見切り発車ですが、行けるところまで頑張ります。
青年は火を嫌悪する。
真っ赤に燃え、燃えるものがあれば何でも燃やす。そして、触れれば熱い。
しかし、青年はそんな理由で火を嫌悪するか?
答えは否。
では、青年はどんな理由で火を嫌悪する様になったのか、それは、彼の家族、友人を奪った化け物が火を放ったからだ。
青年は村を襲った化け物から逃げ、荒くした息を整える為に、近くにあった村の御神木に背中を預けた。
そして、軽く息を整えながら、己の『足りない頭』で考える。
何故お前は、家族が無惨で吐き気を催す程残酷に殺されるのを黙って見ていた?
何故お前は、友人が化け物に喰われる時、助けを乞う眼をしていても助けなかった?
それはお前に力がなかったからか?
それとも、自分は弱いと思っていたからか?
そしてふと、思考の片隅にある言葉が生まれる。
どうして、こうなったんだろう?、と。
青年は頭を左右に振り、再び走り出した。
まるで『もし』の考えから、逃げる様に。
走り出した青年の名は、『葛城 隼人』
これは、とある青年の復讐の物語。
隼人は山奥にある、代々葛城家が守護する寺に避難した。
化け物が此方の匂いを辿って来るかも知れないが、隼人はそんな事を考えずに、何かしら身を守れる物を探していたのだ。
しかし、あるのは古代の書物ばかりで、肝心の護身用の武器などはなかった。
「服や食べ物はあったけど、武器が無いな」
木を伐採するための斧もなく、いよいよ隼人は悩んでいたが、ふと、彼は思い出した。
『いいか、隼人。この寺の奥にはな、儂らのご先祖様である、役小角様の心臓や武器、防具がある。儂ら葛城家はな、子孫として、受け継いでいかないといけないのだ』
まだ幼い隼人はその話を聞いても首を傾げる程度だったが、今は亡き、祖父が何度も聞かせてくるので自然とその話を覚えていた。
隼人はその話を思い出し、その部屋に向かった。
幼い頃は入らせて貰えず、場所も知らない筈なのだが、なぜか隼人はその場所を
何故、と考える前に、隼人はその部屋の前まで来ていた。
『封』と襖の至るところにその紙が貼られており、とても不気味な空気があるが、彼は平然と襖に手を掛け、開いた。
開いた瞬間、吹き荒れる様な風が閉めきっている部屋の中で起きる。
部屋の周囲にも襖に貼られていた紙が貼られ、光を遮っており、仄かに薄暗い。襖以上の不気味さであった。
その部屋の不気味さに気を取られたのだろう。
彼は、寺に匂いを辿って来た『侵入者』に気付かなかった。
「!!」
背中に奔る大きな衝撃。
痛みはそんなに感じなかったが、彼は勢いよく吹き飛び、畳に叩き付けられた。
「カハッ!」
肺に取り込んだ空気が無くなり、仰向けになる。そこで始めて、彼は侵入者を視界に入れる事が出来た。
「ヒャハハハハ!!人間ダ!人間ダ!」
仄かに薄暗いからか、全貌はまだ解らない。
しかし、その影から人ではないことは理解した。
「ヤット、ヤットダ!ヤット人間ノ肉ヲ喰エル!!」
肩から伸びる三本の棒の様なもの。
つまり、この化け物は両方合わせて六本の腕を持っている。
人気の無い山奥で助けを乞う事は出来ない。
しかも、此方は護身用の武器も無い。
せめて抵抗しようとするが、『あの事』を思い出してしまい、吐き気を催してしまう。
「サッサト俺ニ喰ワレロ!」
隼人は抵抗する暇もなく、化け物の片腕三本の拳打で吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされた先には様々な柄の箱が積み重なった所にぶつかり、隼人も箱の中身も吹き飛んでしまう。
「チッ、思ッタヨリ頑丈ダナ。ナラ、壊レルマデ殴ルマデダ」
少しずつ此方に近付く化け物、隼人はなんとか起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。
(ここが俺の死に場所か、呆気ないものだな)
隼人は眼を瞑り、今までの人生を振り返る。
まだ年齢十六だが、まぁ良かった人生ではなかったのだろうか。
良い両親に恵まれ、良い友人にも恵まれ、苦労も多かったが幸福はそれ以上多かった。
そして、もう眠ろうとしていた時、あの火が、視界に広がった。
(本当に、これで良いのか?)
また、己に問い掛ける。
(何で、助けなかった?何で、戦わなかった?)
あの時、『もし』に逃げ出したあの時の様に。
(力がなかったからか?
それとも、自分が弱いと思っていたからか?)
心の中に、火が灯る。
化け物が放った紅い火ではなく、己に灯る海の様に青く、雲の様に白い、復讐の火が。
(違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う)
少しずつ、体が起き上がろうとする。
目の前に、ある物が転がってくる。
それは心臓だった。
これが祖父の言っていた『役小角』の心臓だと、隼人は理解した。
(違う!!)
心臓を掴んで立ち上がる。
薄暗い中、何故か化け物が驚愕した顔がはっきりと良く解る。
恐らく、攻撃を食らったのに起き上がったからだろう。
(それは、俺が)
そして、隼人はその手に掴んだ心臓を
「クッ、サッサト、死ネェ!」
「
呑み込んだ。
そして、
もう一度言おう。
これは、