IS~朱月の守護者~   作:Mr.凸凹

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第03話

 

 

 

 

 

「いやぁ~ごめんごめん……すっかり設定し忘れてたわ」

「笑い事じゃないです、母さん……」

 

 

 けらけらと笑う我が母親をジト目で見詰めながら思わずため息を吐いた。

 さすがにあの防犯システムは洒落になってなかったよ。

 

「初めまして、一夏くん。私が刀也の母親の忍です」

「えっ!!? てっきりお姉さんかと思いました。お若いんですね」

「あら、ありがとう」

 

 一夏、何ナチュラルに人の母親を口説いているんだ。

 この天然ジゴロめ。

 母さんも小学生相手に頬を染めて嬉しそうにしてるんじゃないよ。

 確かに雫姉と紫乃姉と並んでいたら三姉妹に見えるけれど、恐るべし夜の一族。

 

「僕は道場に行って父さん達と稽古してくるけど、一夏はどうする?」

「そうだな。俺も混ぜてもらおうかな」

「えぇ~!!? 久し振りの母子の対面なのにもうお終いなの!?」

 

 母さんは頬を膨らませながら上目遣いに見詰めて駄々を捏ねている。

 

「……ノエル、後は頼んだ」

「はい、お任せください」

「ちょっ!!? ノエル!? 貴女の主人は私でしょ!! 刀也のいけずぅ~!!」

 

 母さんの後ろに控えていたメイドの女性にお願いして僕達は道場へと向かっていった。

 母さんの恨めしい声は聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあぁ!!」

「せぃやぁ!!」 

 

 道場に入ると雫姉と紫乃姉が切り結んでいた。

 小太刀の木刀が激しくぶつかり合い甲高い音を響かせている。

 

「ただいま戻りました、父さん」

「ああ、お帰り刀也……その子が例の子かい?」

「はい……一夏、こちらが僕の父さん月村 恭也だよ」

「初めまして、恭也さん。織斑 一夏です」

 

 父さんと一夏は固く握手を交わした。

 

「ほう……しっかりと鍛えているようだね」

 

 父さんは一夏の手を握りながら感心した様に微笑んだ。

 

「姉に扱かれていますので……」

 

 一夏は照れた様に頬を掻いていた。

 

「お姉さんというと織斑 千冬さんか……彼女は確か篠ノ之流剣術の使い手だったね。君もかい?」

「はい、未だ初伝の身で拙い剣術ですが……」

「謙遜する事はないさ。この手の平は一朝一夕では出来ない証だよ」

「ありがとうございます」

 

 一夏は深々と頭を下げながらも嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

「お帰り刀也。少し背が伸びたんじゃない」

「本当だ。筋肉もしっかりとバランスよくついてるしね」

 

 姉さん達は稽古が一段落すると抱きついてきてぺたぺたと僕の身体を触りまくった。

 どう見てもセクハラです。

 

 父さん!! 微笑ましそうに見てないで助けてよ!!

 一夏!! 顔を赤くしてちらちら見ないでぇ~!!

 いや!! そこはダメ!!

 首筋に鼻を押し付けて臭いを嗅がないで!!

 ああ、腕に姉さん達の胸が押し付けられて身動きが取れない!!

 

 十数分間の苦行を耐え抜いた僕は疲れ切って座り込んでしまった。

 

 

 

 

 

「初めまして、一夏くん。私が長女の雫です」

「初めまして。次女の紫乃です」

「どうも、初めまして織斑 一夏です」

 

 姉さん達がにこやかに一夏に挨拶をしているのを聞きながら、僕は父さんと切り結んでいる。

 

「どうした、刀也!! 踏み込みが甘いぞ!!」

 

 父さんは僕の斬撃を軽く往なしながら鍛錬を付けてくれる。

 

 僕は一旦間合いを取って御神流裏の奥義その三、射抜を放った。

 御神流奥義の中でも最長の射程距離を誇る超高速の突き技だが、繋げた斬撃まで軽々と防がれてしまった。

 

 やはり父さんは凄いな。

 僕は尊敬の念を覚えながら鍛錬を続けた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 実家に戻り、一週間みっちりと鍛錬を積んだ。

 一夏も他流とはいえしっかりと鍛錬に参加して得るものが大きかったのか徐々に強くなっていた。

 姉さん達も他流との稽古を組めて喜んでいた。

 

 

 

 

「それで今日はどうするんだ?」

「今日は僕の幼馴染達を紹介するよ」

 

 僕は予めアポイントを取っていた更識家に一夏を案内する事にした。

 

 

 

 

 

 そしてやって来ました更識家。

 勝手知ったる幼馴染の家の玄関を開けると衝撃の光景が待っていた。

 

「いらっしゃいませ、お客様♪」

「……何してるんですか、刀奈さん」

 

 バーニーガールの格好をした刀奈さんが科を作って微笑んでいた。

 

「何ってお持て成しじゃないの」

「何してるの、お姉ちゃん」

「かっ、簪ちゃん!!? ちっ、違うのこれは……」

「……お姉ちゃん、不潔」

「ぐはぁっ!!? きっ、着替えてきます……」

 

 刀奈さんは簪ちゃんの一言で撃沈して退散してしまった。 

 

「いらっしゃい刀也くん。それと彼が……」

「うん、織斑 一夏だよ。一夏、この子は更識 簪ちゃん。それとさっきのが更識 刀奈さん……二人は見たとおり姉妹なんだ」

 

 

 

 

 

 

 ~織斑 一夏side~

 

 

 

 

 

「よろしく、一夏って呼んでくれ」

「……よろしく」

 

 刀也に紹介された女の子に挨拶と共に握手を求めたが拒否されちまった。

 ちょっと馴れ馴れしくしすぎたかな。

 

「一夏、僕は挨拶しに行ってくるね。簪ちゃん、一夏をよろしく」

 

 刀也が奥に行ってしまい女の子と二人きりになってしまうと気まずい空気が流れた。

 

「えっと……その……簪って呼んで良いか?」

「気安く呼ばないで……私には貴方を殴る権利がある。でも、めんどくさいからやらない……こっちに来て」

 

 女の子は俺を睨んでから奥へと歩いて行く。

 俺は暫く呆けていたが慌てて追いかけた。

 

 俺、何か粗相でもしちまったかな。

 

 

 

 

「はい、お茶……」

「どっ、どうも……」

 

 客室に案内されて出されたお茶を啜る。

 女の子は相変わらず俺を睨んできている。

 

「あっ、あの……俺、何か気に触ることでもしたかな?」

 

 俺は恐る恐る尋ねてみた。

 

「別に……貴方が直接悪いわけじゃない。でも貴方のせいで刀也くんは……」

 

 何だよ、刀也のせいかよ!!

 待てよ、この子は……

 

「君は刀也の事が好きなのか?」

 

 俺の質問に女の子は頬を赤く染めて顔を背けた。

 

 やっぱりそうか。

 刀也が俺の護衛で転校して逢えなくなって、この子は寂しい思いをしたんだろう。

 

「その……すまなかった」

 

 俺は深々と頭を下げて謝罪した。

 

「どうして誤るの?」

「直接の原因は俺じゃないけど、確かに俺のせいで刀也は君と離れ離れになちまったからだよ」

「……私はまだ貴方を許せそうじゃない。けど刀也くんを悲しませたくないから貴方を拒絶し続ける事はしない」

「ああ、直ぐには和解出来ないだろうから気長に待つさ」

 

 前途多難な出会いだがこれも何かの縁だよな。

 新たに結んだ縁は大切にしていきたい。

 

 

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

「改めまして、私は更識 刀奈よ」

「初めまして、布仏 虚です」

「布仏 本音だよ~よろしく~」

 

 刀奈さん達が一夏に自己紹介している間、簪ちゃんはお茶を用意していた。

 

「手伝うよ、簪ちゃん」

「ありがとう、刀也くん」

 

 簪ちゃんはにっこりと微笑んで嬉しそうにしていた。

 僕も簪ちゃんの笑顔を見て自然と微笑んでいた。

 

 

 

 

 

「さてと何して遊ぼうかしら……ここはやっぱり王様ゲームが……」

「「却下です!!」」

 

 僕と虚さんが空かさず刀奈さんの意見を打っ手切った。

 この人は籤に細工をして無茶な命令をするから油断なら無い。

 以前した時は僕が男一人なのに色々と被害を被った。

 

「えっと~トランプでもしようよ~」

「うん、無難だね……そうしようか」

 

 本音ちゃんの意見に簪ちゃんが同意した。

 まあ、妥当な選択だね。

 

「えぇ~!!? それじゃつまらないわよ」

「お嬢様?」

「はぅ!!? わっ、分かりました!! トランプしましょう!!」

 

 虚さんが微笑みかけると刀奈さんは身震いして掌を返した様に同意した。

 

 その後、特に問題も無く日が暮れるまで遊び倒した。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 早いもので小学六年生になりました。

 本年は第1回モンド・グロッソ、つまりISの初の世界大会が開催されている。

 僕と一夏はテレビ中継でその大会を観ている。

 

 いやはや千冬さん本当に容赦ないよね。

 ただ一振りの日本刀(雪片)単一仕様能力(ワンオフアビリティー)の零落白夜を用いて並み居る敵をなぎ倒して怒涛の勢いで格闘部門で優勝してしまった。

 殆ど全試合で一瞬でけりをつけてしまった。

 瞬時加速(イングニッションブースト)で対戦相手に肉薄し、雪片が一瞬光ったと思えば勝負がついてしまう。

 正に一撃必殺を体現していた。

 その上総合優勝者の称号も得て“ブリュンヒルデ”と称される事となった。

 

「なあ、刀也?」

「なんだい、一夏?」

「千冬姉が優勝できて嬉しい筈なのに、どここ素直に喜べないんだけど……」

「まあ、常識的に考えて重火器を持ってる相手に接近戦を挑んで勝ってしまうなんて非常識の塊みたいなもんだからね」

 

 僕と一夏は乾いた笑みを浮かべながらお互いにため息を吐いた。

 でも御神流を極めれば同じような事が可能なので日々精進するしかないね。

 

「一夏、実戦稽古お願いして良いかな?」

「おう、いいぜ。いっちょ千冬姉に負けないように精進しますか」

 

 僕達は庭に出てお互い獲物を持って対峙する。

 

「「いざ尋常に勝負!!」」

 

 剣氣が鬩ぎ合い庭木を揺らし、一枚の葉が地面に落ちたのを皮切りにお互いに切り結ぶ。

 一夏の剣はますます冴え渡り気を抜くと一気に劣勢となるほど僕との実力は伯仲している。

 これだから一夏との実戦稽古はやめられない。

 お互いを高めあう事は更なる相乗効果を生んで日に日に強くなっていくのが実感出来る。

 その日はお互いくたくたになるまで打ち合った。

 心地よい疲労が全身を駆け巡っている。

 

「はぁ~疲れたね」

「ああ……でも心地よいな」

 

 僕達はお互いに健闘を称え合う様に拳を合わせた。

 

 

 

 

 

 千冬さんは一躍時の人となりマスコミが連日のように押し寄せた。

 千冬さんは連日の取材に疲弊していた。

 余りにしつこいので切れそうになる千冬さんを宥めるのが大変だった。

 仕方ないので裏から手を回して非常識な輩にはご退場を願ったほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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