抹の不安を覚えながら店のドアを開けた。

 

「リコちゃん!いらっしゃ~い!!」

「うぇ…どうも」

 

ドアを開けると同時にテンションの高い声を出した人物はなかなかにインパクトのある人だった。

 

背の高いスラッとした体型におしゃれなコーディネート、髪には謎の生き物のような飾りをつけている。顔は化粧をしているがこれがファッションの最先端と言われれば納得してしまう気がする。

 

「ぉ……」

 

そのインパクトに驚いたみらいと八幡がなんといっていいか分からずに唖然としていると店内の商品が飛び交い始めた。

 

「わぁ…」

 

飛び交う商品にみらいが感嘆の声を洩らす。その商品は八幡の素人目から見ても鮮やかなものばかりで本当に腕がいいことがわかった。

 

「まあ!ナシマホウ界のお洋服じゃな~いっセンス良いわね~!!」

「うぇ?」

 

商品を掻き分けて進んできたその人はみらいの服を見ると次に八幡の方を向く。

 

「こっちの彼もいいわ~!色々着せたくなっちゃう!」

「ぇぇ……」

 

ここまでの会話で八幡はリコが言い淀んでいた理由を察してつい声を漏らした。

 

八幡の次はモフルンに目線を合わせて、それにと続ける。

 

「あら、可愛い!」

「モフルンモフ」

 

自己紹介したモフルンに目を見開いて驚くと抱き上げてテンション高くくるくると回りだした。

 

「きゃぁぁぁ~!しゃべった!!この子喋れるのね~!フワッフワでキュートね~!!」

「苦しいモフ…」

 

モフルンを抱き締めて頬擦りする姿に呆気にとられるみらい達。

 

「リコちゃん、ナシマホウ界ってなに?」

「あなた達が住んでる世界よ、マホウ界ではそう呼んでるの」

「そうなんだ」

「この状況でそこが気になったのかよ……」

 

こうして話している間にもモフルンは頬擦りから逃げようとして、逃げちゃダメと捕まり頬擦りされ続けている。

 

「あの、彼とこの子に魔法学校の制服を」

 

リコが本題に入るために用件を切り出すと頬擦りされていたモフルンがチャンスと言わんばかりに抜け出して八幡の後ろに隠れた。

 

「あら~、校長先生から話は聞いてるわよ」

 

ようやくお仕事スイッチが入ったのかテキパキと準備を始めるこのお店の主人フランソワ。

 

「さあ、素敵な制服を仕立てるわよ!」

 

そういって杖を掲げて呪文を唱える。

 

「キュアップ・ラパパ、採寸なさい」

 

すると、作業台の上に置いてあった二本のメジャーがみらいと八幡の周りを漂い、採寸し始めた。

 

「わ!?」

「お?」

 

驚く二人。採寸は終わったらしく、フランソワがさらに呪文を唱える。

 

「キュアップ・ラパパっ、チョキチョキヌイヌイよ」

 

そう唱えると今度は裁縫に使うらしき道具が宙を舞って、布を切り、糸を通してひとりでに縫い始めたではないか。

 

「わぁぁぁ…!」

「あんな抽象的な呪文なのに服が出来上がっていく…」

 

出来上がる工程に興味深々のみらいと魔法の不思議に感心する八幡。そうこうしている間にも、みるみる制服が縫い上がっていく。

 

「さあ、出来たわよ!」

「わぁ…素敵!」

「サイズもピッタリだな」

 

出来上がった制服に着替えた二人。みらいの制服はリコと同じく赤を基調としたデザイン。八幡の制服は二人と違い赤ではなく青を基調としていた。

 

「とぉってもお似合いよ」

「可愛いモフ~」

 

綻びがないかチェックし終えると、モフルンを見てフランソワはさらに材料を取り出し始める。

 

「さて、あなたには…これがいいわ」

 

そうしてあっという間に出来上がったのは薄紫色の可愛いハンドポーチだった。

 

「おっと」

 

みらいが完成したポーチを受けとるとそこへ吸い込まれるようにモフルンがスポッと収まる。

 

「ありがとうモフ~!」

「ありがとうございます!」

 

モフルン専用の持ち運びポーチに満足した二人が、フランソワへお礼を言うとどういたしましてと返して今度は八幡の方へ近づいてきた。

 

「あなた…これなんか似合うんじゃないかしら?」

「は…え?」

 

そう言ってフランソワは眼鏡を取り出して八幡の顔にスッとかける。あまりに自然な動作だったので八幡は反応できずに為されるがままだ。

 

「やっぱり!思った通り、よく似合ってるわ~!」

「はあ…?そりゃどうも?」

「モフッ!格好いいモフ!」

 

突然眼鏡をかけられて戸惑っているが、モフルンに誉められて悪い気はしない八幡。

 

「どれどれ…わぁ!本当に似合ってる!!」

「そうね……いいんじゃないかしら」

 

みらいとリコからも誉められた。眼鏡ひとつでそんなに変わらないだろと思うがそうでもないらしい。

 

「これはあれか、腐ってる目が隠れるから格好よく見えるみたいな」

 

元々、目以外のパーツは整っているので目さえ隠せば格好よく写るのかもしれない。そんな事を言いながら八幡は眼鏡を外してポケットへしまう。

 

「…でも、いいの?サービスしちゃって」

 

モフルンの専用ポーチまでサービスしてもらい、そこまでして貰っていいのかと尋ねるリコにフランソワは杖をひょいっと振る。

 

「ちょっちょっと?」

 

リコの周りを糸の通った針が舞い、とれかけていた袖口のボタンを縫い始めた。

 

「また箒で落ちたでしょ?」

「「また?」」

「おっ落ちてないしっ」

 

またという部分に反応したみらいと八幡。リコは落ちてないと言い張るが、どうやらしょっちゅう箒から落ちるようだ。

 

「女の子は身だしなみが大切よ♪」

 

ウインクしながら説く姿は成る程、商店街で一番腕がいいと言われるのも分かる気がする。

 

「あっ…ありがとう」

 

今度から気を付けるのよと笑うフランソワにもう一度全員でお礼を言って四人は店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━魔法学校の一室。校長が椅子に座って考え事をしていた。

 

「マホウ界とナシマホウ界。二つの世界の少女の出会いがダイヤの目覚めを呼び、その輝きが二人をプリキュアへと導いた。そして、未知なるリンクルストーンを持つ少年…」

 

杖の木に選ばれ、この世界に受け入れられた二人。

 

「…さらにはリンクルステッキまで…伝説とされていた存在が今、次々と我々の前に現れつつある。」

 

闇の魔法使いの存在。マホウ界に何が起きているのか?そしてなにより…

 

「魔法の水晶よ答えよ。全ての出来事はあの力へと繋がっているのだろうか?」

 

答えを知るために魔法の水晶へと尋ねる。

 

「あの力…リンクルストーンエメラルドの事ですね?」

「うむ…」

 

強大な力を持つリンクルストーンエメラルド、水晶と共に答えを模索していると誰かが魔法で部屋に入ってきた。

 

「校長先生、ナシマホウ界の子達はどうなりましたか?」

 

厳しい顔をして入ってきたのは教頭先生だった。

 

「あっああ、教頭。それなら…」

「お買い物しているところですわ」

 

魔法の水晶が気を利かせて魔法商店街へ買い物にいった四人の姿を映し、それを見た教頭は目を見開いて驚く。

 

「魔法学校の制服…!っ…まさか!?」

 

映し出された映像の中で、みらいと八幡が制服を着ていた。それがどういうか教頭は気付いたようだ。

 

「ふっ…ああ、入学させようかと」

「何て事を……本校始まって以来の大事件ですよっこれは!!?」

 

少ししてやったりとした顔をしている校長に教頭が事の重大さがお分かりですか!?と詰め寄る。

 

そうしている間にもみらい達のお買いものは進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランソワのお店を後にした四人は次の目的地に向かう途中、八百屋の前で呼び止められて立ち止まっていた。

 

「キュアップ・ラパパ!溶けろぃ」

 

少し独特なイントネーションで呪文を唱えたのは、この八百屋の主人であるトッドだ。その手に持っていた冷凍ミカンの氷がみるみる内に音をたてて溶けていく。

 

「冷凍ミカンだ。一つ食べていきなよ」

 

きれいに剥けたミカンを笑顔で差し出すトッド。溶かしてから剥くまでの魔法の手際がとてもスムーズで流石、八百屋といった感じだ。

 

「いいんですか?ちょっと硬いけど美味しいんだよね~」

「モフ~」

 

そう言ってはむっとミカンを一粒口にいれるみらいとモフルン。

 

「そっちのお兄さんもどう?」

「あ、どうも」

 

勧められて八幡も一粒もらう。そして二人がもぐもぐと咀嚼しているとある事に気が付いた。

 

「おおっ!柔らかくておいしい!!」

「硬くないモフ」

「しかも程よく冷たくてうまいな」

 

カタツムリニアで食べた硬い冷凍ミカンのイメージがあった三人はその美味しさに驚いていると、トッドが笑顔で教えてくれる。

 

「硬いのは解凍魔法の失敗だよ」

「「じ~……」」

「わっ私は失敗してないしぃ!」

 

ジト目を向けられて意地を張るリコにスッとトッドはミカンを差し出す。

 

「はむっ…もぐもぐ……ん!あっ…まあ?これはこれでアリね」

「めちゃくちゃ動揺してるじゃねえか……」

 

食べてみて明らかに自分が解凍したミカンよりも柔らかくておいしかったのが顔に出ているリコ。そこへ八幡が呆れたようにツッコんだ。

 

「あの校長先生みたいに氷のまま食べちゃう人もいるけど…」

 

口には出さなかったが、氷のままってそれはもう冷凍ミカンを食べるとは言わないんじゃないですかね、と思う八幡。

 

「しかし、いい歳だろうに歯が丈夫だよね~見た目も若いけどさ」

「え?いい歳?見た目も若いって?」

「校長先生の年齢は謎、魔法学校の七不思議のひとつよ」

「…魔法学校にもそういうのがあるんだな」

 

動く二宮金次郎像とか、誰もいないのに音が聞こえる音楽室のピアノ、トイレの花子さんなど、普通の学校で七不思議といえばこんな感じだが、年齢不詳の校長先生なんていうのはある意味魔法学校らしいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バンッと机をたたく音と共に、教頭のヒステリックな声が部屋に響いた。

 

「ありえませんっ!あの子達が入学なんてっ!!」

「教頭の頭は水晶よりも堅いですわ」

 

教頭の怒声をさらっと受け流すように水晶が皮肉混じりで答える。

 

「…本校の方針に口を挟まれる謂れはありません」

 

水晶の皮肉に対して、教頭は怒りを抑えて冷静に返した。

 

「おお~こわっ、そんなに怒ってばかりだとシワが増えますよ♪」カリッシャリッゴリッ

「まっ!?なんて口の悪い…!!」「美味し…」

 

水晶と教頭の論争がヒートアップしている横で凍ったままの冷凍ミカンをバリバリと美味しそうに食べる校長。

 

そんなことは露知らず、みらい達は次のお店へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~!!箒がいっぱい!!」

「モフ~」

「あんまりショーウィンドウに顔を近付けるんじゃありません」

 

中に見える様々な種類の箒にテンションが上がってへばりつくように覗くみらいを注意する八幡。

 

「いらっしゃい、待ってたよ」

 

店の扉が開き、中から出迎えてくれたのは体格のいい男性だった。

 

「ようこそグスタフ箒店へ!この店は学生用からレース用までありとあらゆる箒を揃えてるぜ」

「へぇ~」

「レースなんてあるんすか」

 

ナシマホウ界でいうところのF-1レースみたいなものだろうかと周りの箒を見渡す。

 

「あぁ、結構盛り上がるんだぜ。っと、話が逸れたな…リコ、校長から聞いてるよ。この子達の箒だな?」

「ええ」

 

リコが答えるとグスタフはふむと言ってみらいと八幡を交互に観察し始めた。

 

「こっちの子は…そうだな……あんたの佇まいからすると」

 

グスタフが手をかざすと一本の箒が飛んできて手に収まる。

 

「この初心者用だな」

「わぁぁ!リコちゃんとお揃いだぁ!!」

「初心者用…」

 

みらいが嬉しそうに、八幡はじーっとリコの方を向いた。

 

「うっ…悪かったわね、私も初心者用よ…」

 

そう言って手に持っていた箒を傾けるリコ。

 

「おい、リコ、その箒……穂先は荒れて、柄は傷だらけ…さてはまた派手に落ちたな?」

「…落ちてないし」

 

流石は箒の店の主人といっていいのか、それともそれだけリコがよく落ちる事が認知されているのか。

 

「直しに来たんだろ?二人のと一緒に仕上げておくからよ…んで次はそっちのあんちゃんの方だか…」

 

グスタフは八幡をじーっと見ると、あんちゃんの佇まい…もしかしたら…と呟いて店の奥に行ってしまった。

 

「な、なんだ?俺、何かしたか…?」

「さあ?」

 

何事かと思って待っていると奥から一本の箒を持ってグスタフが戻ってくる。

 

「悪いな、待たせちまって」

「いえ…えっと、その箒は…」

 

見た感じはみらいやリコの箒と色が違うくらいしか変わらない。それでも、わざわざ店の奥から持ってきたということは何かあるのだろう。

 

「おう!こいつは俺がカスタムした箒でな?調子に乗って色々弄ってたら、ピーキー過ぎて誰も乗れなくなっちまったんだ」

「えぇ……俺も初心者なんですけど…」

「ちょ、ちょっとグスタフさん!?なんでそんな箒を八幡さんに!?」

 

リコが慌ててグスタフに詰め寄る。それも当然だ、箒に乗ったことがない八幡に誰も乗れない箒を持ってきたのだから。

 

「いやぁ…な?あんちゃんの佇まいを見てたら何かこう…ピンと来たんだよ」

「ピンとって…そんな曖昧な」

 

納得がいかない様子のリコにともかくと言ってグスタフは箒を八幡に差し出す。

 

「あんちゃんなら乗りこなせる、だからこの箒はあんちゃんのもんだ。コイツはもう調整済みだからこのまま持っていきな」

「…ありがとうございます」

 

お礼を言って言って受け取る八幡。そもそもお金を出したのは校長なので、八幡にはあれこれ言う資格はないと割りきった。

 

「わぁ…いいな~八くん、カスタムってなんかカッコいいね!!」

「カッコいいって…別に俺はレースに出る訳じゃないんだけど」

 

いくらカッコよかろうと、コイツを乗りこなせると託されようと、八幡は別に大会に出たりしないし、ライバルと競いあったりもしない。まして、いつの間にか世界を賭けたレースとかしたりはしないのだ。

 

「…しかし、リコが友達と来るなんて初めてじゃあねえか?」

 

リコから修理するために箒を受けとるとグスタフはそんなことを言い出した。

 

「と、友達ってゆうか……」

 

顔を背け、少し眉をよせながらぼそぼそっと喋るリコの様子に、ハッハッハッハとグスタフは笑う。

 

「できるまで、三人で町でもぶらついてきな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グスタフに勧められて箒が出来上がるまで町をぶらつく事にしたみらい達は広場のベンチに腰掛け、魔法のわたあめを食べていた。

 

「リコちゃーん」

 

植木鉢に魔法をかけていた花屋のお姉さんがリコに向かって手を振る。

 

「ん…」

 

それにわたあめを頬張りながら手を振り返すリコ。そんなリコを見てみらいが少し驚いたように話しかけた。

 

「商店街の人たちはよく知ってるんだね」

「だな、すれ違う度に話しかけられてるしな」

 

少し離れたところに立っていた八幡も同意する。実際、店を出てここに来るまで会う人、会う人がリコに話しかけていた。

 

「子供の頃から来てるから」

「みんないい人モフ~」

 

モフルンの言う通り、みんないい人だ。フランソワもトッドもグスタフもすれ違う人達みんな笑顔であふれていたのだから。

 

「そうだね~、みんなのおかげで私達も魔法使いだよ~っ!」

「いや、まだ何も教わってないから」

 

杖を取り出して見つめながらそんなことをいうみらいに八幡がツッコミ、リコはムッとして(たしな)める。

 

「そうよ、道具が揃っただけじゃ魔法は使えないわ……それなら私だって苦労はしない…」

「リコちゃん?」

 

ムッとしたかと思えば、いきなり落ち込んだように俯くリコをみらいが不思議そうに覗き込む。

 

「私…聞いちゃったの」

「何を?」

 

八幡に問われてポツリポツリとリコは語りだした。

 

「あれは私が校長室の前を通ったとき__」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「なに?エメラルドが」

 

廊下を歩いていたリコは校長の驚いた声を聞いて何だろうと思い、校長室を覗く。

 

「魔法の水晶よ、答えよ…リンクルストーンエメラルドが復活するんじゃな?」

 

中では校長が水晶に問いかけていた。

 

「光の…とても強い力を秘めた光の兆しがみえる……マホウ界…あるいはどこか遠く…」

「ナシマホウ界の可能性もあると!?」

 

驚く校長に、水晶はさらに告げる。

 

「はい、そして光に忍び寄る闇の力も感じます」

「エメラルドの力は計り知れない…悪しき者に奪われる前に手を打たねば」

 

魔法の水晶と校長の会話を聞いていたリコはこの時、思いついた。

 

 

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「エメラルドを見つければ、校長先生やみんなに認めてもらえる。立派な魔法使いになれると思った……だから、わざわざあなた達の世界まで探しに行ったの」

 

ナシマホウ界まで来るに至った経緯を語るリコ、そしてそれを聞いたみらいが勢いよく立ち上がる。

 

「すごいな~リコちゃんは!!」

「え?」

 

思いがけない言葉にリコは驚いてみらいの方を見た。

 

「知らない世界にたった一人で飛び込んで、叶えたい夢があるんだもん!」

「確かに誰でも出来ることじゃないな、少なくとも俺には無理だ」

「……まあね」

 

そもそも八幡は知らない世界どころか知っている場所でさえあまり行かないのだが。

 

「でも、立派な魔法使いってどんな魔法使いなの?」

「え?…それは……」

 

みらいの問いにリコは答えられない。どんなと聞かれても具体的イメージが湧かないのかもしれない。

 

「…それよりあなたは?」

「ふぇ?」

 

答えられないリコは質問に質問を返した。

 

「あなたは夢とか目標とかないの?」

「…決まってないというか、あまり考えたことなかった……でも、リコちゃんみたいに何か見つけたいなぁ」

 

その答えにリコは一瞬ポカンとしたが、すぐに笑顔になり、優しく微笑んだ。

 

「モフ~」

 

二人を見てモフルンもまた嬉しそうに笑い、つられてみらいとリコも声に出して笑いあう。

 

「………」

 

そんな三人を少し離れたところで俯瞰して見ていた八幡は目を閉じて背を向けた。

 

「モフ?八幡、どうしたモフ?」

 

いきなり背を向けた八幡にモフルンが声をかけたが、何でもないちょっとお花摘みにいってくると言って行ってしまった。

 

「八くんどうしたんだろ?」

「さあ…?」

 

八幡の様子が気になってついていこうとする二人。

 

「?」

 

その時、突如謎の糸が伸びてきてみらいの胸元からリンクルストーンダイヤを奪っていった。

 

「あっ!うわぁぁっ!?」

 

糸に引かれて宙を舞うリンクルストーン、二人は急いでその後を追いかける。

 

 

その先には新たな闇が待ち受けていた。

 

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