IS~朱月の守護者~   作:Mr.凸凹

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第02話

 

 

 時は流れて小学五年生になりました。

 一夏の護衛を続ける傍ら一夏を鍛えています。

 毎朝のジョギングに始まり、放課後に実戦訓練しています。

 もっとも二人揃って千冬さんにフルボッコにされる毎日で生傷が絶えません。

 今日も実戦戦闘紛いの鍛錬を行っています。

 

「ほら腋が甘いぞ、一夏!! 刀也ともっと連携を取らんと私には勝てんぞ!!」

 

 千冬さんの僅かな隙を突き、気合一閃に御神流・奥義の六の“薙旋(なぎつむじ)”を放った。

 だが僕の放つ抜刀からの四連の斬りを千冬さんに易々と止められた。

 しかし、その隙に一夏が千冬さんに打ち込んだ。

 

「もらった!!」

「甘いわ、ばか者!!」

 

 一瞬の隙を突いた一夏だったが返す刃で容易く防がれていた。

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日はここまでとしよう」

「「お疲れ様でした」」

 

 僕と一夏は肩で息をしながらへばっている。

 でも僕は今日の食事当番だからとっとと台所に向かう。

 

「刀也。晩飯は何だ?」

 

 後から部屋に入ってきた一夏が訊ねてきた。

 

「今日はお手製のホワイトソースを使ってクリームシチューとグラタン、それにパスタだね」

 

 冷凍保存しておいたホワイトソースを解凍して調理に掛る。

 下拵えは既に済ませているので後は手間なく調理できる。

 オーブンを余熱で温めながら更識家から渡された資料に眼を通していく。

 来週の頭に転校してくる“凰 鈴音(ファン リンイン)”の経歴を洗い出した報告書だ。

 特に怪しい裏事情は認められずか。

 暫く思案に耽っているとシャワー浴びた千冬さんが台所にやってきた。

 その姿はラフな格好であっても色気を醸し出していた。

 

「一夏、開いたからシャワー浴びて来い」

「はいよっと」

 

 一夏は頬を染めつつそそくさと浴室に向かって行く。

 

「……おお、良い匂いしてるな。刀也、味見させてくれ」

「どうぞ、千冬さん」

 

 僕はクリームシチューを味見用に用意していた小皿に少量取り手渡した。

 見慣れた姿とはいえ、健康的な千冬さんの風呂上りの艶姿は照れてしまう。

 目線を逸らしつつ資料を廃棄するために燃やした。

 

「うん、良い味だな。一夏も料理が上手だが、刀也も良い婿になりそうだな」

「お口に合った様で良かったです」

 

 一応自分では美味く出来たつもりだったが、一家の長のお墨付きを貰えると嬉しいものだ。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「はい、皆さん……このクラスに新しいお友達がやってきました」

 

 そんな先生の言葉と同時に一人の女の子が入って来る。

 ツインテールで勝ち気そうな目をした女の子であった。

 資料で見るより若干幼く見える。

 

「凰 鈴音です。気軽に鈴って呼んで下さい」

「それでは席は……織斑くんと月村くんの間が空いているわね。じゃあ、そこにしましょう」

「は~い。よろしくご両人♪」

 

 女の子達の妬んだ視線も気にせずに挨拶してくる鈴ちゃん。

 

「僕は月村 刀也。それであっちが織斑 一夏だよ」

 

 ふむ、歩行も安定しているし、骨格と筋肉のバランスが良さそうだな。

 挨拶をする裏で鈴ちゃんの情報を無意識に集めていく。

 

「えっと……刀也に一夏ね。よし、覚えた。仲良くしましょうね」

「おう! よろしく、鈴」

 

 一夏が空かさず握手を求めると鈴ちゃんはしっかりと握り返した。

 

「刀也もよろしくね」

 

 鈴ちゃんはこちらに振り返って握手してきた。

 

「うん、よろしく鈴ちゃん」

 

 さて彼女はシロかどうかゆっくりと見極めさせてもらうかな。

 

 僕は手を握り返しながら彼女を値踏みする様に考えてしまう自分の思考が嫌になってしまう。

 少しは肩の力を抜かないといざって時に失敗するかもしれない。

 

「ねえ、教科書見せてもらっていい?」

「うん、いいよ」

 

 彼女の向日葵の様な笑顔は僕の心を解き解す様な温かい気持ちにさせてくれる力がある様に感じられた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 鈴ちゃんは持ち前のバイタリティーであっという間にクラスに馴染んでいった。

 どこか一歩引いて接していた僕の事もお構いなしに構ってくる。

 次第に僕も彼女と過ごす時間が楽しみになってきた。

 一夏と僕と鈴ちゃんは一緒に遊んだり学んだりしながら毎日を過ごして行く。

 鈴ちゃんのお父さんが経営している中華料理屋にも常連と言えるほど通っている。

 

 

 

 

 

 今日は千冬さんがISの訓練合宿でいないので、一夏と共に外食と洒落込んだ。

 

「ご注文繰り返します。刀也は炒飯に餃子、麻婆豆腐だよね。それで一夏が天津飯に餃子、ラーメンだね」

 

 鈴ちゃんがチャイナ服姿で給仕している。

 はっきり言って可愛いです。

 

「うん、そうだよ。何時もながらその格好似合ってるね」

「おう、馬子にも衣装だな」

「うっさい、一夏! 刀也はサービスするからね♪」

 

 鈴ちゃんは一夏の頭をお盆で叩きながら、僕にウィンクをしてきた。

 

 

 

 

 

「はい、御待遠様。ご注文は以上でお揃いでしょうか?」

「うん、大丈夫全部揃ったよ」

「さあ、食おうぜ」

「「いただきます」」

 

 僕と一夏は手を合わせて箸を進めていく。

 

 鈴ちゃんはにこにこと微笑みながら僕達の食べっぷりを眺めていた。

 

 

 

 

 

「はい、刀也。デザートサービスだよ」

 

 僕が食べ終わって暫くすると鈴ちゃんが杏仁豆腐を持って来てくれた。

 

「ありがとう、鈴ちゃん」

「おい、俺には無いのかよ?」

 

 一夏がジト目で鈴ちゃんを睨みながら訊ねた。

 

「アンタにはこれで十分よ」

 

 一夏の前にはグラス一杯の氷が差し出された。

 

「お前な~!!」

「何よ!!」

 

 喧嘩するほど仲の良い二人を眺めながら好物の杏仁豆腐を平らげた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 今日も今日とて鈴ちゃんに良い意味でも悪い意味でも振り回されている。

 僕と一夏は彼此二時間ほど鈴ちゃんの買い物に付き合わされている。

 鈴ちゃんが服を選んでいる間、僕達はベンチに座って休んでいた。

 

「何で女の買い物ってこう長いんだろうな……」

「ため息ばかり吐いてると幸せが逃げるよ」

 

 僕は苦笑しながら一夏に珈琲を手渡し、自分もゆっくりと口をつける。

 

「ねえ、アンタ達。これ、どっちが良いかな?」

 

 鈴ちゃんが店の中から二着のワンピースを持って訊ねてくる。

 

「僕はそっちの朱色の方が好みかな。一夏は?」

「そうだな……俺も刀也と一緒だな」

 

 僕が尋ねると一夏はめんどくさそうに答えた。

 

「一夏、アンタね……はぁ~まあ、良いわ。それじゃこっちの朱色にするわ」

 

 鈴ちゃんは一夏の態度に呆れた様に半眼で睨んでいたが、直ぐに気を取り直して試着室へと歩いていった。

 

 

 

 

 

「じゃ~ん!! どう、似合ってる?」

 

 鈴ちゃんはポーズを取って訊ねてきた。

 

「うん、鈴ちゃんの雰囲気と相俟ってよく似合ってるよ」

「おう、良いんじゃないか」

「そう? じゃあこれにしようっと♪」

 

 鈴ちゃんは鼻歌交じりに試着室へと入っていった。

 

 

 

 

 

「いやぁ~おかげで良い(もの)が買えたわ」

 

 鈴ちゃんはにこにこと微笑んで歩いている。

 僕と一夏は半歩遅れてその後についていっている。

 

「小腹が空いたな何か食おうぜ」

 

 一夏がフードコートを指差しながら提案してきた。

 

「良いね、何にしようかな……あれ? なのはさん?」

 

 僕はフードコートの片隅に在った屋台に眼を留めると、父方の叔母さんであるなのはさんに気が付いた。

 

「いらっしゃい。刀也くん久し振り」

「お久し振りです、なのはさん。翠屋の出店ですか?」

「うんそうだよ。おひとつ如何ですか?」

 

 なのはさんは営業スマイルで翠屋謹製のシュークリームを勧めてきた。

 

「何だ、知り合いか?」

 

 一夏が僕となのはさんの親しげな様子に訊ねてきた。

 

「うん、僕の父方の叔母さんのなのは・T・ハーヴェイさん……なのはさん、こっちは僕の同級生の織斑 一夏と凰 鈴音ちゃんです」

「「こんにちわ」」

 

 一夏と鈴ちゃんはしっかりとお辞儀をして挨拶している。

 

「はい、こんにちわ。刀也くん達ならサービスするよ」

「ありがとうございます。じゃあ、シュークリーム三個下さい」

「毎度ありがとうございます」

 

 なのはさんはオマケにクッキーも付けて手渡してくれた。

 

 

 

 

 

 僕達はフードコートのテラス席でシュークリームに齧り付いた。

 

「なにこれ!? 美味しい」

「本当に美味いな!」

 

 一夏と鈴ちゃんはシュークリームを一口食べて絶賛していた。

 僕も偶に作るけどこの味は再現できない。

 悔しいけど本当に美味しいな。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 護衛に就いてから始めての夏休み。

 長期休暇という事で集中的に鍛えたい事を踏まえて一夏を我が家に招待する事になった。

 四六時中護衛任務で一夏と共に過ごしていたせいで長い間帰っていない。

 その事を注意された訳ではないが何だか気が引けている。

 自己にて鍛錬を続けていたが未だ初伝の身なのできちんと師範代(父さん)の師事を改めて受けよう。

 

 

 

 

 

「はわぁ~でっかい屋敷だな」

 

 一夏はわが家を見詰めて呆気に取られている様だ。

 

「まあ、一応月村家は由緒正しい家系だからね」

「ほぉ~なるほど……刀也って良い所のお坊ちゃんだったんだな」

 

 一夏は納得した様に腕を組み頷いている。

 

「馬鹿な事言ってないでとっとと入ろう。ただいま……」

「おう、お邪魔します……って、なんだっ!!?」

 

 家の敷地に入ると出迎えてくれたのは母さん謹製の防犯システムの嵐だった。

 

「ちょっ!!? 不味い!!」

 

 一夏を背後に庇いながら次々と撃ち出されるゴム弾等を斬り捨てていく。

 約十数分の間迫り来る猛威を凌ぎ切った。

 

 久し振りの帰省は仰けから波乱万丈に満ちた内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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