BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR-   作:アカ狐

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首都グランドセントラル

四つの都市を束ねる王都
王城のある中央区を中心に東西南北に四つの区に分かれている。
それぞれの区が四つの都市への行き来を可能にしている。







二章 ~INDUSTRIAL METROPOLIS~ 5

 

 

 

 

 

グランドセントラルの王城内、その一室にある円卓に並ぶ13の席。

その席にはそれぞれ0から12と数字が割り振られている。

そしてそれはまばらに埋まっており、6人の男女が顔を合わせていた。

 

内五人の姿は、異形であった。

 

4の席には頭に一対の角が生えた女性が、10の席には翼が生えた老人が、5の席にはすぐ隣の女性よりも小さな角の生えた女性がうつむいたまま、涙をずっと流しており、

 

その隣の6の席には、巨大な腕を床に着けた状態で椅子に腰掛けている小麦色の肌の少女がいた。

8の席には白い軍服に身を包んだ男が、

 

そして1の席には白い髪を二つに結んだ少女が自らの前に幾枚もある便箋の封を乱雑に開けて中身を読むなり、退屈そうに辺りに散らしていた。

 

そこに一人の男が現れ、0の席に座り足を組んだ。

整えられた髪に、卸したてのようにシワ一つ無い服を着ている。

 

「代表、そろそろお話されても良いでしょう?何故民兵や我々を使ってまで探させるのです?それもただの国境警備兵を」

 

8の席に座る軍服の男が上座で足を組む男の目を見て問いかけた。

0の席の男は答えない。

 

「私は既に複数名の兵を失っているとそう聞いておりますが?他の兵士にはどうご説明なさるおつもりですか?」

 

「あら?貴方が私の兵の心配をするのグリフィン?」

 

4の席の女性が噛み付く様に会話を遮る。

グリフィンと呼ばれた男は女性を睨みつける。

 

「随分反抗的な眼ね……、下位の分際で私の兵士の心配だけじゃなく私を睨むほど偉くなったのね?」

 

女性が立ち上がると右の瞳に鮮血のような真紅の炎が灯り、振り上げた右手に巨大な鋸の様な剣を顕現させ握るや否や床に向けて降り下ろし、轟音を響かせた。

その切先は床にめり込み、亀裂を走らせる。

 

グリフィンは動じることなく女性を見る。

1の席の少女はその様子に目もくれずに手紙を投げ捨て、また違う便箋を乱雑に開け始めた。

 

「よさないかヒュドラ。女帝ともあろう君のするべき振る舞いではないぞ?」

 

10の席に座る老人が静かに言う。ヒュドラと呼ばれた女性はふんと鼻を鳴らして剣を下げ、席に座りなおした。それを見て老人は更にこう続けた。

 

「それにだグリフィン、君の求める答えはキング・キルに問うものでは無いだろう?なぁ、フリアエ?」

 

老人は5の席に座る女性に問いかける。

その視線をグリフィンも追う。

フリアエと呼ばれたその女性は涙に濡れた顔を上げ、口を開いた。

 

「既にプルートとケルベロスが動いている。彼は今ルールに居て、明日グランドセントラルへ向けて発つ。」

 

「そんなことどうして分かるのよ?貴女未来でも見てるわけ?」

 

ヒュドラは怪訝そうにフリアエを見つめる。

1の席の少女がまた一枚手紙を床に投げ捨てた。

 

「その通りだ。彼女には未来が見える。君が納得しないこともだ。だが此処で君が納得するしないはこの場において重要ではない」

 

老人はヒュドラにそう諭し、さらにこう続けた。

 

「重要なのは…、プルートとケルベロスに、キング・キルが委ねるどうかだ。……如何なさいますかな?キング」

 

老人は0の席に座り、キング・キルと呼んだ男の目を見た。

 

「……二人が良い結果を運んでくることを私は期待している。君達も彼女たちの結果を待っていたまえ」

 

キング・キルはそう言って席を立ち、その場を去った。

 

「こういうことだ女帝閣下。では私も失礼するよ…」

 

老人はキング・キルに続き、フリアエがそのすぐ後ろを歩いて行った。

 

「…覚えておきなさいグリフィン、既に死んだかつての王に未だに忠義を尽くしているアンタ如きの助けも気遣いなど、私には必要無い」

 

ヒュドラはグリフィンにそう言うと黒い影になって消え、それを見ていた6の席に座る少女は立ち上がり、その両腕を引きずりながら去った。

 

そうして次々に去っていき、1の席に座る少女のみが残った。

 

「愛しき私の歌姫よ…、貴方は夜空を照らす月の様に輝き…、ふふっ、ふふふふふ……」

 

少女はクスクスと笑いながら読み上げた手紙を床に落とすと、立ち上がって円卓に飛び乗り、便箋の山を蹴散らすとくるくると体を回して踊り始めた。

 

「ふふふふ…あはは、あははははははは……」

 

彼女の笑い声は円卓の置かれた部屋から、まるで王城内に響き渡らせているかのようであった。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

その日の夜、トトは夢を見た。

 

目を開けると、広い庭の様な場所に座っていた。

手入れされている綺麗な庭で、トトは背中を大きな楡の木に預けている。

 

「トト」

 

名前を呼ばれ、トトは声のした方へ顔を向ける。

小さな女の子がそこには居た。

黒い髪に、青い瞳で、黒いドレスを着た女の子だった。

 

ステラによく似ているが、凄く背が小さい。

3歳ぐらいの子供の背丈ほどしか無かった。

 

「それはなに?」

 

女の子はトトに歩み寄って問いかける。

トトはそこで自分がチョコレートを持っていることに気が付く。

 

「チョコレート。…食べる?」

 

トトはチョコレートを差し出す。

女の子は不思議そうに受け取り、少し眺めてから口に運んだ。

 

「…おいしい。」

 

女の子が微笑むのを見てトトも頬が緩むが、そんな自分たちを見つめる一人の女性がいることに気が付いた。

その女性はトトと目が合うとそのまま二人の前まで近づいてきた。

白い日傘をさし、白い髪と赤い瞳、白いドレスを身に纏った女性は、座っていたからなのか、はたまたトトの背が小さいからなのか、背が高く感じられた。

 

「貴女は誰?」

 

トトの問いに、女性は静かに微笑み口を小さく開いた。

 

「私は」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「ぅ…」

 

右肩の重いものが乗ったような感覚にトトは瞼を開ける。

腕と肩に重くのしかかる物を見るためにトトは体を起こす。

 

重い、右腕の自由が利かない。

左手で目をこすり、体に乗ったものに焦点を合わせる。

 

「わっ」

 

ステラだ。

トトの腕と右の肩、どころか胸に頭を置いていたのだ。

思わず小さく悲鳴を上げたが、運よくステラが起きることは無く、小さな寝息を立てて、長い睫毛を揺らしている。

 

トトは起こさないように彼女の頭を枕に移してベッドから起きて肩を回す。

そこで洗面所の戸が少し空いていて、光が漏れていることに気づいた。

 

(電気を消し忘れていたかな…?)

 

立ち上がり、扉を開ける。

 

「っ!?」

 

「…え?」

 

バスタブに腰掛け、タオルで体を隠すユナの姿がそこにはあった。

扉を開けるトトに驚き、咄嗟に体が動いたと言わんばかりにバスタオルと両手で胸元を隠している。

その顔はみるみるうちに顔を赤くしていき、

 

「見てないで早く出ろよぉ!!」

 

「わわわわっ!?ご、ごめん、なさいっっ!」

 

赤面したユナの叫びに同じぐらい顔を赤くしたトトは慌てて扉を閉め、背を預けたかと思えばずるずると崩れ落ちるのだった。

そして彼は瞬時に理解した。理解してしまった。

 

ユナは、女の子だったのだ。

 

「…?トト…?」

 

ステラがトトを見つめている。どうやら起きてしまったらしい。

 

「あ、あぁ…起こしちゃった?ごめん…」

 

トトはステラの方を一瞬見るが、彼女の肢体も見てしまっている彼は、せっかく忘れかけていたのにまた思い出してしまい、再び頭を抱えることとなった。

 

時計を見ると朝の6時、グランドセントラルに向かう為には民兵達の見張りを避けながらグランドセントラルを目指す必要がある。

 

トトは深呼吸をして、両手でぱちんと頬を叩いた。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

七時

 

アンドレとユナはトトよりも早くホテルを後にしたことを二人が知ったのは、朝食を食べているときにアレスの口からそう聞かされた時であった。

あんなことがあれば無理もないと、トトはばつが悪い思いだった。

 

食事を終えたトトは身支度を済ませ、フロントでエルンストと話をしていた。

一日だけとはいえ、自分たちが働いた手間賃で身を預けてくれたことへの例の為だ。

 

「お世話になりました。またいつか機会があれば寄らせていただきます」

 

「いやァん、ホントに育ちのいい子だコト。トト君は将来イイ男になると思うワ」

 

「あ、あはは…ありがとうございます……」

 

エルンストの言葉に苦笑するトト。

やはりこの人の振る舞いは苦手だと、トトは思った。

 

「トト、アレスが待ってる」

 

「あ、うん。それではまた」

 

トトは改めて深く頭を下げて外套のフードを被ると、扉に手をかけて出ていった。

エルンストはしばらく出ていった後も扉を見つめ、そして

 

「ナナの言うことが間違っていなければ、あの子が……」

 

とつぶやいた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

外ではやはり黒い雨が降り続いており、トトたちは濡れながらもグランドセントラルへ向け、バイクを走らせる。

 

そんなときであった。

 

「見ツケタ!」

 

「見ツケタ!見ツケタ!!」

 

後ろから大きな声が聞こえ、トトは振り返る。

そこには巨大な頭蓋骨と思しき物が二つ、浮遊して二台のバイクを追いかけていた。

その頭蓋骨には緑色の瞳が燃える炎のようにゆらめきながら、トトを見つめている。

そしてその間には背中に一対の翼と角を生やし、右手に巨大な鎌を持った女性が空を飛んでこちらを見つめていた。

 

「プルート……!」

 

アレスがつぶやく。

しかし彼女が見ているのは、アレスでも、トトでもなかった。

 

「会いたかったわ、ステラ」

 

「ステラ……?」

 

プルートの言葉にトトは耳を疑う。

 

「トト!飛ばせ!振り切るぞ!!」

 

アレスの声を聞き、トトは慌てて前を向き直してアクセルを開けた。

瞬間、バイクの前輪が吹き飛んで、二人はバイクから投げ出された。

 

「うわぁああぁああ!?!?」

 

「なっ!?」

 

アレスはそれに気づき、ブレーキを掛けるが間に合わない

トトは地面にぶつかる寸前、ステラがトトを抱きかかえる形で身を翻して、滑りながら着地したことで、大事には至らなかった。

 

前輪と運転手を失ったバイクはその残骸と共に道路の上を転がり、けたたましい音を立てる。

プルートはゆっくりと地面に足を着け、ドレスの裾を摘んで礼をする。

 

「初めまして、と言っておきましょう。私はゾディアックの7番位 “プルート” …そうね……、デッドマスターと言えば、聞き馴染みがおありかしら?」

 

ゾディアック、デッドマスター、その言葉を聞いたトトは狼狽えた。

勝てない。逃げられないと瞬間に思った。

 

逃げて祖母の言ったとおりに動くという行為そのものが間違いだったのかもしれないと、

自分の判断の甘さ、愚かさを悟った。

 

「トト、大丈夫。貴方は絶対に守る」

 

ステラはプルートを見据えたまま、トトに向けてそう言った。

プルートは鎌を二、三度振ってみせると、

 

「心配せずとも、その子は貴女を殺してからいただくことにするわ。ステラ」

 

そう言ったと同時にステラめがけて斬りかかる。

ステラはトトを押し飛ばすと剣を抜き、一撃を受け止める。

火花が散り、二人の距離が縮まる。

トトはゴロゴロと転がり、ステラの方を一度見る。

 

一度距離が開くが、またすぐに互いの刃がぶつかり合い火花を散らす。

トトはステラを助けたかったが、巨大な鎌を管弦楽団の指揮者のタクトのように振るう者と戦う術も知恵もトトには無かった。

 

アレスが彼のすぐ横にバイクを止め、呼びかける。

 

「トト、乗れ!逃げるぞ!!」

 

アレスがトトに呼びかける。

 

「で、でもステラが…」

 

「今の君に何ができる?いいから乗るんだ!!」

 

プルートはステラを押し返し、更に攻勢を続ける。

トトは迷ったがすぐにアレスの後ろに乗り、すぐさまバイクが発進する。

 

「逃げられはしないわ」

 

プルートはそう言ってステラの服を掴んで思い切り上へ投げ飛ばすと二体の頭蓋骨に手で合図を出し、二人を追跡させる。

 

だが、ステラは大砲を召喚し、二体の頭蓋骨に狙いを定めて砲弾を発射させた。

凄まじい連射で撃ち出されたが、一体の頭を半分と周囲の建物を破壊するだけに留まった。

 

「あらあら、まだあの子の心配をしている余裕があるなんてね?」

 

プルートは屋根に着地したステラを見る。

左手の大砲を自らに向けられていても、不敵は微笑は消えない。

 

「私はトトを守るために此処に居る。だから貴女も私が止める」

 

「私…?ふふ、あはははははは!私じゃないわ、私“達”よ!」

 

プルートはステラの言葉を笑い飛ばす。

ステラは砲弾を撃ち出し、砲弾は建物の壁や石造りの道路舗装と抉り土煙を作る。

 

プルートはそれを振り払うも、既にステラの姿はそこにはなく、

既に屋根伝いにあの一対の頭蓋骨から逃げるトトたちに向かって走っていく後ろ姿が一瞬見えただけであった。

 

「…チッ、ケルベロスは何をやってるのかしら…?まぁいいわ、楽しくやりましょう、ステラ?」

 

 

 

(続く)

 

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