BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR- 作:アカ狐
マイに連れられてトト達がやって来たのは、一軒の銃砲店だった。
大通りから二本ほど外れた通りで人もほとんど歩いていない狭い路地にその店はあった。
ドアを開けると鈴が鳴り、少し埃っぽい店内に客人の来店を知らせる。
店内の壁やショーケースには銃器が飾られており、店のカウンターの棚には弾丸の箱が積み上げられている。
「ターナー!また寝てるの??」
「う、うぅ~~…ん……?」
マイの大声にカウンターからうめき声が聞こえ、一人の男性が重い腰を上げて起き上がる。
「なんだマイか。客かと思ったんだが…」
「なんだとはなによなんだとは。それにお客さんが来たんだから、ちゃんと応対しなさいよ?」
「あー…はい、はい。ふぁあ…」
マイは男の尻をはたきながら接客するよう煽る。
けだるそうに大きなあくびをしながら頭をぼりぼりと掻くその男にトトが抱いた印象は、
「…アウグスト…さん…?」
「んあ?俺が誰だって?」
アウグスト・ヒュプノスに似ている。だった。
トトの言葉が耳に入ったのか、男はトトに目をやる。
「あ、す、すみません…!知ってる人に似ていて……」
謝るトトに男はガハハと笑ってみせた。
「そんなに慌てるなよ。この顔に生まれちまうと有名人に間違われるなんざ数えきれないくらいあるもんさ」
「はいはい、そういうのいいから。ナミマ、トトさん達をそこに座らせてあげて」
「うん、こっち」
トトはナミマに促され長椅子にステラを寝かせる。
眠りは深いようでまだ目を覚まさない。
改めて店の中を見回し、あまり片付いていないだなあという感想を抱いた。
マイは男の背中をべしべしと叩きながらトトの前まで押し出して、
「トト君、彼はこの店の店主のターナーさん」と言った。
「それで?君はこのお節介焼きに何を世話されたんだい?」
ターナーの言葉にマイは彼の肩を勢いよく叩き、スパァンと痛快な音が響く。
痛そうに肩をさする彼をよそにマイは事情を伝える。
「この子、トリュー先生を探してるの。行き先とか、わからない?」
「おいおい、俺はアイツの事なんか知らないって……」
「いつも旅行のお土産ねだってるくせに」
ナミマに横槍を入れられ、ターナーは嫌そうな顔をした。
嫌なところを突かれたのだろうとトトは思い、食い下がる。
「突然押しかけてきてすみません、でも、知ってることがあったらなんでも教えて欲しいんです」
トトがそういうとターナーはトトを見て血相を変えて彼に掴みかかった。
突然の出来事に全員が驚きを隠せず、マイは慌てて止めようとするが、
ターナーは「少し黙ってろ!」と先ほどの態度からは想像もつかない剣幕で叫び、
マイもナミマも押し黙る。
トトは声も上げられないまま無理やり椅子から立ち上がらされると、腰に提げていた拳銃を抜き取られてしまった。
ターナーはそれを手に取り、まじまじと食い入るように見つめる。
「……坊主、どこでこれを?」
ターナーはトトに質問を投げかける。
そのただならぬ様子にトトは慌てながら答える。
「え、えぇと……それは、おじいさんからの貰い物で…」
「何?ならお前の爺様はヘラクレス家の縁の者ということか?」
「え?え?それって、どういう……」
「コレを見ろ。これはヘラクレス家の紋章だ」
戸惑うトトにターナーは銃を見せ、グリップに刻まれた紋章を指さす。
トトの横からマイとナミマが一緒になって覗き込むが、最初に声をあげたのはマイだった。
「あっ!これ、教授の部屋の歴史書に載ってたものと同じだわ!」
「この紋章は王家の人間の為に作られた特注の品という証拠なんだ。トトくんだったか?君はこれを渡されたと言ったな?君はこの銃に関して本当に何も知らないのか?」
トトは首を横に振る。
ターナーはそうかと少し落胆した様子で銃をトトに手渡して、椅子に腰掛けて語り始めた。
「この国は革命以前は軍事政権だったが、その前は王政の国だったんだ。ヘラクレス家は数百年もの長きにわたってこの国を統治をしていた王家だ。この王家がここまで繁栄と安定が行えたのは、これのおかげだ」
そう言ってターナーは小さな石の破片のようなものを見せた。
「なにそれ?」と問いかけるマイの横で、
小さくて黒いそれを石炭のかけらみたいだとトトは思った。
「ブラックロックと呼ばれる代物だ。これは完全に “ 死んでいる ” ただの破片だが、エネルギーを生み出す、いわば魔力(マナ)の塊だ」
「魔力の…塊…」
「あくまで噂だが、こんな欠片一つでも相当量の魔力を蓄えていることになるらしい。まさに “ 賢者の石 ” ってワケだ。」
トトはにわかには信じられない様子だった。
そんな小さな石に、どれだけの魔力が存在するのだろうか。
「そろそろ話を戻していいかな?」
そう言ったのはナミマだった。
マイとターナーはすっかり忘れていたと言わんばかりにトトとナミマに目線を向ける。
「そう!そうよ!トト君はなんであそこに??」
ターナーが口を開いて何かを言いかけたのをマイが完全に遮ってトトに質問を投げかけた。
「あ、えっと...」トトはこれまでの経緯を三人に話した。
「WRS…?ジャンヌはそう呼ばれてたの?」
「う、うん…。どういう意味かは分からないけど…」
「WRS、ゾディアックの一番位の異名だ」
「ゾディアックって…革命戦争の英傑じゃない!なんでそんな人がトト君を狙うのよ?!」
ターナーの言葉にマイが声を荒げた。
「騎兵部隊、国教騎士団、ゾディアック…オマケにトリュー絡みなのか……お前グレートウォールに帰った方がいいんじゃないか??」
ターナーの言葉に、トトは俯く。
たしかにそうなのかもしれない。けど、帰ったところで、事態が好転するとは思えなかった。
「それでも、トリューさんなら何か知ってるかもと思って…」
トトがそう言ったときだった。
“じりりりりりりりりりり”
と音を立てて、店のカウンターの電話が鳴る。
ターナーは立ち上がり電話を取り、向こう側の相手と二、三、言葉を交わしてから、
トトくんに手招きをして電話を渡した。
おそるおそる電話を取り、「もしもし」と言ったトトに対し、相手は言った。
「はじめましてトト君。私はトリュー・ゲオルクという者だ。」
(続)