BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR-   作:アカ狐

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六章 ~Insane~ 6

 

「はぁ、はぁ……!」

 

ユナは走っていた。見覚えのある後ろ姿を追うために。

見覚えというよりは、正しく記憶をしているという確信が彼女にはあった。

 

忘れたくても、忘れられない。

だってそれは、

 

「ルミ!!」

 

聞こえるであろう距離にその後ろ姿を捉え、

精一杯にその名を叫ぶ。

その子は振り返り、ユナを視界に捉えると、

 

「お姉ちゃん!」

 

そう言って、彼女の胸に飛び込んだ。

死んだと思っていた、生きているはずが無いと思っていた妹が生きていた。

ユナにとってそれは、この上なく嬉しい出来事だった。

 

「会いたかった…!」

 

「うん…僕もだよ、ルミ…!」

 

やっと追いついたマルチは声を掛けられず二人の再開を見守っていた。

しかし胸に抱いた相棒の声にハッとする。

 

「グルルル……」

 

「アジーン?」

 

力を喪失し、子犬同然の姿のケルベロス。低く唸るその声にマルチは異変を察知した。

ユナが愛おしく抱きしめる少女を、小さな魔物が警戒している。

 

「(まさか…?)」

 

マルチのそれが確信に変わったその瞬間、ユナは抱きしめていた少女の影にバクンと飲まれ、影は地面に消えてしまった。

慌ててその場に駆け寄るも、影も、ユナも、少女もそこにはもう居ない。

 

「ご安心ください。彼女は我々がもらい受けるので。」

 

背後から声を投げかけられ、振り向くと金縁メガネの男が立っていた。

 

「アラン・ノウェム…!」

 

「お忘れですか?私も今はゾディアックの十一番位 “キマイラ” ですよ?できれば貴女にはそちらで呼んでいただきたいのですが?」

 

「あの子はただの民間人だ。何故あんなことを…!」

 

「質問を投げかけたいのは私です。光魔法の素養がある彼女の存在を何故ワイバーン様に報告しなかったのですか? “ケルベロス” ゾディアックの三番位たる貴女ともあろう御方が」

 

「……報告は義務ではない。お前の指図は受けない」

 

「どうでしょうね?我々ひいてはキング・キルに対する裏切り行為と言えるのではないでしょうか?」

 

キマイラは眼鏡を指でくいと押し上げ、スーツの襟元を整える。

 

「…まあいいでしょう。すくなくとも彼女は手に入れました。では私はこれで」

 

踵を返して立ち去るキマイラを見つめるマルチだったが、その足元からはらりと何枚かの札が落ちるのを見逃さなかったマルチがすぐさまライフルを召喚し身構えるのとアジーンが吠えるのはほぼ同時だった。

札が瞬時に姿を変え、黒い影かモヤのような姿をした異形の集団となって二人に襲い掛かったのだ。

 

「……やはり勘は鋭いか。だが、力を持たないお前にはもう戦う力などあるまい」

 

キマイラは振り返らずに歩き去る。

まるで少女の運命などとうに決まっているかのように。

 

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