今回はいつもよりは文量多めです。
そらそろ受験が近づいてきて気持ちが落ち着かない今日この頃。
本編、スタート。
幻佑が宣言した瞬間、
『次元のはざま』が出現した。
そして、そこから現れたのは…
「ん…ここは?」
引き締まった筋肉を持つ身体に、
実は意外と濃い顎髭を剃り上げた、
逞しい顔つき。
紫のタンクトップにアラジンパンツを
身につけた男。
「よ。マッシュ」
マッシュ・レネ・フィガロ、その人であった。
話は幻佑がスペルカード製作に勤しんでいた時に遡る。
「ふぃー…。とりあえず召喚魔法はこんなもんかな?」
召喚魔法のカテゴリ内の魔法をいくつか試した後、一息ついた幻佑。
「そういえば、斬符『超究武神覇斬』を最初のスペカとして使ったはいいものの、
技の元の本人にまだ会ったことすらないんだよなぁ…」
あの技がなければ幻佑はここはいなかったのかもしれない。
そう考えると、
何故だか無性に「あの人」に会いたくなった幻佑。
「もしかしたら…呼び出せたりしないかなぁ…?」
物は試しである。
幻佑はメニュー画面を漁った。
そして、
「お…これは…」
目当てのものが見つかったようだ。
「よし、早速試してみよう!」
呼び出したい人の名前をアビリティに組み込んで、
発動させる──
「英雄召喚VII:『クラウド・ストライフ』!」
幻佑がアビリティを発動させると同時に、
何も無い空中にぽっかりと穴が空いた。
少し離れた場所にいた霊夢が目を丸くして、
「は!?…それってもしかして…『スキマ』!?」
と叫んだ。
「? スキマって?」
幻佑が首を傾げる。が、
「まぁいいや。
それはおいおい説明してもらうとして…」
そう言って視線を元に戻すと、ちょうど「彼」が出てくるところだった。
スタッ…
「ここは…どこだ?」
そして出てきたのは、チョコボ頭の元ソルジャー。
(おおおおおお!キタキター!)
実験大成功。
こうして彼は、クラウド・ストライフ本人を召喚することに成功した。
「…あんた誰だ?」
〜少年事情説明中〜
「つまり、俺はあんたの能力で
ここに呼び出された、というわけか?
特に何の用事もなく」
事情説明を終えて、彼も現状を把握してくれたようだ。
「まぁ、そうなるね」
「…じゃあ、帰らせてもらうぞ」
クラウドが素っ気なく言った。
「え?もう帰るの?なんで?」
残念そうな幻佑。
「何故って…依頼のない奴の相手を
いつまでもしている訳にはいかないだろう?」
良くも悪くも仕事人間なクラウドであった。
「ちぇーっ…まぁ、いいや。
急に呼び出してすまんかったな」
そして、クラウドは元来た穴へと向かって行った。
「じゃあ、またね」
「ああ。また、かどうかは分からないがな」
そう言って、彼は元の世界へと帰っていった。
その光景を見ていた霊夢が、ようやく口を開いた。
「…あんた、一体何したの?」
額にはうっすら井桁が浮かんでいる
…ように見えた。
「何…って言われても、説明しようと思ったら
ちょっと長くなるかなぁ…」
「一言で説明しなさい」
さいですか…
「ええっとね…
別の世界から特定の人物を召喚した、
ってとこかな?」
「召喚…ねぇ…?」
なぜか胡散臭い目を向けてくる霊夢。
「…なんでそんな疑わしげなの?」
「………1人、いるのよ。
あんたがさっきやって見せたみたいに
自分やあらゆる物を『スキマ』を
介して中に行き来させることが出来る奴が。」
「へぇ、すごい能力だね…それ」
それを聞いて幻佑は感嘆した。が、そのあとの霊夢の言葉で幻想郷に来て最大級の驚愕を覚えることになる。
「そいつの名は八雲紫。
『境界を操る程度の能力』をもつ妖怪で、
この幻想郷を作った奴らの内の1人よ。」
「え?いやいやちょっと待ってくれ、幻想郷を作った張本人!?物凄い重鎮じゃないのそれ…というかなんで霊夢がそんなこと知ってるの…?」
混乱のあまりせわしなく動揺や疑問が溢れ出す幻佑。
「…知り合いなのよ。というか、博麗の巫女自体あいつが幻想郷そのものの維持のために
作り出したものだし。」
霊夢が何故か心底気怠げな顔をして言った。
「えええ…思考が追いついていかない…」
幻佑は考えることを半ば放棄しつつあった。
「そんなに難しく考えなくてもいいわよ。
アレは何考えてるか全く掴めないし、
普段はのらりくらりとした奴だし冬眠もするし…
この幻想郷でも指折りの変人よ。」
「…いいの、そんなこと言って…」
「大丈夫よ。
聞かれてたってあいつは気にかけやしないわ」
それでいいのかなぁ…
その後、今後呼び出す機会がありそうな人には
何人か声をかけておいた。
というか、シリーズごとのメインキャラ
ほぼ全員呼び出した。
幸いにも揉めるようなことはなかったのは良かった。と思いたい。
「…紫に後でなんか言われそうね」
霊夢が小声でなにか言ったが、よく聞こえなかった。うん、何も聞いてない。
余談だが、1部ボスやラスボス陣営の人々
(エクスデスとかケフカとか)は呼び出せなかった。
そりゃ当たり前かとも思ったが、意外なことにセフィロスは呼び出せたし、初日にオメガも呼び出せていた。
(ボーダーラインはなんなんだろうか…?)
そして現在に戻る。
「おー、幻佑か。早速俺の出番か?」
マッシュが聞いてきた。
「ああ。そんなところだ。」
そう言って幻佑は目の前の光景を見て
目を丸くしている美鈴の方を指さし、
「あの人と戦って欲しい」
と言った。
「え?それ本気で言ってるのか?」
「うん。あいにく僕には格闘技の心得がないから」
情けないことを言うんじゃない、幻佑…
「…成程ね。分かった。でもなぁ…」
了解はしてくれたが、
すぐに気難しい顔になったマッシュ。
「でも?」
「…いくら腕が立つ人でも、女性だとなぁ…」
「あー…」
このマッシュ、見てくれは筋骨隆々で熊みたいな男だが、
中身は心優しいナイスガイかつ紳士なのだ。
(余談だが彼の兄はナンパ性の国王である。)
「だけど、同じ格闘家として
そんな気遣いはむしろ失礼かもな」
そう言って、マッシュは美鈴の方へと向き直った。
「話は纏まりましたか?」
「ああ。
幻佑に代わって俺があんたの相手をするぜ」
お互いが向き合う。
二人の間を、風が吹き抜けた。
「がんばれー、マッシュー」
自分は見てるだけなのでお気楽な幻佑。
「合図、どうする?」
「そうですね…」
幻佑のことは気にしない事にしたらしい。
「では、こうしましょう」
美鈴はそう言って、
さっき自分に刺さっていたナイフを取り出した。
「このナイフが落ちてきたら始めましょうか」
そして、それを結構な勢いをつけて上に放り投げた。
「…しばらく戻って来ないんじゃないか?」
マッシュが問いかける。
「そうかもしれないですね。
では今のうちに心の準備でもしておいて下さい」
美鈴が僅かに挑発の色を含んだ言葉を返した。
「…ああ。是非ともそうさせてもらうぜ。」
「そういえば、まだ名乗ってませんでしたね」
美鈴が言った。
「おっ、そういやそうだったな。
俺はマッシュだ。マッシュ・レネ・フィガロ。
よろしくな!」
そう言いながら、マッシュは腰を浅く落として両腕を前に構えた。
「いい、名前ですね。私は紅 美鈴。
レミリアお嬢様に仕える、ただ1人の門番です」
美鈴も返しつつ、腰を深く落として半身を後ろに引いて構えた。
辺りが静まり返り──
ザクッ
──二人のちょうど真ん中に、ナイフが落ちた。
戦いの火蓋が、切って落とされた。
14話おまけ
幻佑がクラウドを呼び出した直後の話。
「──紫様!?」
異変に気がついた藍が、主の元へと駆けつけた。
「…ええ。気付いているわ。恐らく『彼』ね」
主──八雲紫は、至極冷静に答えた。
「大丈夫よ。『現世』とは繋がってない。
ただ、別の世界との繋がりを作ってしまっているみたい。」
紫のその言葉を聞いて、藍の顔が険しくなる。
「それは…少々まずいのでは?」
「ええ。でも、彼は凄いわね。
目的の存在のみを完全に呼び出している。
私の能力ほどではないけれど、なかなか侮れないわね…」
紫はそう言いつつ、持っていた扇を閉じ、
妖艶な笑みを浮かべた。
「これは…近々こちらからご挨拶に伺う必要がありそうね。
ふふふ…」
幻佑の苦難は、まだ始まったばかりであった。