IS~朱月の守護者~   作:Mr.凸凹

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第04話

 

 

 

 

 

 月日が経つのは早いものでモンド・グロッソの第二回大会が開催されることになった。

 今回は一夏共に生で千冬さんの活躍を見るために会場へ足を運んだ。

 千冬さんは相変わらずの強さで次々と勝利を重ねていっている。

 前から思ってたけど千冬さんって普通の血筋の筈なのに夜の一族と引けをとらない身体能力だよね。

 一夏も成長するとああなるんだろうか?

 

 

 

 

 

 残すところ決勝戦のみとなったある時事件は起こった。

 

「一夏、大丈夫かい?」

「ああ、足手まといにはならないぜ。自分の身ぐらいは自分で守るぜ」

「それは頼もしいけど僕に仕事させてくれよ」

 

 一夏と一緒に街にショッピングに出かけた際、人通りの少ない路地で怪しげな集団に襲撃された。

 複数の黒服を着た男達が銃で脅して一夏を誘拐しようとした。

 空かさず男達を無力化したが次から次へと襲撃が続いている。

 

「居たぞ、こっちだ!!」

 

 新たに現れた男が銃を構えてこちらを狙っている。

 飛針を投げ牽制し、鋼糸を相手に巻きつけ自由を奪って気絶させる。

 甘いと分かっていても僕には相手を殺傷する事は未だ出来ない。

 傷つける事は可能でも殺す覚悟が無い。

 

 護衛失格かな?

 そんな事を考えているとどうしよう無い状況に追い込まれた。

 

「これだから男は使えねえんだ。子供一人攫えないなんてなぁ!!」

「ちぃ!!ISか!!」

 

 僕は現れた最悪の相手に舌打ちした。

 生身の僕がISに勝てる確立は恐ろしく低い。

 家の父さんと千冬さんなら生身でも善戦できるだろうね。

 

「織斑 一夏!! こっちに来い!!」

 

 相手の目線が一夏を捕らえて僕から離れた一瞬の隙を突いて神速から渾身の力を振り絞り薙旋(なぎつむじ)を放った。

 だがISの絶対防御に阻まれてダメージを与えられなかった。

 

「ヒュ~♪ 凄いな、生身でそんだけ動けるなんて化け物か?」

 

 ISの操縦者は嬉しそうに口笛を吹いて冷笑っている。

 だが良く見ると額から冷や汗が流れている様だ。

 

「そいつはどうも……」

 

 僕は間合いを計りながら逃げる算段を考えている。

 

「おっと、お遊びは終わりだ!! 動くんじゃねえぞ!!」

 

 女は拡張領域(バススロット)からマシンガンとハルバードを取り出し脅しを掛けて来た。

 マシンガンの銃口は一夏を捕らえていて下手に動けない。

 

「まあ、あれだ……びっくりさせてくれたお礼に片腕はもらうぜ!!」

 

 無常にもハルバードは振り下ろされて僕の片腕は千切れ飛んだ。

 

「くっがぁ!!」

 

 僕は腕を押さえて倒れこんだ。

 僕の血が勢いよく傷口から流れ出る。

 

「刀也!!」

 

 一夏は慌てて僕に駆け寄ってきた。

 

「さあ、織斑 一夏。私と共に来い」

 

 動揺した一夏は気絶させられた上に簀巻きにされて連れ攫われた。

 

 

 

 

 

 

 僕は落ちた腕を拾い荷物から輸血パックを取り出し、一気に呷った。

 千切れた腕は何事もなかったかの様に元通りに引っ付いた。

 手を握ったり開いたりしながら異常が無いか確認をする。

 僕が腕の調子を見ていると千冬さんがISを纏って現れた。

 

「一夏!! 無事か!!」

「……すいません、千冬さん。一夏は攫われてしまいました」

「くっ!!? 一足遅かったか」

「待ってください!! 僕も連れて行って下さい!!」

 

 慌てた千冬さんが飛び立とうするのを呼び止めた。

 

「駄目だ!! 危険だ!!」

「僕は一夏の護衛です!!」

 

 僕は眼と言葉に力を込めて千冬さんを見詰め返した。

 

「……分かった。一緒に行こう」

 

 千冬さんは僕を抱きかかえて飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 ~織斑 一夏side~

 

 

 

 

 

 俺が不甲斐ないばかりに刀也は傷ついてしまった。

 俺は自己嫌悪を陥りながらもなんとか抜け出せないか様子を窺っている。

 見たところここはどこかの廃工場の様だ。

 

 それにしても誘拐犯達は何処に行った?

 辺りを窺ってもそれらしい気配は感じられない。

 今回の誘拐は何が狙いだ。

 考えろ。何も分からないままでは逃走するのも困難だ。

 多分だけど千冬姉に対する牽制が目的なんじゃないだろうか?

 千冬姉がモンド・グロッソで優勝する事が不味いんじゃないだろうか?

 

「一夏!! 大丈夫か!!」

 

 思考に耽っていると突然壁が崩れたと想ったらISを纏った千冬姉が現れた。

 

「一夏!! 怪我はない!!」

 

 千冬姉の背後から刀也が現れて縛られていたロープを切り裂いてくれた。

 

「ああ、大丈夫だ……って、お前こそ腕は!!?」

 

 刀也に掴みかかり腕を確認するとしっかりとそこに存在していた。

 確かにあの時刀也は腕を切り飛ばされたのに丸で何もなかったかの様に、いやシャツは千切れ飛んで血の後が残っていた。

 

「気持ち悪いよね……落ち着いたら、ちゃんと僕の秘密を話すよ」

 

 そう言うと刀也は少し怯える様に表情を暗くしながら俯いてしまった。

 俺は無言で刀也を抱きしめた。

 この強くも弱い親友がどこかへ行ってしまいそうに感じられた。

 

「すまないがお前達……感動の場面で悪いがとっととここを離れるぞ」

 

 千冬姉がどこか苦笑しながら俺達を見詰めている。

 

「分かった。行くぞ、刀也」

「うん……」

 

 刀也は照れた様に顔を背けながら返事をした。

 

 

 

 

 

 俺は今モンド・グロッソ会場の一室で刀也と対面している。

 千冬姉は決勝戦を放り出して俺を助けに来たために不戦敗となり負けてしまった。

 

「さてと……一夏には選んでもらわなくちゃいけない。これからする話を聞いて僕と共に歩むか。それとも僕の事を忘れるのか」

 

 刀也は真剣な表情で俺を見詰めている。

 

「ああ話してくれ」

 

 俺はしっかりと刀也の眼を見詰め返して話を促した。

 

「僕……いや、月村家の人間は夜の一族と呼ばれている。所謂吸血鬼ってやつなんだよ。遺伝子障害の定着種で異常な跳躍力や鋭い聴覚視覚、並はずれた再生回復能力などの高性能な肉体を持っているけど、体内で生成される栄養価……得に鉄分のバランスが悪いため、完全栄養食である血を欲するんだ」

 

 

 

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 僕は一夏に月村家の秘密を打ち明けた。

 怖い。一夏に拒絶される事が怖い。化け物と罵られる事が怖い。

 

「なるほどな……吸血鬼か。納得した」

 

 一夏は眼を瞑り腕を組みながら頷いている。

 

「怖いよね。気持ち悪いよね」

「はぁっ!? 何でだ?」

「なっ、何でって……」

「刀也は刀也だろ。俺の護衛で大切な親友だ。それ以外の何者でもないさ」

 

 一夏は微笑みながら僕の事を抱き寄せた。

 

「ありがとう……ありがとう、一夏」

 

 僕は一夏の温かさに安心して涙を流した。

 

 僕は最高の親友を得られて幸せだよ。

 

 

 

 

  

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 僕達は千冬さんを探して選手控え室までやって来た。

 しかし、そこには誰もいなく、千冬さんのISの暮桜の機体が安置されていた。

 

「何だよ、千冬姉居ないのかよ」

「そうみたいだね」

 

 僕は何と無く暮桜を眺めながら手を触れた。

 

「くっ!!?」

 

 途端に暮桜の情報が雪崩の様に頭に入ってきた。

 僕は理解した。

 ISは僕でも動かす事が出来る。

 これでさっきみたいな醜態を晒す事無く一夏を守ることが出来る。

 

 手を離して眼を瞑り深呼吸をする。

 だがしかし、ここで僕が動かせる事を公表したら大変な事になるんじゃないだろうか?

 ただでさえISが現れてから女尊男卑の風潮になっている。

 世界で女性しか動かせない筈のISを男の僕が動かす。

 世界中の科学者達が挙って僕を調べ上げるだろう。

 そうなれば一夏と居ることが出来ない。

 そんなの嫌だ!!

 

 葛藤して頭を振っていると一夏が暮桜に触れて驚愕していた。

 

「一夏……まさか、君も理解出来たのかい?」

「ああ……刀也もか?」

 

 僕達はお互いに頷きあい確認しあう。

 

「お前達、ここに居たのか」

 

 僕達が呆然としていると千冬さんが軍服を着た少女を伴ってやってきた。

 

「どうした、お前達?」

 

 千冬さんは呆然としている僕達を訝しがって肩を掴んで揺すってきた。

 

「千冬姉……そっ、その……」

 

 歯切れの悪い一夏に変わって僕が説明する事にした。

 

「千冬さん、僕と一夏はISを動かすことが出来るみたいです」

「何を馬鹿な事を言って……本当なのか?」

 

 真剣な眼を見て千冬さんは僕の言葉に偽りが無いことを悟ったようだ。

 

「お話中失礼します。私はドイツ軍所属ラウラ・ボーデヴィッヒ中尉であります。先ほどのお話が本当であるなら然るべき検査を行い世界に発表する必要があるかと具申致します」

 

 ラウラと名乗った少女は敬礼をしながら淡々と事実を述べた。

 

 

 

 

 

 

 僕達はきちんとした検査を受けることになった。

 その結果一夏のIS適正はB判定、僕のIS適正もB判定だった。

 

「全くお前達はどれだけ私に気苦労を掛けたら気がすむんだ」

 

 千冬さんはため息混じりに僕達の頭を小突いた。

 

「ごめん千冬姉……」

「すいません千冬さん……」

「こうなっては仕方ない。私は一夏捜索の情報を提供してくれたドイツ軍に一年間教官として赴任する。お前達もみっちりと鍛えてやる」

 

 千冬さんは獰猛な笑みを浮かべながら楽しげにしている。

 

「「おっ、お手柔らかにお願いします」」

 

 僕と一夏は抱き合って肉食動物に捕食される小動物の様に震えていた。

 

「あの……お二人はもしや同姓愛者なのですか?」

 

 僕達が抱き合っているのを見てラウラ中尉は心底驚いたように尋ねたきた。

 

「「ちっ、違うぅ~!!」」

 

 僕と一夏は力の限り否定した。

 

 

 

 

 

 

 その日のトップニュースは世間を騒がせるのには十分なインパクトがあった。

 女性しか動かすことが出来ない通称IS、インフィニット・ストラトスを男性が動かしたというのだ。

 しかも二人も現れた。

 一人は第一回モンド・グロッソの優勝者である“ブリュンヒルデ”と称される織斑 千冬の実弟の織斑 一夏。

 もう一人はIS開発に名だたる月村重工の御曹司にして織斑 一夏の護衛を勤める月村 刀也。

 このニュースは世界に新たな波紋を巻き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

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