「それでは一年一組のクラス代表は織斑 一夏くんに決定しました。あ、一繋がりでいい感じですよね!」
山田先生が嬉しそうに微笑みながら発表している。
僕は無言でセシリアさんを見詰めた。
セシリアさんは無言で頷いて挙手をした。
「あの織斑先生、山田先生……お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「構わん。何だ、オルコット」
千冬さんの言葉に山田先生も頷いている。
セシリアさんは教室を見渡す様に立ち上がった。
「ありがとうございます……先日はクラスメートの皆さんだけでなく日本を侮辱する様な発言をしてしまい大変申し訳ありませんでした。深く謝罪いたしますわ」
セシリアさんの謝罪に教室が騒めいた。
「一夏……」
僕は一夏の肩を叩いて立ち上がった。
一夏も頷いて立ち上がる。
「俺からもお願いする。セシリアを許してくれ」
「僕からもお願いします」
僕と一夏もクラスメートの皆に深く頭を下げた。
「皆~許してあげよう~」
本音ちゃんの声掛けもあって皆頷きあって謝罪を受ける事にした様だ。
「よかったな、オルコット。今後はイギリス代表候補生として恥じる事ない行動をするようにしろ。それが謝罪を受け付ける条件だ」
千冬さんは厳しくも温かい言葉を掛けた。
「はい、精進いたしますわ」
セシリアさんは再び深々と頭を降ろした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらおう。織斑と月村、並びにオルコット……試しに実践してみろ。さあ、ISを展開しろ」
千冬さんの言葉に僕は鎧を纏うイメージでISを展開する。
一瞬で朱月を呼び出した。
一夏同じく一瞬で白式を纏っている。
「ほう……三人とも上出来だ。よし、では飛べ!」
機体のスペックに助けられて僕と一夏はセシリアさんより早く上昇した。
「お二人とも既にISを乗りこなしていらっしゃいますわね」
「まあ、俺達は乗りこなさないといけない様な地獄の特訓を受けたからな」
「うん……あれはきつかったね。何度綺麗なお花畑が見えたことか」
セシリアの尊敬の眼差しを受けても、僕達二人は顔を青くしながら答えるしかなかった。
千冬さんの扱きは相当きつかった。
まあ、お蔭で夜の一族のスペックを余す事無く使用して身体をイメージ通りに動かせる様になったのは良かった。
それでも千冬さんには勝てないけどね。
何なのあの人は!!
夜の一族がチートなら、千冬さんは最早バグの領域だ。
同じ血が流れているからか、一夏も大概凄いよな。
いつかは一夏も千冬さんの様になるんだろうな。
今でも神速なしなら十分僕と対等に戦えるもんね。
末恐ろしいたらありゃしない。
「一夏っ!! 何時までもそんなところでぼさっとしてるな! 早く降りて来い!」
思考のループに嵌っていると通信回線から箒さんの怒鳴り声が聞こえてきた。
下を見ると山田先生がインカムを箒さんに奪われておたおたしている。
恋する乙女には一夏とセシリアさんが仲良く隣に並んでる様に見えたらしい。
一応僕も居るんだけどな。
あ、箒さんが千冬さんの出席簿アタックを受けて蹲った。
「織斑、月村、オルコット、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10cm以内だ」
「了解しましたわ。それではお先に一夏さん、刀也さん」
「おう、行ってこい」
「うん。レディーファーストでどうぞ」
セシリアさんは滑る様に地表に向かっていく。
ぴったりと10cmで止まったらしい。
「次はどっちが行く?」
「それじゃあ、僕が先に行くね」
僕は重力に任せて落ちる様にして、更にスラスターを噴かせて加速する。
そして自分の感覚に従って反転して急停止を行う。
結果は地表から7cmだった。
次は一夏の番だ。
一夏は水泳の飛び込みの様に急降下してきた。
そして急停止を行い、なんと地表から3cmで止まった。
こういう感覚は一夏の方が優れてるみたいだ。
べっ、別に悔しくなんか無いんだからね!!
何だろ、何処からか電波が飛んできてこう言わないといけない気がした。
「よし、次は武装展開だ。織斑やってみろ」
「はい」
一夏が集中すると一瞬光って雪片弐型が現れた。
「よし、上出来だ。次、月村やってみろ」
「はい」
僕は意識を集中して
続いて右手の小太刀のみを
「ほう、
千冬さんは一瞬考え込んだが、直ぐに御神流の事を思い出して納得した様だった。
「セシリア、武装を展開してみろ」
「はい」
セシリアさんが集中すると爆発的に光って主武装のスターライトmkⅡが展開された。
既にマガジンが接続されている。
視線に合わせてセーフティーまで外れた。
しかし、横に居た僕の方に銃口が向いていた。
「さすが代表候補生と言いたいところだが、何処に向かって撃つ気だ。ちゃんと前に展開しろ」
「でっ、ですがこれはわたくしのイメージを纏めるのに必要なんです」
「直せ。いいな、これは厳命だ」
「……はい」
慌てて反論したセシリアさんだったが、千冬さんの一喝で話は終わった。
うん、僕達もああしてよく怒られたものだった。
今となっては懐かしい思い出だ。
「次はセシリア……近接用の武装の展開だ」
「えっ!!? あっ、はっ、はいっ」
この反応だと苦手みたいだね。
その証拠に手の中の光は収まらず、くるくると回っている。
「まだか?」
「すっ、直ぐに展開します……ああ、もうっ! インターセプター!」
武装の名前を呼んでやっとこさ展開された。
「はぁ……何秒掛っているんだ。それだから先の決闘に負けてしまったんだ」
「申し訳ありません……」
セシリアさんは項垂れてしゅんとしてしまった。
『ドンマイ、セシリアさん』
『あっ、ありがとうございます』
出来れば一夏からの方が嬉しいだろうが、その辺の機微を求めるのは一夏にとって酷な事だよな。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
放課後。食堂の厨房を借りて一夏のクラス代表就任パーティーの料理の準備をしている。
材料は食堂が使用している業者に発注して用意した。
食費は後でカンパをを募るとしよう。
「クラスが違うのに手伝ってくれてありがとう。鈴ちゃん、簪ちゃん」
「別にいいわよ。一夏の就任パーティーならあたしも祝いたいしね。それに刀也と料理してみたかったし……」
「気にしないで……刀也くんの力になれて嬉しい」
二人とも頬を染めつつ、エプロン姿がよく似合ってます。
うん、制服エプロンも斬新で良いよね。
料理は僕が洋食を、鈴ちゃんが中華を、簪ちゃんが和食を、それぞれ担当している。
まあ、ビュッフェ形式の軽い食事が中心だからそんなに手間は掛らない。
それでも和洋折衷な上に点心も揃うと結構な量が出来上がった。
一応僕のシュークーリームもデザートに出す予定だ。
「……という訳でっ!織斑くんクラス代表就任おめでとう~!!」
「「「おめでとう~!!」」」
《パン、パンパ~ン》
クラッカーが鳴り響き一夏が紙テープ塗れになっている。
「おう、ありがとう。皆の期待に応えられる様に頑張るよ」
一夏の笑顔を見てクラスメートの殆どは顔を赤く染めている。
「ふん……人気者だな、一夏」
箒さんそこは嫉妬してないで可愛らしく攻めないといけないよ。
不器用な友達に思わずため息が出た。
「美味しい~!! これ、本当に月村くんが作ったの?」
「うん、洋食とシュークリームは僕の作品だよ。それで点心が鈴ちゃんで和食が簪ちゃんだよ」
「おう~つっきーのシュークリームは絶品だから楽しみだよ~」
本音ちゃんはお皿に山ほど食事を乗せながら幸せそうに食べていた。
「失礼します~新聞部で~す。話題の新入生の織斑くんと月村くんの取材に来ました~!」
新聞部か。あまり僕は良いイメージがないな。
以前の写真は隠し撮りもいいところだったからね。
「私は二年の黛 薫子だよ。新聞部副部長をやってます。よろしくね。はい、これ名刺だよ」
「どうも……」
黛 薫子さんか。
この気配と匂いは以前の新聞の記事は彼女が書いたので間違いなさそうだ。
僕がジト目で見ていると引き攣った笑みを浮かべて一歩後ずさりをしている。
「あははは……ではでは先ず織斑くん!クラス代表になった意気込みをどうぞ!」
黛さんは僕から視線を外して一夏にボイスレコーダーを向けている。
「選ばれたからには全力で取り組みます。そして勿論クラス対抗戦は優勝を目指します」
「おお、良いね。男の子だね♪」
黛さんは無邪気な子供の様に燥いでいる。
「えっと……月村くんも一言くれると嬉しいな」
「肖像権はきちんと保障されるんですよね? 以前の様な事はごめんですよ」
「あっ……ごめんなさい。はい、守らせて頂きます」
僕の眼光に怯えながら黛さんは誤魔化しが効かない事を悟って小さく縮こまってしまった。
「僕は出来る限り一夏のサポートをしますよ。クラス代表を一夏押し付けた様なものですしね」
僕は成る丈平坦な口調で述べた。
「やっぱりあの二人って……」
「うん、怪しいよね」
「禁断の……」
こら!! そこ!! こそこそと僕達の仲を邪推しない!!
鈴ちゃんと簪ちゃんも一夏を睨まないで!!
「それじゃあ、織斑くんと月村くんの写真撮らせてもらっていいかな?」
「構いませんよ。いいよね、一夏?」
「おう、いいぜ」
僕と一夏は自然と肩を組んでポーズを取った。
「はい、チーズ」
撮れた写真を見せてもらうと二人と良い笑顔で写っていた。
「今度はあたしも一緒に撮って下さい」
「お願いします……」
鈴ちゃんと簪ちゃんが僕の腕を取って黛さんに頼んでいる。
「いいけど……それは生徒会副会長への宣戦布告かな?」
「ええ……」
「うん……」
鈴ちゃんと簪ちゃんは僕の腕に抱きつき、顔を肩に乗せてきている。
「OK♪ じゃあ、撮るわよ。はい、チーズ」
「ありがとうございました。写真もらえますか?」
「私も欲しいです」
「了解。現像次第渡すわね。頑張れ、恋する乙女達♪」
黛さんは楽しそうに微笑みながら鈴ちゃんと簪ちゃんの頭を撫でていた。
その後、パーティーは十時過ぎまで続いた。