IS~朱月の守護者~   作:Mr.凸凹

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第35話

 

 

 

 

 

 学園祭の準備にてんてこ舞いな忙しさの中で嫌な情報が齎された。

 亡国機業(ファントム・タスク)が学園祭に紛れ込んで襲撃を掛けてくる可能性が高いという事であった。

 学園祭には各国軍関係者やIS関連企業等多くの人が来場する。

 一応事前にチェックを行うものの偽装を見破れるか甚だ難しいだろう。

 それに一般開放していないものの招待券制で一般人も少数来場する。

 こちらも今年は生徒達に手渡す人物のプロフィールの提出を義務づけているものの、例年多少の横流しが発生しているとの事だ。

 横流しされた招待券は高値で取引されているらしい。

 そんな事態なので水際での阻止は到底無理だろう。

 

「それで狙いはなんですかね?」

 

 僕は大方予想出来ながらも確かめる様に訊ねてみた。

 

「十中八九、刀也くんと一夏くんでしょうね」

「ええ、その可能性が比較的高いと推察出来ます」

「世界で二人だけの男性起動者な上にISはどちらも単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が凶悪っていい程の性能だしね」

「持てる男はつらいねぇ~」

「降りかかる火の粉は払い除けるよ」

 

 そう、今までもそうしてきた様にこれからも全力で立ち向かう。

 でも独り善がりにはならない様に気をつけないといけない。

 一人で出来る事は限られている。

 

「出来れば力を貸して欲しいです」

 

 僕は姿勢を正して深々と頭を下げながらお願いをした。

 

「勿論更識家党首としてだけでなく幼馴染のお姉さんとして助けるわよ」

「私も微力ながら御手伝いさせていただきます」

「弟を守るのはお姉ちゃんの役目だよ。それに一夏くんも序でに守ってあげるわ」

「つっきーは大船に乗ったつもりでどんと構えているといいよ~」

 

 四人とも笑顔で僕を温かく激励する様に声を掛けてくれる。

 僕は嬉しくなり胸が熱くなるのを感じられた。

 

「でも協力するからにはご褒美が欲しいわね♪」

「そうね。お姉ちゃんもご褒美が欲しいわぁ♪」

「うん♪ 何が良いかな~」

「会長に副会長、それに本音まで……」

 

 先ほどとは違う邪な表情を浮かべながら笑う楯無さんと紫乃姉と本音ちゃん。

 それを見てため息を吐いている虚さん。

 

 うん。さっきの感動を返して欲しい。

 これは先手を打たないと何を求められるか分からないな。

 

「分かりましたよ。今度僕が腕を揮って晩御飯をご馳走しますよ」

「わぁ~い。つっきーのご飯~♪」

「ちょっと不満だけどそれで一応手を打ちますか」

「まあ刀也が手ずから食べさせてくれるならOKよ」

 

 一応三人の了承は得られて一安心だね。

 

「虚さんも宜しければどうぞ」

「私もいいのですか?」

「ええ、ご迷惑でなければご一緒に……出来ればストッパー役として参加して下さい」

 

 僕は苦笑しながら虚さんに頼んだ。

 

「分かりました。お相伴に預かりますね」

 

 虚さんは未だに含みのある笑顔の三人をちらりと見ながら了承してくれた。

 

 さてと、これで一応襲撃があっても何とか出来るだろう。

 後はやっぱり父さんにも協力を要請して置くべきだろうな。

 自分の身は自分で守れるが護衛とはいえ四六時中一夏と共に居れるわけじゃない。

 襲撃の件は一夏を始め代表候補生や教員達にも周知を徹底しておく必要があるだろう。

 出来れば一般生徒達には学園祭を心から楽しんで欲しいし、秘密にしておくといいかな。

 さあ、学園祭を安全に乗り切るためにもう一頑張りしますか。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「メイド喫茶とはいえ出す物は本格的したいわね」

「そうだよね。いくら目玉のメイド()()()が居るとはいえそのインパクトだけでは弱いわよね」

「でも私ってば、お菓子作りは元より珈琲も紅茶も碌に淹れれないわよ」

「そういえばクラス代表就任パーティーの時の料理やお菓子は美味しかったよね」

「あの時の洋食とシュークリームって月村くんの作品っだわよね」

「うん。それに珈琲や紅茶も月村くんが手ずから淹れてくれてたわよね」

 

 そんなこんなで何故か僕がクラスメートの女子達に珈琲と紅茶の入れ方を教える事になった。

 

「さあ、やるからには手は抜かないよ。目指せ、売り上げナンバーワンだよ!!」

「おぅっ!!? とっ、刀也が燃えてる……ちょっと落ち着け。若干女子が引いているぞ」

 

 一夏が冷や汗を流しながら僕を諭してくれた。

 

 危ない、危ない。ちょっと力が入り過ぎていたよ。

 お菓子作りや珈琲や紅茶の淹れ方は桃子さん(お師匠様)直伝で本格的にやっているからね。

 

「先ずは珈琲の入れ方からレクチャーしようか。焙煎した珈琲豆を挽くところからだね。今回はサイフォンを使用するから中挽き、グラニュー糖とザラメの中間だね」

 

 僕は説明しながらミルで珈琲豆を丁寧に挽いていく。

 仄かに珈琲の香りが教室に広がっていく。

 

「次はサイフォンの使い方だね。先ずは金属製のろ過器に円形に型抜かれたネルフィルターをセットする。初めて使うネルフィルターは、ろ過器にセットした状態で珈琲をかすを入れて沸騰させたお湯で20分程度煮て、付着している糊や汚れなどを取り除き、珈琲となじませてから使うといいよ」

 

 フィルターを準備して皆に見える様にしながら説明を行う。

 

「次にフラスコに杯数分のお湯を入れるよ。お湯の量は珈琲一杯160ccだよ。乾いた布巾で外側についた水滴をよく拭いてから沸かすよ」

 

 説明しながらアルコールランプで手際よくお湯を沸かしていく。

 

「そして、フィルターに一度お湯を通してから布巾などではさんで水気を切って、フィルターが冷えないうちにロートにセットするよ。この時、ロートの管の先端部にろ過器のスプリングの先の留め金をしっかりとひっかけるんだよ。また、ロートを覗いた時、ろ過器が真ん中に固定されていることを確認をする事を忘れないでね」

 

 一度皆の顔を見渡してからフィルターをセットしていく。

 

「さて、いよいよロートに杯数分の珈琲の粉を入れるよ。珈琲一杯の目安は大体18g程度だよ」

 

 軽量スプーンで量りながら丁寧に挽いた珈琲豆を入れていく。

 

「そして、フラスコのお湯の沸き加減を確認をする。ロートを完全に差し込まないように注意しながら、ろ過器の先から垂れているボールチェーンをお湯に沈めるとお湯が完全に沸騰しているときは、細かな泡がチェーンを伝って上ってくるんだよ」

 

 時折皆を方を向きながらフラスコの沸騰を確認していく。

 

「次に撹拌と抽出を行うよ。必ず完全に沸騰していることを確認して、一度火から離してお湯のボコボコが鎮まったところでロートをしっかりと差し込むんだ。この時、フラスコを火にかけたままでロートを差し込むと湯が吹き出したりすることもあるので注意してね。再び火にかけると、お湯がロートの方に上昇してくるので完全に上がりきってしまう前に竹べらでコーヒーの粉とお湯をなじませるように素早く数回円を描くように攪拌をする。ここで弱火にして、15~45秒をめやすにしてそのまま置いて抽出を行う。抽出時間は長すぎると雑味が出てしまうので、一分は超えないように注意してくれ」

 

 ここまでくると教室中に漂うくらい珈琲の香りが充満してくる。

 それを楽しみながら説明をしていく。

 

「抽出時間が終了したら火を消し、ろ過をスムーズに行うために2回目の攪拌を行う。もう一度、竹べらでロートの中を軽くかきまぜ、ロートの中のコーヒー液がフラスコへ落下するのを待ち、完全に落ちきったら出来上がりだよ。上のロートをはずして、カップに注いで出来上がりだよ。出来れば抽出後の珈琲のかすも見て欲しい。ドーム上に盛り上がった表面には、珈琲の雑味の原因となる細かな泡、下にいくほど粗めの粉というかすの層が出来ている時、クリアな味わいの珈琲が抽出されていると言えるんだ」

 

 予め温めておいたカップに珈琲を注いでから再び皆に丁寧に説明を行う。

 

「珈琲がなかなか落ちてこない時は、布巾でフラスコを包むなどして、フラスコの温度を下げるといいよ。また、いったんフラスコに落ちたコーヒーがロート側に戻ってしまうバックロートという現象が起きると、珈琲の味に悪影響が出るから注意してね。さあ、お待たせ。飲んでみてくれるかい?」

 

 さすがにクラスメイト全員分は用意できなかったので回しのみしてもらう事になる。

 一夏が口をつけたカップをクラスメイト達が虎視眈々と狙っていると千冬さんがやってきた。

 

「良い香りだな。どれ、私にも飲ませてくれ」

 

 答えを聞く前に千冬さんは一夏のカップを奪う様に手に取り、先ずは香りを楽しんでからゆっくり咀嚼する様に味わう。

 クラスメイト達は悔しそうにその様子を眺めている。

 

「美味いな、ブルーマウンテンか。香りとコク、甘味が絶妙だな」

「お口にあった様でなによりです」

 

 僕は千冬さんの褒め言葉に頬を緩めて答えた。

 何故か周りから感嘆のため息が聞こえて来たような気がした。

 

「さあ、お次は紅茶の淹れ方をレクチャーするよ。織斑先生、よかったら紅茶も味わってみてください」

「うむ。ご馳走になろう」

 

 千冬さんは少し離れた椅子に座り、クラス全体を見渡せる位置に陣取った。

 

「やかんに汲みたての水を入れて、火にかけ沸騰させるよ。五円玉くらいの泡がボコボコ出ている状態が目安だね。そして、紅茶には軟水がベターだよ。幸い日本は軟水に恵まれているから、汲みたてで空気を多く含んでいれば紅茶向きだね。お湯は沸騰直後のものがよく、ぬるかったり沸騰しすぎたお湯では紅茶の香気成分がよく出ないから注意してね」

 

 お湯が沸騰するのをじっくりと待ちながら馴染みの店から取り寄せた陶磁器製のティーポットとカップを用意する。

 

「紅茶をいれる前に、まずポットとカップにお湯を注ぎ、全体を温めておいてね」

 

 手早くティーポットとカップにお湯を注いでいく。

 

「温めたポットにティースプーン1杯、2~3gを一人分として人数分の茶葉を入れるよ。今回は細かい茶葉だからは中盛ぐらいが目安だね。茶葉はストレートティー用茶葉とミルクティー用茶葉と使い分けることが大切だね。ミルクティーの時は茶葉を若干多目に使うといいよ」

 

 ストレート用の茶葉とミルクティー用の茶葉を用意しながら説明を行う。

 

「沸騰したてのお湯を人数分注いですぐにフタをして蒸らしてね。一杯分150~160mlが目安だよ。この時、沸騰したお湯を勢いよく注ぐのがコツだよ。蒸らす時間は細かい茶葉だから2分半~3分くらいが目安だね。ミルクティーの時はやや長めにするといいよ。蒸れたらポットの中を、スプーンで軽くひとまぜしてね」

 

 次にミルクを用意しながら補足説明を行う。

 

「茶こしで茶ガラをこしながら、濃さが均一になるようにまわし注いでね。ベスト・ドロップと呼ばれる最後の一滴まで注いでね」

 

 カップに均等になる様に注ぎながら説明を行う。

 

「ミルクティーの場合のミルクは、普通の牛乳が最適だね。珈琲用のクリームは避けてね。そして、牛乳は温めないで冷たいままか常温のものを使ってね」

 

 常温で置いていたミルクをミルクピッチャーに注ぎながら説明を行う。

 

「さあ、お待たせ。お勧めはストレートティーだけど飲み比べてくれてもいいよ」

 

 今回もさすがに人数分を用意出来なかったから回し飲みしてもらうことにする。

 

「ふむ。ストレートでも十分美味いな。これは確かダージリンのファーストフラッシュだったか。嫁が好きだと言っていた若々しい爽やかな香りがするな」

 

 シャルロットさんと回し飲みしているラウラちゃんが皆に説明する様に語った。

 

「よく分かったね。そうだよ。馬鹿の一つ覚えで悪いけどこれが好きなんだよね」

 

 僕はラウラちゃんの頭を撫でながら照れた様に苦笑していた。

 ラウラちゃんは嬉しそうに胸を張りながら僕に撫でられるままでいる。

 

「さあ、今度は分かれて皆に実際にやってもらうよ。分からなくなったらその都度聞いてきてね。皆には完璧に出来る様になってもらうからね。出来なければお仕置きだよ♪」

「「「Yes sir!!」」」

 

 僕がにっこりと微笑みながら宣言すると皆が敬礼をして答えてきた。

 こういう所は皆ノリがいいよね。

 

「皆、真面目にやれよ。月村は意外とお茶目なところがあるから失敗すると本当にお仕置きされるぞ」

 

 千冬さんが苦笑しながら補足説明する様に言い放つと、一夏を除いて皆固まりながら眼を丸く見開いて僕を凝視してきた。

 

「安心してね。セクハラにならない程度に気をつけるからね♪」

 

 僕がにやりと微笑むとクラスメート大半が何故か頬を染めてしまった。

 特にラウラちゃんは頬を染めながら考え込む様に俯いてしまった。

 

 何故か態と失敗する娘が多かったので、徹を込めたデコピンが炸裂しまくった。

 デコピンされた娘はあまりの痛さに悶絶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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