BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR-   作:アカ狐

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セントラル・タイムス

首都グランド・セントラルで発行されている新聞
国の情勢を正確に書いているが、民兵に肩入れしている記事が散見される。
アラン・ノウェムの記事が一番の見出しに載ることが多い。








五章 ~Grand Central~ 3

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

トトが祖母が教えてくれた場所にようやく辿り着いた彼を待ち受けていたのは、

一部分が吹き飛んだアパートメントだった。

周囲をグランド・セントラル警察の警官が見張っている。

 

呆然とその光景を見つめるトトの表情をステラは心配そうに見つめている。

アレスがどう声を掛けていいか迷っているとき、トトは警官に声を掛けた。

 

「すみません、ここの住人の方と話がしたくて……」

 

「ここは立ち入り禁止だ。中へ通すことは出来ない」

 

トトの申し出を警官はあっさりと断って追い返そうとする。

当然だ。道路から見える位置の三階の一部屋がまるまる吹き飛んでいるのだ。

よほどの何かがあったに違いない。しかしトトは食い下がる。

 

「あ、あの...せめて此処に住んでいるトリューさんの安否だけでも...」

 

「何?」

 

トトの言葉に警官は反応した。

思わず「えっ」と声を上げるトトに警官は詰め寄る。

 

「今トリュー・ゲオルクと言ったか?お前は奴の知り合いか?」

 

「え?あ、あの…」

 

「質問に答えろ。お前はトリュー・ゲオルクを知っているのか?」

 

「僕は、その…」

 

トトは思わず口ごもる。

警官は焦っていたのかトトの肩を掴んできた。

いきなりのことでトトは体を強張らせた。

 

アレスは警官を止めようとするが、その場にいた他の警官に阻まれてしまった。

トトはかなり強く掴まれてしまい、痛みに思わず顔を歪める。

それを見ていたステラは警官の手首を掴み、トトから引き剥がした。

 

「ぐぉ…!?」

 

警官は相当痛いらしく、掴まれた手をもう片方の手で掴んでいた。

ステラは表情を変えることなく静かに言った。

 

「トトはトリュー・ゲオルクに会う為にここまで来ただけ。彼のことは何も知らない。私も知らない」

 

そう言って警官の手を放す。

やっと解放された彼は腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。

 

「彼女の言う通りだ。俺達は彼の家がここだということしか知らない」

 

アレスがそう言って警官もようやくトト達の話を信じる気になったのか、ばつが悪そうにしていた。

トトは安心からか、フゥとため息をついた。

 

「とりあえず、トリューさんはここにはいないみたいですね。誰か知っている人のことを探しましょう!」

 

トトは自分たちの徒労を無駄にしまいと二人にそう言った。

が、その直後にグウとお腹の音が鳴った。

確かに空腹ではあったものの、それどころでは無く、ずっとそれを我慢をしていたトトはその音に顔を赤くした。

 

「まずは何かを食べなければならないな」

 

アレスの言葉にトトは静かにうなずいた。

ステラはトトのお腹をじぃっと見つめていた。

トトは視線に気付き、ステラに声を掛けたが、ステラはトトのお腹に耳を近づけて

 

「もう一回聞きたい」

 

と言った。

トトはステラを自分のお腹から引き剥がして、

 

「恥ずかしいからダメ」

 

と言ったのだった。

ステラはトトの言う “ 恥ずかしい ” の意味が分からずに首をかしげたが、納得することにした。

お腹の音を聞かれることは恥ずかしいことなのだ。と。

それはそれとして、ステラも何かを食べたくなったので、トトの意見には賛成していた。

 

幸いにもグランド・セントラルの東区は繁華街が集中している地区で、少し歩けば沢山の人が歩いている大通りに出た。

昼と夜では雰囲気がガラリと変わりそうな場所だとトトは思った。

三人はすぐに食べて移動しようということで、そのまま目に入ったレストランに入ることにした。

しかしそこは中はそれなりに人こそいるものの、その内の半分ほどは民兵隊だった。

 

彼らは昼間だというのに酒を飲んでいて、職務を全うしていないのは明らかだった。

その姿に、トトは表情を曇らせた。

見つかったら厄介なことになる以上に、彼らの兵士としての質の低さが気になったのだ。

客の一人が読んでいるセントラル・タイムスの記事の見出しが目に入った

 

“ グランド・セントラル郊外で装甲列車爆発、騎兵部隊スタング壊滅 ”

 

トトはそれを見てあのスレイプニルを思い出した。

彼は今どうしているのかと、立ち止まって考える。

 

「おい、帽子を深くかぶって外套をしっかり巻いておけ。見つかると厄介だぞ」

 

アレスが小声でトトに言う。

その言葉にトトは少し慌てて身なりを整えた。

三人はスタスタと空いているテーブル席に座り、簡単に食べられるものを三人分頼んだ。

 

「チョコレート」

 

「はい?」

 

ステラがポツリと呟いたことに店員さんが首をかしげたのを見てトトは慌てて割って入る。

 

「あっ…!ごめんなさい...ココアとかはありますか??」

 

「ココア?あぁ、ココアね。おひとつですか?」

 

「はいぃ!」

 

店員が不思議そうに奥へ歩いて行ったのを確認したトトは胸をなでおろした。

アレスは、何もそこまで必死な反応をしなくとも。と思いながらため息を吐いた。

ステラはトトの服の袖を軽く引いてチョコレートをねだった。

 

トトはステラにチョコレートを割って渡したところで民兵隊の話が耳に入ってきた。

聞き流すわけにいかず、思わず耳を傾けてしまったのだ。

 

「聞いたか?例のガキ逃がしたグレートウォールの件」

 

「あぁ、G地区の国境警備隊の給与カットって話だろ?」

 

「それだけじゃねえ、G地区を第四軍の管轄にするって命令を、G地区の警備隊長が拒否して小競り合いになったらしいぞ?」

 

「まじか!馬鹿な奴らだな国境警備兵共も」

 

「で、第四軍の指揮官がよ。警備隊長の息子を逮捕して人質に取ってるって話だ」

 

トトは民兵隊の男たちの会話を聞いていて手に思わず力が入っていた。

ギリギリと奥歯が軋むほど歯噛みして自分を抑えている。

ステラはトトに呼びかけて、肩に手を乗せるが、トトは気付かない。

 

「あーあー、G地区はこれから大変だな。その息子って誰なんだ?」

 

「たしか、ヴォル…だとか言ったかな?」

 

その言葉を聞いて、トトは耳を疑った。

自分に良くしてくれたあの心の優しい先輩が、民兵隊に不当に逮捕されたという事実を受け入れられるわけが無かった。

 

 

「ははは、可哀想にな。警備隊の隊長さんのとこに生まれたってだけでそんな目に遭うなんてな」

 

「どうせ腰抜けの国境警備隊だ。底が知れてるさ」

 

「ハハハ、ちげえねえや」

 

「ハハハハハハ……」

 

彼らの嘲笑混じりの噂話は、トトの心を苛立たせるには十分すぎるほどに耳障りな物だった。

出されたサンドイッチに目もくれず、トトはその民兵隊の男達を睨みつけていた。

 

(お前たちに何が分かる!)

 

トトがそう思う頃には椅子から立ち上がっていた。

勢いよく立ち上がったことで周囲は静まり返り、店にいた人間の多くがトトを見つめていた。

それは噂話をしていた民兵隊の兵士とて例外ではない。

トトはツカツカと彼らの前に歩み寄った。

 

「なんだよ?何か用かガキ?」

 

「……て、さい…」

 

「…あぁ?」

 

「…の、…してください…...」

 

兵士の問いかけにトトは答えるが聞き取れない。

同じテーブルに座っていた二人が立ち上がり、トトの前に立つ。

 

「あ~?聞こえねえよ?」

 

「ちゃんと顔見て言えや?オオ?」

 

兵士がトトの肩を掴み、その勢いで被っていた帽子が床に落ちる。

ステラはそれを見て立ち上がろうとするが、アレスに阻まれる。

彼を睨みつけるステラだったが、「今はダメだ」と言いたげに首を小さく横に振るアレスの行動に納得するしかなかった。

トトは兵士達を睨みつけて言った。

 

「今の言葉、取り消してください…!」

 

「あぁ?なあコイツ何が言いてえか分かるか?」

 

肩を掴んだ兵士はトトを指さしながら他の兵士達に声を掛ける。

トトはそんな彼らの態度に更に腹が立った。

 

「放せよ」

 

「あぁ?だからハッキリ言えっつんだよコラ」

 

「手を放せって、言ってるんだよッッ!!」

 

トトがそう叫んだ瞬間、トトの肩を掴んでいた手が、まるで見えない力によって引き剥がされるように離れた。

 

「う、おぉっ!?」

 

手が離れた勢いのまま男は後ろに勢いよく倒れこむ。

その出来事に周囲はどよめいた。

“ 何が起こったのか? ” と。

 

それはトト自身も同じだった。

“ 地下水路で見たあの怪物といい、何かがおかしい。” と。

そして兵士の一人がトトの顔を見て言った。

 

「お、おい...コイツまさか…」

 

その言葉にアレスがまずいと思ったときだった。

店の扉が開き、白い軍服を身にまとった騎士が三人入ってきた。

突如現れた彼らを見て、店内は更にどよめいた。

 

「おいおい、国教騎士団じゃないか…」

 

誰かがポツリと呟いた言葉にトトとアレスは驚いた表情をした。

二人の様子にステラが首をかしげる。

騎士の一人が言った。

 

「何の騒ぎだ?通報があって駆けつけてみれば、民兵隊がこんなところで職務放棄か?」

 

「騎士団長様直々のお出ましとは思わねえよ……」

 

兵士の一人がつぶやく。騎士団長と呼ばれた男は兵士達に一瞥してからトトを見た。

目が合い、トトは一瞬狼狽える。

騎士団長はトトの次にアレスとステラを見た。

 

「彼は貴方がたの連れか?」

 

「…ああ」

 

アレスが頷く。

騎士団長はもう一度トトを見て言った。

 

「君達三名の身柄を一時拘束させてもらう。大人しくついてきてもらおう」

 

その言葉にステラが動こうとしたが、トトがステラを見て首を静かに横に振った。

騎士団長は部下二人に目配せをし、三人は彼らに連れられて店を後にした。

店の外で三人は手錠を掛けられ、馬車に乗せられてそのままその場を離れた。

一部始終を見ていた者たちは、馬車が見えなくなるまで、街道に立ちつづけていた。

 

そして、そんな様子を遠巻きから一人の男が見つめていた。

茶色のスーツに身を包んだ男は金縁眼鏡を掛け直して呟く。

 

「面白い記事が書けそうだ…。が、まずはワイバーンとキングに報告が必要だな……」

 

 

(続く)

 

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