文字を消すのにDeleteキーオンリーなのが、地味にめんどくさいです(;´д`)トホホ…
早めに買い替えたいです。
「つ、疲れた。……最悪の一日だった」
あのあと細心の注意を払いながら公園を後にし、目的の闇市で必要な物を見つけだしアジトへと戻ってきた。
俺はアジトへ着くと同時にソファへと身を投げた。
「……大丈夫?」
ラヴィエがしゃがみながら俺の顔を覗いてきた。
「ああ、大丈夫だ。……とりあえずそのアイスは冷凍庫に入れとけよ。」
「……」(こくこく)
ラヴィエは途中で買った大量のアイスを抱えたまま、冷凍庫を目指して食料庫へと向かっていった。
「さて……ラヴィエのデバイスの設計でもするかな」
俺は一息つくとソファから起き上がり、ラボへと向かった。
「ラヴィエの魔力ならミッドチルダ式か? いやでも元が元だから相性は古代ベルカの方がいいのか? いやでもレアスキルと魔力を考慮すると近代ベルカも……」
ラヴィエは膨大な魔力を持っている。
それだけなら無理に近接戦闘を優先するより、膨大な魔力に物を言わせた遠距離が主体のミッドチルダ式のインテリジェンスデバイスが良いだろう。
ただラヴィエ自身が古代ベルカの王の一人、聖王オリヴィエのクローンだ。
それならば古代ベルカ式や近代ベルカ式に多くあるアームドデバイスも悪くない。
他にも純粋にサポートを優先するなら、作成が困難ではあるが融合騎も視野に入れてもいいかもしれない。
「ん~……どうすっかな~」
「……なに?」
「うおっ!」
悩んでいたところにいきなり声を掛けられ、俺は驚いてしまった。
「ドア開いてないぞ? ……物質透過で入ったのか?」
「……」(こくり)
物質透過で近づかれたら音も気配も感じないため、ひどく心臓に悪い。
「アジトで物質透過禁止だ」
「……わかった」
ラヴィエは無表情にそう言った。
その様子を見る限り、本当に理解したのか疑いたくなる。
「まあいい。……ラヴィエ、ちょっとこっちに来い」
俺はラヴィエを呼ぶと、ラボの奥にある計測器をいくつか取り出した。
「……?」
ラヴィエは興味深そうに俺の手元を覗き込んできた。
俺はそれをラヴィエの手に嵌めていき、モニタリングを開始した。
「……なに?」
ラヴィエは首を傾げながら聞いてきた。
「これか? これはラヴィエの魔力と身体機能を計測を計測してデバイスの相性を調べる装置だよ。デバイスを作るにしてもラヴィエがどういった魔導師なのか分からないと作りようがないからな」
ラヴィエはしばらく装置を眺めたり触って確かめたりと、興味深々と言った様子で眺めていた。
しばらくすると計測が終了したようで、俺の手元の端末にデータが表示された。
「ん~……やっぱりベルカ式との相性が高いか。とはいえミッドチルダ式とも相性が悪いわけでもないな……ラヴィエはどっちがいい?」
「……イオリの魔法は? それとデバイスは?」
俺が悩んでいると、ラヴィエが俺の使う魔法とデバイスについて聞いてきた。
「俺か? 俺のは参考にはならないぞ。俺の魔法はミッドチルダ式でもベルカ式でもないし、デバイスも使わない」
俺は正直に答えた。
超精密制御能力は魔力を制御するうえでデバイスよりも効率よく制御できるが、俺の制御範囲が半径50m、直径100mの球状だ。
その範囲から出てしまった魔力はや魔法は一気に制御力が落ちてしまい、シューターなどの遠隔制御がままならない。
さらに俺は収束系が苦手で遠距離での攻撃はほぼ使えない。
そして身体能力が高いわけでも、格闘術の才能があるわけでもないので近接戦闘も危険だ。
これらの結果から俺は独自の魔法体系を作り、現在の戦闘技術を確立した。
俺はそのことをラヴィエに説明してやった。
「……ラヴィエもイオリと同じ」
「あ~……たしかに俺の能力もラヴィエはもってるげど、俺と同じは無理だ」
ラヴィエの希望を俺はバッサリと切り捨てた。
「……どうして?」
ラヴィエは少し不機嫌そうな顔で俺に問い詰めてきた。
「単純に魔力量の違いだ。俺の魔力をバケツの中の水とする。俺はそれを自分で正確に量って使える。……でもラヴィエの場合は魔力がダムに溜まった水だ。ダムから水を取り出すのに自力で正確に量るのは無理だ。だからデバイスという補助が必要なんだ」
超精密制御はいわば魔力という見えない水を正確に測り操るための目と手のようなものだ。
バケツの水を量ったり持ち運んだりするのは簡単だが、それがダムの水のように膨大なら専用の設備などがないと不可能だ。
ラヴィエにとってデバイスはそういった役割にあたる。
「わかったか?」
「……ん」(こくり)
俺はラヴィエの説得に成功した。
「それで……結局何か希望はないのか?」
「……ない」
ラヴィエの身もふたもない一言に困ってしまった。
「……しかたない。ラヴィエのもとになった聖王の戦い方を参考にするか」
俺は昔文献で読んだ聖王に関する資料を思い出した。
聖王オリヴィエは両腕がなく、鋼の義手を用いた戦闘を行っていたという。
「なら肘まである鋼の手甲でいいかな」
形状はそれでいいだろう。
そうなると自然に近接戦闘が主体になってくる。それを考慮するなら魔法は近代ベルカを教えていくことにしよう。
「あとはカードリッジシステムかな……いらないか」
ラヴィエの魔力量を考えるとカードリッジの必要性を感じない。
「あとは待機形態か。ラヴィエ……好きな形はあるか?」
「……アイス」
「アイスは好きな食べ物で形じゃない」
俺は呆れながらツッコミを入れた。
「……わからない」
アイスを否定されたせいか、少し悲しそうな表情をしていた。
「う~ん……どうするかな」
俺はもう一度考える羽目になった。
(アイスから連想するもの……氷……冷たい…)
とりあえずラヴィエの希望にできるだけそうように、アイスから一人で連想ゲームのように考えていると、俺の目の前で揺れている真っ白なラヴィエの髪が目に入った。
「雪……かな」
「……ゆき?」
雪の結晶をモチーフにすることにした。
(形状は腕を覆う手甲。魔法は近代ベルカ式でラヴィエのリンカーコアとリンクさせてスキルの補助もするようにしよう。それで待機状態は雪の結晶の髪飾りかな)
そうと決まれば俺はさっそくデバイスの作成に取り掛かった。
「デバイスの素材はコレクションのレアメタルでいいな。AIも探せばいくつかあるはず。……さて、早速取り掛かるか」
俺はラヴィエに休んでいるように部屋に戻すと、ラボにある機材をフル稼働させ始めた。
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「よし! これでとりあえずは完成だ。あとはラヴィエが使って、少しずつ調整していくしかないな」
完成したデバイスを装置から取り外した。
いつの間に部屋に入ってきたのか、ラヴィエは完成したデバイスを眺めていた。
俺はデバイスをラヴィエに手渡した。
「ほれ、あとは名前を付けてやれ」
「……名前」
いきなりそう言われてもすぐには思いつかないようで、ラヴィエは真剣な表情で考え始めた。
「ふぁ~……決まったら教えてくれ」
俺は疲れがピークに達したため、睡魔に負けて椅子に座ったまま眠りに落ちた。
「……名前」
ラヴィエは真剣に考えていた。
ラヴィエ自身もつい最近まで名前を持っておらず、イオリに名前をもらった時に初めて嬉しいと感じた。そのため名前には人一倍思い入れがあった。
「……名前」
だからこそこのデバイスの名前もしっかりとしたものを考えようとしている。
ラヴィエは自分の知識として与えられた情報から、このデバイスに合う名前を必死に探した。
「……決めた。エファンゲーリウム」
《Beglaubigung》(認証)
ラヴィエが名前を決めるとデバイスはそれに答えた。
「……よろしく、エファンゲーリウム」
《Freundliche Grüße》(宜しくお願いします)
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「……おきて」
ゆさゆさ
「んあ?」
ゆさゆさと身体を揺らされる感覚に目が覚めた。
「あ~……おはよう」
「……おはよ」
俺は寝ぼけた頭で、寝る前に何をしていたか思い出そうとした。
「名前……決まったよ」
「お~、そうかデバイス」
ラヴィエの一言で寝る前に何をしていたのか思い出した。
デバイスを作成した後、疲れがピークに達した俺はラヴィエに名前を決めるように言っていたはずだ。
「決まったのか?」
「……うん。エファンゲーリウム」
ラヴィエはそう言って俺の目の前にデバイスを持ってきた。
「そうか。エファンゲーリウム……意味は福音か。いい名前だな」
《Danke》(ありがとうございます)
名前を褒めると、ラヴィエの手の中でエファンゲーリウムが答えた。
ラヴィエも自分で名前を付けたせいか、デバイスを見る目にはどことなく大切なものを見るような眼差しをしていた。
どうやらお互いに良いパートナーになりそうだ
「さてっと……名前が決まったら、さっそく魔法の練習といくか?」
「……うん!」《ja》
俺の問いかけに一人と一機は、同意に応えた。
ラヴィエのデバイスがあっさり完成……
今回はViVidから聖王の一部設定を持ってきました。
そのためデバイスの形状は両腕に装着するタイプのものです。
次回からラヴィエのチートが炸裂します!
あれ?主人公どっちだったかな?