此の間の無人機の最後の攻撃で朱月は
新たに両手の甲に射出機能付きの
そして小太刀が強化された。その名も“斬月”だ。
詳しいデータを取るために月村重工から人が派遣されて来た。
その人物は僕もよく知っている人だった。
「月村重工から派遣されました開発部門特別博士のなのは・T・ハーヴェイです。此の度、IS学園整備部門の臨時講師に任命されました。
なのはさんは家の母さんと同じ様に悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべている。
「よろしくお願いします……というか、なのはさんって月村重工の関係者だったんですか?」
「うん、副業だけどね。ほら、私って昔から機械弄りが得意だったじゃない。月村重工がIS産業に参入する際に、忍さんからスカウトされたんだよ。因みに旦那さんのクロノくんは専任で所属しているよ」
なんて身内企業なんだろう。
月村重工は世界トップシェアを誇る会社なのに屋台骨を支えるのが身内だなんて……まあ、確かに優秀だからいいのかな。
朱月・朧のデータ測定のために模擬戦をすることになった。
お相手は毎度お馴染みの白式である。
開始の合図と共にお互いに鍔迫り合う。
そして何度か御神流の技を仕掛ける。
なんだか身体が軽い。以前よりも素早く動けている。
その証拠に白式は防戦一方で僕の貫によって防御を避けられてシールドエネルギーを徐々に削られていっている。
「くっそぉ~!! 捌ききれない!!」
一夏が冷や汗を流しながら後退して行く。
だが僕は追撃の手を休めない。
『はいは~い。基本性能は大体把握出来たよ。最大速度は+70%っていったところだね。次は
「了解しました。蹂躙乱舞発動!!」
僕が気合を入れると両手の甲の
白式に
『ふむ……対象のシールドエネルギーの吸収か。そして自己修復機能の瞬間化か。あまり大した事ないね』
なのはさんが落胆のため息を吐きながら残念そうに項垂れた。
「まだです……
斬月が漆黒の光を放って白式の
『なんとっ!!? 対象の
なのはさんは驚愕の表情をしながらもとても楽しそうだ。
家の母さんと同じマッドサイエンティストな笑みを浮かべながら嬉々して朱月・朧のデータを取っている。
「どこまで反則なんだよ。朱月・朧は……」
データ取りの模擬戦が終わってロッカーのベンチで休んでいると一夏が悪態を吐いてきた。
「確かにあの
僕は拳を握りながら嬉しそうに微笑んでいる。
「全く、刀也は大した護衛馬鹿だよな」
一夏ため息を吐きながら苦笑している。
「何だよ。馬鹿って酷いよ、一夏」
「褒めてるんだよ、俺は……」
一夏は微笑みながら僕の髪を乱す勢いで頭を撫でて来る。
「お疲れ様。二人とも……はい、タオルとスポーツドリンク」
鈴ちゃんが歩み寄って来て僕の隣に腰掛けた。
「サンキュー、鈴」
「ありがとう、鈴ちゃん」
僕達はタオルとスポーツドリンクを受け取って一息入れた。
「二人とも早くシャワー浴びてきなさいよ。これから織斑家の様子を見に行って、弾の所に遊びに行くんでしょう」
「おっと、そうだったな」
「鈴ちゃん、早めに用意するからIS学園の正門前で待ち合わせね」
僕達は急いでシャワーを浴びに行った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それで?」
「それでって、何?」
格闘ゲームをしながら弾が僕に話を振ってきた。
「だから女の園の話っていうか、刀也と鈴はとうとう付き合ったのか?」
「ええっ!!? そっ、そうだったのか!!」
後ろで漫画を読んでいた一夏が驚きの声を上げた。
「落ち着きなさい、一夏……弾、残念ながらアタシ達はまだ友達以上恋人未満よ」
鈴ちゃんがため息混じりに一夏を宥めて、僕の変わりに弾に答えた。
「嘘をつくな嘘を。家に来る時に嬉しそうに恋人繋ぎで手を繋いできたじゃないか!!」
「だからまだ恋人じゃないってば……まあ、ライバルもいるしね。でも一歩リードはしているつもりよ」
鈴ちゃんは胸を張りながら自慢する様に答えた。
《You Win!!》
ゲームは僕の勝利となった。
「鈴……」
「何よ?」
「ナイ胸を張ったところで大きくはならんぞ」
「死ね!!」
鈴ちゃんの胸元を見ながら真剣な表情で言った弾の頭に飛び膝蹴りが減り込んだ。
「ぐふぅ~!!?」
弾は泡を噴きながら倒れこんだ。
「落ち着いて、鈴ちゃん」
僕は弾に更なる追撃を入れようとしている鈴ちゃんを羽交い絞めにして止めた。
「はっ、放しなさい、刀也!! 乙女の胸を馬鹿にするこいつは滅殺するべきよ!!」
鈴ちゃんは暴れながら僕の拘束を解こうとする。
はぁ~仕方ないか。
僕は鈴ちゃんの耳元で囁いた。
「僕は鈴ちゃんの胸大好きだよ」
「きゃうっ!!?」
鈴ちゃんは耳まで真っ赤に染めて大人しくなった。
「お兄! さっきからお昼出来たって言ってるじゃん! さっさと食べに……って、一夏さん!!?」
今扉を蹴り開けたらしい可愛い女の子は弾の妹の五反田 蘭ちゃんだ。
僕と鈴ちゃんも居るのに一夏しか眼に入っていないみたいだ。
恋する乙女は本当に盲目だよね。
家に居るせいか蘭ちゃんはラフな格好をしている。
健康的な肢体が輝いて見える。
「何、にやついてるのよ、馬鹿刀也!」
「いふぁいよ、鈴ふぁん」
僕が蘭ちゃんの肢体に少し見惚れていると、鈴ちゃんが僕の頬を抓ってきた。
「あ、久し振りだな、蘭」
一夏がにっこりと微笑みながら蘭ちゃんに挨拶をした。
「いっ、いや、あのっ、きっ、来てたんですか……? 確か全寮制の学園に通ってるって聞きましたけど……」
「ああ、うん今日はちょっと外出してきたんだ。家の様子を見に来たついで刀也と鈴と一緒に遊びに来た」
「……あっ、おっ、お久し振りです。刀也さん、鈴さん」
蘭ちゃんは今、僕と鈴ちゃんに気が付いたみたいだ。
「久し振り、蘭」
「元気してた、蘭ちゃん」
蘭ちゃんは一夏の前だと妙にたどたどしくなるよね。
箒さんもそうだけどもっと自然体で接すればいいのにね。
「蘭、お前なあ、ノックくらいしろよ。恥知らずな女だと思われ……」
復活した弾が蘭ちゃんの一睨みで縮んでいく。
相変わらず蘭ちゃんに弱いな弾は……それでも男か!! って、言いたいところだけどある意味僕も同類だよね。
まあ、家の場合は姉が溺愛してくるんだけどね。
えっ!? 正反対だって……まあ、細かい事は気にしないのが吉だよ。
「……なんで、言わなかったのよ」
「あっ、あれ、言ってなかったか? そうか、そりゃ悪かったな。ハハハ……」
「…………」
蘭ちゃんは再度弾を睨みつけて、そそくさと部屋を出て行く。
「あっ、あの、よかったら一夏さん達もお昼どうぞ。まだ、ですよね?」
「あーうん。そうするか……いいか? 刀也、鈴」
「うん。僕は異存ないよ」
「あたしも……」
「……って事で、いただくよ。ありがとう」
「いっ、いえ……」
ドアが閉じられて静寂が訪れた。
「さてと、そんじゃまあ……飯食いにいくか」
「そうだね」
「行きましょ」
僕と鈴ちゃんは弾と共に五反田食堂に歩いていった。
一夏が蘭ちゃんを見て何か言いたそうしているが無視した。
どうせまた、鈍感な勘違いをしているんだろう、このニブチン男は……もう少し恋愛の機微を分かっても罰は当たらないと思うんだけどな。こればっかりは仕方ないのかな?
僕達が昼食が用意されているテーブルに着いて暫くすると着替えた蘭ちゃんがやってきた。
「あれ、蘭? 着替えたのか? どこか出かける予定?」
一夏が不思議そうに訊ねている。
「あっ、いえ、これは、その、ですねっ」
蘭ちゃんは頬を染めながらしどろもどろにもじもじしている。
「ああ! デート?」
一夏はポンと手を打ちながら訊ねた。
「違います!」
蘭ちゃんはテーブルを叩いて即断否定した。
「なあ、一夏って本気で言ってるのか?」
弾が僕にこっそりと聞いてきた。
「本気も本気だろうね」
僕はため息混じりに答えた。
「あれはもう死刑執行してもいい鈍感さよね」
鈴ちゃんはジト目で一夏を眺めながら言い放った。
その後、色々あって蘭ちゃんが来年IS学園を受験する事になった。
まあ、IS適正がA判定な上にあの有名私立女子校の聖マリアンヌ女学院の生徒会長をしてるって事だから内申と勉強も問題ないだろう。
問題があるとすれば一夏を巡る乙女の戦いが激化するぐらいか。
まあ、対岸の火事はある程度無視しようかな。
幾ら親友と言っても他人の色恋沙汰に手を出したら火傷じゃすまないもんな。
それに自分自身の恋愛問題も片付けないといけないしね。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ねぇ~つっきー? あの噂って本当なの~?」
生徒会室で仕事を片付けていると本音ちゃんが尋ねてきた。
「噂って何の事?」
「あっ、あれでしょ! 一年生の間で流れている噂でしょ。確か……」
「今度の学年個人トーナメントで優勝したら刀也か一夏くんとどちらかと交際できるって噂でしょ。でも刀也と付き合いたいなら私を倒してもらわないとね」
楯無さんの台詞を補足する様に紫乃姉が答えた。
紫乃姉はむんと力瘤を作っている。
「はい? 何、その噂? ……って、まさか!? あの箒さんの告白が捻じ曲がって伝わったのか!!」
僕はひとつの出来事に思い当たった。
しかし、何時の間に僕まで加わっているんだろう。
恐るべし、女の子の噂の伝達力。
「もっ、勿論根拠のない噂だけど、今更収拾がつくのかな?」
僕は恐る恐る本音ちゃんに尋ねてみた。
「えっと~もう無理じゃないかな~」
本音ちゃんはのほほんと言い放った。
「はぁ~やっぱり、もう遅いのか……」
僕は項垂れるしかなかった。
「それよりも会長。刀也くんの耳に入れておくべき情報がありますでしょう」
虚さんが話を変える様に楯無さんを促した。
「ああ……そうだったわね。今度刀也くんのクラスに転校生が二人来る事になっているんだけど……」
楯無さんは微妙な顔をして僕に資料を渡してきた。
一枚目はラウラちゃんの資料だった。
「へぇ~やっとラウラちゃん転入して来るんだ」
僕は懐かしさで胸が一杯になった。
だが二枚目を見て驚愕の表情を浮かべる事になった。
「シャルル・デュノア? 三人目の男性IS適合者!? これって楯無さん、クロじゃないですか?」
写真では分かりづらいが骨格がどう見ても女性にしか見えない。
「そうなのよね。まだ不確定の情報だけど限りなくクロに近いわ」
楯無さんは『半信半疑』と書かれた扇子を開いている。
「そうするとやはり狙いは刀也と一夏くんの情報を狙ってって事かしら?」
「十中八九そうでしょうね」
紫乃姉の考察に虚さんが頷いている。
「それで僕はどうすればいいですか?」
「此の件はIS学園生徒会会長としてだけではなく、更識家当主楯無として月村 刀也に依頼します」
「御意」
僕は楯無さんの言葉に従う姿勢を取った。
「この二名を空港まで向かいに行き、事の真偽を確かめなさい」
「承りました。我が名、月村 刀也に置いて任務を全うします」
「同行者に織斑姉弟を連れて行きなさい」
「お言葉ですが、千冬さんはまだしも、一夏を連れて行くのは危険ではないでしょうか?」
僕は一夏の護衛として不慮の事態は避けなければならない。
「一夏くんも此の件は無関係ではないし、素人の意見も重要だからね」
「……分かりました。織斑姉弟と同行します」
僕は内心心配で一杯だが了承した。
さあ、化けの皮を剥がしてやるぞ、シャルル・デュノア!!