この度は自身の勝手な都合上小説を削除し、なんの連絡もなく退会したことを、深くお詫び申し上げます。
そのような思いの中こうして再び執筆を行おうと思ったのは、やはりどこかで小説が完結しなかったことを後悔しているからかもしれません。
今作『落ちこぼれのつわもの』は、前作『ドロップアウトボーイ』とは主人公が違います。ですが、最弱というところは変わりません。
そして着目していただきたいのは、なぜ主人公が最弱なのか、というところです。
今作はそういったところも含めて書いていき、主人公がどうやって困難を乗り越えていくのかをお楽しみしていただければと思います。
では、相変わらずの文章力ではありますが、どうぞよろしくお願いします。
ヒーローになりたかった。
小さい頃からずっと観ていた、仮面をつけて悪い怪人と戦うヒーロー。
どんなピンチなときでも、諦めずに戦って、そして勝つ。そんなヒーローに憧れていた。
それを中学三年の受験という、初めて人生の岐路に差し掛かるときにまで本気で考えていた。なぜなら、
友達がそれぞれの夢を語る中、俺は自信を持って言い放った。
世界の誰もが認めるヒーローになる、と。
「──で、俺が思うに星伽さんはお、俺のことを……す、好き、なんじゃ……」
「書類運ぶの手伝ってもらっただけだろ? そりゃ考えすぎだ」
「や、やっぱそう……だよな」
校長の長い話がメインといっても過言ではない始業式。それを終え、2年A組の教室で俺の真意を素直に受け取った隣に座る男は、机にだんだんと頭から崩れていった。某ツンツン頭の少年と同じ髪型をした大柄な体型をしている彼は、武藤剛気。俺の友人だ。
「まあでも……少なくとも、嫌われてはない。だから、めげずにアタックし続けてみれば?」
「そ、そうだな……うん、そうだそうだ! 進んでないだけで戻ったわけじゃねーもんな!」
「そうだよ、だから諦めずにがんばれ」
「おう!」
と、機嫌を元に戻すことは簡単にできる。それはこいつが知らないで、俺が知っていることがあるからだ。
正直言うと、星伽さんという人には好きな人がいる。だから武藤がどれだけアタックしようが無駄なこと。勝負はすでに決まっているんだから。
知らない方がいいこともある、この言葉はこいつのためにあるのかもしれないな。
なんてことを考えながら、意識を武藤から窓の外へと向ける。窓から少し離れたこの場所でも、その柔軟な暖かさのある太陽光は照らしてくる。桜がひらひらと舞い散るのを見ると、つい考えてしまう。
──また人が死にに来るのか。
普通を望めばよかった、変化なんて求めなければよかった、知らなければよかった。
「…………くそっ」
悪態をつくと、机に顔を沈ませた。
また思い出した、【あれ】を。これで何度目だろう。
目を瞑ると、闇が見えてしまう。そこには【あれ】がいて、俺に語りかけてくる。
嘘だ、【あれ】は嘘だ、作り出した悪い夢だ、と。そう言い聞かせる。これも何度目だろう。
やがて、【あれ】は深い深い闇へと沈んでいく。そうしたあとに、意識も一緒に沈んでいく。
ああ、これもまた──何度目なんだろう。
「──先生、あたしあいつの隣に座りたい」
教室に静かに甘い、しかし強力で騒がしい爆弾が投下された。それはすぐさまこの場にいる全員を被災させると、彼らの穴という穴に爆煙が吸い込まれていった。
そのうちの一人である俺は、某夢の国にも似た世界、もとい居眠りから強制帰還された。
まだ朝の八時四五分と、これからすばらしいともそうともないとも言える一日が始まろうとしていた時だ。とにかく、それはそれは強力な爆弾が投下されたのを鮮明に覚えおり、多分これは墓穴まで一緒についてくるはずだ。なにせ今まで生きてきた中で初めて(テレビでは何度かあるが)聞いたセリフだったからな。
そんなセリフを吐いた奴はどんな鋼の精神を宿している奴なのかと、某ショタ好き黒魔術師の目を思わせるほどに、後頭部を叩けば飛び出すほどに目を凝らして見てみた。
予想の斜め上をいくとは、まさにこのことを言うのだと実感した。まるで遺伝子にラメの情報が入っていたのかと思わせるほど、輝々としたピンク色のツインテール。女性の平均身長を下げている原因を思わせるほどの、合法ロリな体型。
そして顔だが、両目がかわいくつり上がっている。まるで猫が怒ったときみたいだ。
こんなかわいい子が、そんな超ド級のセリフを人差し指突き出しながら言ったのかと思うだろうが、事実である。
と、人は見かけによらないことをよく理解できたところで、今度は別の声が聞こえた。
耳をハンマーで叩きつけられるような、低く野太い声。
「き、キンジィ! なにがあったか知らんが、お前にも春が来たみたいだぞ! せんせー! 俺転校生さんと席変わりまーす!」
それは武藤の思いやりなのだろうが、その矛先を向けられた相手は感謝するどころか、今にでも呪い殺すと言わんばかりの目つきをしている。
ただでさえ周りから根暗だと思われているんだ、余計に恐いぞ。
と、アイコンタクトを送っているが気づかない彼は、遠山キンジ。目元まである黒髪に、そこそこイケメンの部類に入る顔立ちをした、俺の友達だ。
「あらあら、じゃあ武藤くん、お願いね」
と、呑気に返す淡い褐色の色をした髪の人は、高天原ゆとり先生。このクラスの担任だ。
だがどこか抜けている。この状況に対して何も言わず、ただあのツインテールの望むがままにしようとしている。教員採用試験の試験管全員じいさんだった気がする。
なんてことを考えているうちに、隣にいた武藤が席を移動していて──てかよくよく考えたら俺も隣じゃねーか。
快く移動した武藤に礼の一つもせず、ツインテールは席へと向かう。まるで、自分の言ったことが当然とも言わんばかりの態度。王様かお前は。
だが、席へと向かうはずのツインテールはキンジの席へと近づくと、
「キンジ、これさっきのベルト」
「っ!」
バッ、と。あからさまに何かあったのを隠そうという魂胆が丸見えの素振りが、クラスメイト全員の目に映った。無論、俺にも。
そしてこの嬉々とした重苦しい空気の中、声が上がった。
「わかったわかった! これぜっっったいにフラグバッキバッキに建っちゃってるよ!!」
と、まだ幼さが残っている声を持つのは、峰理子。身長はあのツインテールとさほど変わらないが、その豊満なボディとは裏腹に、声と同じく幼さが残っている顔とのギャップが凄まじい、俺の友達だ。
「キー君はベルトをしていない、そしてそれをなぜ転校生さんが持っているか! これ謎でしょ謎でしょ! でも理子はわかっちゃった! 推理できちゃった!」
立ち上がり、高らかにそう言い張る理子。こいつの考えることだ、なんとなく予想がついた。
ベルトを取るということは、ズボンを止めることをやめるということ。つまりは脱ぐことを意味している。
ツインテールが異性のベルトを持っている基本的な正当は、その異性が兄妹か親子か。
この瞬間親子という可能性はなくなった。そして兄妹かという可能性だが、それはありえないだろう。
なぜならそれは、キンジの家族構成に関して俺がある程度知っているからだ。その中に、妹という存在は存在していない。
以上から新たに別の可能性が浮上する。
血縁関係のない異性同士で、ベルトを取るなにかかとはつまり。
「つまり!! 二人は今、あっつーい恋愛の最中なんだよ!!!!」
次の瞬間、黄色い歓声という炎が発生した。発生した炎は互いに吸い込まれるように一箇所に集まった。
色は違うが炎は、某魔女狩りの王のような人型になると、あいつ───遠山キンジという男のもとへ襲いかかった。
炎がキンジを飲み込んだ。今日が初対面の奴もいるのにこの短時間で一致団結するなんてことは、過去の学校生活を振りかってみても類を見なかった。
飲み込んだ炎は、丸太二つ分はあろう剛腕でキンジを握り締め、レモンを絞るかのように情報を聞き出そうとする。
それに対しキンジも対抗するようで、目を瞑り耳を塞ぎ口を閉じ、完全防御体制をとった。
その装甲がいつまで持つかは時間の問題だろう。どうやらキンジは今日が(社会的に)命日らしい。
と、墓石の値段を思い出そうとしたその時。
二発。
「…………おいおい」
呟き、銃弾の行方を追う。一発は黒板に、一発は後ろの壁に。それぞれ一つずつ、風穴が開けられていた。
これにはさすがの理子も、クラスメイトも、沈黙という選択以外ありえなかった。
犯人は一目瞭然。転校生のツインテールだ。それを裏づけるように、両手にはそれぞれ銀と黒の色違いの拳銃(正確にはM1911、通称コルト・ガバメント)が握られている。
そして顔が紅潮している。恐らく、あれだけはやし立てられたのがよっぽど気に障ったんだろう。
まあ無理もないよな、あれだけやられちゃ。
「──れっ、れれれれん、れんれんあいだ、だなんて! く……くっっっだらない!! 覚えておきなさい! もしまたそんなこと言うやつ見つけたら、風穴開けるわよ!!!!」
と、大胆にも恋する乙女に宣戦布告したツインテール。
それにしても。……風穴開けるわよ、か。
「…………っす」
「っ! 何笑ってんのよあんた!」
ガチャ、と。銃の照準が変わる音が聞こえた。
これ、完全に俺だよな。まあ聞こえるわな、真隣だし。
逃げ道はないと考え、俺は素直に椅子から立ち上がると、
「いや、ちょっと思い出し笑いしただけだって」
「嘘ついてんじゃないわよ!」
「なんで嘘って決めつけるよ?」
「勘よ! 文句ある!?」
大ありだバカ。感だけで決められるなら、この世から論より証拠って言葉が消えるぞ。
「だいたい何よあんた! あたしはあんたに構っていられるほど暇じゃないのよ!」
「知らんがな。それに俺は構ってくれなんて頼んだ覚えなんてないぞ」
「っ!」
「だろ?」
と、ここまで来てようやくことの重大さに気づいた。
ただでさえ重苦しい空気を、俺が介入したことによってさらに暗雲まで呼び込んだようだ。
チラと周りへ目を移してみても、誰も助け舟を出せる状態じゃない。というか、出す気なんてないんだろうな。
まあ俺も同じ立場ならそうするよ、この状況じゃあそれが一番妥当な判断だろうからな。
さて、問題は相手が少しだけでも気分よく終わってくれることだよな。
…………いや、これ無理ゲーじゃね?
と、思っていたが、どうやらそうでもなかった。
「もうあったま来た! あたしと勝負しなさい!」
「…………いいぞ、それで気が済むなら」
まあ、これが最善の策だよな。
「あたしはアリア、神崎・H・アリアよ!」
自分の名を、自信以外必要ないと言わんばかりに、高らかと言い放った。それはまるで、絵画をコンクールに出展するように、自分の名をこの場にいる全員に刻み込むようだった。
自分の名前が嫌いな奴はなかなかいないだろうが、これはまた随分と自分の名前に自信やら誇りやらを持ってるみたいだな。
と、相手の今までと違う態度に関心しつつ、俺も自分の名を名乗った。
「俺は尾張、尾張幸一。この東京武偵高では……大勢の奴らに名の知られている武偵だ」
そこでツインテール……神崎の決めセリフ(?)を思い出し、こう付け加えた。
「覚えておけ。俺は最初から最後までクライマックスだ、手加減なんてしない」
「上等、むしろ手加減なんてしたら風穴よ」
「ああ」
と、短く返事を返した。自分の思う通りにことが進んだことが気分をよくしたのか、神崎はそれ以上何も言わず、自分の席へと何事もなかったかのように座った。
それを合図にしたように、取り乱していた高天原先生も元の調子を取り戻したようだ。
どうやら丸く(少しほどデコボコしているが)収まったようだ。