Fate/immature children   作:waritom

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「カヤ!」

 先に気が付いたのはアサシンだ。近寄るそれに対して身を覆い、短剣の一撃を受け入れる。

 その光景を目の当たりにし、カヤは自身の油断を悔いた。

 アサシンを切った黒い鎧のサーヴァントがクリストフの死体の傍らに座り込んでいる。

 ……ランサー!

 最悪の予想が現実になった。アーチャーによって深手を負ったはずのランサーは、既に行動できるほどに回復したらしい。

 斬られたアサシンは苦しそうに身悶えしているが、倒れる様子はない。間一髪で急所は避けれたらしい。

「面白い魔力の奔流を感じて駆けてきたが、思わぬ拾い物だ。これは如何なる技か?」

 ランサーが立ち上がると、身を翻してアサシンの方を向く。値踏みする視線が垂れ下がった前髪の間から覗く。

「たかが老人を殺した矢が気になるか、ランサー。んん?」

「これを高が矢と侮る時点で度量が知れるぞ。必中必殺の矢。先に見せられたアーチャーの宝具と思われるものと同種の奇跡だ。……まあ、些か以上にこちらは劣るがな」

 そして、ランサーがクリストフの死体を踏みつける。厳しい老人は既にその侮辱に答える意思を持たない。

 ランサーの行動の端々から殺意が見て取れた。

 ……どうする。

 打開策に窮し、カヤは思わず紙束を胸に抱きしめた。槍兵の鋭い眼光が、その些細な動きを見咎める。

「女の抱える紙がこの技の正体か。貴様の技ではないのだな、暗殺者」

「そうだと言ったら、見逃すかね?槍兵」

 戯けるようなアサシンの問いに、ランサーの口の端が歪む。それが答えだった。ランサーには今、明確な殺意が宿っている。

 ……そうだ。

 明確な殺意。ならばこそ、この局面を逃れる術がある。アサシンはそれを示すために、わざと戯けた問を放ったのだ。

 確信を持ってカヤは行動に移る。

「令呪を持って命ずる!アサシン、『血塗られた倫敦塔への道(タワー・グリーン)』を開け!」

 ランサーが驚愕に眼を見開き、カヤを斬り裂こうと駆ける。しかし、直ぐに現われた光の牢獄がその動きを防いだ。

(急げ!永くは保たないぞ!)

 アサシンの言葉に身に鞭を打って駆け出す。一瞬ランサーの方を振り向く。光の牢獄は塔になっている。バーサーカーのときよりも展開が早い。アサシンの持つランサーの悪意はそう大きくないのか。

(カヤ!)

 思いを巡らしていると、カヤの目の前に烏が現われた。アサシンの言葉に一瞬、反応が遅れた。驚愕に思わず両の手で身を護る。烏はカヤを襲わずに、右の手に持つものを奪い取る。

 ……しまった。契約書が!

 後悔も遅い。烏は契約書を咥え、空高く舞い上がっていく。使い魔であることは明らかだった。

(アサシン!)

(……無理だ、カヤ。今はランサーから逃げることに徹しよう)

 縋るようにアサシンに呼びかけるが、無念そうな声が響くだけだった。重なる油断に、カヤは叫び出したい気持ちに駆られる。だが、押し留めただ、森を走る。好機を逃した後悔に嘆く頭に、槍兵の叫びが聞こえた。

「返して欲しくばアーチャーを此処へ呼べ!明日の夜明けまで待つ!」

 

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