BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR- 作:アカ狐
歌劇場
グランド・セントラルに存在する劇場。
昔はオペラやミュージカル、オーケストラなどが開かれていたが、
革命政府の体制になって以降、使われておらず、
かつての栄光は何処にもない。
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ユナはふと立ち止まり、周囲を見回した。
声が聞こえたのだ。
彼女にとってとても聞き覚えのある声が。
「ユナ?」
マルチはユナが立ち止まって辺りを見回しているのを見て声をかけた。
新聞を読んでいたアンドレも、ユナを見て何事かと近づく。
「おいおい、どうした急に?民兵のことなら…」
「オッサン、僕ちょっと行きたいところが出来た。一旦別行動してもいいかな?」
「お、おいユナ…、それは……」
「調べたいことがあるだけ。すぐに戻るから、東区の三番街広場で落ち合おう。それじゃ後で!」
アンドレの制止も聞かずに、ユナはそう言い残して通りを駆け出していく。
名前を呼び、止めようとするアンドレを呼ぼうとする声は、市街の雑踏にかき消されてしまった。
彼女の背中を見て、マルチはアンドレに向き直る。
「私、ユナについていく。一人にさせられない。」
「それは…大丈夫なのか?」
「信じて」
マルチは真っ直ぐアンドレの目を見て言った。
彼女のその無機質ながらどこか芯の強さを感じさせる言葉に、アンドレは頷く。
「……頼んだ。危なかったらユナをつれてココへ逃げるんだ。俺の知り合いと言えば入れてくれる」
アンドレはマルチにその場所が書かれた紙を渡して、彼女を見送った。
「さて」と一息入れて、アンドレはグランドセントラルの街道を歩き出す。
新聞に書かれている見出しの写真に載っていたストレングスと、彼女の腕に捕らえられたアレスの居場所を突き止めるために。
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歌劇場に続く道を、ジャンヌの案内でトトとステラは歩いていく。
ナミマとマイも来るはずだったのだが、入り用で呼び出されてそちらに行ってしまい、
結局二人でついていく形となったのだ。
ジャンヌはスキップのような、ダンスのステップのような小気味良い足取りで歩く。
その背中にトトは問う。
「ねえ、本当に劇場にいるの?」
トトの疑問にジャンヌはフフンと笑う。
信じろとでも言わんばかりの態度にトトは大丈夫か不安になってきていた。
そんなトトの表情を見てステラは、タタタンとステップを踏みながら歩くジャンヌの前に立つ。
「質問に答えて。私は貴女を信じたわけではない」
「あらそう?彼の言うことには従うのに?」
「トトは今関係ない。トトの質問に答えて」
「私が信じられないの?彼には信じてと言ったくせに」
「っ……!」
ステラの表情に陰りが見え、トトが間に入ろうとしたときだった。
「おっ!トトくんじゃないか!」
後ろから突然声を掛けられ、驚きながら振り向くとアンドレがそこにいた。
新聞を読んでいたのか、脇に抱えながら手を振る姿にトトは驚きながらも駆け寄った。
「アンドレさん、来てたんですね!」
「おう、随分遠回りだったけどな!ステラちゃんも元気そうだな!」
そう言ってステラを一瞥するアンドレを見てからステラは周りをきょろきょろと見回した。
「ユナは?」
「ユナ?あぁ、今別行動中。」
それを聞いてトトは少し心配になった。
ステラはトトの気持ちを察してか、きっと大丈夫と言い、トトもそれを聞いて静かに頷いた。
「ちょっと、置いていかれたいの?」
「あ、すみません!」
ジャンヌに言われて、トトは慌てて頭を下げる。
その様子にアンドレが口を開く。
「……ステラちゃん、君…お姉ちゃんとか居たりした?」
ステラは首を横に振る。ジャンヌは笑いを堪えるために口元を押さえた。
「あ、そういえば探してた人ってのは見つかったのかい?」
「……えっと、この人が探すのを手伝ってくれるって言ってくれて……」
トトの言葉にステラは頷く。ジャンヌはそういうことだからと話を切り上げようとしたが、アンドレは食い下がった。
「おいおいおい、トト君そりゃ一体どういうことだ?探し人は見つからなかったのかい?」
トトは実は…と、この街に着いてからの出来事を話した。
アンドレは黙って聞いていたが、ジャンヌは先を急ぎたいのか苛立ちを滲ませていた。
「だから私が探すのを手伝うって話をしているのよ。人探しが得意な人に協力してもらうの」
「あ、じゃあ一つ俺に質問させてくれ」
「何?」
アンドレの言葉にジャンヌは振り返る。
ステラの瞳とは対称的な赤い瞳を見て、彼は問う。
「アンタの名前だけ聞かせてくれ」
「ジャンヌよ。兵隊さん」
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ユナは自分を呼ぶ声に導かれるように街中を歩き、その声の主を見つけて立ち止まる。
その声の主はユナに向かって微笑む。
ユナの記憶の中に存在する人物。
もう会えないと思っていた肉親。
たった一人の、妹。
「……ルミ?」
「おかえり、お姉ちゃん!」
二人の再会を、少し離れたところからマルチが見つめていた。
ユナがルミと呼ぶ少女に底知れない違和感を覚えながら。
王城内は玉座の間。
既に収まるべき王の居ない玉座に座るキング・キルに縋り、さめざめと泣くデッドマスターの頭を、彼の手が優しく撫でている。
「どうしたんだい?ユーリ。私に話を聞かせてみなさい」
ユーリと呼ばれ、彼の膝に頭を乗せ嗚咽を漏らす彼女は口を開く。
「あの人が…死んだはずのあの人が…生きている気がしてならないのです…」
“ あの人 ” と彼女が言うその人物を、キング・キルは知っている。
名前を言わずとも、彼の記憶の中にその者は、居る。
デッドマスターの頭を優しく撫でながら、彼は囁く。
「ユーリ…、死んだ人間は生き返ることは無い。そうだろう?」
「ええ……わかっているわ……、でも」
君主の言葉に未だ迷いを見せる彼女に、彼はニヤリと笑みを浮かべる。
「ならば、自らの迷いを断つ為にも、その亡霊に打ち勝とうじゃないか。私のユーリ?」
キング・キルの言葉に、ユーリの瞳から落ちる涙が止まり、光が消える。
「……わかったわ。もう迷わない、必ず彼を殺してみせるわ」
「ククククク……、なら君に相応しい舞台を用意してあげよう」
笑みを浮かべる君主の手は、デッドマスターの髪を優しく撫で続けていた。
(続く)