マサラ・ナラティブ   作:U.User

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罰則と免罪符

 旅立ちまであと2日になる。俺は荷物を何度も整理をしていたところ、きずぐすりの残量に不安を覚えた。俺は薬草を99個持つ男なのだ。1個じゃ足りねぇよォ。流石に99個持ち歩くの訳にはいかないが、俺は道具の補充のためにトキワのフレンドリィショップへと向かった。

 子供は大人から、ポケモンを持たずに草むらに入るな、と教えられる。単純に危険であるからだ。ポケモンという生き物は非常に頑丈であるが、人という生き物はかなり脆い。ただポケモンはどの種族、個体も割と有情であり、執拗に人間を襲うようなことはあまりない。ポケモンという生き物が瀕死で一度耐えるせいか、野生のポケモンは人間を瀕死にした後は襲ってこない。まぁ人間はそのまま死んでしまうんですけれどね。

 この世界のポケモンに関わる科学力は素晴らしいの一言に尽きる。モンスターボールが良い例だ。オーパーツである。回復薬系統も驚くべき性能を持っている。トキワに着いた俺は、そのままフレンドリィショップに入った。

 

「ようこそ!フレンドリィショップ、トキワ店へ!」

 

 友好的な挨拶だな。俺ぐらいになると、身構えてしまうぜ。俺は思いとは裏腹に会釈を返すと、店内の物色を始めた。ポケモンの世界での回復道具はどれも素晴らしい。俺が特に気に入っていたのはピーピーマックスだ。ポケモンは休みなく技を扱える限界の数がある。強力な技ほど、この限界値が低い。長丁場となる冒険において技を扱える回数管理はシビアなものになる。前の世界のゲームにおいては、残りの技回数の回復薬は非売品であり手に入りにくい。一体何処で誰が製造しているんだ。

 この世界においても技の残量という概念はある。しかし、時間経過で回復する場合が殆どだ。ポケモンセンターならすぐに回復できる。ピーピーマックスに代表される技残量回復アイテムは、存在が確認されている。しかし、製造元などは明らかにされていないし、もちろん販売されていない、まぁ重要性は落ちているから必要ないのだが。疑問に思うそぶりをする人たちはいるが、深入りしようとはしない。お前それでいいのか? まぁいいか、便利ならね。俺も郷に従った。

 似たような効能を示すきのみとしてヒメリの実が存在する。まぁ姫りんごだ。だがコイツは足が早い。99個も持っていけないね。もっぱら現地調達になるだろう。俺は買い物籠にきずぐすりなどをポイポイと放り込んでカウンターへと向かう。あっ支払いはトレーナーカードで。

 

「はい、かしこまりました」

 

 この世界ではキャッシュレス化が進んでいる。各々の職に応じたカードが発行されて、電子マネーカードのように扱えるのだ。トレーナーカードの交付は割と早い時期から受けることができる。半成人の日とはまた別だな。そしてトレーナーカードにはランクがある。クレジットカードでいうステータスカードにあたるんだろうな。当然だが俺のカードはノーマルだ。ランクが上がると色々な特典があるらしいっすよ? まぁ電子マネー機能だけで十分だとは思うがね。俺は商品を受け取ってフレンドリィショップを出た。さぁマサラへ帰るぞ。

 

 

 道すがら俺は購入した道具を検分した。こっちが……どくけしと、まひなおしだな。ポケモンの世界には状態異常という特殊ステータス変化が存在する。どくに陥ると徐々に生命力が減る。この減りの量は、最大生命力から割合で換算されるため、どのポケモンにも痛手になる。一方、まひになると、たまに痺れて動けない。そして敏捷性が失われ、動きが鈍る。うーん、どちらも致命的だ。そしてこの状態異常、人間にもある程度効果を及ぼす。ある程度というのは、人間はどくになると気分が悪くなり倒れる。まひになると痺れて倒れる。だが、それだけで大抵の場合すぐに回復する。「どく」や「まひ」といった形式化された状態異常はどれもポケモンを通じて発生する現象で、毒物などによる中毒や痺れの症状とは別なのだ。物理現象ではないということになる。ポケモンが原因の毒なら大抵はどくけしで治る。それがどく状態であれば、だ。状態異常というのは、規律というか、そう……まるでペナルティのようなものだ、ポケモンを取り巻くな……。だから人間には効き目が薄い。君はどう考える? 俺は隣を歩く主人公くんに問いかけた。

 

「えっ……ポケモンの毒だしポケモンにしか効かないとか、そういうことなんじゃないの?」

 

 まぁ、そういうことなんだろうな。じゃあ君はどう思う?

 俺は主人公くんを挟んで向こう側にいる知らない人に問いかけた。

 

「えっ俺? そうだなぁ。人間が意外と強いんじゃ?」

 

 面白い考えだ。俺は素直に感心した。潜在能力や身体能力の差に目が行って、人間という生き物をポケモンの下に位置するものと決めつけていた俺だが、そうだな。同じ世界を生きている以上、総合的に見て対等なのかもしれない。人間には何処か、劣るところを補うように発達しているところがあるのだろうか。俺はうんうんと頷いた。ところで君はどちら様ですか?

 

「俺か? 俺は最近トレーナーになって旅を始めた。カイトだ、よろしく!」

 

 はいどうも、主人公のユウです。よろしく。俺は砕けた挨拶を返した。なるほど? ほぼ同期って感じですかね。主人公くんが説明に入る。

 

「僕もトキワに用があって来ていたんだけど、行く途中で出会ったんだ。カイトくんはトキワに住んでいて、2週間くらい前に出発を始めたんだって」

 

 へー。……何でまだこの辺りにいるんですかね?

 

「じっくり旅をしたくてよ。まずはマサラに寄ってみて、ある程度、野生のポケモンとのバトルに慣れてから森を抜けようとね」

 

 なるほど。いやぁ堅実なのはいいことだ。子供のくせしてしっかりしていやがる。俺は感心した。

 

「ユウはもうそろそろ旅立つんだってな? どう? 俺と一緒に旅しない?」

 

 同期くんからお誘いがかかった。うーん、中々いい話なのでは? 有能そうだし。俺はとりあえず受諾した。おう、いいね。よろしく頼むぜ。俺は同期くんとトキワで待ち合わせる約束をして別れた。独りで旅をするのは厳しいだろうと思っていたんだ。助かったね。

 俺は主人公くんとマサラへの帰路についた。そういえば主人公くんはトキワで何をしていたんですかね。

 

「僕? 何かオーキド博士に頼まれて、おとどけものを受け取りに行っていたよ」

 

 ……うん? それはポケモン図鑑イベントでは? 俺は主人公くんが着々と主要イベントをこなしていたことに驚いた。やべぇな、俺が全く絡めていない。だがここで出会えたのは僥倖だ。俺は主人公くんについていっておとどけものイベントに途中参加することにした。

 

 

 帰宅後、俺は旅の先行きに不安を感じていた。トキワシティのジムが開いてなかったのだ。当分の間開かないらしい。もともとポケモンについて、あまり詳しいとは言えなかった俺はこれから起こることを詳細に予言できるわけではないし、強いポケモントレーナーになれる保証もないので、悪の組織関係のイベントは積極的な回避を試みる予定であった、今もそのつもりであるが。嫌だなァ……。不安な気持ちの中俺は就寝することとなる。

 

 

 準備期間の最終日である。まいったね、やることがない。まだ昼前といった時間、俺は悶々とした気持ちを振り切る為、山を駆け回ることにした。

 

 

「また、そういう訳の分からないことをする。無茶はしないように言ったよね?」

 

 が、主人公くんに捕まった。俺はマサラに生まれてから自分の身体能力の限界を探る為に、昔から無茶をし続けてきた。大けがを負うたびに主人公くんが助けてくれたのだが……。いやァ、すみませんねェ。反省しております。

 

「してないでしょ。そういって君は――」

 

 何度も何度も無茶を繰り返した。ハイその通りです。申し開きもございません。俺は延長の説教を食らった。

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