IS学園の第3アリーナーにて僕と一夏は、射撃主体の機体相手の特訓相手に簪ちゃんの専用機の打鉄弐式と対峙する事にした。
先ずは僕と簪ちゃんが対戦を行う。
「よろしく、簪ちゃん」
「うん……不束者ですがよろしくお願いします」
何故か簪ちゃんは空中で器用に三つ指をついて丁寧に礼をしている。
いやあの簪ちゃん?
丸でお嫁にくる様な挨拶は違うんじゃないでしょうか?
誰だ!! 真面目な簪ちゃんにこんな事吹き込んだ輩はっ!!
ハイパーセンサーの片隅には『勇往邁進』と書かれた扇子を持った楯無さんがにんまりと笑みを浮かべているのが確認できた。
何してるんだ!! あの人は!! それに勇往邁進って事は僕を堕とすために脇目もふらずまっしぐらにアプローチしなさいって事ですか!!?
あ、一夏が見学に来ていた鈴ちゃんを羽交い絞めにしている。
そんな鈴ちゃん相手に簪ちゃんは勝ち誇った様な笑みを浮かべていた。
対戦を開始すると先ずは二門の連射型荷電粒子砲の春雷が火を噴いた。
僕は慌てず最小の動きで回避を行う。
続いて山嵐が火を噴き、マルチロックオン・システムによって6機×8門のミサイルポッドから最大48発の独立稼動型誘導ミサイルが発射された。
ちょっ!!? 行き成りそれは洒落になってないよ、簪ちゃん!!?
これなら確かに
意識を集中して神速を発動し、迫り来るミサイル群に僕は自ら突っ込んだ。
突進して自機に当たる最小限のミサイルのみを切り裂いて爆発する前にミサイル群から抜け出した。
神速を解くと背後でミサイルが誘爆を起こした。
その爆発エネルギーを取り込み
そして反す刃で抜刀の体制に入り、気合一閃もっとも得意とする御神流・奥義の六の薙旋へと繋げた。
打鉄弐式は技の威力で大きく後退した。
これにより打鉄弐式のシールドエネルギーを約半分削る事に成功した。
再び神速を使用して簪ちゃんを惑わせ、打鉄弐式の背後を取った。
そして御神流正統奥義の鳴神を放った。
打鉄弐式は絶対防御を発動させ、呆気なく残りのシールドエネルギーが零となり僕の勝ちが確定した。
落ちていく打鉄弐式を抱きかかえて地面へと降り立った。
「大丈夫? 簪ちゃん」
「うん、平気……」
簪ちゃんは頬を染めて顔を逸らしている。
『何時まで抱きついてるのよ、この馬鹿刀也!!』
コア・ネットワークを通じて鈴ちゃんの叱責が飛んできた。
僕は慌てて簪ちゃんから離れた。
「ごっ、ごめん簪ちゃん」
「もっと抱きついていても良かったのに……」
僕が誤ると簪ちゃんは拗ねながら答えた。
今度は一夏の番となり、僕はアリーナー観戦席へと移動した。
そこには怒り心頭な様子の鈴ちゃんが仁王立ちしていた。
「何デレデレしてるのよ!!」
鈴ちゃんは蟀谷に青筋をたてながら僕を頬を引っ張っている。
「いひゃい、いひゃいよ。鈴ひゃん」
僕はされるがままじっとしているしかなかった。
「ふん!! これに懲りたら少しは自重しなさい!!」
鈴ちゃんはまだ怒ってますという態度で僕に背を向けてしまった。
「鈴ちゃん、可愛い……」
僕は嫉妬している鈴ちゃんを見て思わず口にしてしまった。
「なっ!!?」
鈴ちゃんは耳まで真っ赤にしながら照れてしまった。
一夏の白式と簪ちゃんの打鉄弐式がアリーナーで対峙している。
前もって簪ちゃんには山嵐の使用を制限してもらえる様に頼んである。
いくら一夏でも現時点では僕と同じ戦法が使えないだろうし、あまりにブルー・ティアーズの戦法と違いすぎるためだ。
それにしても簪ちゃんは一夏に出会った当初は嫌悪の感情を露にしていたが、今では友達として接してくれている。
まあ、自惚れじゃなかったら僕のせいで一夏に嫉妬していたと思っていたから一安心だ。
一夏は白式を駆って縦横無尽に空中を移動して打鉄弐式の春雷の斜線上から逃げている。
そして一瞬の隙を突いて
勝負あり。一夏の勝ちだ。
「刀也も出鱈目だけど、一夏も洒落になってないわね」
鈴ちゃんは額に冷や汗を流しながら呟いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
クラス対抗戦の代表を決める決闘の当日になりました。
先ずは一夏の白式とオルコットさんのブルー・ティアーズの決闘が行われようとしています。
~織斑 一夏side~
「ひとつ提案があります。わたくしが勝つと思いますので、今なら謝れば許してさしあげますわよ」
「遠慮しとくぜ。それに戦う前から豪く強気だと足元を掬われるぜ」
俺はため息混じりに忠告した。
「ご心配なく……さあ、ダンスの時間ですわ。ブルー・ティアーズが奏でるワルツで踊りなさい!!」
台詞と共にルーティアーズの主力武装である巨大なスターライトmkⅢから弾雨の如きレーザーが降り注いだ。
俺は慌てず
「なっ!!? すっ、少しはやるようですわね。ならば、これはどうですか!!」
ビット型兵装ブルー・ティアーズを4機が展開し、全方位オールレンジ攻撃で襲い掛かってくる。
しかし、ハイパーセンサーのお蔭で死角のない俺は慌てず最小限の動きでさけたりレーザーを雪片弐型で切り裂いていく。
驚いて一瞬の隙を見せたブルー・ティアーズがビットを操作に集中しており身動きが取れない事を予め知っていた俺は、
そして
しかし直前でブルー・ティアーズが持ち直し、掠っただけに終わってしまった。
「くっ、喰らいなさい!!」
近距離でミサイルを放たれてしまい、避ける間もなく直撃を受けシールドエネルギーが削られていく。
その間にブルー・ティアーズは距離を取り、改めてビットが全方位オールレンジ攻撃で襲い掛かってくる。
くそ!! 勝機を焦った!!
俺は内心悪態を吐きながらも冷静に攻撃を避けていく。
これ以上零落白夜を発動し続けたら自滅してしまう。
「もう貴方を見縊る愚かな真似はいたしません!!」
言葉通り隙が無くなりブルー・ティアーズ本体に接近する事が困難となった。
最早
仕方ない。まだ練習段階で成功率が低いが
俺は静かに闘氣を込めて発動するタイミングを窺う。
既にビット型兵装ブルー・ティアーズは六機とも全部が投入されている。
僅かな勝機も逃さぬ様に意識を集中させる。
「さあ、これで止めですわ!!」
今だ!! 俺は闘氣を開放して
運よく失敗せずに発動した。
スラスターを次々に点火させることによって加速を得た白式は弾丸の様にブルー・ティアーズ本体に肉薄した。
そして雪片弐型を振り被り一気に袈裟懸け切りに振り下ろす。
インパクトの瞬間のみ零落白夜を発動させる。
残心を忘れず、落ちていくブルー・ティアーズを見詰め続ける。
直後、終了のブザーが鳴り響いた。
『勝者、白式。織斑 一夏!!』
勝利の宣言を聞いて俺は礼の姿勢をとった。
「大丈夫か?」
俺は墜落したブルー・ティアーズに近づき声を掛けた。
「ええ……負けてしまいましたわね」
「酷な様だけど、気持ちを切り替えろよ。次は刀也との決闘が待っているんだからな」
俺は手を伸ばしながら微笑んだ。
「つっ!!? ……そっ、そうですわね」
彼女は顔を真っ赤にしながら俺の手に摑まりゆっくりと立ち上がった。
「刀也は俺より強いぞ。頑張れよ」
俺は微笑みながら彼女の頭を撫でてから自分のピットへと戻っていった。
~side out~
十五分のインターバルの後、僕とオルコットさんの決闘が始まった。
「もう貴方を見縊る真似は致しません!! 全力で戦わせて頂きます!!」
「僕も全力で貴女を倒します」
オルコットさんの力強い宣言と共にビット型兵装ブルー・ティアーズは六機とも全部射出された。
全方位からレーザーやミサイルが発射される。
しかもビットは一箇所に留まらず、撃っては複雑な移動を行っていた。
避ける暇がないか。
僕は深呼吸すると意識を集中させ、連続で神速を発動させた。
一瞬にしてビットを次々と切り裂き撃墜した。
「なっ!!?」
オルコットさんは驚いて固まってしまった。
その隙を突いて神速の重ね掛けを発動させて一気にブルー・ティアーズの背後を取った。
そして神速の状態のまま御神流正統奥義の鳴神を放った。
スローモーションで吹き飛ぶブルー・ティアーズに肉薄し、もう一度御神流正統奥義の鳴神を放つ。
神速を解いて礼の姿勢をとると終了のブザーが鳴り響いた。
『勝者、朱月。月村 刀也』
僕は落ちていくオルコットさんの腕を取りゆっくり地面へ降りていく。
「……完敗ですわね」
そう言うオルコットさんは悔しそうだがさっぱりとした笑みを浮かべていた。
「どうやら憑き物は落ちたみたいだね」
「ええ、お蔭様で……」
オルコットさんは綺麗な笑みを浮かべて答えた。
次は僕の朱月と一夏の白式との決闘の予定だったが僕は辞退した。
「何でだよ、刀也!!」
掴み掛かってくる勢いの一夏を宥めて説明する。
「ほら、僕は生徒会の庶務になったじゃないか。これでクラスの代表者になると二足の草鞋を履く羽目になるからね。クラスの代表者は一夏に譲るよ」
「仕方ないな……でもまた俺とISで戦ってくれよ」
一夏は僕の疲労を見抜いて引き下がってくれた。
やっぱり朱月のサポートがあるとはいえ、神速の重ね掛けは無茶しすぎた。
「うん……約束するよ」
僕と一夏は拳を合わせて男の約束をした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
決闘が終わり一夏がクラス代表に選ばれ、僕と一夏自室でのんびりと休んでいた。
《コンコンコン》
「はい、はい……誰だよ」
一夏が扉を開けるとオルコットさんが佇んでいた。
「こんばんわ……一夏さん、月村さん。お邪魔してよろしいでしょうか?」
「いらっしゃい、オルコットさん。一夏あがってもらって……」
「おう、むさ苦しい部屋だけどどうぞ」
僕は突然のお客様に紅茶と手作りのシュークーリームを用意した。
勿論僕と一夏の分も用意した。
「どうぞ。お口に合うと良いんだけど……」
「ありがとうございます」
オルコットさんは紅茶を一口飲んでからシュークリームに齧り付いた。
「美味しい……」
「だろ! 刀也のシュークリームは絶品だよな。俺も好きなんだ」
「まあ、一夏さんがお褒めになるのも頷けますわ」
オルコットさんは一夏に微笑みかけられて頬を赤く染めている。
なるほど
オルコットさん、一夏に堕とされたな。
「僕なんてまだまだだよ。
僕は苦笑しながらも微笑ましそうにオルコットさんを眺めている。
「確かに翠屋のシュークリームは至高の味だよな」
一夏は腕を組みながらうんうんと頷いている。
「えっ!!? このシュークリームより美味しいなんて信じられませんわ」
オルコットさんが驚愕の表情をしながらシュークリームに齧り付いている。
暫く談笑しているとオルコットさんが改めて僕達に謝罪してきた。
「今日はお二方に謝りに参りましたの。男性を見下した態度、そして日本を侮辱する発言をした事を心から謝罪いたしますわ。クラスメートの方々にも後日謝罪致します」
オルコットさんは深々と頭を下げていた。
「もう、いいぜ。オルコット」
「うん、怒ってないよ。オルコットさん」
「ありがとうございます……そのよろしければわたくしの事はセシリアとお呼び下さい」
彼女は一夏の方を熱の篭った視線で見詰めている。
「分かった。セシリア……俺も一夏でいいぞ」
「よろしくセシリアさん。僕も刀也って呼んでね」
「はい……一夏さん、刀也さん」
僕達は微笑みあいながらお互いの名前を呼んだ。
これでもう友達だね。
セシリアさんは一夏とは友達で終わりたくないだろけどね。
箒さんも蘭ちゃんもライバルが増えて大変だな。
まあ、僕も人の事言えないけどね。