俺と"せんせい"のヒーローアカデミア   作:thekey
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本編を書きながら出てきたアイデア
こっちの方が面白そうと思いながら書きました。
本編と設定が似ているため、また新しく始めるのもどうかと思って番外編として投稿しましたが、好評だったら別の小説として上げます。
そうなったら本編は……その時次第。



番外編
番外編1


「──っは!?」

 

上半身を勢いよく起こし、必死に貪るようにして体に酸素を送り込む。過呼吸ではないのかと心配されそうなほど肩は上下し、胸は膨らんでは萎むことを繰り返している。段々と体は汗を流し始め、流れる空気にあたり肌寒さを感じさせた。肌着がべったりと貼りつき不快になったところで額の汗をぬぐう。その時ふと思う。

 

──私は何故起き上がっている

 

現在保有している最新の記憶は、俊典──オールマイトへと未来をたくし、オールフォーワンとの戦いに敗れ、殺された時だ。今でも体から体温が奪われ、死が近づいてくる感覚を鮮明に思い出せる。

 

ようやく呼吸が落ち着き始めたところで、一番初めに気付いた違和感は自身の手であった。冷静になった思考と視界で両の掌を見つめる。

 

──小さすぎる

 

今まで何体ものヴィランを倒し、幾度の試練を乗り越えてきた体には到底思えないほど、その手は小さく、ふっくらとしていて傷一つ見当たらなかった。それはまるでヒーローの手ではなく、守られるべき子供のモノのようだった。

 

「何が──ん?!」

 

数十年も使ってきた体だ。自分の体の形や声でさえ無意識でだって解る。なのにそのどれもが記憶と違っているのだ。今発した声でさえまるで幼児のようではないか。

 

──幼児?

 

体に掛かっている布団をバサっと勢いよくめくり、買った覚えのないフカフカの布団の上に立ち上がる。そこにあったのは幼稚園児ほどの大きさしかない体だった。

本来大人の、それも鍛え上げられた体での感覚に則り立ち上がったため、未だしっかりとした筋肉もついておらず、バランスの悪い体型の幼児であるこの体は思わず尻餅をついてしまう。

 

幼児1人が使うには大きすぎるベット。所々に子供用のぬいぐるみが転がっているが、目に入る家具はどれも大人が使うであろうものだった。その中には少し高級そうな意匠の施された姿見があり、その中には尻餅をついた女の子がこちらを見ていた。鏡の中の女の子は私が右手を上げると同じく右手を上げる。さらにその手を左右に振るとその少女も振り返してくる。

 

「な──なんらって!?」

 

体が幼児であるために舌足らずな口で叫んでしまう。つまりはこの鏡に映る少女こそ私の姿であるということだ。ただし、問題はこの見た目は私が幼児であった時とは全くもって違うということだ。

 

現実に起こっていることが頭の中で処理できないでいると、突然扉が開かれこの体の少女と似た雰囲気を持つ女性が入ってきた。

 

「付喪おきなさ──、あら、もう起きてたのね」

 

「う、うん」

 

「それなら着替えて朝ごはん食べなさい。ご飯食べたら行くわよ」

 

「い、行くって……どこに?」

 

「何処って昨日言ったじゃない」

 

この子風邪かしら……。と言いながら目の前の女性は私の額に手を当ててくる。子供の体温が高いからか、ひんやりとした感触に包まれて心地よかった。久々に感じる人肌に涙腺が緩みかけた。

 

「まぁ風邪ならついでに診てくれるから丁度いいわね」

 

と言い、額に感じていた温度が離れていく。名残惜しく思っていたために「あっ……」と声を上げてしまった。

 

「個性検診──行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

「お子さんは今3歳で?」

 

「ええ、来月で四歳になります」

 

今、私は女性──この体にとっての母親に連れられて病院に来ていた。やけに眼に刺さる白さと消毒液の匂いに、私は病院という場所があまり好きではなかった。

目の前にいる白衣を着た初老の男性が何やら紙状のものを取り出すと、横にあったホワイトボードに貼り付けていく。それはレントゲンだったようで、足の骨が映っていた。

 

「四歳になるまでには個性が発現するんだけどね……。付喪ちゃんは小指の関節にも問題はないようだし」

 

どうやら私の足の骨だったようで、先生はそれを睨みながらう~んと唸る。

先生の言葉を聞き、私は閃いてしまった。私が今この子の体を動かしているのはこの子の個性だと。

 

「あ……あの!」

 

自分でも驚くほどの声を出してしまった。子供が突然大声を上げ、目の前の医者はビクりと肩を震わせた後に此方を向く。横にいた母親も此方を向き、話しかけてくる。

 

「どうしたの?」

 

「何かあったかね?」

 

「あの、個性……ある…かも」

 

「本当!?」

 

「どんな個性かね?」

 

大人二人にずいっと迫られ思わず身を縮ませてしまう。この場で真実を話そうと喋ろうとしたが……うまく声が出ない。それでも尚、意を決して話そうとする。

 

「私の個性は──、力が強くなること……です」

 

その小さな口から出たのは嘘だった。どうして咄嗟に嘘をついてしまったのか分からなかったが、段々と自分の本心が分かってくる。

 

──怖かったのだ。

 

生前、ヒーローとして生きてきた自分が3歳の少女の人生を横取りしてしまったことが。それを誰かに知られてしまうことが。

自分はここまで弱い人間だったかと打ちひしがれてしまう。

 

「ほほう、それでは検査してみようか」

 

私の内心をよそに、医者はいそいそと個性を測るための準備をはじめ、隣にいる母親はとても嬉しそうに私を抱きすくめていた。

 

 

 

「かなり簡単な測り方だけどね、身体強化系の個性は握力で分かるものなんだよ」

 

医者は私に子供用の握力系を差し出してくる。学校で使うような無機質なものではなく、色はパステルカラーが使われ、数値を出すモニターの横には何かわからないキャラクターが大きく載っていた。

 

「この頃の子供の握力は5㎏もないからね、個性があれば平気で成人男性くらいの数値を出すんだよ」

 

それじゃここを握ってくれるかな?と医者は優しく握力系を握らせてきた。

 

思わず口に出した嘘に、私は焦りながらもどこか確信を持っていた。私本来の個性"ワン・フォー・オール"が使えると。胸の奥にある、温かくも力強いものを感じる。

この個性とは受け継いでから死ぬその時まで付き合ってきたんだ。まだ未成熟なこの体で全力を出せば無事では済まないことは分かっていたし、この体で出せる限界を調節できる自信もあった。

 

「──ん」

 

と右手に力を籠める。その時に使う個性は全力を100%とした時の0.5%程だった。

 

「おぉ!」

 

「まぁ、すごいわ!」

 

私の右手に握られている握力計をのぞき込んでいた二人は感嘆の声を上げる。そこに書かれていた数値は

 

「38㎏──確かに身体強化系の個性のようだね」

 

「良かったわね付喪!!」

 

喜びを表す二人に合わせ私も笑顔を浮かべるも、内側では泥濘のような後悔を感じていた。

 

 

 

 

 

3歳──それも4歳になる頃といえば幼稚園や保育園に通っていそうなものだが、どうやら今日は休日だったそうだ。だからこそ個性検診を今日にしたのだろう。

 

病院から帰った私はリビングであろう場所の、大人が3人ほど座れそうなソファに寝ころんでいた。この場所から動かないのはどうしてもこの家が他人の家である感覚が抜けず居心地が悪いのと、母親が昼ごはんを作るというので待っているのだ。

 

母親は忙しなく動きながら私の方を一瞥し、寝ころぶ私を退屈していると勘違いしたのか46型テレビの電源を入れた。

 

昼ごはんを作りながらも、娘を思いやった行動ができる事に驚きを覚えるとともに過去の自分を思い出させた。私も母であったが子供の世話をするどころか突き放す始末。今思えばこんな些細なこともしてやれなかったと際限のない落胆に呑まれる。

 

ぼーっとテレビを眺めれば、そこに映るのは昼のニュース番組の生中継であった。その内容はヴィランが子供を人質に銀行を占拠しているというものだ。

私があれほど頑張って来たことは何だったのか。世界は何も変わっていないのかと、より一層のダウナーに入っていると、ヴィランが立て籠もっていた銀行に"青色の何か"が突っ込んでいった。数秒の後、その青いナニカは片腕にヴィランを米俵のように抱え、もう片方に子供を肩車しながら言った。

 

『私が来た!!!』

 

「──ッ!とし……のり」

 

そこに映っていたのはかつての愛弟子の姿だった。あの時よりも7割増しで筋肉と輪郭が太くなってはいたが見間違うはずがない。この国の柱を目指し、私が未来を託した少年。彼が現れると同時に銀行を遠巻きに囲っていたマスコミや群衆は拍手喝采を起こしていた。

 

『No1ヒーロー"オールマイト"が颯爽と現れ、瞬く間にヴィランを倒し少年を救助しました!流石は"平和の象徴"です!!彼の活躍に市民の興奮が止まりません!!!』

 

テレビの中のリポーターが、興奮のせいか早口で捲し立てながら言う。

 

──平和の象徴

 

そうか、あいつはそう呼ばれるまでに成長したのか。……よかった。

今まで感じていた不安や後悔が一瞬で取り払われた。愛弟子の姿を見て不安が消えたのなら、私もある意味救われてしまったのかもしれない。

 

「あら、オールマイトじゃない。流石はトップヒーローよね」

 

昼ごはんが出来上がったのか、母親は机に湯気の立つ昼食を配膳しながら話しかけてきた。

 

「そうそう、付喪の個性もオールマイトみたいな個性だからプロヒーローになれるんじゃないかしら!」

 

キャーっと浮つきながら小躍りする母親。みたいというよりは同じ個性……それも私が渡した個性なのだから当たり前だ。内心苦笑いしながら私は母親に話しかけた。

 

「お母さんは……私にヒーローになって欲しいの?」

 

「勿論よ!誰もが憧れる職業じゃない!!」

 

そうなったらヒーローの母として取材されちゃったりして―、と嬉しそうに台所に戻っていく。

 

そうか。今ではヒーローは皆から憧れられる存在となっているのか。これもオールマイトの成した事なのかもしれない。この時、私は自分の進むべき道を決めた。

 

「お母さん」

 

「何かしら?」

 

「私、ヒーローになるよ!」

 

「まぁ!嬉しいわー!!」

 

母は私を両腕で抱きしめ、両腕で持ち上げながらぐるぐると廻る。少しの息苦しさを感じたが不快感はなかった。

この子が何を望んだかはわからない。だがこの子の…そしてこの子の家族のために出来ることを精一杯やろうと私は決心した。

 

 




使ったアイデア
・憑代という個性が幽霊に完全に乗っ取られる。自我はない
・志村菜奈転生?憑依?モノ
・個性を偽る
その他etc

シガラキの真実を知ったり、デクと会ったりした時の反応が楽しみすぎて仕方ない。




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