魔力 イオリ<<<越えられない壁<<ヴィータ<シグナム<<なのは=フェイト<<はやて<ラヴィエ
個人戦闘技術 ラヴィエ<<はやて<越えられない壁<イオリ<ヴィータ=シグナム=なのは=フェイト
レアスキル所有量 ヴィータ<シグナム=フェイト<<<越えられない壁<<なのは<イオリ<<<はやて<<<ラヴィエ
どれも現段階です。
特にラヴィエは伸びていきます。
「あの……お客様? どうかなさいましたか?」
俺がベンチの裏に転がっているのを見て、ラヴィエとともにこちらへやってきた店員がそう聞いてきた。
「あ~、いや。ちょっとウトウトしてて……」
我ながら言い訳としては厳しいものがあると思うが、店員は深くは追及してこなかった。
「そ、そうですか。気をつけてください」
店員の目は完全に俺を変な人として見ており、きっと店員は俺と関わらない方がいいと思ったに違いない。
「そ、そうなんです。ラ、ラヴィエ。財布渡すから支払してきてくれ」
俺はそう言って懐から財布を取り出すと、ラヴィエに渡した。
今この死角から出てしまうと、管理局の化け物三姉妹?に見つかる恐れがある。
「……ん」(こくり)
ラヴィエは俺から財布を受け取ると、店員を連れて会計に向かった。
「なんや? おもろいことでもあったんかな?」
「にゃはは、どうかな」
「誰かベンチから落ちたみたい。それより今の声、なんだか聞き覚えが……」
俺の心臓は破裂するのではないかと思うほど早く脈打っていた。
「う~ん? せやかてここは女性服の店や。 それに女の子もおったし子連れの知り合いなんかおらんで?」
「……気のせいかな?」
「にゃはは。ここ最近仕事が立て込んでるから疲れたんだよ。せっかくみんな一緒の休暇なんだからたのしもう?」
三人はそんな会話をしながら俺の方から遠ざかっていった。
(か、確実に寿命が縮んだ!)
俺はいまだに鳴り止まない心臓を落ち着けるために深呼吸をした。
「……なにしてるの?」
俺が先ほどから同じ体勢でいるのが不思議でしょうがないのか、戻ってきたラヴィエは先ほどと同じことを聞いてきた。
「お、終わったか?」
「……」(コクン)
見れば確かにラヴィエの横には服の入った袋があった。
俺はそっと周囲を確認し、近くにあの三人がいないことを確認すると、ラヴィエの持ってきた袋とラヴィエの手を掴み慌てて店から出て行った。
「ありがとうございました」
後ろからは店員の挨拶が聞こえた。
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「はぁ~」
先ほどの店からはかなり離れた公園で、ラヴィエを隣に座らせながら、俺は盛大にため息をついた。
「街に来て見かけた人間があの三人って、どんだけ運が悪いんだよ俺」
管理局はいつも人手不足で、ある程度の能力がある人材の休暇はバラけている。
あの三人クラスの魔導師なら、よほど運が良くなければ一緒に休暇を取るなんてできないはずだ。
「もう今日は厄日だ」
「……イオリ」
俺が頭を抱えて項垂れていると、ラヴィエが慰めるように頭を撫でてくれた。
なんとも癒される。
「ありがとな。ラヴィエ」
「……」(ふるふる)
そう言うとラヴィエは首を横に振った。
おそらくは気にするなと言っているのだろう。
顔を上げると公園の入り口にアイスクリームの販売車が止まっているのが見えた。
「アイス食うか?」
「……あいす?」
そう言えば最終調整で入れた知識は一般常識やスキル関係、それと魔法関係のみだったことを思い出した。
「食べてみるか?」
「……」(こくん)
もう一度確認すると、少し迷ってから首を縦に振った。
俺はラヴィエの手を引いてアイスクリーム屋の前に来た。
「すいません。バニラと……ラヴィエはどうする?」
「……おんなじ」
「バニラ二つください」
ラヴィエに確認してから注文した。
「どうぞ」
アイスを受け取った俺はラヴィエに持たせると、財布からお金を取り出し支払いを済ませた。
ラヴィエは手に持ったアイスが冷たいことに驚いているようで、困ったような顔で俺を見上げてきた。
「ほら、食べてみ」
俺はラヴィエにお手本を見せるようにアイスを食べ始めた。
それを見たラヴィエは、恐る恐るといった表情でアイスに舌を伸ばした。
「……甘くて冷たい」
それからラヴィエは夢中になってアイスを舐め始めた。
「零すなよ~」
そんなラヴィエをしり目に俺は持っていたアイスに噛り付き、ばくばくと口に入れて呑み込んだ。
ラヴィエのようにのんびり舐めながら食べるのは性に合わない。
俺はアイスを食べ終わると、のんびりとベンチに腰掛けながらラヴィエの様子を観察していた。
「……おいしい」
「そうか」
今日だけでラヴィエにも感情らしき片鱗が見えたのは大きな収穫だろうと考えながら、俺は何となく公園の入り口に目を向けた。
「ん、んん?」
俺は思わず自分の目を擦ってしまった。
いつから俺の目はこんなに悪くなったのだろうかと、一瞬本気で考えてしまった。
視線の先。
公園の入り口につい最近見た記憶があるピンクの頭と紅い頭が見えた。
「んな!?」
俺は慌ててラヴィエを抱えて後ろのベンチに移動した。
(き、気がついてないよな!?)
ようやく収まっていた心臓が再びけたたましい鼓動を上げ始め、冷や汗が頭上から顎まで流れてくるのを感じた。
「まったく。なぜ私が」
「しょうがねーだろ。はやてはなのはたちと買い物いったんだから」
例の二人組は先ほどまで俺たちが座っていたベンチに腰かけた。
現在俺たちとシグナムたちは背を向けて座りあっている状態になっている。
バクンバクン
心臓の音が後ろの二人に聞こえるのではないか心配になってきた。
それほどまでに俺の心臓は脈打っている。
「……おいしい」
そんな俺の心配をよそに、隣ではラヴィエが
「それよりもヴィータ。腕は問題ないのか?」
「ん? ああ。シャマルにも見てもらったけど、軽い凍傷だってよ」
「問題ねえよ」とヴィータは答え、買ってきたアイスを食べ始めた。
シグナムのほうも「そうか」とだけ言うと、二人は静かにアイスを食べていた。
(うがー!! 早くどっかいってくれー!!!)
俺は心の中で絶叫した。
今日は厄日なんてものじゃない。きっと今日は俺の人生で最悪な一日だ。
俺は確信した。
「それよりもこの間のイオリってやつの足取りはどうなんだよ?」
「何もないな。おそらくどこかに潜伏しているのだろう」
「はっ! 案外近くにいるかもしんねえな」
ヴィータはシグナムの問いに面白くなさそうにそう言った。
(大正解だよ! ちくしょうが!)
「……イオっむぐ」
俺は慌ててラヴィエの口にハンカチを押し当てた。
「あん?」
後ろで何が起きたのか気になったのか、ヴィータがこちらを振り返った。
俺はかつてない緊張を感じていた。
「むぐ……むぐ……」
ヴィータには俺とラヴィエの様子は口の汚れを吹いている親子か、兄妹に見えたのか興味をなくしたように正面に視線を戻した。
「ヴィータ、そろそろ行くぞ。主はやてとの合流時間だ」
「わかったよ」
ヴィータは残っていたアイスを口に入れると、ベンチから立ち上がりシグナムと共に公園を後にした。
「……ぶはぁ~」
「……イオリ?」
俺は肺に入っていた鉛のように重い空気を、ようやく吐き出すことができた。
「……さ、最悪だ」
「……イオリ」(くいくい)
俺が再び項垂れそうになると、ラヴィエが袖を引いてきた。
「ラヴィエ……どうした? 慰めてくれるのか?」
俺がラヴィエにそう尋ねると、予想外の返答があった。
「……アイス。……もう一個」
目を輝かせながらラヴィエはそう言った。
「……もう好きにしてくれ」
俺はがっくりと項垂れながら、アイスを買うお金をラヴィエに渡した。
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・
「なあ、シグナム」
「なんだ、ヴィータ」
先ほどの公園を後にした二人は、荷物を持ちながら街中を歩いていた。
「さっきの公園にいた男。どっかで見たことねえか?」
ヴィータは先ほどの公園で、子供の口を拭いていた男についてどこか納得がいかない表情をしていた。
「ふっ」
ヴィータの口から出た内容にシグナムは笑みを浮かべた。
「な、なんだよ!」
「いや、あのヴィータから男の話題が出るとはな」
ヴィータは不機嫌に表情を歪めた。
「ふざっけんな!」
ヴィータが食って掛かってきたところで、シグナムはからかうのをやめた。
「冗談だ。さっきの男については私も見覚えがある気がする」
今度はヴィータの質問にちゃんと答えたシグナムだが、ヴィータと同様にどうにも釈然としない様子だ。
「とはいえどこでだったかが思い出せない」
「そうなんだよな。子連れの知り合いなんかクロノの野郎くらいしか思い浮かばねえよ」
二人は男が子連れということに目が行き、しっかりと顔を確認していなかった。
あの場で二人が男の顔を確認したならば、イオリのことを思い出し即座に行動に移っていただろう。
二人は悩みながら街を進んでいった。
「ヴィータ! シグナム! こっちや~!」
二人が考えながら歩いていると、前方から二人を呼ぶ声が聞こえた。
「あ! はやて~!」
ヴィータははやてを見つけると、先ほどまで悩んでいたことを頭から追いやり、はやての元へと走り出した。
そんなヴィータを見ながら、シグナムは苦笑を浮かべながら歩いて後を追った。
「ヴィータ、お疲れさんやな。シグナムもご苦労さん」
はやては二人を労った。
「テスタロッサも休暇は楽しめたか?」
「はい! シグナムも今日は買い出しをお願いしてごめんなさい」
フェイトがシグナムに頭を下げると、シグナムは気にするなと言いフェイトの頭に手を置いた。
「にゃはは、ヴィータちゃんもありがとう」
「おめーはたまには休め! それといちいち頭をなでんな!」
なのはがヴィータの頭を撫でようとすると、ヴィータはそれを躱しはやての陰に隠れた。
「それじゃあみんなで帰ろか」
そう言ってはやてがまとめて、全員が帰路へとついた。
その間イオリの方は、また誰かに合うんじゃないかと怯えながら、街中を少しづつ移動していた。
なぜだか会いたくないときに限って出会ってしまうことってありませんか?
作者はたまにそんな日があります。
絶対合わないだろうと思っていたのに、その辺の店でバッタリなんてことも……