亀更新だと思いますが許してください。オナシャス
低評価でも高評価でもいいんでオナシャス。ナンデモシマスカラ
「久しぶり、義父さん」
都市郊外にある墓地にて花束を片手に、どこか冷たさを感じる自身と同じくらいの大きさの石の前に立っていた。
周りには人影はなく、ただ一基の墓石に語り掛ける。
「明日から雄英に通うんだぜ。サクッと日本一……いや世界一のヒーローになってやるからよ。見ててくれよな」
手に持った花束を墓前に供えて軽く手を合わせる。数秒の沈黙の後、ゆっくりと顔を上げ墓に背を向ける。
「それじゃ行こっか"せんせい"」
『もういいのか?』
「どうせここには石しかないんだ。きっとどっかで見ててくれるさ」
墓地の出口に向かいながら隣を歩く女性──"せんせい"と話す。
いや、これでは少し表現に誤りがある。正確には隣を歩いているのではなく、隣で"浮いて"いる。
「せんせいの様に、世の中には"幽霊"が居るんだからさ」
そう、隣にいるせんせいは俺にしか見えない幽霊だ。
その証拠に出口付近にいた親子が
「あのお兄ちゃん誰と喋ってるの?」
「きっと"個性"なのよ。指さしちゃいけません」
といったやり取りをしていた。
"個性"
始まりはどこだったか忘れたが、この世界は超常が日常になっている。
口から火を吹くことや目からビームを出すことだって今では"当たり前"になっている。
俺の個性は"憑代"
自身にとり憑いた幽霊を見ることができ、話すことができ、さらに幽霊が憑依することによって、その幽霊の個性を使うことができる。
"せんせい"は俺が物心ついた時から一緒にいる幽霊だ。人生で一番初めに見た顔もせんせいだし、孤児院にいた時も親代わりに俺を育て、守ってくれた。
俺にとっては世界一のヒーローだ。
『そういえば、世界一のヒーローになるんだって?』
「当然だろ。せんせいと一緒なら楽勝だぜ!」
『オールマイトを超えれるのか~?』
せんせいは笑いながら俺の頭を乱暴に撫でてきた。
「できる!せんせいも言ってるだろ。『笑ってるやつが一番強い』って。ならオールマイトよりも笑って、オールマイトよりもヴィラン捕まえればいいだけだ!!」
俺はせんせいに向って両手で口角を上げて作った笑顔を見せる。
それを見た先生は俺を鼻で笑った。
「お前の笑顔じゃまだまだだな!!」
「いってぇ!!」
せんせいの強すぎる平手が背中を叩いた。そのまま二人でじゃれ付いたまま帰路につく。
周りから見たら一人で騒ぐ不審者でしかなかったかもしれないが、俺にとっては楽しい日常の一つだ。
窓はガラス張り。天井はビルの2階分はあろうかというほど高く、これでワンフロアなのだから日本一の学校と言われるのも頷ける。
『これが雄英の中か……』
「せんせいも初めてなのか?」
『あぁ、私は雄英出身じゃないからな……うわっ!?扉まで大きいじゃないか!!』
「異形型の個性に配慮したバリアフリーなんだってさ」
初めて歩く憧れの雄英の廊下に、俺はキョロキョロと周りを見てしまうが、それはせんせいも同じだった。それほど新鮮であり、夢の第一歩といった感動を滲ませてしまうのだ。
「ここが1-Aか」
『クラスメイトとは仲良くするんだぞ~』
「俺は子供か!!」
『私からしたらまだ子供だよ』
まるで母と子のようなやり取りをしながら、見た目からは想像もつかないほど軽い、スライド式の巨大な扉を開ける
「先生ってどんな人だろうね、緊張するよね」
「ち、近い……」
すると目の前では真っ赤になりながら両手で顔隠している髪の毛がモジャモジャな少年と、少年に話しかける"丸っこい"印象を受ける少女が道を塞いでいた。
「その……なんだ、通っていいか?」
「あっ邪魔だったよね!すぐに退くね!!」
「ス、スイマセン!!」
「そんなビクビクしなくてもいいて、同い年なんだからよ」
「私は麗日お茶子、ヨロシクね!」
「あ、僕は緑谷……です」
「俺は──「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」」
丸い女子こと麗日とモジャモジャこと緑谷に自己紹介をしようとした瞬間、第三者の声が割り込んでくる。
声のした方向──真後ろを向くとそこには……芋虫?
「ここは……ヒーロー科だぞ」
ヂュッ!!と音を立てながら芋虫はゼリー飲料を飲み干していた。
のっそりと芋虫は立ち上がりながら言葉を続ける
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。君たちは合理性に欠くね。担任の相澤消太だ、よろしくね」
芋虫は脱皮……ではなく寝袋を脱ぎながら駄目出しと自己紹介を済ませる。
隣に浮くせんせいも
『これが担任……プロヒーローなのか?時代は変わったな……』
と我らが担任様の姿にドン引いている。
それもそうだろう。伸ばしっぱなしの髪の隙間から見える目は隈が色濃く残り、常に充血している。それに加え教職ともあろうに無精ひげを蓄え清潔感とは無縁の見た目をしていた。
「早速だがコレ着てグラウンドに出ろ」
そういって担任が差し出したのは体操服だった。
「「「「個性把握……テストォ!!??」」」」
どうやら入学式やガイダンスをすっ飛ばして俺たち1-Aはテストを行うらしい。
雄英は自由な校風が売りで、それは教師側も自由にしていいという事なんだとか。
『入学式がない?!コイツの晴れ姿が……』
俺にとっては入学式はただ眠くなるだけだからどうだっていいが、せんせいは大変楽しみにしていたらしい。両腕両膝を地面につけ、これ以上ないくらい落ち込んでいる。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ個性をつかってやってみろ。円からでなきゃ何してもいい。早よ。思いっきりな」
担任がボールを投げ渡した。
「んじゃま……死ねぇ!!!!」
爆豪ってやつが見本となってソフトボール投げをする。ボールを投げる瞬間、爆豪の手からは爆炎と轟音が生じ、物凄い勢いでボールの姿が小さくなっていく。
結果は705.2m
このデモンストレーションに生徒達ははしゃぎ、面白そう楽しそうだと言っていると、担任の雰囲気が変わった
「面白そう……か。三年間そんな腹積もりで過ごす気か?よし、トータル最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」
「「「「はぁああああ!?」」」」
こうして俺たちの第一の試練が、入学初日から始まった。
第一種目の50m走を行うため白線の敷かれたトラックに向ってると、せんせいが話しかけてきた。
『このテスト私にやらせろ』
「なぜ!?」
『私の個性はお前の個性みたいなものだろ?"個性把握テスト"なんだからいいじゃないか』
「……本音は?」
『入学式を無くしたアイツの度肝を抜かしてやる!!』
本当にこの人はプロヒーローだったんだろうか……。
昔からせんせいは俺にとっての理想のヒーローだが、親代わりだったせいか偶に親バカを発動することがある。
「明日に響くから60%までなら」
『任せときな!私がテストで1位にしてやる!!』
せんせいが飛び切りの笑顔を向け、俺に"重なって"いく。
胸の内側から日向のような温かさが広がっていき、ある一定のラインを超えたとき全身をお湯に浮かんでいるような感覚が包む。
『よし、異常はないな』
「ケロ、どこか体に違和感があったのかしら」
せんせいにからだを預け終わったとき、カエルのような見た目をした少女に話しかけられた。
しかし体の主導権はせんせいにあるため俺は答えることができない。
『なんでもないよ、心配してくれてありがとう。えーと…蛙吹さん……だったかな』
「梅雨ちゃんとよんで」
『それじゃ梅雨ちゃん、除籍されないためにも急ごうか』
「そうね」
そういって二人は50m走の順番にならんだ。
現在、テストは第4種目まで終了していた。その成績は……
第1種目:50m走──1位
第2種目:握力──1位
第3種目:立ち幅跳び──1位
第4種目:反復横跳び──2位
とほぼ全てでトップに立っていた。
今行っているのは第5種目のボール投げ。
流石のせんせいでも無限なんて記録は出せないよね
『く……なぜかバカにされている気がする』
麗日が出した驚異的な成績を前に悔しそうにするせんせい。無限という記録が出てしまい俺達の記録は2位になってしまった。
次は……緑谷か
『焦っているな……あの子』
「たしかに。緑谷君はこのままだとマズいぞ」
「ったりめーだ!無個性のザコだぞ!」
俺とせんせいの会話にメガネ委員長っぽいやつとツンツン頭で常にキレている男が混ざってきた。まぁ彼らには俺の声が聞こえていないからしょうがない。
「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」
「は?」
緑谷はボールを投げる体制に入り、その腕には何か力をためているように見えた
──が、しかし
「46m」
その結果は平凡と言わざるを得ないものだった。
『……あの個性』
……?緑谷は個性を使ってないだろ
視界の端では緑谷と相澤先生がなにか話していた。どうやら緑谷が個性を使おうとしたところを相澤先生の個性で消したらしい。
『消される前の一瞬だけ腕に個性を使っていたよ』
ふーん。なんて個性なんだ?
『あれは……いや、ナイショだ』
なんで!?
『お前が一人前になったら教えてやるよ』
そう言ったせんせいは俺の顔で優しく緑谷を見つめていた。
もう一度やり直した緑谷の成績は無個性とは思えないほど良く。なぜか緑谷に襲い掛かったツンツン頭を相澤先生が拘束していた。お疲れ様です。
一悶着あったものの無事個性把握テストは終了した。結果は1位です。やったね。
除籍はどうやら嘘だったらしい。身勝手だったり嘘ついたり……本当にこいつは教師なのだろうか。
ついでに放課後オールマイトに呼び出された……なんで?