BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR-   作:アカ狐

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ブラック・ゴールド・ソー

ゾディアックの四番位
ヒュドラの名を冠する女性。
巨大な鋸の様な形の大剣「King Saw」を軽々と振り回す。
民兵隊を指揮する権限を持っており、
「女帝」とも呼ばれている。










四章 ~The Edge of the Ridge ~ 6

 

 

夜は十時を回った頃。トリューの住むアパートメントの前に数台の車が停まった。

濃い緑色の制服に身を包んだ民兵隊が降りてきてゾロゾロとその場に整列する。

 

建物からメガネをかけた背の低い男が一人、彼らを出迎えた。

隊長が彼の前に立つ。

 

「ゲオルク氏は今部屋に?」

 

「えええ、ええ、えぇ…!今まさに」

 

隊長の質問に、男は何度も首を縦に振って答えた。

 

「案内しろ。全員私に続け」

 

男を先頭に兵士たちがぞろぞろと階段を上がっていく。

そして307号室の前で立ち止まり、隊長がドアを叩いた。

 

“コンコンコン”

 

「ゲオルクさん?よろしいでしょうか?」

 

…。

返事は無い。

 

「開けろ!民兵隊だ!」

 

…。

やはり返事が無い。

 

「構わん、ぶち破れ」

 

隊長の言葉ですぐ後ろに居た兵士がドアを蹴破った。

銃を持った兵士達が部屋に入り、部屋中をくまなく探すが誰も居ない。

最後の一部屋に銃を向けて扉を開けた兵士は椅子に置かれたマネキンと、その頭に貼られた紙を見た。

 

“ Run away!! ” 

そう書かれた紙を見た兵士はいきなり肩を掴まれた。

「走れ!!逃げるぞ!!」腕を引っ張られた兵士が見たのは、部屋の棚、壁、天上、小物類に紛れてそこら中に置かれた爆薬の数々。そして次の瞬間ー。

 

“ ドォン!! ”

 

307号室が爆発を起こし、それは部屋の前の扉や窓を吹き飛ばし大きな爆炎を噴き出させた。

その音と衝撃に通りに居た人はおろか、周辺にいた人が驚きを隠せなかった。

「なんだなんだ!?」と言いながら人だかりができる。

 

民兵達はけが人の救助と消防を呼ぶ為に慌ただしくなり、その場は騒然となった。

そこから少し離れた道路脇に停まる側車付バイクに跨り、望遠鏡でその様子を眺めていたトリューはすぐにそれをウォクスが収まる側車に放り込むと、バイクのエンジンをかけ、静かに走り出した。

途中何台もの消防車とすれ違うも、トリューだとは気づかれないまま走り去っていく。

そうしてトリューは自分の住む東区から首都グランドセントラルを脱出しようとしていた。

そんな彼の頭上から声が響いた。

 

「そう簡単に行くと思った?」

 

「!цΠέέЯЯαα!」

 

ウォクスが上を見て声を上げた。

一対の角、黒い長髪、赤い瞳に宿した真紅の炎。

そして右手に握られた巨大な金の鋸。

 

「ゴールドソー!!」

 

「あら?私を知っているのね?教授」

 

ゾディアックの四番位、“ 女帝 ”、“ ブラックゴールドソー ”等、複数の異名を持つヒュドラがその得物である鋸を上段に振りかざしていた。

トリューは急ブレーキを掛け、鋸の刃先は道路に突き刺さる。

そのままスロットルを全開にしてハンドルを切り、彼女の横をすり抜ける。

 

「時速80キロに着いてこれるとはな…!!」

 

トリューがそう言ったのも束の間、ゴールドソーは跳躍で高く飛び上がり、足元に魔法陣を作るとそれを足場に更に飛んで追撃を掛けた。

私から逃げ切れるとでも思ったの?とでも言いたげな表情で。

トリューはそれをミラー越しに見るや否や、すぐさま左手で銃を抜いて、

進行方向に見えた一本の街灯目掛けて一発発砲した。

 

放たれた弾丸は街灯に命中して跳ね返り、間合いを詰めたゴールドソーの頭に生えた右の角を掠めた。

その痛みにゴールドソーの右目に真紅の炎が灯る。

 

「やはり簡単に行かせてはくれないか!」

 

「当たり前よトリュー・ゲオルク!ここで死になさい!!」

 

ゴールドソーの鋸は再び上段に構えられ、トリュー目掛けて降り下ろそうと腕に力を込めた。

 

「ウォクス!」

 

「!цЯЯααιέ!」

 

トリューに促され、ウォクスが吠える。

その声、言葉にゴールドソーの体は一瞬電撃に当てられたような痛みと、痺れに襲われた。

彼女はそれを振り切り鋸を振るうが、動きが遅れていたようで刃先は空を切った。

 

「チィッ!」

 

ゴールドソーは舌打ちをしてもう一度大きく踏み込んだ。

突貫の最中、鋸の切先が地面を掠め、鈍い金属音と共に火花が散る。

しかし彼女は標的をトリューからウォクスに切り替え狙いを定めた。

ウォクスは彼女の目を見てそれを確信し、彼女に向けて両手を開いた。

 

「妙な小細工が私に通じるとでも!?小娘!!」

 

ゴールドソーは鋸を二度振るい風を切り裂く。

トリューはもう一度銃を向けて撃つが、ゴールドソーは飛んできた弾丸をあろうことか、目で見て避けてみせた。

「なんと!?」

「ハンッ!そんな玩具じゃ止められないわ!!」

驚くトリューに視線を移すことなくゴールドソーは吐き捨てる。

バイクが歩道橋を抜けたとき、ゴールドソーは足を止め、勢いよく飛び上がり歩道橋の上を通った後、落下の速度と剣の重さに任せて回転しながら斬りかかった。金の鋸の刃先がまさにウォクス目掛けて降り下ろされようとした瞬間、

 

「!ΣιζαЁ!」

 

“ バチッ!! ”

ウォクスの言葉と同時に鋸がウォクスの手からわずか数センチのところで停止する。

ゴールドソーは突然の出来事に目を見開き、動揺を隠せない。

彼女の意思で止めたのではない。止められたのだ。

 

ゴールドソーは炎の灯った真紅の瞳でハッキリと視認した。

ウォクスの前に張られた青白い防御魔法の壁の存在を視認した。

 

「この子…この力は…!!」

 

「!ΣτΛαβ!」

 

“ ドグォォォォオオン!! ”

ウォクスの言葉で二人の間に爆発が起こり、ゴールドソーは吹き飛ばされて歩道橋に激突し、トリューは

 

「おおぉぉぉぉおっっ!??!」

 

爆風でバイクが急加速し、その速さに悲鳴を上げていた。

メーターが一瞬ではあるが120を指して思わずハンドル操作が乱れに乱れる。

激しいスキール音を立てながらもなんとか姿勢を立て直し、吹き出した冷や汗を拭う。

ふと横に目をやると額を押さえて目に涙を溜めたウォクスがトリューを睨んでいた。

どうやら頭をぶつけたようだった。

 

「ζЯЯЯЯ……」

 

「おぉ!?す、すまなかった!頼むから泣かないでおくれ!レディーを泣かせては家族に顔向けが出来ん」

 

「ц!」

 

「うわわわわっ!?本当に申し訳ないと思っているぞウォクス!」

 

ウォクスの叫びと共にトリューの眼前で “ ボワッ ” っと小さな爆発が起こり、

トリューは驚いてまたしてもハンドル操作を乱した。

再び姿勢を整えたときには満足したのか、ウォクスはサイドカーの座席に収まりふんすと鼻を鳴らしていた。

 

「Σцδ‐ФЯИ?」

 

「ん?あぁ、これからのことは心配するな。ディープフォレストに知り合いが居るんだ。彼の手を借りるさ。」

 

「ηцц~…」

 

トリューの言葉を聞いてウォクスは頷き目を閉じた。

二人を乗せたバイクはそのまま郊外へ抜ける道を駆け抜けていった。

 

そして吹き飛ばされ歩道橋の柵に体をめり込んだゴールドソーは地面に降り立ち、遠のいていくバイクのテールライトを見つめていた。

民兵が数人、彼女のそばに駆け寄って指示を仰いだ。

 

「ヒュドラ様?追跡しますか?」

 

「いいわ。ほうっておきなさい。」

 

 

(第四章 了)

 

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