手違いで死んで神様転生したら更に手違いで問題児な娘の背後霊になったので一夏と全力でくっつけます 作:ACS
明らかに場が静まり返ってる、一夏の周りで見張りをしてた誘拐犯達も一夏もぽかーんとした顔で惚けてるし、俺もどう言うツッコミを入れたら良いのか分からん。
と、悩んでた矢先に名無しが駆け出し、先頭に居た男に向けて間の抜けた声で『……らいだ〜き〜っく』とか言って飛び蹴りをぶちかます。
そしてそのまま周囲の敵に連続してCQC、まるでスネークの様にバタバタと小柄な少女が大人をなぎ倒して行く、この娘俺の体になるはずだったチートボディを楽しんでやがるなぁ……。
あっという間に武装した数人の意識を奪った名無しは、周辺の無事を確認してから彼らの持っていた銃を解体しつつ再び一夏に向かって振り返りポーズを決めた。
「……正義のすぺしゃる美少女、推参」
「いや、あの……」
「……推参」
「あっ、うん」
一夏、お前の困惑は手に取るように分かるぞ、誘拐されたらめちゃくちゃ強い美少女が現れてアホみたいな事言いながら助けられるとか意味わからんわな。
そもそもその助けに来てくれた女そのものが訳わからんし、助かった安堵感よりも混乱が大きいだろうね。
「た、助けに来てくれたのか?」
「……そうなの?」
(一夏の前で俺に聞かないでくれる? 頭おかしい奴だと思われるからさ)
「な、なんか調子狂うけど……助かったよ、いきなり後ろから殴られて攫われたんだ、なんなんだよコイツら」
「……拘束剥がすから」
「あ、あぁ」
そう言って名無しは一夏の背後に回って手錠を外そうとしてたんだけど、鍵穴が埋められたようで少し考え込んでおもむろに一夏の手首の関節を外した、本人に何の相談も無しに。
「いってぇぇぇえ!? おいイキナリ何を––––」
「……反対もやる」
「はあ!? ちょっと待っ––––ッおぉぉお!?」
(一夏、お前……不憫な奴だな)
名無し以外には聞こえないけどそんな風に慰めながら肩に手を置く、もうね俺この娘のお守りが嫌になって来た。
からんからんという軽い音と共に一夏の手から抜き取った手錠を投げ捨てた名無しは、そのまま今さっき外した関節を無理矢理嵌め込んでまた一夏に絶叫を上げさせた、鬼だこの娘。
「うっ、くっ、あ、ありがとうな? けどもし今度同じ目に遭ってる奴がいたら、もう少し優しい助け方してやってくれ」
「……?」
「ま、まあいいや、とりあえず名前を教えて––––」
「……しっ、誰か来る」
「げっ、マジかよ」
(そら断末魔みたいな声あげてりゃなぁ……)
戦闘行為に入ったら少しは真面目になるのか、名無しはそのまま追っ手が来る前に一夏を連れ去て表に止まってた車に乗り込む。
連中が迂闊なのかこれからまた移動の予定が有ったのか運良く車にキー自体は刺さってる、俺は前世で免許持ってたら運転を一応教えられる、教えられるんだけどコイツ話聞いてるようで話聞いてくんねぇからなぁ……。
(よし未成年!! ここは大人の言う通りに––––)
「……大丈夫、動かし方知ってる」
(ばっか!! さっきのバイクも同じ事言ってたろ!?)
「なぁ見た感じ俺と年近そうだけど、車運転した事あんのか?」
(そーだよ!! AT車ならまだしもコレMT車だぞ!? ガキに運転できるか!!)
「……できるもん」
(拗ねてんじゃねぇよ!!)
「じゃあ頼む!! 千冬姉に迷惑かけたくねぇんだ!!」
(馬鹿お前この超特攻暴走女に頼るな!! えらいことになるぞ!?)
「……頼まれた」
俺の頼みも虚しく一夏の言葉に珍しく機嫌を良さそうにしながらエンジンをかけてアクセルを全力で踏む名無し、AT車ならそれでも良かったけどMT車はそれじゃダメなんだよ……。
呆れて色々言いたい事もあったけど、今はそんな余裕も無いので首を傾げてるコイツにMT車の動かし方をサラッと説明したんだけど、口頭での説明だけであっさり動かし方を理解しやがった、バグキャラかよ。
ただやっぱり一旦もたついたからか、追い付いてきた増援から容赦無い銃撃を受ける事になった、一夏が居てもお構い無しかい!?
クッソ荒い運転で逃げながらも弾が届かない位置まで離れたところでホッと一息付いたのか、一夏が改めて名無しに名前を聞いた。
「えっとさ、名前聞き忘れてたから今聞いてもいいか?」
「……名前は––––」
(名前は無い、呼びたかったら名無しでいいとかは無しだからな? 何でもいいから適当に言っとけ、絶対その方が楽だから)
「……名前はカーネル・サンダース」
「そっか、いい名前だな……って!! んなわけねーだろ!? お前どっからどう見ても女の子じゃねぇか!!」
おいバックミラー越しに俺を睨むなカーネル・サンダース、何でもいいとは言ったけどさっき過ぎたチェーン店の人形から取ったお前が悪いんだぞカーネル・サンダース。
「……じゃあ––––」
「じゃあドナルドってのも無しだからな? 今おもっきりハンバーガーの店ガン見してたの見逃さなかったからな?」
「……フィア」
「へっ? あ、ああ悪いちゃんと教えてくれる気だったんだな、疑ってごめん」
「……フィア・フィルツ、名前」
「おう俺は織斑一夏、さっきも言ったけどありがとなフィア!!」
そう笑顔で一夏はお礼を言ったけど、コレも絶対偽名なんだよなぁ……。
確かこの娘誕生日が四月十四日だったから多分それをドイツ語に直したのをもじったんだろう、中学の時にドイツ語の数字の読み方覚えてたから何となく分かった、まぁ一番マシだわな。
その後俺達は一夏を探していたドイツ軍に無事に見つかり、一夏も無事千冬に引き渡される事になった。
ただやっぱり原作通り千冬は棄権してしまったらしく、その事で一夏は泣いて詫びてはいたが一応めでたしめでたし……かと思ってましたまじで。
「一夏を助けてくれた礼がしたいんだが……生憎持ち合わせが無くてな」
「……えっ? 賞金は? ご褒美は? ご飯は?」
「その……すまん」
「……お腹、減った」
へたりと空腹に負けて弱々しくその場に座り込む名無し改めフィア、俺はコイツに八つ当たりで除霊されかねないので思っ切り離れた場所に居たんだけど、保護されるまで車中で話してた身の上話を知っていた一夏がとんでもない事を言い出した。
「だったらさ、お礼って言っちゃ何だけど俺ん家で居候しないか? 両親居なくて変な組織から逃げだしてホームレスって言ってたし、良いだろ千冬姉?」
……流石鈍感主人公、実質同棲宣言しやがったぞ?
いや待てよ? コレはこの娘のお守りを押し付けるチャンスじゃね? 俺幽霊だから色々と恋敵偵察できるし、男視点からの助言も出来るからワンチャンヒロインレースで勝てるんじゃね?
よし決めた、俺は全力で一夏とフィアをくっ付ける。
四月で4だからフィーアじゃバレるからフィア、同様に14でフィルツェーンだとバレるからフィルツ、なんと単純な名前でしょう(白目