IS~朱月の守護者~   作:Mr.凸凹

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第11話

 

 

 

 

 

 ~更識 簪side~

 

 

 

 

 自分の第一試合が控えていて、一組代表の白式と二組代表の甲龍の試合を見に来ている。

 観客席は既に満員で座る余地はなかったので人込みを掻き分けてなるべく前に向かって見学していた。

 

 開始のブザーがなり終わると同時に凄まじい速度でぶつかり合う二機の専用機。

 白式の初撃は甲龍に防がれていた。

 続いて白式は眼にも留まらぬ速度で斬撃を放っていく。

 甲龍は双天牙月で捌いていくも徐々に押されている。

 

 だが吹き飛んだのは白式だった。

 甲龍が肩が肩のアーマーがスライドして開き、中心の球体が光った瞬間、見えない何かで吹き飛ばされていた。

 多分アレは衝撃砲だろう。

 

 続いての一撃は見えない筈なのに白式は危なげなく避けていた。

 なんて出鱈目。

 

 甲龍が地団太を踏んでいる隙に白式が一気に迫った。

 その瞬間、大きな轟音と共に何かがアリーナーに降り立った。

 そして刀也くんの朱月がアリーナーに超スピードで入って行き、白式と甲龍を引っ張っていくのが朧げに見えた。

 熱線がこちらに向かって打ち出されたのを見た瞬間に、打鉄弐式を展開して身に纏って射線軸上に飛び上がり防御体制を取った。

 熱線はアリーナーのシールドバリアーを貫通して観客席に飛び込んできた。

 アリーナーのシールドバリアーで減衰していてたとはいえ、打鉄弐式の絶対防御が働いてシールドエネルギーが半減した。

 

 なんて威力!!

 このままだとこの観客席も危ない。

 でも何故か皆退避していない。

 

「どうしたの……?」

「そっ、それが……扉がロックされていて逃げられないのっ!!」

 

 それを聞いた女生徒達がパニックを起こしかけている。

 

「分かった、任せて……危ないからちょっと下がっていてね」

 

 私は拡張領域(パススロット)から夢現を取り出して扉を切り裂いた。

 扉は大きな音を立てて崩れ去った。

 

「さあ、早く逃げて……」

 

 扉が開いた事で女生徒達が挙って逃げていこうとする。

 このままだとひとつの扉に集中してパニックになり事故が起きる可能性がある。

 私は刀也くん達を助けに行きたい気持ちを抑えて次から次へと扉を切り裂きに向かった。

 

 

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 鈴ちゃんの甲龍が龍砲で援護してくれた隙に神速を行って斬りつける。

 もっとも得意とする薙旋(なぎつむじ)を放ったがシールドエネルギーを少しだけ削ったのみで終わってしまう。

 そして一夏の白式が普通なら躱せる筈のない速度と角度で攻撃しても、敵ISは全身に付けたスラスターの出力が尋常ではなく零距離から直ぐに離脱してしまう。

 どれほど鈴ちゃんの甲龍が注意を引いて僕の朱月が切りつけても一夏の白式の零落白夜だけには必ず反応して回避行動を優先している。

 

「刀也っ、一夏っ、離脱!」

「うっ、うんっ!」

「おっ、おうっ!」

 

 敵は攻撃を避けた後、必ず反撃に転じている。

 しかもその攻撃方法が無茶苦茶である。

 出鱈目にな長い腕をぶんぶんと振り回して接近してくる。

 しかもその高速回転状態からビーム砲撃まで行ってくる。

 

「もうっ!! 手に負えないね!」

「ああもうっ、めんどくさいわねコイツ!」

 

 僕の飛針ではシールドバリアーを削れないし、鈴ちゃんの龍砲は見えない筈なのにそれを長い手で叩き落している。

 ともあれ、僕と一夏は鈴ちゃんの支援で敵の射程距離から離脱した。

 今までの攻防で分かった事と言えば、あの回転状態では砲撃の有効射程距離が通常の半分くらいしかないという事だけである。

 

「……鈴、刀也。後、エネルギーはどれだけ残ってる?」

「180ってところね」

「僕は250だね。一夏は?」

「一応210ほど残ってる」

 

 三機とも大分削られてしまっている。

 それに対して敵ISのシールドエネルギーは殆ど減っていないだろう。

 唯一僕の朱月の攻撃が当たっているが、何分そんなに減らせている手応えがない。

 幾ら朱月のサポートを受けているとはいえ、神速の連続使用で体力気力ともに減ってきている。

 ああ、血が飲みたい。うら若き乙女の血が飲みたい。

 

「ちょっと、厳しいわね……既存の火力でアイツのシールドを突破できるのは白式の零落白夜だけなのに機能停止(ダウン)させるのは確立的に一桁台ってところじゃない?」

「零じゃなければいいさ。なあ、刀也?」

「えっ!!? うっ、うん……そうだね!!」

 

 僕は本能的に血を欲していて反応が遅れてしまった。

 

「大丈夫、刀也? 神速の使いすぎなんじゃないの?」

 

 鈴ちゃんが心配そうに僕の顔を覗いてくる。

 

 ああ、美味しそう……じゃない!! 危ないな、思考が完全に吸血衝動に流されていた。

 最近生き血を飲んでいなかったから飢えている。

 

「だっ、大丈夫だよ、鈴ちゃん」

 

 僕は頭を振りながら応えた。

 

「本当に大丈夫か?」

 

 一夏も心配そうに声を掛けてきた。

 

「うん、平気だよ……それよりもアイツの動き機械じみてない?」

「何言ってるの、ISは機械よ」

「刀也も気付いたか……そうだな、無人機の様な気がする」

「だよね!! 搭乗者の鼓動や息遣いが聞こえてこないんだ」

「はぁ? 何でそんな事分かるのよ? それに搭乗者が居なきゃISは動かな……」

 

 鈴ちゃんは何かに気づいた様に言葉を止めた。

 

「そういえばアレは、さっきからあたし達が喋っている時ってあんまり攻撃してこないわよね。丸で興味があるみたいに聞いている様な……」

 

 鈴ちゃんが思い返す様に今までの戦闘を振り返った。

 その表情は何時に無く真剣だ。

 

「ううん、でも無人機なんてあり得ないわよ。ISは人間が乗らないと絶対に稼動しない。そういうものだもの」

 

 確かに今の常識じゃ考えられない。

 だがあの人なら既に実用化していてもおかしくない。

 ISの生みの親にして()()と呼ばれるほどの頭脳を持っている篠ノ之 束博士ならば可能だろう。

 

「仮に、仮にだ。無人機だったらどうだ?」

「なに? 無人機なら勝てるって言うの?」

「一夏が全力で零落白夜をお見舞いすれば可能だよね」

「そう!! そうなんだよ。人間が乗っていない容赦なく全力で攻撃しても平気だもんな」

 

 一夏は嬉しそうに僕の肩を抱いて微笑んでいる。

 

「全力を何もその攻撃自体があたらないじゃないの」

「次は確実に当てるさ」

「言い切ったわね。じゃあ、そんなことは絶対にありえないと思うけど、アレが無人機と仮定して攻めましょうか」

 

 鈴ちゃんは一夏に一策があると知ってか、にやりと微笑んだ。

 あ、この表情はあれだ。僕と一夏が馬鹿やって間違った際に散々奢らされた時の顔だ。

 

「一夏……僕はどうしたらいいの?」

「刀也は酷だけどあのISを数秒足止めして欲しい」

「分かった任せて」

 

 僕は一夏の信頼に応える様に頷いた。

 

「あたしはどうするの?」

「鈴は俺が合図したらアイツに向かって龍砲を最大出力で撃ってくれ」

「いいけど、当たらないんじゃない?」

「いいんだよ。当たらなくても、考えがあるんだから」

 

 一夏は悪巧みを思いついた顔で笑っていた。

 

「じゃあ、早速……」

 

 僕達が迎撃体制に入ろうとした瞬間、アリーナーのスピーカーから大音量の声が響いた。

 

「一夏ぁっ!!」

 

 ハウリングが尾を引くその声は、箒さんのものだった。

 

「何してるんだ、あいつは……」

 

 一夏は呆れた表情をしながら精神的に疲れた様にため息を吐いている。

 

「男なら……剣士なら、そのくらいの敵に勝てなくてどうする!」

 

 箒さんをハイパーセンサーで確認すると肩で息をしており、その表情も怒っている様な焦っている様な不思議な顔をしている。

 恋する乙女は猪突猛進だね。

 もう少し肩の力を抜いて素直になると良いのにさ。

 

 でもまずい! 敵ISが今の館内放送、いや箒さんに興味を持ったようだ。

 僕達からセンサーレンズを逸らし、じっと箒さんの方を見ている。

 

「一夏っ!」

 

 僕は一夏に声を掛けて直ぐに神速を発動した。

 敵ISがスローモーションで砲口のついた腕を箒さんに向けていくのが見える。

 僕は敵ISの後ろに回り、鋼糸で拘束する。

 敵ISの力が凄く強くて夜の一族の力を持ってしても数秒しか留めて置けない。

 

「鈴、やれ!」

「わっ、分かったわよ!」

 

 鈴ちゃんが肩を押し出す様な格好で龍砲を構える。

 最大出力砲撃を行うため、補佐用の力場展開翼が後部に広がって行く。

 そして一夏は、その射線上に躍り出た。

 

「ちょっ、ちょっと馬鹿! 何してるのよ!? 退きなさいよ!」

「いいから撃て!」

「ああもう……! どうなっても知らないわよ!」

 

 一夏の白式は高エネルギー反応を背中に受けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を作動させようとしている。

 

 敵ISが踠きながら鋼糸を引きちぎっていく。

 でももう遅い!!

 

「オオオッ!!」

 

 一夏が弾丸の様に敵ISに突っ込んでくる。

 袈裟懸け切りに雪片弐式を振り下ろす。

 その瞬間僕は再び神速を発動させて退避していく。

 そして次の瞬間に一夏は零落白夜を発動させて敵ISの右腕を切り裂いた。

 だが敵ISは残った左腕で一夏を殴りつけた。

 更に熱線を発射しようとしている。

 

 させない!!

 

 神速を発動させて敵ISに肉薄し、御神流正統奥義の鳴神を放った。

 吹き飛ぶ敵IS。そして止めをお願いする。

 

「簪ちゃん! セシリアさん!」

「うん!」

「はい!」

 

 打鉄弐式の山嵐とブルー・ティアーズのビット四機同時狙撃が敵ISを打ち抜いた。

 先ほどの零落白夜で遮断シールドは破壊されている。

 鳴神で背面装甲を破壊されていた敵ISは為す術無く爆発に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

「良いタイミングだったな、二人とも……」

 

 一夏が簪ちゃんとセシリアさんに感謝の意を述べている。

 

「間に合ってよかった……」

「とっ、当然ですわね! 何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生なのですから!」

 

 そこは素直に感謝を受け取ろうよ、セシリアさん。

 全く恋する乙女は素直じゃないよね。

 

「ふう。何にしてもこれで終わ……」

 

 一夏が身体の力を抜いた瞬間、再起動した敵ISが一夏と僕を残った左腕で狙っていた。

 しかも最大出力形態(バースト・モード)に変形させて狙いをつけていた。

 僕達に迫り来るビーム。僕は無意識に神速を発動させる。

 ぐはぁ!! 一日の限界回数を越えた神速の発動は朱月のサポートを受けているとはいえ脳と肉体に凄まじい負荷を掛ける。

 凄まじい頭痛と身体の軋みを押さえてもっとも得意とする薙旋(なぎつむじ)を放った。

 ビームに飲み込まれながらも僕の攻撃は敵ISを今度こそ破壊した。

 

 

 

 

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