「(ぎ…銀等級!?)」
「(ほ!本当の…!?)」
絶体絶命の危機から救われた女神官と女武闘家はソルジャーから放たれた言葉に驚き、彼の首元を見ると銀の認識票プレートが見えた。
そしてソルジャーは女神官と女武闘家に問いかける。
「大丈夫か?奴らにやられたところはないか?」
「え?は、はい! 大丈夫です」
それに女神官は返事をして、ソルジャーはそれにうなづく。
「よし…。あっ、君。これを着ておけ、裸よりはマシだぞ」
ソルジャーはバックパックから一枚の服を取り出して、それに女武闘家に渡す。
「あ!ありがとうございます!」
女武闘家はソルジャーから渡された服を受け取り、それを着込んでいる間、ソルジャーは女神官の方を向くと、何やら不安そうな表情をしていた。
「ん?どうかしたか?」
「…実は」
女神官は倒れている女魔術師の方を見る。
息が荒く、顔色が徐々に悪くなっていく様子に女神官の不安が高くなる。
「ど、どうしたらいいでしょう。このまま
「待て」
っとソルジャーが女神官の奇跡の呪文を止めて、ソルジャーが女魔術師の腹部の血を調べる。
その様子に女武闘家が問いかける。
「…ど、どうしましたか?」
「…毒だ」
ソルジャーが放った言葉に驚く女神官と女武闘家、するとソルジャーは近くに落ちてあるゴブリンの武器を拾い、刃を二人に見せる。
「奴らの武器には猛毒が仕込まれてある、毒草や自分達の尿を使って仕込ませる。雑なものだけど猛毒だ」
「「!?」」
その事に二人は背筋をゾッとさせて、今刺されてない事に幸運だと思うべきか奇跡だと思ってしまった。
しかしそんな様子に女魔術師の顔色をが徐々に悪くなっていく。
それを見た女神官は。
「っ!こ!この人の表情が!?」
「うむ、話している間に症状が悪化してきたか、だがここにいたのが俺で良かった」
そう言ってソルジャーはバックパックにある物を取り出す。
「こいつは《メガポイズンポーション》、どんな猛毒でも中和してくれる解毒剤だ。これを彼女に飲ませるんだ」
「は!はい!」
ソルジャーはメガポイズンポーションを女神官に渡し、彼女は女魔術師に解毒剤を飲ませる。
すると効果がすぐに現れたのか、彼女の息が収まっていき、顔色も良くなっていく。
「よ!良かった!」
「これでもう大丈夫だ。後はポーションで回復させておけばいい、それよりもお前達」
ソルジャーの言葉に女神官と女武闘家はソルジャーのほうを向く。
「お前達はどこから襲われた?」
「え? と…突然後ろから襲われて…」
女神官の言葉にソルジャーはすぐに察して、落ちている松明を拾い、明かりをつけて二人の方を向く。
「付いてこい」
ソルジャーの言葉に女神官は付いていき、女武闘家は女魔術師を背負ってついて行く。
するととある場所に付いて、松明である場所を照らす。
彼が照らした場所には一方通行の横に穴があった。
「見ろ、横穴だ」
「っ!そ!そんな! さっきここを通った時には何も…!?」
「も!もしかして…!」
っと女武闘家は嫌な予感を察すると同時に、ソルジャーはその様子を頷きながら言う。
「そう、これは駆け出しがよく起こす失敗だ。洞窟内では松明が唯一の明かり、それ以外の周りは何もかも暗闇。そしてこのトーテムだ」
ソルジャーは横穴のすぐそばにある骸骨のトーテムに指を刺し、そのまま語り続ける。
「このトーテムが冒険者の注意をそらし、横穴の存在を見逃してしまう。あとゴブリンどもは馬鹿だけど間抜けじゃないんだ、油断するとあっという間に囲まれしまい、先ほどのように女は凌辱されかけ、男の方は…見ての通りだ」
「「っ!うえええぇぇぇ!!!」」
その言葉に女神官と女武闘家は先ほどの光景を思い出してしまい、思わず口から液体が出てしまう。
ソルジャーは二人の見ながらもトーテムの方を見て言う。
「あとこのトーテムだが、これは『ゴブリンシャーマン』がいる証だ」
「シャーマン…?」
「ゴブリンの呪文使い。その魔術師の子よりは腕は上手だ」
ソルジャーは女魔術師の方を見ながら説明し、それに女神官と女武闘家は少しばかり間を空けながら納得する。
「そいつがここのゴブリン達を率いている。野放しにはしておけないな…、俺は今からゴブリン達を退治して来る。君たちはどうする? ここに残るか」
その言葉に女神官と女武闘家は互いに顔を合わせ、それにしばらく間を空けた後にソルジャーの方を見る。
「行きます!」
「私も行きます!」
女神官と女武闘家の言葉に納得するソルジャー、その直後に。
「…私も行くわ」
「っ!気がついた!?」
女魔術師が目を覚まし、女武闘家が女魔術師を下ろして問う。
「大丈夫?」
「ええ…、それよりも私も行く。この目で見ておく必要があるから」
女魔術師の様子と覚悟を見たソルジャーはそれに頷ける。
「…分かった。それと君は神官だったな?
「えっと…
「使える回数は?」
「三回…です」
「よし、分かった。あと付いて行くならまずこれを吹きかけてくれ」
するとソルジャーはバックパックからあるスプレーを取り出した。
三人はそのスプレーを見て頭を傾げる。
「これは…?」
「これは身体の臭いを消す超消臭スプレーだ、ゴブリン達は鼻が効いていてな、女や子供、そして小水などにもとても敏感なんだ」
っとその言葉に女神官達は思わず顔を赤くしてしまい、それにソルジャーはその様子に気付く。
「おっとすまない、失礼な発言だったな。だが心配するな、この消臭スプレーはゴブリンだけじゃなく、嗅覚にとても鋭いオオカミにも有効な物だ、使って損はないぞ。使い方は上のボタンを押すんだ、そうすれば出て来る」
そう言ってソルジャーは少しばかり準備をし始め、女神官達は自分たちの体に消臭スプレーを吹きかける。
そしてソルジャーはFiveseveNとグロック18Cをマルチツールタブレットに一旦戻し、次にマルチツールタブレットから新たなハンドガン『デザートイーグル 50AE』を取り出した。
何故この後に及んでデザートイーグルを出したかと言うと、上位種であるゴブリンシャーマンは無駄にしぶとく。FiveseveNとグロック18Cの銃弾ではなかなか死なない事がある。
この大型ハンドガンは50口径の弾を使用するため、威力がでかい上に仕留めやすいのだった。
デザートイーグルをホルスターにしまい、準備が整えたソルジャーは立ち上がって三人の方を向く。
「準備は出来たか?」
ソルジャーの言葉に三人は頷いて、ソルジャーは洞窟の奥へと進み、女神官と女武闘家、女魔術師はその後をついていった。
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洞窟内の奥へ進むソルジャー達はゴブリンの死体や仲間だった青年剣士の死体を進む中、彼女たちは一度青年剣士の死体を見て、重苦しい表情をした後にソルジャーの後を追いかける。
その時ソルジャーが皆を止めて、ある方向を指差す。
「この先が広場のようだ、俺が中に入るから皆はここで待っててくれ、あと君は俺の合図で聖光を放ってくれ」
「はい」
そう言ってソルジャーは奥へと進み、そしてソルジャーの合図が出て、女神官は奇跡の呪文を唱える。
「《いと慈悲深き自母神よ、闇に迷えるわたしどもに、聖なる光をお恵みください》…
女神官が奇跡を唱えると同時に光が放たれ、洞窟内に強烈な光が眩く。
ソルジャーはその洞窟内を見渡す、その中にはゴブリンが約6匹に人質になっていた女性が3人、その奥にはゴブリンシャーマンがいた。
「見つけたぜ…」
ゴブリンシャーマンが呪文を唱えようとした時に、ソルジャーはデザートイーグルを抜いてゴブリンシャーマンに向けて5発撃ち、ゴブリンシャーマンはそれにより撃ち抜かれて倒れる。
そして残っているゴブリン達はソルジャーに向かっていき、ソルジャーはデザートイーグルをしまって背中のロングソードを抜く、ソルジャーはゴブリン達に向かってロングソードを切りつけていく。
切り、突き、弾き。それらの剣技をゴブリン達に味あわせて行き、ソルジャーは迫ってくる一体のゴブリンに向かって切る。
すると。
バキン!!!
ゴブリンを切った途端ロングソードが折れてしまい、それをソルジャーは見る。
「あちゃ~、折れちゃったか。まあ3年間も使ってたら折れるか」
そう言っている間にゴブリンが、ソルジャーの武器が壊れたのを見て襲いかかってくる。
「危ない!!!」
女神官が叫んだのを聴いて、ソルジャーは後ろから来るゴブリンを裏拳で葬る。
その際にガントレットが壊れて、それにソルジャーはまたしても舌打ちをし、次に回し蹴りをゴブリンに放った後、腰のナイフを手にして投げつけ、ゴブリンの頭部を突き刺した。
ゴブリンはそれにより死に絶え、ゴブリンが全滅して安全を確認した後、ソルジャーは女神官達を呼ぶ。
「終わったぞ、来い」
それにより女神官達がやって来て、辺りを見渡して、囚われていた女性達の下に行く。
「大丈夫ですか? もう…大丈夫ですよ」
女神官が女性を起こしてそっと抱きしめながら慰め、その間にソルジャーはゴブリンシャーマンの下に行くと…。
「死んだフリは辞めるんだな」
「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
突如起き上がってきたゴブリンシャーマンがソルジャーに襲いかかると、ソルジャーはデザートイーグルをゴブリンシャーマンの頭部に向けて撃ち、それによりゴブリンシャーマンの頭部は粉々に粉砕される。
ゴブリンシャーマンがまだ生きていた事に女神官達は驚いて、ソルジャーは一度弾倉を交換しながら呟く。
「全く…上位種はこれだからしぶとい」
そう言ってゴブリンシャーマンが座っていた骨の椅子の奥の方へと進み、その奥に板が置かれてあった。
その板を剥がしていくと、中にはまだ子供のゴブリン達がいた。
ゴブリンの子供達を見て女神官達は驚く。
「子供…!?」
「ああ、子供は特に隠しておくからな。下手すれば50匹近くは増えていただろう、放っておく訳にも行かないな」
ソルジャーは女神官達のほうを向く。
「お前達、女性達を連れて外に出ていろ」
「え? ま…まさか。子供も殺すんですか?」
女神官の言葉にソルジャーは少し間を空けながらうなづく。
「…ああ、子供と言っても恨みを一生忘れない、油断して武器を隠し持ったりもする。そして渡りとなった者は知恵を付けて学習して行く、放置しておけないんだ、さあ…行け」
「で、でも…」
女神官が話を続けようとすると、女魔術師が肩に手を置く。
「止めておきなさい」
「えっ、でも…」
「この世界は残虐よ、それを認めていかないと、それに…身を持って知ったでしょう?」
女魔術師の言葉に女神官は言葉をなくし、その間に女性達を連れて外に出て行く。
その様子を見て、ソルジャーはある液体を取り出す。
「悪いな、お前達を生かしておくとまた次の女性の被害が出てしまうからな」
ソルジャーはその液体を子供のゴブリン達にぶっかけて、それに子供のゴブリン達は何かをかけられて驚く。
そして小さいポーチから『WPグレネード/焼夷手榴弾』を取り出して、ピンを抜く。
「次に生まれ変わる時は女のゴブリンとなって、他のゴブリン達と仲良くヤってな」
っとWPグレネードを子供のゴブリン達に投げて、WPグレネードが爆発して燃え広がり、子供のゴブリン達の身体に付いた液体にも引火して行く。
子供のゴブリン達に付いた液体は石油とガソリンの混合液体であり、よく燃えるものである。一度付いたらなかなか消えず、死ぬまで燃え続ける。
「「「GAAAAYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!」」」
子供ゴブリン達の悲鳴が外に出ていた女神官達の下まで届いて、それに女神官は思わず泣き崩れながら懺悔をするのであった。
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その後、助けられた女性達はその後連絡しておいた街の者達に神殿へと運ばれていき、その後女神官達もその後治療の為街の病院へと運ばれていった。
翌日ソルジャーは再び報告の為にギルドへと戻り、受付嬢に話をする。
「お疲れでしたね、ソルジャーさん」
「ああ…、彼女たちにとってはかなりの厳しさだった。一人は助けられなかったが」
その事に受付嬢は少しばかり重たい表情をするが、この世の厳しさに納得するかのように振る舞うしかなかった。
因みに昨日の戦闘で壊れてしまったロングソードとガントレットはもう使い物にならないとして、背中には何も背負っておらず、ガントレットもしておらず、普通のグローブをはめている。
「あ!居ました!」
っとソルジャーの耳に聞き覚えのある声がして、ソルジャーは振り向くと、昨日助けた女神官達がやって来て、ソルジャーの下に近寄ると頭を下げる。
「昨日はどうも、実は昨日のアドバイスを聞いたとおり、服の下には楔帷子を着込みました」
「こっちもです、体力上昇に役立つと言って着ました」
「こっちは呪文に影響が出るから、レザーの服を着るけど」
実は昨日、ソルジャーは女神官達に装備のアドバイスをして、身を守るための装備を選んでやった、その時に楔帷子の方が体力の上昇に役立つと言って女神官達にアドバイスをしたのだ。
女魔術師の方は仕方ないとして、その様子を見たソルジャーは少しばかり微笑む。
「…昨日の影響がお前達をちょっとばかり成長させたようだな」
「い、いえ…、それよりも今日もまた?」
「いや、今日はゴブリンじゃない。別件でビックベアーの討伐だ」
っと依頼書を女神官に見せ、それに納得するかの様子見せる女神官達、見つめてくる女神官達の様子をソルジャーは。
「…一緒に来るか? 冒険者の極意。たっぷりと教えてやるぞ」
「「「はい!!」」」
そう言ってソルジャーに付いていく女神官達。
彼女たちもまた冒険者として新たな一歩を踏み出していくのであった。