スマブラSP持ってないんですけどね…
それでは本編、どうぞ。
まず駆け出したのはマッシュだった。
鍛え上げた脚力をフル活用して
一瞬で美鈴の前へとたどり着き、
「先手必勝!」
その勢いを殺さぬまま右腕を振り抜いた。
もちろん、美鈴も
指をくわえて待っていた訳ではなく、
「ふっ!」
構えの姿勢から一瞬で右脚を振り上げ、
マッシュの拳に合わせた。
バシッ、という肉を打つ音が辺りに響く。
「やるな…!」
「そちらこそ…っ!」
美鈴が右脚で払い除け、返す拳をマッシュが左腕で受け止める。
だが、受けきれないと判断したのか途中で受け流した。
そのままお互いに距離を取る。
「っ痛ぅ…なんちゅうパワーだ」
マッシュが左腕を軽く振った。
「…ただの人間に、
生身で攻撃を受けられたのは初めてですよ」
「へへ…そいつぁーどうも…っと!」
マッシュは再び美鈴に突撃していった。
(今の攻撃、普通の女の人には出せる威力じゃあなかったな…
一体どんな鍛錬をしたらあんなに練度の高い拳が出せるんだ…?)
マッシュは、美鈴の蹴り上げを上体を逸らして躱しつつ、考えていた。
先程受けたパンチは、自分があと少し気を抜いていたら
受けきれずに左腕に少なくないダメージを貰っていたであろう、重い一撃だった。
(とにかく、一撃一撃に集中しよう…
意識して受ければ負傷することはないはずだ)
そう冷静に判断しつつも、マッシュの心は不思議と高揚していた。
(それにしても、幻佑に呼ばれて来て良かったな。
対人格闘でここまで強い相手は師匠やバルガス以外に今までにいなかったし…
もしも聞く機会があったら、どんな鍛錬してるのか聞いてみたいぜ)
そんなことを思いながら、意識を目の前に切り替えた。
(この男…本当に人間なのでしょうか?
今まで戦ってきた人間の格闘家の中で一、二を争う程、力強く、とても洗練された動きをしている…
さっきの拳撃も本気ではなかったとはいえ、
普通の人間が受けるにはかなり厳しい威力だったはずなのだけれど…
むしろこちらが気を抜いたら、難なく拳が跳ね除けられそうですね…)
一方美鈴も、躱された蹴り上げを踵落としへと派生させつつ、感心していた。
それも躱されるのを見て、
(早くも動きが見切られつつある…?
成程、これは久しぶりに楽しい闘いが出来そうですね!)
高揚感に意識を浮かせていた。
(それにしても、一体どんな鍛錬をしたらこんな動きができるんでしょうか…
この後機会があれば聞いてみたいものですね)
そして、マッシュと同じようなことを考えてながら、追撃を繰り出して行った。
「すごい…どうなってるんだあれ…」
戦いを離れた場所で見ていた幻佑は、
2人の人間離れした動きにただただ脱帽していた。
自分のようなアビリティに頼りきった動きではなく、
長年積み重ねた鍛錬によって生み出される
精巧緻密な完成された動作。
そのぶつかり合いは、さながら二人舞のようであった。
「あんな動きが…できるようになれたらなぁ…」
羨ましさ半分、興味半分で、幻佑は二人の戦いを観劇していた。
ドゴッ!バシッ!ガツッ!
といった生々しい音を響かせながら、
十合、二十合、三十合…と、互いの拳を、脚を、
交わしてゆく。
何度もの交差の後、お互い飛び退き、間合いを取った。
「流石、と言うべきか?
まぁ、まだ本気じゃあないんだろうけれどもな」
マッシュが美鈴に問う。
「そちらこそ、並大抵の人間より素晴らしい
動きをしていますよ。
それに、全力でないのは貴方もでしょう?」
美鈴が問い返す。
「そうかも…な?」
それに対してマッシュはニッ、と歯を見せて笑いながら言った。
「…いいでしょう。あなたに敬意を表して、
ここからは全力で行かせて頂きましょう!」
そう言い、美鈴が呼吸を切りかえる。
「スゥゥゥゥゥゥ……コォォォォォォォ……」
そして───
「ハッ!」
美鈴の全身を、力の奔流が走り抜けた。
「あれは…?」
幻佑は目の前で起きた美鈴の変化に、ただただ驚いていた。
「……気功術か!」
マッシュはそのタネに気がついたようだ。
「御明答。私の能力は『気を使う程度の能力』。
もとより気功術は、私の得意分野です」
気功術。中国において、『気』を用いて怪我や病気の治療などを行う、伝統深い技能。
『気』の扱い方次第では、敵の奥深くへとより大きいダメージを与えることも可能らしい。
美鈴はそれを用いて、己の身体能力を引き上げたのである。
それを見たマッシュはというと…
「まさかここでお目にかかれるとは…
へへへっ、俄然やる気が出てきたぜ!」
やる気に満ち満ちていた。
そんなマッシュを見て、
「おや、何もしなくていいのですか?」
見ているだけだったのが意外だったのかそう声を上げた。
「ああ。まだ大丈夫だぜ」
彼にも何やら手はあるようだが、まだ余裕を見せている。
「そうですか…では、行きます!」
言い終わると同時に──
美鈴がマッシュの前に出現する。
「なっ…!?」
動揺するマッシュ。
美鈴は、その隙を見逃さなかった。
「ハァァッ!」
ドゴオッ…!
マッシュが殴られたと気づいたのは、
数メートル吹き飛ばされた後であった。
「ぐぅっ…ッッ!」
何とか体勢を立て直し、着地した。
「ゲホゲホッ…っ痛ぇ」
殴られた腹のあたりを抑えて蹲るマッシュ。
咄嗟のことで防御は間に合わなかったが、
無意識のうちに後ろに体をずらしていたため
内臓への深刻なダメージは避けられた。
(だが、かなり体力が削られた感覚があるな…
直接攻撃とはまた別に体力を持っていかれたような…)
パンチ1発でここまで体力が削られるのは妙だ。
刹那の思考の後、
マッシュは一つの結論にたどり着いた。
(もしかすると、『気を使う程度の能力』、か?)
己の気を流し込むことで相手の体力を消耗させているのかもしれない。
(だとすると、近接格闘とこれ程噛み合った能力ってのは恐ろしいもんだぜ…)
そんな胸の内を知ってか知らずか、美鈴が、
「やはり流石ですね。
腹に風穴が空くかどうかギリギリの力で打ったつもりだったのですが」と言った。
それを聞いたマッシュの顔が青くなる。
「おいおい…それは大丈夫なのか…?」
「貴方なら大丈夫かと思いまして」
「買い被りが過ぎるぜ…」
スペルカードルール的にも大丈夫じゃない気がするのだが、そこは目を瞑ろう。
「まだこれは普通の拳ですが、
これに弾幕を上乗せすることもできますよ」
美鈴が少し自慢気に付け足した。
「そいつぁすげぇな…よし。
俺もやられっぱなしじゃぁ居られねぇな。
いっちょアレやるか!」
美鈴の本気が、マッシュの闘志の炎を滾らせた。
腕をクロスさせ、声高らかに宣言する。
「行くぜ!『爆裂拳』!」
次の瞬間、
「──!!!」
美鈴の視界は、無数の拳に覆い尽くされた。
この話で出て来たキャラはマッシュなのですが、最初の時点ではティファとどっちにしようか悩んでいました。
とある事情にてマッシュが選ばれた次第です。
その事情とは…?
それが分かるのはもう少し先になりそうです。