だた持ってるんだ、持ってるんだよ。
強いのにいらないっていうね。
てことで始まります。
武偵とは、昨今から増え続ける凶悪犯罪に立ち向かうべくしてつくられた国家資格であり、武装探偵の略称。
武偵になると武偵免許が手に入る。それを所持するものは武装を許可され、逮捕権を許可されと、警察に近い存在へとなることができる。
ただし武偵が動くのは、金が入る仕事のみ。金さえ払えば、彼らの法(武偵法)に触れない限りはどんな仕事でも請け負う。そのため、武偵は国家資格とは名ばかりの『なんでも屋』という側面がある。
要するに、誰もがみんな正義のヒーロー(金銭的な部分を除いては)になれる時代ってこと。そんな、子どもにとっては夢の国に、日本はなっていた。
そのおかげで、日本は世界大戦の痛みを忘れたのか、もとの銃刀国に戻ってしまったわけだ。
と、ここまでを見れば俺は批判的な人間に見えるだろか。残念、俺は武偵です。
ただまあ、批判的なのは間違ってないけど。
「──で、結局やんのか?」
はむっ、と。二つあるサンドイッチの一つを口に運びながら、キンジは言った。
時刻は午後十二時二三分。退屈な一般教科の授業が終わり、俺たちは屋上で昼食をとっていた。
今日は朝のテレビで言ってた通り天気がいい。きっとこんな日だ、某殺人鬼はまた一人誰かを殺そうとするのだろう。
しかし、今更そんなことをわざわざ確認するかね。俺と一年は過ごしてんだ、俺のすることくらいわかりなさいよ。
ツナマヨを袋から取り出しながら、当然のように俺は言った。
「やるわけねーだろ、めんどくせーじゃん」
「…………」
もぐっ、と。ツナマヨを口に運んだ。そして飲み込むまでの間、まるで時が止まったかのように、周りは静寂で包まれていた。
口を半開きにしている状態のキンジを見ながら、
「なんだよ?」
「……いや、相変わらずゲスい根性してんなって」
「ほっとけ」
二口目を運んだ。二口目で確信したが、やっぱりツナマヨはおいしい。
ほかの魚じゃあこうはうまくマッチしないぞ。なんだこの奇跡の組み合わせは。
これは教科書に載せてもいいレベルだろう。考えが硬いんだよ教育委員会、何やってんの。
「今回はどんな屁理屈を用意したんだ?」
「屁理屈じゃねえ、立派な理屈だ」
そう、これはれっきとした合理的な理屈であり、断じて屁理屈ではない。
あの時、神崎は勝負をすると言った。しかし、
それは仮に今日がその日だとしても、知らないからわからなかったで済む。逆に日にちを指定されていたとしても、用があるなどと言い張ればいい。
朝のことから考えるに、俺も含めてクラスメイトは全員こう思ったはずだ。
関わらない方がいい、と。
逆に言うと、それはある意味クラスが団結していると言えなくもない。一つの異端分子があるということは、それを排除しようとするはたらきが本能的にあるはずだ。
仮にそれができるシチュエーションとなった場合、黙って強力してくれるだろう。
そうしてあいつは──孤立していく。
要は、嘘と人海戦術で攻め上げるということだ。
「……やりすぎるなよ」
「なんだ、情でもあるのか?」
「そりゃ、一応女の子だし……」
「…………やっぱそういうところは甘いのな、お前。それも遺伝のせいか?」
かもな、と。キンジが答えたときだった。屋上のドアが開く音がした。
ガチャ、と。出てきたのは、女子。それも、同じクラスの女子だ。
「あれっ? 今日はコウ一人か」
「愛しのキンジはー?」
「あ、そっか、アリアに盗られたんだった」
「そうだ江口。それと勘違いすんなよ橘に篠田、俺にそういう趣味はねーよ」
と、三人と俺との会話が終わる時には、キンジはいなかった。ドアが開く音がした途端、血相を抱えて貯水タンクの裏に隠れていった。
それも当然か。キンジは女子が苦手で、まず女子と話そうという発想がないらしい。一種の女性恐怖症だ。
それもこんな褐色な肌をして、首や手首にジャラジャラと付けてるの(俗に言うギャル)は一緒にいるのもダメみたいだ。そういう奴とそうでない奴との区別でもつくのか?
「そういえば、さっき教務科からの周知メールで来た二年のチャリが爆破されたやつさぁ、キンジじゃない?」
思い出したように言いながら、江口は俺の前に座った。それに続いて橘が右に、篠田が左に座り、見事に囲まれた。
「なんでそう思うよ?」
「コウちゃんよく考えなぁ。キンジってば始業式に出てなかったんだよ?」
と、コンビニ袋から五目にぎりを取り出しながら、橘が言う。なんだ、米まで褐色じゃないと気が済まんのか。
「風邪かもって思ったけど、キンジ来てるしね。おまけに厄介なものまで引き連れてさ」
「厄介なものって……神崎のことか」
そう、と。袋から取り出した缶コーヒーを開けながら、篠田は言った。
「うわ、そう考えれば今日のキンジってばマジ不幸じゃん」
「チャリ爆破された上に疫病神のアリアまでもらってきちゃったんだもんねぇ」
「てかさ、アリアってほんっとキモくない?」
「そうなのか?」
俺の質問に、三人の褐色娘はうん、と首を縦に振った。なんだこのシンクロ率。軽く400%は超えてるだろ。
「アリアってばあれからずっとキンジのこと探りまわってたらしいよ」
「アタシたちも訊かれたよねぇ、キンジってどんな奴とか、実績はとか。メンドーだったからテキトーに『昔は強かったらしい』って答えたけど」
「あ、そういえばアリアさっき見たよ、教務科の前で。きっとキンジの資料でも漁ってるんじゃない?」
「マジラブ2000%かよ」
ここまで来るとストーカーだな。某警察部隊のゴリラと同レベルいや……ゴリラの方が何倍も上だな。
江口は袋から取り出したエクレアを口運びながら、
「キンジかわいそーじゃん、女嫌いなのに。よりによってアリアって」
「てかアリアって、生まれたのヨーロッパかどっかだからって、全然空気読めてないよねぇ」
「でもさ、なんか男子には人気あるらしいよ。三学期に転校してきてすぐにファンクラブができたとか、写真部が盗撮した体操服の写真とかが高値で売ってるらしいよ」
神崎の悪評で流されそうだったが、おいまて写真部。お前それでも武偵か。
「ちなみに一枚いくらすんだ?」
「なんかぁ、ものによっては数十万するとかって──は、まさかコウちゃん買うつもりなんじゃ……!?」
「ちげーよ、誰があんなロリ体型に興味あっか」
「だよねぇ、コウちゃんはアタシみたいなのが好きだもんねぇ」
そう言って自分の豊満なボディを、これでもかというくらい強調してくる橘。
昨日見たビデオよりでかいな。将来はそっち方向に進んだ方が安定してるぞ。
「てかアリアって、友達いないよね。いっつも一人でお弁当食べてたし」
「うっわ、なんかキモ。ドラマみたいじゃん」
「てかさ、あんなのと友達になろうとする奴なんていないでしょ」
だよねー、と。彼女たちの悪口をスパイスに、二つ目のツナマヨを食べていたが、それももう終わるようだ。
ゴミを片付けて立ち上がろうとすると、
「あ、コウ。昨日はパチンコで大勝ちしたからさ、今日は半分の五千でいいよ」
「いや、プラス一万出す。代わりに今日はナマだ」
「な、ナマか…………まあいいよ。今日は大丈夫な日だからな」
「交渉成立だな」
お前らもいいな、と橘と篠田に釘を刺すと、俺はゴミの入ったコンビニ袋を持ち、そのままキンジを放って屋上から出て行った。
今回はエロチックでした。
今後もこんな描写があるときもありますので、よろしくお願いします。